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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1134997
審判番号 無効2004-80057  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-05-25 
確定日 2006-02-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第1971250号発明「海苔夾雑物除去装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第1971250号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
1.本件特許第1971250号に係る発明についての出願は、平成2年4月10日に出願されたものであって、平成6年12月7日に特公平6-97979号として出願公告され、平成7年9月17日にその発明について特許の設定登録がされたものである。
これに対して、請求人より平成16年5月25日付けで本件無効審判の請求がなされ、被請求人より平成16年8月10日付け訂正請求書により明細書の訂正が請求された。

2.請求人は、証拠方法として甲第1及び2号証を提出し、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものであり、この特許は特許法第123条第1項第2号の規定に該当し無効とすべきものである、と主張している。

3.被請求人により請求された訂正の内容は、本件特許発明の明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、以下のとおりのものである。
(1)特許請求の範囲の、「【請求項1】乾海苔の通過経路の上下に搬送用ローラ群を配置するとともに、前記通過経路を挟んで一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置したことを特徴とする海苔夾雑物除去装置。」という記載を、
「【請求項1】乾海苔の通過経路の上下に搬送用ローラ群を配置するとともに、前記通過経路を挟んで一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置し、前記搬送用ローラ群は前記回転ブラシの乾海苔の出側と入側にそれぞれ搬送用上ローラ及び搬送用下ローラを配置したことを特徴とする海苔夾雑物除去装置。」に訂正する。
(2)明細書の、「[課題を解決するための手段]本発明の海苔夾雑物除去装置は、乾海苔の通過経路の上下に搬送用ローラ群を配置するとともに、前記通過経路を挟んで一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置したことを特徴とする。」という記載を、
「[課題を解決するための手段]本発明の海苔夾雑物除去装置は、乾海苔の通過経路の上下に搬送用ローラ群を配置するとともに、前記通過経路を挟んで一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置し、前記搬送用ローラ群は前記回転ブラシの乾海苔の出側と入側にそれぞれ搬送用上ローラ及び搬送用下ローラを配置したことを特徴とする。」に訂正する。

II.訂正の可否に対する判断
上記訂正事項(1)は、訂正前の特許請求の範囲に記載された搬送用ローラ群の配置を限定したものであり、特許請求の範囲の減縮に相当する。また、上記訂正事項(2)は、特許請求の範囲の減縮に伴う明瞭でない記載の釈明に相当する。
そして、「搬送用ローラ群は前記回転ブラシの乾海苔の出側と入側にそれぞれ搬送用上ローラ及び搬送用下ローラを配置した」ものである点は、願書に添付した明細書の「回転ブラシ8、10に海苔が接触しているときに両側の搬送ローラが海苔を挟んでいる状態とする。」(公告公報第3欄21〜22行)という記載及び第1図の記載から、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。また、このような減縮により発明の当初の技術的課題を変更するものでもないから、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、特許法134条の2第5項において準用する平成6年改正前第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件特許発明に対する判断
1.本件特許発明の認定
上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件特許発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認める。
「乾海苔の通過経路の上下に搬送用ローラ群を配置するとともに、前記通過経路を挟んで一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置し、前記搬送用ローラ群は前記回転ブラシの乾海苔の出側と入側にそれぞれ搬送用上ローラ及び搬送用下ローラを配置したことを特徴とする海苔夾雑物除去装置。」

