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審決分類 審判 全部無効 一時不再理  B65B
管理番号 1135397
審判番号 無効2004-80180  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-06-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-09 
確定日 2006-04-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第813512号発明「包装」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
特許第813512号は、昭和40年8月13日の特許出願に係り、昭和50年6月25日に出願公告された後、昭和51年5月14日にその設定登録なされ、昭和60年8月13日に存続期間が満了している。

2.本件無効審判の経緯
本件に先立ち、平成16年1月13日付けで、本件特許について、審判請求人鈴木健夫より、特許無効審判(無効2004-35015号、以下、「先の無効審判」という。)が請求され、平成16年7月2日付けで審判請求は成り立たないとの審決がなされ、この審決は確定している。

本件は、その後、審判請求人鈴木健夫より、特許無効審判の請求(平成16年10月9日差し出し)がなされたものであり、被請求人は、答弁をしていない。

3.審判請求の理由の概要
請求人は、
甲第1号証として、
特公昭50-17915号公報、(本件明細書の記載を立証するために、先の無効審判において提出された甲第1号証)
甲第2号証として、
実公昭55-49521号公報(無定形では包装を行うことができないことを立証するために、先の無効審判において提出された甲第2号証)
甲第3号証として、
鈴木健夫宛の「相談について(回答)」と表題される書面(大阪府立産業技術総合研究所作成)の書面及び「相談内容」と表題される書面(鈴木健夫作成)、(本件発明を実施することができないことを立証するために、先の無効審判において提出された甲第3号証)
甲第4号証として、
「改訂新版 プラスチックハンドブック」(株式会社 朝倉書店)(樹脂メーカーが技術を公開していないので、無定形ポリ塩化ビニリデンフィルムを得る方法技術常識ではないことを立証するために、先の無効審判において提出された甲第4号証)
甲第5号証として、
「化学増刊9 高分子の化学工業」(高分子化学シリーズ3の3)(先の無効審判の甲第4号証と同趣旨で、先の無効審判において提出された甲第5号証)
甲第6号証として、「プラスチックス包装材料要覧 改訂増補版」(先の無効審判の甲第4号証と同趣旨で、先の無効審判において提出された甲第6号証)
を提出するとともに、加えて、
甲第7号証として、
平成13年(行ケ)第412号審決取消請求事件判決、
甲第8号証として、
オーストラリア国特許第245774号明細書、及び、
甲第9号証として、
仏国特許第850045号明細書
を提出して、先の無効審判の審決の理由に納得できないとして、概略以下の旨主張している。
(1) 先の無効審判の審決は、「常温叉は加熱状態の何れかに於いて適当に成形可能であつて底部材の密封面積と完全に馴染んで皺や折目のない滑らかな密封を作るフイルムであれば本件発明が成立することは、当業者が理解し得る事項であり、そのようなフイルムとしてポリ塩化ビニル及びポリスチレンフイルムが、特段の例示を待つまでもなく、本件特許に係る出願の出願時において周知であることは、当業者にとって明らかである。」と判断していることに対して、甲第7号証に述べられるように、本件明細書(特公昭50-17915号公報)に記載される考案として、過冷無定形状態のポリ塩化ビニリデンフィルムを利用した考案を別件において先行技術として認定している。したがって、本件発明は、本件発明を過冷無定形状態のポリ塩化ビニリデンフィルムを利用した発明と認定しすべきである。
甲第8,9号証の包装形成抽気技法によって、ポリ塩化ビニル及びポリスチレンフイルム等の加熱を行うことができないから、過冷無定形状態のポリ塩化ビニリデンフィルム以外は使用できず、本件発明は、過冷無定形状態のポリ塩化ビニリデンフィルムを利用した発明と認定すべきである。
(2) 先の無効審判の審決は、ポリ塩化ビニリデンフィルムの製造方法は周知であると認定しているが、これは誤りである。
(3) 先の無効審判の審決は、ポリ塩化ビニリデンフィルムの製造に必要な資材の調達の可能性は、その発明の完成と直接関係しないと判断しているが、当事者が使用できない樹脂を用いる発明について特許を与えており、違法であり、審決はこの判断を逃げている。
(4)先の無効審判の審決は、「無定形状態のポリ塩化ビニリデンフイルムについて、無定形状態にあり自己粘着性のあるフイルムの取り扱いが困難である旨の主張は、そのようなフイルムの性質により、ブロッキングの発生等の問題があり、その解決が本件特許とは別異の発明を構成することがあるとしても、その解決自体本件発明の出願時において多くの提案がなされる程度の事項であり(特公昭30-2388号公報、特公昭34-3236号公報)、そのことをもって、本件発明が未完成とされるものではない。」と判断しているが、例えば、甲第8,9号証の装置を使用する場合包装を行えなくなるので、本件発明が未完成とされるものではないなどと、軽く考えることはできず、審決の判断は誤っている。

