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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1135072
審判番号 不服2003-17796  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-12 
確定日 2006-04-14 
事件の表示 平成6年特許願第4733号「棒状体の継手」拒絶査定不服審判事件〔平成7年8月11日出願公開、特開平7-208416〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【一】手続の経緯
本願は、平成6年1月20日の出願であって、平成15年8月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月10日付けで特許法(平成6年法律第116号による改正前の特許法。以下、同じ。)第17条の2第1項第5号に掲げる場合に該当する明細書についての手続補正がなされたものである。

【二】平成15年10月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月10日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲については、補正前の請求項1の記載、
「【請求項1】 結合部の断面形状が四角形の二つの棒状体を、前記結合部の延頂点が互いにある角度をなして交わるように継ぐ棒状体の継手において、
前記二つの棒状体の結合部それぞれを挿入する二つの受け口それぞれの断面形状を前記棒状体結合部それぞれの断面形状に合致する四角形とし、CFRPの積層体で一体化成形した構造を有することを特徴とする棒状体の継手。」
を、
「【請求項1】 結合部の断面形状が四角形の二つの棒状体を、前記結合部の延長点が互いにある角度をなして交わるように継ぐ棒状体の継手において、
前記二つの棒状体の結合部それぞれを挿入する二つの受け口それぞれの断面形状を前記棒状体結合部それぞれの断面形状に合致する四角形とし、金属製より軽量でかつ同等の荷重を支持するようにCFRPの積層体で一体化成形した構造を有することを特徴とする棒状体の継手。」
と補正するものである。
(下線は、当審において、補正箇所を示すために付した。)

2.目的等の適否
上記補正は、同補正前の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である「CFRPの積層体で一体化成形した構造」を「金属製より軽量でかつ同等の荷重を支持するようにCFRPの積層体で一体化成形した構造」と限定するものであるから、特許法第17条の2第3項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認める。
そして、上記補正は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものと認める。

3.独立特許要件の判断
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項の規定において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「特開平1-250549号公報」(以下、「引用刊行物」という。)には、
〔あ〕「この発明は、例えば人工衛星及び宇宙基地等における構造物を支持する骨組構造体に係り、特にそのCFRP等の先端複合材料ACM(Advanced Composite Materials)製の棒あるいはパイプ状の骨組構造部材をトラス構造等の骨組構造に結合する骨組構造部材接続継手に関する。」(1頁左下欄15行〜右下欄1行参照)
〔い〕「すなわち、第1図において、A部は、例えば、第2図に示すように、略矩形状の第1乃至第3のFRPパイプ11〜13がFRP等の先端複合材料で形成した結合用継手20を介してトラス構造に結合される。」(2頁左下欄12〜16行参照)
〔う〕「この継手20はFRP等の先端複合材料のプリプレグを多層積層して、例えば、オートクレーブ成形またはプレス成形等の加熱成形で形成されるもので、その略中央には取付け穴21aを有したI/F (取付け)用の取付け部21が図示しない支持体に対応して形成される。」(2頁左下欄16行〜右下欄1行参照)
〔え〕「そして、この取付け部21の周囲部には、略矩形状の第1乃至第3の結合部22〜24がトラス構造に対応して放射状に配置されており、その外観が略多角形状に形成されている。」(2頁右下欄2〜5行参照)
〔お〕「上記継手21を用いて第1乃至第3のFRPパイプ11〜13をトラス構造に組立てる場合は、先ず、継手20の取付け部21を上記支持体(図示せず)に取着した後、継手20の第1乃至第3の結合部22〜24に対して第1乃至第3のFRPパイプ11〜13の被結合部を形成する各先端部がそれぞれ挿入されて接着される。これにより、第1乃至第3のFRPパイプ11〜13は継手20と協働して所望の強度を有してトラス構造に結合される。」(2頁右下欄6〜15行参照)
〔か〕「先端複合材料のみを用い所望の強度を有する支持構造体100を形成することができる。これによれば、従来のように、金属材料性の継手を使用することなく、トラス構造の組立てが可能となることにより、軽量化が図れ、しかも、継手の製作の簡略化が図れる。」(3頁左上欄2〜7行参照)
等の記載が認められる。
そして、第2図(a)(b)を参照すると、第1乃至第3のFRPパイプ11〜13は、被結合部を形成する各先端部が他の部分と異なる形状に形成されているとは認められず、前記被結合部も略矩形状と認められる。
また、上記〔か〕の記載から、継手20は金属材料製(〔か〕の「金属材料性」は「金属材料製」の誤記と認められる。)の継手より軽量化されていると認められる。
したがって、引用刊行物には、上記記載と共に第2図(a)(b)を参照すると、
“被結合部の断面形状が略矩形状の第1乃至第3のFRPパイプ11〜13を、前記被結合部の延長点が互いにある角度をなして交わるように継ぐFRPパイプの継手20において、
前記第1乃至第3のFRPパイプ11〜13の被結合部それぞれを挿入する三つの結合部22〜24それぞれの断面形状を略矩形状とし、金属製より軽量でFRP等の先端複合材料のプリプレグを多層積層して一体化成形した構造を有するFRPパイプの継手”
の発明が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
(2-1)上記引用刊行物に記載された発明における「FRPパイプ」も「棒状体」であって、「FRPパイプの継手」は「棒状体の継手」と認められる。そこで、本願補正発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「被結合部」は前記「結合部」に相当し、後者の「結合部」は前者の「受け口」に相当し、また、後者の「FRP等の先端複合材料のプリプレグを多層積層して一体化成形した構造」と前者の「CFRPの積層体で一体化成形した構造」は、いずれも「FRPの積層体で一体化成形した構造」であるから、両者は、
「結合部の断面形状が四角形の棒状体を、前記結合部の延長点が互いにある角度をなして交わるように継ぐ棒状体の継手において、
前記棒状体の結合部それぞれを挿入する受け口それぞれの断面形状を四角形とし、金属製より軽量のFRPの積層体で一体化成形した構造を有する棒状体の継手」
で一致し、次の点で相違すると認められる。
[相違点A]
本願補正発明は、「二つ」の棒状体を継ぐ継手であって、上記受け口が「二つ」であるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明は、三つの棒状体を継ぐ継手であり、上記受け口が三つである点
[相違点B]
本願補正発明は、上記受け口それぞれの断面形状を「棒状体結合部それぞれの断面形状に合致する四角形」としたのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、上記受け口それぞれの断面形状を、四角形とするものの、「棒状体結合部それぞれの断面形状に合致する四角形」としたものでない点
[相違点C]
本願補正発明は、「金属製」と「同等の荷重を支持するように」したのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、「金属製」と「同等の荷重を支持するように」したものか明確でない点
[相違点D]
上記FRPの積層体が、本願補正発明では「CFRPの積層体」であるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、FRPの繊維材料が「C」か他のものか不明である点

