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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1135285
審判番号 不服2004-1193  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-15 
確定日 2006-04-21 
事件の表示 平成 6年特許願第340585号「フォーカス制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月16日出願公開、特開平 8-185636〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成6年12月29日に出願されたものである。
そして、平成14年6月24日付け手続補正は特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない旨の理由で平成15年6月26日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、この通知に応答しての平成15年8月29日付け手続補正を補正却下の決定処分とし、及び、平成15年6月26日付け拒絶理由の通知内容により特許を受けることができない旨の拒絶査定がなされた。
その後、平成16年1月15日付けで、特許法第121条第1項に基づき審判請求がなされるとともに、同年2月16日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。


2.平成16年2月16日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年2月16日付けの本件補正を却下する。

〔理由〕
(1)補正内容
上記補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明に関してのものであって、特許請求の範囲においては、本件補正前、
「【請求項1】複数の記録層が積層されてなる光ディスクの、フォーカス合わせを行う所望の記録層を指定するための記録層指定手段と、
合焦点を示すフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー信号検出手段と、
上記記録層指定手段により所望の記録層が指定されると、上記フォーカスエラー信号検出手段からのフォーカスエラー信号に基づいて、指定された記録層にフォーカス合わせを行うフォーカス合わせ制御手段と、
上記フォーカスエラー信号検出手段からのフォーカスエラー信号の零レベル点における傾きに基づいて対物レンズの移動方向を検出する対物レンズ移動方向検出手段と、
上記フォーカス合わせ制御手段が指定された記録層にフォーカス合わせを行う段階で、上記対物レンズ移動方向検出手段によって検出された上記対物レンズの移動方向に応じて、少なくとも上記記録層指定手段で指定された記録層に対応するフォーカスエラー信号の最大値及び最小値をそれぞれ検出する最大値最小値検出手段と、
上記最大値最小値検出手段によって検出された最大値データ及び最小値データを記憶する記憶手段と、
上記フォーカス合わせが終了すると、上記記憶手段から最大値データ及び最小値データを読み出し、この最大値データ及び最小値データに基づいて、外部から供給されるフォーカスエラー信号の信号レベルを調整するレベル調整手段とを有するフォーカス制御装置。
【請求項2】上記レベル調整手段は、上記記憶手段から読み出した最大値データ及び最小値データの差分を検出する差分検出手段と、
上記差分検出手段からの差分検出出力で、上記光ディスクの再生に関する信号を除算処理することにより、信号レベルの調整を行う除算手段とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のフォーカス制御装置。」
としていたものを、補正後、
「【請求項1】複数の記録層が積層されてなる光ディスクの、フォーカス合わせを行う所望の記録層を指定するための記録層指定手段と、
合焦点を示すフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー信号検出手段と、
上記記録層指定手段により所望の記録層が指定されると、上記フォーカスエラー信号検出手段からのフォーカスエラー信号に基づいて、指定された記録層にフォーカス合わせを行うフォーカス合わせ制御手段と、
上記指定された記録層にフォーカスを合わせる際に対物レンズを移動するフォーカス移動信号に基づく移動方向検出信号の極性に基づいて対物レンズの移動方向を検出する対物レンズ移動方向検出手段と、
上記フォーカス合わせ制御手段が指定された記録層にフォーカス合わせを行う段階で、上記対物レンズ移動方向検出手段によって検出された上記対物レンズの移動方向に応じて、少なくとも上記記録層指定手段で指定された記録層に対応するフォーカスエラー信号の最大値及び最小値をそれぞれ検出する最大値最小値検出手段と、
上記最大値最小値検出手段によって検出された最大値データ及び最小値データを記憶する記憶手段と、
上記フォーカス合わせが終了すると、上記記憶手段から最大値データ及び最小値データを読み出し、この最大値データ及び最小値データに基づいて、外部から供給されるフォーカスエラー信号の信号レベルを調整するレベル調整手段とを有するフォーカス制御装置。
【請求項2】上記レベル調整手段は、上記記憶手段から読み出した最大値データ及び最小値データの差分を検出する差分検出手段と、
上記差分検出手段からの差分検出出力で、上記光ディスクの再生に関する信号を除算処理することにより、信号レベルの調整を行う除算手段とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のフォーカス制御装置。」
とするものである(なお、上記下線部分を参照のこと。)。また、本件補正での発明の詳細な説明は、特許請求の範囲の補正に対応してのものである。

(2)補正の適否
(2-1)本件補正において、請求項1に係る発明の「上記指定された記録層にフォーカスを合わせる際に対物レンズを移動するフォーカス移動信号に基づく移動方向検出信号の極性に基づいて対物レンズの移動方向を検出する」であるが、これは本件補正前においては「上記フォーカスエラー信号検出手段からのフォーカスエラー信号の零レベル点における傾きに基づいて対物レンズの移動方向を検出する」というものである。
ところで、上記本件補正は審判請求時の補正であるから最後の拒絶理由通知に対する補正の扱いになる。しかしながら、上記本件補正の内容は、
(a)『請求項の削除について』には、該当しない。
(b)『請求項の限定的減縮について』には、当該構成要件の目的とするものは対物レンズ移動方向の検出手段であるが、本件補正前の「フォーカスエラー信号検出手段からのフォーカスエラー信号の零レベル点における傾きに基づいて」と、本件補正での「記録層にフォーカスを合わせる際に対物レンズを移動するフォーカス移動信号に基づく移動方向検出信号の極性に基づいて」とは、『零レベル』の事項と『極性に基づく』の事項で、その手段に相違があるもので減縮というものではない。
(c)『誤記の訂正について』には、審査基準では「本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から明らかな字句・語句に正す」(審査基準)程度の軽微な補正の範囲内のものであって、上記(b)で指摘している事項からも明らかなように、本件補正は誤記の訂正の範囲のものではない。
(d)『明瞭でない記載の釈明について』には、審査基準では「請求項の記載そのものが、文理上、意味が不明瞭であること、請求項自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じていること、又は、請求項自体の記載は明瞭であるが請求項に記載した発明が技術的に正確に特定されず不明瞭であること等をいう」としており、本件補正前の記載事項は、文理上意味する内容が明瞭であるのだから、上記(b)で指摘している事項からも明らかなように、本件補正は釈明の範囲のものではない。