4.先の無効審判概要
まず、本件無効審判の理由を検討する前に、先の無効審判において請求された無効事由を構成する事実及び証拠について検討する。

4-1 審判請求の理由概要
先の無効審判は、特公昭50-17915号公報(本件の甲第1号証)の第2欄第13〜33行に記載されるように、本件発明は、ポリ塩化ビニリデンフィルムの過冷無定形状態を利用するものであるとし、過冷無定形状態をどのようにして得るのか不明であり、そのようなフィルムの製造方法が本件明細書に記載されないので実施をすることができないとし、加えて、実公昭55-49521号公報(本件甲第2号証)を引用していて、無定形であれば包装に用いることが不可能であるとするとともに、使用する樹脂が販売されていないので実施不可能であり、これら各理由により、本件発明は産業上利用することができる発明に該当しない旨主張し、さらに、本件明細書の発明の詳細な説明に過冷無定形状態のポリ塩化ビニリデンが縷々記載されるのに、特許請求の範囲の記載に 過冷無定形状態のポリ塩化ビニリデンが記載されていないことは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載が一致せず、明細書の記載が特許法第36条第4項第5項に規定する要件を満たしていないとするものである。

4-2 先の無効審判審決概要
これに対して、審決は、本件明細書の特許請求の範囲の記載を、それ自身の記載においては、不明瞭とする特段の事情はないので、本件特許第813512号に係る発明を特許請求の範囲に記載された「包装」に要旨があるものと認定し、請求人が指摘する、「ポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態」を必須の構成とするものではないと認定している。
同認定に基づいて、本件発明は、ポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態における性質を利用するものであるとする、請求人の主張を採用できないとし、発明の詳細な説明に記載されるポリ塩化ビニリデンフイルムに係る記載が例え不明瞭であるとしても、直ちに、本件発明を容易に実施することができる程度に、発明の詳細な説明に発明が記載されていないとすることはできないと判断し、さらに、本件特許請求の範囲に記載された発明について、発明の詳細な説明の記載を検討し、本件明細書及び本件図面には、2つの実施例に基づいて、特許請求の範囲に記載された「可撓性のある材料から形成され且つ実質的に水平に延在する中心部を有する比較的堅い底部材と、この底部材の前記中心部に載置された製品と、この製品を覆いかつ周辺部が前記底部材に封着された可撓性のフイルムとを組み合わせてなる包装において、前記底部材(11又は20 )は周縁に連続した中高のリム( 15又は24)を有し、該リムは前記製品( 12又は21 )及び前記中心部(14又は23 )のすぐ外方に配設されており、また、該リムは、周縁に連続しかつ外方かつ下方に傾斜して前記中心部( 14又は23 )よりも下方へ延びているフランジ部(16又は25)を有し、前記フイルム(13又は22)は前記リムの上向き内側面、頂部並びに下向き外側面にわたつて該リムと係合しかつ前記フランジに封着されていることを特徴とする包装」の発明の構成について、「可撓性のある材料から形成され・・比較的堅い底部材」、「製品」、「可撓性のフイルム」、「リム」、「フランジ」及び「封着」の形状、構造、及び、配置が当業者にとって、反復して実施可能な形状、構造、及び、配置として記載されるとともに、このように特定されるものにより、明細書に記載される目的を達成できるのであるから、本件特許請求の範囲に記載された発明を単なる希望的事項の羅列とすることはできず、未完成の発明とすることはできないと判断し、本件明細書の発明の詳細な説明に、本件特許請求の範囲に記載された発明の目的、構成、効果が記載されないとすることもできず、特許請求の範囲にポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態における性質を利用するものが記載されないことをもって、特許請求の範囲に、本件発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないとすることはできないと判断している。