(2-2)相違点Aについて
二つの棒状体を継手を介して接続することにより構造体の部分を構成することは、例示するまでもなく、本件出願前に周知慣用の事項であるから、上記引用刊行物に記載された発明の継手を、上記受け口を「二つ」として、「二つ」の棒状体を継ぐ継手に構成を変更することは当業者が容易に想到し得ることである。

(2-3)相違点Bについて
棒状体を継ぐ継手において、その受け口の断面形状を前記棒状体の結合部の断面形状に合致する四角形とすることは、本件出願前に周知の事項と認められる(必要あれば、実願昭62-40196号(実開昭63-147397号)のマイクロフィルム(第5図,第6図)、実願昭63-70521号(実開平1-173509号)のマイクロフィルム、実願平1-52187号(実開平2-143509号)のマイクロフィルム、等参照)から、上記引用刊行物に記載された発明の継手において、受け口それぞれの断面形状を「棒状体結合部それぞれの断面形状に合致する四角形」とすることは、本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

(2-4)相違点Cについて
上記引用刊行物には、上記摘記事項〔か〕のとおり「先端複合材料のみを用い所望の強度を有する支持構造体100を形成することができる。これによれば、従来のように、金属材料性の継手を使用することなく、トラス構造の組立てが可能となることにより、軽量化が図れ、」とあり、当該記載から、上記引用刊行物に記載された発明の継手は、金属材料製(摘記事項〔か〕の「金属材料性」は「金属材料製」の誤記と認められる。)の継手と同等の強度を有し、軽量化された継手とすることができるものと予測できる。
したがって、本願補正発明の「金属製」と「同等の荷重を支持するように」した点は、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得た事項とするのが相当である。

(2-5)相違点Dについて
構造材としてのFRPの繊維材料として炭素繊維を使用することは、例示するまでもなく本件出願前に周知慣用の事項と認められ、また、上記引用刊行物には、上記摘記事項〔あ〕の「CFRP等の先端複合材料ACM(Advanced Composite Materials)製の棒あるいはパイプ状の骨組構造部材をトラス構造等の骨組構造に結合する骨組構造部材接続継手に関する。」のとおり、棒状体を「CFRP」製とすることが記載されているから、棒状体を継ぐ継手を成形するFRPの繊維材料として炭素(「C」)繊維を使用することは、上記周知慣用の事項或いは上記引用刊行物に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

(3)このように、本願補正発明は、その発明の構成に欠くことができない事項が、上記引用刊行物に記載された事項及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、作用効果も、上記引用刊行物に記載された事項及び本件出願前周知の事項から予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
したがって、本願補正発明は、上記引用刊行物に記載された発明及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定において準用する同法第126条第3項の規定に適合しないものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【三】本願発明について
1.本願発明
平成15年10月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年2月18日付け及び平成14年11月1日付けの各手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1の記載のうち「延頂点」を「延長点」の誤記と認め、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 結合部の断面形状が四角形の二つの棒状体を、前記結合部の延長点が互いにある角度をなして交わるように継ぐ棒状体の継手において、
前記二つの棒状体の結合部それぞれを挿入する二つの受け口それぞれの断面形状を前記棒状体結合部それぞれの断面形状に合致する四角形とし、CFRPの積層体で一体化成形した構造を有することを特徴とする棒状体の継手。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用刊行物「特開平1-250549号公報」には、前記「【二】平成15年10月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件の判断」「(1)引用例」に示したとおりの発明が記載されているものと認める。

3.対比・判断
本願発明は、前記「【二】平成15年10月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件の判断」「(2)対比・判断」で検討した「本願補正発明」の構成に欠くことができない事項の「金属製より軽量でかつ同等の荷重を支持するようにCFRPの積層体で一体化成形した構造」が「CFRPの積層体で一体化成形した構造」となったものである。
このように、本願発明は、前記「本願補正発明」の構成に欠くことができない事項の一部を発明の構成に欠くことができない事項としないものであり、前記「本願補正発明」の構成に欠くことができない事項以外の事項を発明の構成に欠くことができない事項とするものではない。そして、「本願補正発明」が先に示したとおり上記引用刊行物に記載された発明及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、上記引用刊行物に記載された発明及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用刊行物に記載された発明及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-13 
結審通知日 2006-02-15 
審決日 2006-02-28 
出願番号 特願平6-4733
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16B)
P 1 8・ 575- Z (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤村 聖子  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 町田 隆志
藤村 泰智
発明の名称 棒状体の継手  
代理人 池田 憲保  
代理人 池田 憲保  

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