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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない F16J
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない F16J
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない F16J
管理番号 1135566
審判番号 訂正2005-39150  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-02-18 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-08-23 
確定日 2006-04-27 
事件の表示 特許第2055326号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2055326号の請求項1に係る発明についての出願は、平成4年2月26日に出願(特願平4-39621号)され、平成7年7月26日に出願公告(特公平7-69018号公報)がされた後、平成8年5月23日にその特許権の設定の登録がされた。
これに対し、平成15年2月21日に、請求人:イーグル工業株式会社より本件特許について無効審判(無効2003-35066号)の請求がされ、平成15年12月19日付けで請求不成立の審決がなされたところ、この審決を不服として請求人(原告)より東京高等裁判所に出訴(平成16年(行ケ)第36号)がなされ、平成16年11月15日に東京高等裁判所において審決取消の判決(以下、「判決」という。)がなされ、上告受理申し立てが却下され、特許庁に差し戻され、その後、平成17年4月15日に特許無効の審決がなされ、これに対して、被請求人(原告)より平成17年5月26日に知的財産高等裁判所に審決取消請求事件(第2次)(平成17年(行ケ)第10496号)が提起された。
本件の訂正審判は平成17年8月23日に請求され、平成17年9月5日に上記審決取消請求事件(第2次)の被告であるイーグル工業株式会社より上申書の提出がなされ、平成17年10月31日に訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成17年12月5日に意見書(以下、「意見書」という。)が提出されたものである。

II.理由A:新規事項違反
1.請求の内容
請求人は、本件特許第2055326号の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の内容を、審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、訂正事項1〜4及び7の訂正の内容は下記のとおりである。なお、下線部は対比の便のため当審において付したものである。

a.訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】シールケーシングを洞貫する回転軸に回転密封環を固定保持すると共にシールケーシングに回転密封環へとスプリングにより押圧附勢させた静止密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる2組のメカニカルシールにより、両メカニカルシール間に形成されたパージ流体領域を介して、被密封流体を揮発性流体ないし低沸点流体とする被密封流体領域と大気領域とを遮蔽シールするように構成された軸封装置であって、両メカニカルシールを、静止密封環が回転密封環より大気領域側に位置されるように、同じ向きで配置し、被密封流体領域側の第1メカニカルシールを、静止密封環に被密封流体領域の流体圧力が背圧として作用する接触型シールに構成し、大気領域側の第2メカニカルシールを、静止密封環にパージ流体領域の流体圧力が背圧として作用する非接触型シールに構成し、パージ流体領域に被密封流体より低圧の窒素ガスであるパージガスを注入させ、第1メカニカルシールにおける両密封環の相対回転部分に対して、シールケーシングに第1メカニカルシールの静止密封環の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させるように構成したことを特徴とする軸封装置。」と訂正する。

b.訂正事項2
特許明細書の段落【0009】を、
「【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シールケーシングを洞貫する回転軸に回転密封環を固定保持すると共にシールケーシングに回転密封環へとスプリングにより押圧附勢させた静止密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる2組のメカニカルシールにより、両メカニカルシール間に形成されたパージ流体領域を介して、被密封流体を揮発性流体ないし低沸点流体とする被密封流体領域と大気領域とを遮蔽シールするように構成された軸封装置であって、両メカニカルシールを、静止密封環が回転密封環より大気領域側に位置されるように、同じ向きで配置し、被密封流体領域側の第1メカニカルシールを、静止密封環に被密封流体領域の流体圧力が背圧として作用する接触型シールに構成し、大気領域側の第2メカニカルシールを、静止密封環にパージ流体領域の流体圧力が背圧として作用する非接触型シールに構成し、パージ流体領域に被密封流体より低圧の窒素ガスであるパージガスを注入させ、第1メカニカルシールにおける両密封環の相対回転部分に対して、シールケーシングに第1メカニカルシールの静止密封環の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させるように構成したことを特徴とする軸封装置を提案するものである。」と訂正する。