2.請求人の提出した証拠方法
請求人の提出した甲第1号証(実願昭54-48927号(実開昭55-149394号)のマイクロフィルム、昭和55年10月27日公開)には、以下の事項が記載されている。
(a)「一方は早く他方は遅く異なった周速で回転する一対の掻取りローラ(21)(22)を海苔(9)の移行路を挟んで接近して対向配備し、各ローラ(21)(22)の外周面には細かい凹凸模様を形成しているシート状海苔の不純物除去装置。」(実用新案登録請求の範囲第1項)
(b)「ローラ(21)(22)はその下流側に海苔(9)の移行路を挟んで一対の回転ブラシ(6)(6)を具えている実用新案登録請求の範囲第1項又は第2項に記載のシート状海苔の不純物除去装置。」(実用新案登録請求の範囲第5項)
(c)「本考案はシート状海苔に混入している不純物を除去する装置に関する。シート状海苔は生海苔を漉いて乾燥させて作る…」(明細書2頁14〜16行)
(d)「搬送室(12)の前、後壁にスリット状の搬入口(16)及び搬出口(17)を開設して海苔(9)の移行路を形成している。移行路の両側に平行支持板(18)(18)を並設し、支持板(18)(18)間に2対の掻取りローラ(21)(22)(31)(32)、搬送コンベア(5)(5a)回転ブラシ(6)及びエアー吹出し管(7)を配備する。各掻取りローラ(21)〜(32)は直径約10cm、長さ約50cmであって外周面に浅く細かい凹凸模様を形成している。」(明細書3頁16行〜4頁5行)
(e)「…第1段掻取り装置(2)の上方のローラ(21)は下方のローラ(22)の2倍の周速で回転し、第2段掻取り装置(3)は逆に下方のローラ(32)が上方のローラ(31)の2倍の周速で回転する。上記2基の掻き取り装置(2)(3)の間に大小2本の案内ローラ(4)(41)が海苔(9)の移行路を挟んで配備される。」(明細書6頁1〜7行)
(f)「然して海苔(9)を搬入口(16)より搬送室(12)内へ送り込むと、先ず第1段掻取り装置(2)の上下のローラ(21)(22)により海苔は強制的に下流側へ引き込まれる。掻き取りローラ(21)(22)の表面には浅く細かい凹凸模様が刻まれており、上方のローラ(21)は下方のローラ(22)の2倍の速さで回っているから海苔(9)は上方のローラ(21)の周速よりも遅く、下方のローラ(22)の周速よりも早く移行される。従って海苔(9)の上、下両面はローラ(21)(22)とスリップすることになり、第7図に示す如く海苔(9)の表面に浮き出た海老等の不純物(91)はローラ(21)(22)の表面の凹凸模様によって掻き出され、不純物(91)が海苔(9)から取り除かれ、或は不純物(91a)の海苔面から臨出した部分が削り取られて目立たなくなる。」(明細書8頁末行〜9頁14行)
(g)「第1段掻き取り装置(2)を通過した海苔(9)は下流側の案内ローラ(4)(41)間に侵入する。上方の案内ローラ(41)は下方の案内ローラ(4)に接触して回転しているが、海苔(9)の侵入に伴なって該海苔(9)を下方の案内ローラ(4)に押付け、該案内ローラ(4)の回転に追従して海苔(9)を下流側に移行すべく成す。案内ローラ(4)(41)を通過した海苔(9)は、第2段掻取り装置(3)のローラ(31)(32)間に引き込まれ、前記第1段掻取り装置(2)を通過した場合と同様にして掻取りローラ(31)(32)は海苔面上をスリップする。斯くて海苔(9)は第1段掻取り装置と第2段掻取り装置によって2度の掻取りがなされ、然も第1段掻取り装置では上方のローラ(21)が、第2段掻取り装置では下方のローラ(3)がそれぞれ対向するローラ(22)(31)よりも周速が早いから、海苔(9)は上、下両面に均等な掻取り作用を受けて不純物は取除かれ、或いは殆ど目立たなくなるのである。第2段掻取り装置(2)を通過した海苔(9)は上下の搬送コンベア(5)(5a)間に挟まれながら搬出口(17)側へ送られ、この途上に於てエアー吹出し管(7)からのエアーによって海苔(9)表面に付着した不純物の粉が吹き飛ばされ、回転ブラシ(6)(6)によって海苔(9)の表面が擦られる。海苔(9)の表面をブラシ(6)(6)で擦ることにより第7図に示す如く、前記掻取り装置(2)(3)で掻き取った後も海苔(9)の内部に喰い込んで残存している不純物(91b)を略完全に擦り取ることが出来るのである。」(明細書9頁18行〜11頁5行)

3.対比・判断
本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者の「シート状海苔」、「移行路」、「案内ローラ(41)」、「案内ローラ(4)」、「不純物」は、各々、前者の「乾海苔」、「通過経路」、「搬送用上ローラ」、「搬送用下ローラ」「夾雑物」に相当する。
また、甲第1号証記載の、「異なった周速で回転する一対の掻き取りローラ(21)(22)」も、本件発明の「通過経路を挟んで一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置し」た構成も、いずれも「夾雑物除去手段」に相当するものと認められる。
とすると、本件発明と、甲第1号証に記載された発明とは、「乾海苔の通過経路の上下に搬送用ローラを配置するとともに、前記通過経路に夾雑物除去手段を配置した海苔夾雑物除去装置」である点で一致し、
(1)夾雑物除去手段が、本件発明では、「一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置した」ものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、「異なった周速で回転する一対の掻取りローラ」である点、
(2)搬送用ローラが、本件発明では、ローラ群であって、夾雑物除去手段の乾海苔の出側と入側にそれぞれ搬送用上ローラ及び搬送用下ローラを配置したものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、一対のものであって、夾雑物除去手段の乾海苔の出側に設けられている点、
で相違している。