さらに、審決は、「ポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態」なる記載が、包装の形状・構造に係る本件発明を未完成とするか、または、明細書の記載を不備とするかを検討し、本件発明は、ポリ塩化ビニリデンフイルムの使用に何等限定されるものではなく、常温叉は加熱状態の何れかに於いて適当に成形可能であつて底部材の密封面積と完全に馴染んで皺や折目のない滑らかな密封を作るフイルムであれば本件発明が成立することは、当業者が理解し得る事項であり、そのようなフイルムとしてポリ塩化ビニル及びポリスチレンフイルムが、特段の例示を待つまでもなく、本件特許に係る出願の出願時において周知であることは、当業者にとって明らかであるから、「ポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態」なる記載の存在によっても、同記載から直ちに、「常温叉は加熱状態の何れかに於いて適当に成形可能であつて底部材の密封面積と完全に馴染んで皺や折目のない滑らかな密封を作るフイルム」を当業者が実施不能なものとすることはできず、本件発明が未完成とされるものではなく、明細書の記載を不備とされるものでもないと判断することにより、ポリ塩化ビニリデンフイルムに係る記載を論拠とする請求人の主張は採用できないとしている。

付加的に審決は、本件特許請求の範囲に記載された発明と直ちに関係する事項ではないが、本件明細書の「ポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態」なる記載に関連して、本件特許の出願時点における技術水準について検討すると、本件発明の出願時において、過冷無定形状態のポリ塩化ビニリデンフイルムの製造方法、及び、無定形状態のポリ塩化ビニリデンが時間の経過と共に結晶化することは周知である(参考例 特公昭28-6192号公報、特公昭27-2793号公報、特公昭32-4883号公報)と判断し、加えて、無定形状態のポリ塩化ビニリデンフイルムの製造に必要な資材等の調達の可能性に係る主張は、その発明の完成と直接関係する事項ではなく、無定形状態のポリ塩化ビニリデンフイルムについて、無定形状態にあり自己粘着性のあるフイルムの取り扱いが困難である旨の主張は、そのようなフイルムの性質により、ブロッキングの発生等の問題があり、その解決が本件特許とは別異の発明を構成することがあるとしても、その解決自体本件発明の出願時において多くの提案がなされる程度の事項であり(特公昭30-2388号公報、特公昭34-3236号公報)、そのことをもって、本件発明が未完成とされるものではないと判断している。
審決は、最後に、大阪府立産業技術総合研究所が過冷無定形状態の塩化ビニリデンフィルムの作成を、自身の所有する装置では製造することができないとしているとして後日提出された、鈴木健夫宛の「相談について(回答)」と表題される書面(大阪府立産業技術総合研究所作成)の書面及び「相談内容」と表題される書面(鈴木健夫作成)、(本件の甲第3号証)について、それが明細書の記載の不備、または、特許法にいう発明の完成について述べるものではないとし、同じく後日提出された「改訂新版 プラスチックハンドブック」(株式会社 朝倉書店)(本件の甲第4号証)、「化学増刊9 高分子の化学工業」(本件の甲第5号証)及びプラスチックス包装材料要覧 改訂増補版(本件の甲第6号証)について、それらに基づく主張は、「ポリ塩化ビニリデン」に係る主張であり、本件特許請求の範囲に記載された発明の未完成と直ちに関係するものではないと判断している。