c.訂正事項3
特許明細書の段落【0010】を、
「【0010】
【作用】
被密封流体領域とパージ流体領域とをシールする第1メカニカルシールについては、摺動可能な静止密封環に被密封流体圧力が背圧として作用することから、パージ流体領域の流体圧力を被密封流体圧力より低くしておくことができ、シール部分に作用する負荷を大幅に低減することができる。また、被密封流体が液体アンモニア等の揮発性流体ないし低沸点流体である場合、第1メカニカルシールが接触型シールであるために、冒頭で述べたと同様に、密封空間に形成される被密封流体による流体潤滑膜が摺動熱により破壊され、第1メカニカルシールによるシール機能が喪失する虞れがあるが、このような虞れは、フラッシング(「フラッシン」は誤記と認める。)液の噴射による静止密封環の冷却と、被密封流体との熱交換による回転密封環の冷却とによって、確実に回避される。したがって、第1メカニカルシールにおける両密封環の相対回転部分に対して、シールケーシングに第1メカニカルシールの静止密封環の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させるように構成したことによって、被密封流体が液体アンモニア等の揮発性流体ないし低沸点流体である場合や高圧流体である場合にも、上記した如くシール部分に作用する負荷が大幅に低減されることとも相俟って、両密封環の相対回転による摺動熱の発生が可及的に防止され、当該摺動熱による流体潤滑膜破壊が生じず、良好且つ安定したシール機能を発揮する。」と訂正する。

d.訂正事項4
特許明細書の段落【0011】を、
「【0011】
一方、大気領域とパージ流体領域とをシールする第2メカニカルシールについては、それが非接触型のガスシールであることから、パージ流体圧力が被密封流体圧力よりも低圧であることとも相俟って、高圧条件下においても良好なシール機能を発揮する。ところで、非接触型のガスシールでは両密封環が非接触状態にあることから、所定のガスシール機能を発揮させるために両密封環の対向端面が平行状態に保持されていることが必要であるが、軸線方向に摺動する密封環を図2に示す如く回転軸に保持させるようにすると、当該密封環が位置変動し易く、両密封環の対向端面の平行性を維持し難く、ガスシール機能が低下する虞れがある。しかし、回転密封環を回転軸に固定させ、軸線方向に摺動する密封環(静止密封環)をシールケーシングに保持させておくことにより、上記した虞れを回避して、第2メカニカルシールによるシール機能(ガスシール機能)を良好に発揮させることができる。」と訂正する。

e.訂正事項7
特許明細書の段落【0019】を、
「【0019】
なお、第1メカニカルシール11の相対回転部分に対しては、フラッシング液Fが噴射されるようになっている。すなわち、両密封環12,13の相対回転部分に対して、図1に示す如く、シールケーシング15に静止密封環13の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液Fを噴射させるようにしてある。かかるフラッシング(「フラッシン」は誤記と認める。)液Fの噴射により、被密封流体が液体アンモニア等の揮発性流体ないし低沸点性の流体であるときにも、上述した如く密封環12,13間に流体潤滑膜が良好に形成、保持され、第1メカニカルシール11による良好なシール機能が発揮される。」と訂正する。

2.新規事項の有無についての判断
a.訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1において、少なくとも、「第1メカニカルシールにおける両密封環の相対回転部分に対して、シールケーシングに第1メカニカルシールの静止密封環の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させるように構成した」(以下、記載Eという。)との記載を含むものである。
確かに、特許明細書の段落【0019】には、「なお、第1メカニカルシール11の相対回転部分に対しては、フラッシング液Fが噴射されるようになっている。」と記載されているが、特許明細書には、「シールケーシングに第1メカニカルシールの静止密封環の外周面に対向して形成した孔」という記載はない。
そこで、図1の記載を参酌すると、静止密封環13の外周面と右側端面を覆うようにスプリング14で左方に押圧付勢された、静止密封環13とは異なる斜線が施された図面番号の付与されていない別部材(以下、「支持部材」という。)が介在され、該支持部材の外周面に対向して、しかも、静止密封環13の外周面の左右方向の中心から右側にずれた位置にフラッシング液Fを噴射させる孔が形成されていることが看取できる。通常、「対向」とは、互いに向き合うことを意味するものであるが、図1の記載によれば、静止密封環13の外周面は支持部材によって完全に覆われ、フラッシング液Fを噴射させる孔と直接対向しているものではない。
一方、記載Eの「シールケーシングに第1メカニカルシールの静止密封環の外周面に対向して形成した孔」における「対向」には直接対向する意味も含まれ、直接対向することは特許明細書又は図面に記載がないことは上記した通りである。
したがって、訂正事項1は、特許明細書又は図面に記載されていないばかりか、特許明細書又は図面の記載から自明な事項であるということができないものであり、この訂正は特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