4.相違点(1)についての判断
甲第1号証には、回転ブラシが、海苔の表面を擦ることにより夾雑物を除去する手段として記載されており、また、回転ブラシは、以下の参考文献1〜8にも示される如く、搬送されるシート状物から不要物を除去するための手段として本願出願前に周知のものである。また、その機能をみた場合、掻取りローラも回転ブラシも被処理物の表面から異物を掻き取る又は擦り取るものである点において変わりはない。
したがって、甲第1号証に記載された発明の「異なった周速で回転する一対の掻取りローラ」を、同じ機能を奏することが周知である回転ブラシに置き換えることに困難性はない。
そして、その際に、シート等の被処理物の搬送に際して、回転ブラシのような力の作用により被処理物が湾曲、変形し、被処理物の確実な搬送に支障を来すおそれがあることは容易に予測し得ることであるから、その作用位置においてシート状物を確実に押さえて湾曲、変形を防止するために、シート状物の搬送のために用いられることが周知であるローラを、回転ブラシの対向位置に設けることは、単なる設計的事項にすぎない。また、参考文献4、5及び8にも、回転ブラシの対向位置にローラを設けることが記載されており、この点は、本願出願前に周知の技術でもある。
さらに、回転ブラシの回転速度を、その目的に適した速度に適宜設定することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。また、不要物除去の観点からは、被処理物の搬送方向と回転ブラシの回転方向が同一の場合には、回転ブラシの回転速度を被処理物の搬送速度、すなわち本件発明の場合は押さえローラの回転速度、よりも高速にすることが望ましいことは当業者にとって自明の事項であって、逆に、回転ブラシの回転速度を被処理物の搬送速度より低速にしたり、同速度にするなどということは、特別な目的がない限り考えがたいことである(なお、この点は参考文献8に記載されている事項でもある。)。
したがって、この相違点については、甲第1号証に記載された事項に基づき当業者が容易に想到することができたことである。

また、甲第1号証に記載された一対の「掻取りローラ」も、本件発明の回転ブラシと押さえローラとの関係と同様に、一方が他方に対して高速で回転するものである。そして回転ブラシと対向するローラとにより、シート状物に付着した不要物を除去することは、参考文献4、5及び8に記載されていることからも明らかなように周知技術であり、また、甲第1号証には、回転ブラシについて「掻取り装置(2)(3)で掻き取った後も海苔(9)の内部に喰い込んで残存している不純物(91b)を略完全に擦り取ることが出来る」と、掻取りローラと同様の機能を奏することが記載されているから、甲第1号証に記載された「異なった周速で回転する一対の掻取りローラ」のうち、一方の高速で回転する方のローラを回転ブラシに置換することは、当業者にとって自明の事項である。そして、このような置換がされた甲第1号証記載の海苔夾雑物除去装置は、その回転ブラシが対向するローラよりも高速で回転するものとなり、相違点(1)については、本件発明と相違しないものとなる。
このような論理付けによっても、この相違点については、甲第1号証に記載された事項に基づき当業者が容易に想到することができたことであるということができる。
参考文献1: 実願昭59-67097号(実開昭60-180244号)のマイクロフィルム(特に、実用新案登録請求の範囲及び第1図の記載を参照)
参考文献2:特開昭60-213979号公報(特に特許請求の範囲第1項及び第1、4図を参照)
参考文献3:特開昭61-103771号公報(特に特許請求の範囲第1項、2頁右上欄3〜20行及び第3図参照)
参考文献4:実願昭59-161170号(実開昭61-76470号)のマイクロフィルム(特に、実用新案登録請求の範囲及び第3図の記載を参照)
参考文献5:特開昭62-266190号公報(特に、2頁右上欄11〜15行、右下欄14行〜3頁左上欄12行及び第1図の記載を参照)
参考文献6:実願昭62-23375号(実開昭63-130188号)のマイクロフィルム(特に、実用新案登録請求の範囲及び第1図の記載を参照)
参考文献7:特開昭64-75085号公報(特に、特許請求の範囲、2頁右上欄14行左下欄1行、右下欄8〜12行及び第1図の記載を参照)
参考文献8:特開平1-229872号公報(特許請求の範囲第1項、4頁左上欄10〜13行、左下欄11〜17行及び第1図の記載を参照)