(2-2)結局、本件補正は、特許法17条の2第3項第1〜4号に規定された目的のいずれにも該当しないことは明らかである。

(3)補正についての結び
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.平成14年6月24日付け手続補正
(3-1)平成16年2月16日付け手続補正は、上記のとおり却下された。次に、平成14年6月24日付け手続補正に係る明細書全文補正(以下「全文補正書」という。)について以下検討する。
上記、全文補正書における、本願の特許請求の範囲の【請求項1】に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】複数の記録層が積層されてなる光ディスクの、フォーカス合わせを行う所望の記録層を指定するための記録層指定手段と、
合焦点を示すフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー信号検出手段と、
上記記録層指定手段により所望の記録層が指定されると、上記フォーカスエラー信号検出手段からのフォーカスエラー信号に基づいて、指定された記録層にフォーカス合わせを行うフォーカス合わせ制御手段と、
上記フォーカスエラー信号検出手段からのフォーカスエラー信号の零レベル点における傾きに基づいて対物レンズの移動方向を検出する対物レンズ移動方向検出手段と、
上記フォーカス合わせ制御手段が指定された記録層にフォーカス合わせを行う段階で、上記対物レンズ移動方向検出手段によって検出された上記対物レンズの移動方向に応じて、少なくとも上記記録層指定手段で指定された記録層に対応するフォーカスエラー信号の最大値及び最小値をそれぞれ検出する最大値最小値検出手段と、
上記最大値最小値検出手段によって検出された最大値データ及び最小値データを記憶する記憶手段と、
上記フォーカス合わせが終了すると、上記記憶手段から最大値データ及び最小値データを読み出し、この最大値データ及び最小値データに基づいて、外部から供給されるフォーカスエラー信号の信号レベルを調整するレベル調整手段とを有するフォーカス制御装置。」
また、全文補正書の【0013】【課題を解決するための手段】にも、概ね、上記【請求項1】と同じ記載事項がある。

(3-2)全文補正書の補正適否の判断
上記、全文補正書においての「上記フォーカスエラー信号検出手段からのフォーカスエラー信号の零レベル点における傾きに基づいて対物レンズの移動方向を検出する対物レンズ移動方向検出手段」(下線部分)であるが、これは対物レンズ移動方向検出手段に関する構成事項のものである。
しかしながら、当該構成事項は当初明細書等に明示的に記載されたものでも、当初明細書の記載から自明な事項のものでもなく、また、当業者において出願時の技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であるとの理解ができるものでもないから、新規事項の追加にあたる。

したがって、平成14年6月24日付け手続補正に係る明細書全文補正は、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件に違反するものである。

なお、請求人は請求理由で、「(2)補正の根拠 ・・・ 請求項1の記載の不明瞭な点を明確にし、さらには、請求項1の記載の誤記を解消するものである。すなわち、請求項1に係る発明において、「対物レンズの移動方向の検出」は、フォーカス合わせを行う「指定された記録層にフォーカスを合わせる際に対物レンズを移動するフォーカス移動信号に基づく移動方向検出信号の極性に基づいて」行われる点を明確にするものである。
この補正は、平成14年6月24日付けの手続補正書により補正した請求項1に係る発明の対物レンズの移動方向の検出の構成を本願明細書に記載された事項との整合を図るようにしたものである。
すなわち、対物レンズの移動方向の検出の構成を、本願の出願当初の明細書の段落〔0060〕〜〔0063〕に記載する構成との整合を図るものである。
よって、上記請求項1の補正は、不明瞭な記載の釈明に相当し、若しくは発明の詳細な説明に記載される構成との整合を図る誤記の訂正に係るものであり、・・・。」旨を主張する。
しかしながら、新規事項と認定している上記の構成事項は、文理上、明確に理解できるものであって不明瞭ではないし、また、誤記と判断するには段落【0013】【課題を解決するための手段】にも同じ記載があり、単純に誤記であるとの主張を採用できない。また、補正内容は明瞭でない記載事項を指摘しての応答でないことは明らかである。


4.むすび
以上のとおりであって、本願は、平成14年6月24日付け手続補正が特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであるから、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-02 
結審通知日 2006-02-07 
審決日 2006-03-03 
出願番号 特願平6-340585
審決分類 P 1 8・ 55- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 潤  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 中村 豊
山澤 宏
発明の名称 フォーカス制御装置  
代理人 小池 晃  
代理人 田村 榮一  
代理人 伊賀 誠司  

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