なお、審判請求人は、「静止密封環13は図1において符号13から延びる引き出し線で指示された部分(以下『引き出し線指示部分』という)と上記『支持部材』とからなるものであります。」(意見書第2頁第3〜5行)と主張している。
仮に、審判請求人が主張するように、静止密封環13が「引き出し線指示部分」と「支持部材」の2つからなるものであるとすると、特許請求の範囲の請求項1に記載された「静止密封環の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させるように構成」には、少なくとも、
(1)「引き出し線指示部分」の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させるように構成、及び
(2)「支持部材」の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させるように構成、の2つの態様が含まれることになる。
しかしながら、上記(1)の態様については、図1の記載を参酌すると、「引き出し線指示部分」の外周面の左右方向の中心から右側にずれた位置にフラッシング液Fを噴射させる孔が形成され、また、「引き出し線指示部分」の外周面は支持部材によって完全に覆われ、フラッシング液Fを噴射させる孔と直接対向しているものではないから、上記(1)の態様を含む訂正事項1は、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとは認めらず、審判請求人の上記主張は採用することができない。

b.訂正事項2、3及び7について
訂正事項2、3及び7は、訂正事項1に係る記載Eと同様の記載を含むものであるから、上記「a.訂正事項1について」で述べたのと同様の理由により、特許明細書又は図面に記載されていないばかりか、特許明細書又は図面の記載から自明な事項であるということができないものであり、この訂正は特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

c.訂正事項4について
訂正事項4は、特許明細書の段落【0011】において、「ところで、非接触型のガスシールでは両密封環が非接触状態にあることから、所定のガスシール機能を発揮させるために両密封環の対向端面が平行状態に保持されていることが必要であるが、軸線方向に摺動する密封環を図2に示す如く回転軸に保持させるようにすると、当該密封環が位置変動し易く、両密封環の対向端面の平行性を維持し難く、ガスシール機能が低下する虞れがある。しかし、回転密封環を回転軸に固定させ、軸線方向に摺動する密封環(静止密封環)をシールケーシングに保持させておくことにより、上記した虞れを回避して、第2メカニカルシールによるシール機能(ガスシール機能)を良好に発揮させることができる。」(以下、記載Lという。)との記載を追加するものである。
特許明細書には、下記(1)〜(3)については一切記載されていない。
(1)「非接触型のガスシールでは両密封環が非接触状態にあることから、所定のガスシール機能を発揮させるために両密封環の対向端面が平行状態に保持されていることが必要である」こと、
(2)「軸線方向に摺動する密封環を図2に示す如く回転軸に保持させるようにすると、当該密封環が位置変動し易く、両密封環の対向端面の平行性を維持し難く、ガスシール機能が低下する虞れがある」こと、
(3)「回転密封環を回転軸に固定させ、軸線方向に摺動する密封環(静止密封環)をシールケーシングに保持させておくことにより、上記した虞れを回避して、第2メカニカルシールによるシール機能(ガスシール機能)を良好に発揮させることができる」こと。
また、回転密封環を回転軸に固定させることはともかく、軸線方向に摺動する密封環の具体的保持手段が特定されない状態において、単に、軸線方向に摺動する密封環をシールケーシングに保持させるというだけで、両密封環の対向端面が平行状態に保持され、シール機能(ガスシール機能)を良好に発揮させることができるとは限らないから、特許明細書又は図面の記載事項から記載Lの事項が自明ということはできない。
したがって、訂正事項4は、特許明細書又は図面に記載されていないばかりか、特許明細書又は図面の記載から自明な事項であるということができないものであり、この訂正は特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