5.相違点(2)についての判断
搬送用ローラを用いてシート状物を搬送する場合において、
(i)搬送用ローラは、数多く設ければシート状物の搬送がより確実に行われること、
(ii)シート状物に、その湾曲、変形を生じさせる力が作用する部分においては、シート状物を確実に搬送する必要があること、及び
(iii) 回転ブラシのような力の作用により被処理物が湾曲、変形し、被処理物の確実な搬送に支障を来すおそれがあること
は、いずれも自明の事項であるから、シート状物の搬送をより確実に行うために、回転ブラシのシート状物の出側と入側にそれぞれ搬送用ローラを設けることは、単なる設計的事項にすぎない。また、回転ブラシのシート状物の出側と入側にそれぞれ搬送用上ローラ及び搬送用下ローラを配置することは、参考文献2、3、5〜7の記載からも明らかなように周知技術でもあるから、この点は単なる周知技術の付加であるということもできる。
したがって、この相違点は、甲第1号証に記載された事項に基づき当業者が容易に想到することができたことである。

6.総合的判断
本件発明の効果について、被請求人は、本件発明の回転ブラシは、乾海苔の厚さが変動してもブラシの変形で厚さ変動を吸収でき、また、ブラシで乾海苔表面を払拭することで夾雑物を剥離することができ、回転ブラシを搬送ローラで挟んで配置することによりその作用を強めていると主張している(答弁書7.(3)c.d.及びf.)。しかし、当業者であれば、厚さ変動を吸収できる点は、ブラシの性質から容易に予測できることであり、また、回転ブラシの作用が強められることも、回転ブラシの作用位置において押さえローラにより被処理物が確実に押さえられることから、容易に予測しうることである。
また、被請求人は、本件特許は十分に商業的成功を収めているとも主張する(答弁書7.(3)g.)。しかし、商業的成功自体の事実を認めることのできる証拠がないのみならず、仮に商業的成功の事実があったとしても、それが本件発明の構成にのみ基づくものであるとする具体的根拠も不明であるから、被請求人の主張は採用することができない。
このように、本件発明に係る構成は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得るものであり、また、本件発明が甲第1号証の記載からは予期できない顕著な効果を奏するものであるということもできないから、本件発明は、当業者が甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