5.本件についての当審の判断
先の無効審判の審決は、本件において請求人が指摘するとおりの判断を行っている。
これら審決の判断に対する不服は、審決取消訴訟として争うべきものであり、本件審判請求の理由として、先の無効審判において請求された無効原因と別異の事実を構成するものではない。
さらに、本件審判請求の理由は、先の無効審判と同じく特許第813512号に係る発明を未完成であるとして、特許法第29条柱書きにいう「産業上利用することができる発明」に該当しないからその特許を無効とすべき旨主張するものである。
したがって、本件無効審判と、先の無効審判とは同一の事実に基づくものである。
本件無効審判において、先の無効審判において提出された証拠に加えて、新たに提出された甲第7〜9号証が特許法第167条に規定される同一の証拠ではなく、新たな証拠となりえるかをまず検討する。
まず、甲第7号証について検討すると、明細書の記載、明細書に記載される発明を直接立証する証拠は、その明細書(甲第1号証の公告公報)であり、先の無効審判が本件明細書の記載に基づいて、本件発明の認定を行い、明細書の記載の是非、発明の完成を判断したことものであるのに対して、甲第7号証は、先行技術として把握可能な発明の判断の一例を立証するものであるから、特許法第167条にいう同一の証拠から同一の事実を検討するにあたり、間接的な事実を証明する証拠の追加であり、同条にいう新たな証拠ではない。
次に、甲第8,9号証について検討すると、先の審決は、明細書の記載に基づいて、本件発明の要旨は、特許請求の範囲に記載された「包装」であると認定し、「可撓性のある材料から形成され・・比較的堅い底部材」、「製品」、「可撓性のフイルム」、「リム」、「フランジ」及び「封着」の形状、構造、及び、配置が当業者にとって、反復して実施可能な形状、構造、及び、配置として記載されると共に、このように特定されるものにより、明細書に目的を達成できるのであるから、本件特許請求の範囲に記載された発明を単なる希望的事項の羅列とすることはできず、未完成の発明とすることはできないと判断し、本件明細書の発明の詳細な説明に、本件特許請求の範囲に記載された発明の目的、構成、効果が記載されないとすることもできず、特許請求の範囲にポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態における性質を利用するものが記載されないことをもって、特許請求の範囲に、本件発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないとすることはできないと判断を行っている。
その上で、付加的に審決は、「ポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態」なる記載が、包装の形状・構造に係る本件発明を未完成とするか、または、明細書の記載を不備とするかを検討し、本件発明は、ポリ塩化ビニリデンフイルムの使用に何等限定されるものではなく、常温叉は加熱状態の何れかに於いて適当に成形可能であつて底部材の密封面積と完全に馴染んで皺や折目のない滑らかな密封を作るフイルムであれば本件発明が成立することは、当業者が理解し得る事項であり、そのようなフイルムとしてポリ塩化ビニル及びポリスチレンフイルムが、特段の例示を待つまでもなく、本件特許に係る出願の出願時において周知であると当該技術分野における技術水準を判断し、「ポリ塩化ビニリデンフイルムの過冷無定形状態」なる記載の存在によっても、同記載から直ちに、「常温叉は加熱状態の何れかに於いて適当に成形可能であつて底部材の密封面積と完全に馴染んで皺や折目のない滑らかな密封を作るフイルム」を当業者が実施不能なものとすることはできず、本件発明が未完成とされるものではなく、明細書の記載を不備とされるものでもないと判断した点、及び、更に加えて、「無定形状態のポリ塩化ビニリデンフイルムについて、無定形状態にあり自己粘着性のあるフイルムの取り扱いが困難である旨の主張は、そのようなフイルムの性質により、ブロッキングの発生等の問題があり、その解決が本件特許とは別異の発明を構成することがあるとしても、その解決自体本件発明の出願時において多くの提案がなされる程度の事項であり(特公昭30-2388号公報、特公昭34-3236号公報)、そのことをもって、本件発明が未完成とされるものではない。」と当該技術分野における技術水準を判断した点の両点を争うための事実を立証するものである。しかしながら、明細書の記載、明細書に記載される発明を直接立証する証拠は、その明細書であり、先の無効審判が本件明細書の記載に基づいて、本件発明の認定を行い、明細書の記載の是非、発明の完成を判断している。これに対して、甲第8,9号証は、甲第1号証に示される本件明細書の記載に何らの変更をなすものではなく、審決が記載した付加的な事項に対して、審決の技術水準に係る判断を争うためのものであり、これらは、審決の誤りを立証するためのものとなりえることがあるとしても、本件特許を無効とすることを請求する審判において、特許法第167条にいう証拠について、新たな証拠を追加するものではない。
なお、甲第8,9号証の存在も、審決が判断した、当該技術分野における技術水準の判断を誤りとするものでもない。

8.むすび
以上説示のとおり、本件審判請求は、特許法第167条の規定に違反してされた不適法な審判請求であるから、特許法第135条の規定により却下すべきものである。
よって結論の通り審決する
 
審理終結日 2005-03-29 
結審通知日 2005-03-31 
審決日 2005-04-13 
出願番号 特願昭40-49006
審決分類 P 1 113・ 07- X (B65B)
最終処分 審決却下  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 寺本 光生
渡邊 豊英
登録日 1976-05-14 
登録番号 特許第813512号(P813512)
発明の名称 包装  
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