なお、審判請求人は、「軸線方向に摺動する密封環を図2に示す如く回転軸に保持させた場合に比して、当該密封環を回転軸のように振動等をしない静止状態のシールケーシングに保持させた場合の方が両密封環の対向端面の平行性を維持し易いということを意味するものであります。動くことを要求される密封環(軸線方向に摺動する密封環)の姿勢は、当該密封環を動く回転軸に保持させた場合と動かないシールケーシングに保持させた場合とでは、当然に後者の場合の方が安定することは明白であり、」(意見書第4頁第21〜27行)と主張している。
しかしながら、両密封環の対向端面が平行状態に保持され安定するかどうかは、軸線方向に摺動する密封環の姿勢のみによって決まるのではなく、軸線方向に摺動しない密封環(動く回転軸に保持される場合と動かないシールケーシングに保持される場合がある)の姿勢との相対的な位置関係に依存するものであるから、特定の構成が奏するという作用効果を含む訂正事項4は、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとは認めらず、審判請求人の上記主張は採用することができない。

3.新規事項違反についてのむすび
以上のとおり、訂正事項1〜4及び7は、願書に添付した明細書又は図面に記載されていないばかりか、願書に添付した明細書又は図面の記載から自明な事項であるということができないものであり、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないので、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書きの規定に適合しないから、本件訂正は認められない。

III.理由B:独立特許要件
1.訂正発明
上記訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するので、以下、独立特許要件についての検討を行う。
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(なお、請求項を分節し、これに付した符号A〜Gは、対比の便宜のため当審において付したものである。)
【請求項1】
A.シールケーシングを洞貫する回転軸に回転密封環を固定保持すると共にシールケーシングに回転密封環へとスプリングにより押圧附勢させた静止密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる2組のメカニカルシールにより、
B.両メカニカルシール間に形成されたパージ流体領域を介して、被密封流体を揮発性流体ないし低沸点流体とする被密封流体領域と大気領域とを遮蔽シールするように構成された軸封装置であって、
C.両メカニカルシールを、静止密封環が回転密封環より大気領域側に位置されるように、同じ向きで配置し、
D.被密封流体領域側の第1メカニカルシールを、静止密封環に被密封流体領域の流体圧力が背圧として作用する接触型シールに構成し、大気領域側の第2メカニカルシールを、静止密封環にパージ流体領域の流体圧力が背圧として作用する非接触型シールに構成し、
E.パージ流体領域に被密封流体より低圧の窒素ガスであるパージガスを注入させ、
F.第1メカニカルシールにおける両密封環の相対回転部分に対して、シールケーシングに第1メカニカルシールの静止密封環の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させるように構成した
G.ことを特徴とする軸封装置。

2.刊行物に記載された発明及び技術的事項
[刊行物1]ジ アメリカン ソサエティー オブ リュブリケーション エンジニアーズ発行、リュブリケーション エンジニアリング、第35巻第7号、1979年7月発行、P.367〜375、ラルフ P.ガブリエル著、「らせん溝非接触面シールの基礎(Fundamentals of Spiral Groove Noncontacting Face Seals)」
[刊行物2]テキサス A&M ユニバシティー発行、第6回国際ポンプ ユーザーズ シンポジウム会報、1989年4月発行、1989年9月26日英国図書館文献サービスセンター(BLDSC)収蔵、P.53〜58、アフザル アリ著、「上流ポンピング:メカニカルシール設計における新展開(UPSTREAM PUMPING:NEW DEVELOPMENTS IN MECHANICAL SEAL DESIGN)」
[刊行物3]日本機械学会発行、日本機械学会誌 第80巻 第706号、昭和52年9月発行、P.43〜49、鷲田彰著、「ポンプ用メカニカルシールの現況と将来展望」
[刊行物4]鷲田彰著「新・メカニカルシール」日刊工業新聞社、昭和57年12月25日初版1刷発行、168〜171頁
なお、刊行物1及び2の翻訳文は、第2055326号特許無効審判事件(無効2003-35066号)の審判請求書に添付された請求人提出の「甲第1号証の翻訳文」及び「甲第2号証の翻訳文」をそれぞれ援用する。