IV.むすび
以上のとおり、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
海苔夾雑物除去装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】乾海苔の通過経路の上下に搬送用ローラ群を配置するとともに、前記通過経路を挟んで一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置し、前記搬送用ローラ群は前記回転ブラシの乾海苔の出側と入側にそれぞれ搬送用上ローラ及び搬送用下ローラを配置したことを特徴とする海苔夾雑物除去装置。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、乾海苔の表面に付着している蝦類や植物の屑などの夾雑物を除去する装置に関する。
〔従来の技術〕
海苔原藻には、季節によっては蝦類が混入し、これが乾海苔製品の表面に付着することがある。混入するのが蝦類であれば食べられるためまだよいが、混入物には、他に葦の葉や穂が海苔原藻に付着してこれが乾海苔に混入することもある。
〔発明が解決しようとする課題〕
このような夾雑物が入った乾海苔は、製品の価格を決める等級が下がるため、除去したいところであるが、最近の海苔乾燥の自動化で一時間に数千枚も製造される乾海苔を人手で一々チェックしながら除去することは却ってコストが嵩む。したがって、従来は、多少海苔の等級が下がってもそのまま出荷していた。
そこで本発明の解決課題は、これらの夾雑物を乾海苔から自動的かつ連続的に除去することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の海苔夾雑物除去装置は、乾海苔の通過経路の上下に搬送用ローラ群を配置するとともに、前記通過経路を挟んで一方に押さえローラ、他方に同押さえローラよりも高速で回転する回転ブラシを配置し、前記搬送用ローラ群は前記回転ブラシの乾海苔の出側と入側にそれぞれ搬送用上ローラ及び搬送用下ローラをを配置したことを特徴とする。
〔作用〕
本発明においては、搬送用ローラ群の中に乾海苔が通るとき、回転ブラシが乾海苔表面を払拭し、乾海苔に対して結着性の弱い夾雑物が乾海苔より剥離される。このようにして、夾雑物を自動的かつ連続的に除去することができる。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例を参照しながら具体的に説明する。
第1図は本発明に係る海苔夾雑物除去装置の実施例を示す側面図、第2図はその正面図である。図中1,2,3は搬送用上ローラ、4,5,6は搬送用下ローラ、7は上押さえローラ、8は下回転ブラシ、9は下押さえローラ、10は上回転ブラシ、11は取付フレーム、12は搬送用下ローラ及び押さえローラ駆動用モータ、13は下回転ブラシ駆動用モータ、14は上回転ブラシ駆動用モータである。なお、これらの図において、各ローラ等と各モータの伝達系(ノンスリップベルト)の図示を省略している。
各ローラ間の間隔は海苔の長さ(標準的には210mm)の1/3強とし、回転ブラシ8,10に海苔が接触しているときに両側の搬送用ローラが海苔を挟んでいる状態とする。
回転ブラシ8,10又はその対向する押さえローラ7,9は高さを変更できるようにし、ブラシ圧を調節可能とするとともに、夾雑物混入のない海苔原藻から製造した海苔の場合には解放できるようにする。また、回転ブラシ8,10は搬送ローラ及び押さえローラの回転速度に対して1〜2.5倍程度に速度可変とする。搬送用下ローラ4,5,6はローレットを表面に付けて駆動力を大きくするが、搬送用上ローラ1,2,3は、乾海苔にしわや破れが生じないように一体物ではなく第2図に示すように複数のリング状としている。
回転ブラシ8,10のブラシの材質としては、植物や動物繊維を用いると摩耗や折れが生じてその小片が却って夾雑物になるおそれがあるので、ナイロン等の耐摩耗性、耐熱性の合成樹脂製ブラシを使用している。また、ブラシの繊維の一本一本はストレートよりも波付きないし螺旋形として払拭効果を高めることが好適である。
押さえローラ7,9は、回転ブラシ8,10の接触に対して摩擦が小さく、また摩耗も少ないポリアセタール樹脂(商品名デルリン等)ないしはウレタン樹脂等の材質を用いることが好ましい。
以上の構成の海苔夾雑物除去装置の動作について説明する。
各モータ12,13,14を駆動し、搬送用下ローラ4,5,6、押さえローラ7,9を同じ回転速度で回転させ、回転ブラシ8,10をそれと同じ回転方向で速度は速く回転させる。そして第1図において左方向から、搬送ベルトコンベヤ(図示せず)等により乾海苔を一枚ずつ供給すると、乾海苔は各ローラ間に挟まれて、右方向に搬送される。その途中で、まず乾海苔の下面が下回転ブラシ8に接触する。乾海苔の搬送速度よりも回転ブラシ8が速く回転しているため、乾海苔の下面が回転ブラシ8のブラシにより払拭され、表面に付着している夾雑物を除去することができる。ついで乾海苔の上面が上回転ブラシ10に接着し、同様にして乾海苔の上面を払拭し、表面の夾雑物を除去する。このようにして、乾海苔の上下面に付着した夾雑物は除去されて搬出され、次工程に送られる。
〔発明の効果〕
以上に説明したように、本発明によれば、乾海苔の表面に付着している蝦類その他の夾雑物を自動的かつ連続的に除去することが可能となり、海苔製品の等級を数ランク上に上げることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る海苔夾雑物除去装置の実施例を示す側面図、第2図はその正面図である。
1,2,3:搬送用上ローラ
4,5,6:搬送用下ローラ
7:上押さえローラ、8:下回転ブラシ
9:下押さえローラ、10:上回転ブラシ
11:取付フレーム
12:搬送用下ローラ及び押さえローラ駆動用モータ
13:下回転ブラシ駆動用モータ
14:上回転ブラシ駆動用モータ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-03-24 
結審通知日 2005-03-28 
審決日 2005-04-14 
出願番号 特願平2-95260
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A23L)
最終処分 成立  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 河野 直樹
田中 久直
登録日 1995-09-27 
登録番号 特許第1971250号(P1971250)
発明の名称 海苔夾雑物除去装置  
代理人 小堀 益  
代理人 高松 利行  
代理人 小堀 益  
代理人 堤 隆人  
代理人 堤 隆人  

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