(刊行物1)
刊行物1には、図面(特に、図2、図6〜11を参照)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(a)「動的なシールが、軸に直交する一次シール面で生じる。らせん溝パターンがその一方の面の外側の領域に設けられている。正しい方向に運転される時、このパターンはこの面の間に内向きにガスを送り込み、その結果動的状態下で隙間が生じる。」(第372頁左欄第38行〜右欄第4行、翻訳文第4頁第9〜12行)
(b)「図9は、一つの共通の回転環に対して二つの静止シールから成るダブルシール配置を示している。この配置では、図7におけるラビリンスがこの機内側シールに入れ替わっている。この配置がそのラビリンスよりも有利な点は、プロセス内へのその漏洩量である。そのらせん溝シールで運転される隙間の違いのために、ラビリンスに比べると漏洩は著しく低減できる。
被密封圧力がシングルシールの能力をこえる所での適用には、タンデムシール配置が用いられる(図10)。この配置では安全上のバックアップもまた提供される。もしその一次シールが故障したならばその機外側シールは、その設備を停止できるまでの間一次シールとして引き継ぐことが可能である。」(第373頁左欄第4〜17行、翻訳文第5頁第7〜15行)
(c)「図11に示すような、接触シールとタンデムに組み合わせたらせん溝シールによって構成されるシール配置は、安全シール、緩衝シール、或いはその両方として使用することができる。タンデムシール配置は通常、両方のシールが同じ方向に向くように考案される。このらせん溝シールはこの方式か或いは図示のように置くことができる。この一次シールが低温流体(cryogenic fluids)をシールするときの適用では、このらせん溝シールは、その被密封流体(the product)と大気の間の緩衝帯の役目をすることができる。この緩衝帯はその接触シールを、大気に触れることによって、漏洩が起こる可能性のある場所に氷が着くことから守る。通常は、接近した隙間のブッシュ、或いはパッキンがこの目的の為に使われる。しかしながら、このらせん溝シールは、以下のさらなる利点を伴って使用することができる:
1.この緩衝帯へ供給するために使用する窒素の量は、このらせん溝シールのシール能力によって徹底的に減少される。
2.このらせん溝シールの使用は、この外側の仕切り空間の加圧を可能にし、この一次シール前後の圧力差を減少させて、シールの磨耗と漏洩を低減させる。
安全シールとして使われるとき、このらせん溝シールは通常非常に低い圧力差で運転される。一次シールの漏洩は、貯蔵容器へと導く排出口に送られる。もしもこの一次シールの故障が起こると、この設備を停止できるまで、このらせん溝シールがその漏洩を止める。」(第373頁右欄第1〜26行、翻訳文第5頁第23行〜第6頁第13行)
上記摘記事項及び図11の記載から、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
A’.シールケーシングを洞貫する回転軸に回転密封環を固定保持すると共に、シールケーシングに固定された静止密封環へとスプリングにより押圧附勢させた回転密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる第1メカニカルシールと、シールケーシングに回転密封環へとスプリングにより押圧附勢させた静止密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる第2メカニカルシールとからなる2組のメカニカルシールにより、
B’.両メカニカルシール間に形成されたパージ流体領域を介して、被密封流体を低温流体(cryogenic fluids)とする被密封流体領域と大気領域とを遮蔽シールするように構成された軸封装置において、
C’.両メカニカルシールを、静止密封環が回転密封環より大気領域側に位置されるように配置すると共に、スプリングにより押圧附勢させる各密封環の摺動方向を互いに向き合う方向とし、
D’.被密封流体領域側の第1メカニカルシールを回転密封環に被密封流体領域の流体圧力が背圧として作用する接触型シールに構成すると共に、大気領域側の第2メカニカルシールを、静止密封環にパージ流体領域の流体圧力が背圧として作用する非接触型シールに構成し、
E’.パージ流体領域に被密封流体より高圧の窒素ガスであるパージガスを注入した
G’.軸封装置。

(刊行物2)
刊行物2には、図面(特に、図2及び3を参照)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(d)「要約
従来のメカニカルシールは、高圧源からの漏洩を防止するように配置される。漏洩が起こるとき、高圧の区域から低圧の周囲環境へとなることが予想される。上流ポンピングシールの基本的な設計概念は、従来のシールを低容量(low volume)の高圧“ポンプ”-上流ポンピングシールに取って代えることである。この“ポンプ”は、そのメカニカルシールによって正常にシールされた経路に沿って微量のバリア液を被密封流体側(the product side)へと進ませる。この被密封流体側(the product side)はバリア液よりも高圧であることから、このシールは“上流へ”ポンプで汲み上げると言われる。」(第53頁左欄第1〜11行、翻訳文第1頁第9〜17行)
(e)「タンデムシールは、同じ向きにして搭載された二つのシングルシールから構成され(図3)、その二つのシールの間に大気圧或いはそれに近い圧力の補助的な中立流体(a secondary neutral fluid)を伴う。タンデムシールは次の三つの主要な理由で利用される:
・冗長性-安全上のバックアップとして;万一その一次シールが故障の場合、その二次シールが環境への流出/漏洩を防止する。
・クエンチ流体を溜めておく-低温を必要とする設備(cryogenic services)、及び液化された固体(腐食剤、砂糖)を含む設備。
・捕らえにくい放出物を抑制する-軽炭化水素(light hydrocarbons)/揮発性有機化合物(VOCs)の密封。
シール設計者とエンドユーザーの創造力によって、機内側静止ヘッドシールと機外側回転ヘッドシールの組み合わせを見いだすことは例外的なことではない。設計と意図においては、これが本当のタンデムシールであるが、しかし慣れない者は(to the untrained eye)、その背中合わせの外観からそれがダブル配置であると推断してしまうかもしれない。多重シールは、こうして、再定義されなければならなかった。外観では迷わされるだろうから、シール配置に利用するその補助装置がより理論的な基準になる。これより、多重シールは次のように再定義された:
タンデムシール:低圧のシール補助装置を利用する多重シール。APIプラン52。
ダブルシール:高圧のシール補助装置を利用する多重シール。そのバリア流体圧力が常時その被密封領域の喉部(the throat of the seal cavity)の圧力よりも高い水準に維持される。
定義から、従って、タンデム配置においてはその高圧被密封流体(the high pressure product)の低圧バリア流体への漏洩が原因で、このバリア流体が被密封流体(the product)により絶えず汚染されることが推断できる。この汚染された流体はその二次シールを越えて漏れることによりいつかは大気側へ進むだろう。タンデム配置は、しかしダブル配置よりも本質的に安全である、なぜならばその二次シールは万一一次シールが故障しても被密封流体(the product)を溜めておくことができるからである。
ダブル配置においては、そのバリア流体が高圧であることから、漏洩はバリア流体から被密封流体側(the product side)に或いはバリア流体から大気側にだけ起きるものと信じさせられるだろう。このことは、安全性を得るのに高圧の緩衝流体を維持することが必要であることを付け加えた。さらに、もしその機外側シールが故障したらならば、その圧力の逆転によって機内側シールはすぐに故障するだろう。」(第54頁左欄第5〜47行、翻訳文第2頁第28行〜第4頁第4行)
(f)「ダブル配置においては、漏洩はバリア流体から被密封流体(the process)の中へと起こるだけであることが普通当然であると思われている。あいにくこれが必ずしも正しいとは限らない。漏洩はその圧力差にも係らず被密封流体(the process)からバリア流体へと起こることがある。実験データは、この“逆流れ”が容易には除かれない接触面現象であることを示している。」(第54頁右欄第32〜37行、翻訳文第5頁第1〜5行)

(刊行物3)
刊行物3には、図面(特に、図6及び7を参照)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(g)図6の「低温液化ガス用タンデムシール」には、低温の液体である「低温液化ガス」の軸封にタンデムシールを使用した例が示され、その「適用例」には、その使用条件が「P=44〜51kg/cm2G、t=-10〜40℃」であることが示されている。
(h)図7の「メタノール循環ポンプ用タンデムシール」には、その「適用例」に示されている使用条件の「P=25kg/cm2G、t=-70℃」から分るように、低温の液体である「メタノール」の軸封にタンデムシールを使用した例が示されている。

3.対比・判断
訂正発明と引用発明を対比すると、訂正発明と引用発明の一致点及び相違点は下記のとおりである。
<一致点>
A’.シールケーシング及びこれを洞貫する回転軸の一方に第1密封環を固定保持すると共に他方に第1密封環へと押圧附勢させた第2密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる2組のメカニカルシールにより、
B’.両メカニカルシール間に形成されたパージ流体領域を介して、被密封流体領域と大気領域とを遮蔽シールするように構成された軸封装置において、
C’.両メカニカルシールを、静止密封環が回転密封環より大気領域側に位置されるように配置し、
D’.被密封流体領域側の第1メカニカルシールを第2密封環に被密封流体領域の流体圧力が背圧として作用する接触型シールに構成すると共に、大気領域側の第2メカニカルシールを、第2密封環にパージ流体領域の流体圧力が背圧として作用する非接触型シールに構成し、
E’.パージ流体領域に窒素ガスであるパージガスを注入させた
G’.軸封装置。
(相違点1)
訂正発明は、「パージ流体領域に被密封流体より低圧の窒素ガスであるパージガスを注入させた」のに対し、引用発明は、パージ流体領域に被密封流体より高圧の窒素ガスであるパージガスを注入した点。
(相違点2)
訂正発明は、「シールケーシングを洞貫する回転軸に回転密封環を固定保持すると共にシールケーシングに回転密封環へとスプリングにより押圧附勢させた静止密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる2組のメカニカルシール」としたのに対し、引用発明は、シールケーシングを洞貫する回転軸に回転密封環を固定保持すると共に、シールケーシングに固定された静止密封環へとスプリングにより押圧附勢させた回転密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる第1メカニカルシールと、シールケーシングに回転密封環へとスプリングにより押圧附勢させた静止密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる第2メカニカルシールとからなる2組のメカニカルシールとした点。
(相違点3)
訂正発明は、「被密封流体を揮発性流体ないし低沸点流体と」したのに対し、引用発明は、被密封流体を低温流体(cryogenic fluids)とした点。
(相違点4)
訂正発明は、「両メカニカルシールを、静止密封環が回転密封環より大気領域側に位置されるように、同じ向きで配置し」たのに対し、引用発明は、両メカニカルシールを、静止密封環が回転密封環より大気領域側に位置されるように配置すると共に、スプリングにより押圧附勢させる各密封環の摺動方向、及び流体圧力が背圧として作用する方向が互いに向き合う方向である点。
(相違点5)
訂正発明は、「メカニカルシールの静止密封環の外周面に対向して形成した孔からフラッシング液を噴射させ」たのに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。

そこで、上記相違点1〜5について検討をする。
(相違点1について)
刊行物1の記載によれば、接触シールとタンデムに組み合わせたらせん溝シールによって構成されるシール配置は、緩衝シール、安全シールとして使用され、緩衝シールとして使用されるときは、一次シール前後の圧力差を減少させて、シールの摩耗と漏洩を低減させ、安全シールとして使用されるときは、らせん溝シールが通常非常に低い圧力差で運転されることが認められる。
そして、刊行物1に記載のシール配置は、タンデムシールの範疇に属するものであるから、特段の理由がない限り、その使用に当たっては、タンデムシールの一般的な使用態様が適用されるものと認められる。
そこで、一般のタンデムシールにおいて、緩衝帯における流入ガス圧力と被密封流体圧力とが、いかなる圧力関係のもとで使用されるのかについてみてみることとする。
刊行物2には、上記記載事項(d)〜(f)等の記載からみて、タンデムシールは同じ向きにして搭載された二つのシングルシールから構成され、その二つのシールの間に大気圧あるいはそれに近い圧力の補助的な中立流体を伴うものであること、タンデム配置においては、その高圧被密封流体の低圧バリア流体への漏洩が原因で、このバリア流体が被密封流体により絶えず汚染されること、二次シールは万一一次シールが故障しても被密封流体を溜めておくことができることが認められ、これらのことから、タンデムシールは、安全シールとして適用され、その際には、被密封流体側よりバリア流体側が低圧となるように圧力条件を定め、被密封流体側からバリア流体側へと被密封流体が漏洩するようにして利用されるものであると理解することができる。
してみると、「2つのメカニカルシールをタンデム配置した接触型・非接触型シールにおいて、しかも中間室にガスを注入したものにおいて、中間室の圧力を被密封流体より低くすること」が周知技術であるとまではいうことはできないとしても、タンデムシールにおいて、シール間領域の圧力を、被密封流体圧力より低くすることにより、バリア流体による被密封流体の汚染が回避され、二次側(大気側)のシールが、一次側(プロセス側)のシールをバックアップする効果が奏されることを認めることができる。
引用発明のタンデムシールは、接触シールと非接触シールとを組み合わせたものであるが、二つのシールは協働するものではなく、それぞれが個別にシール機能を果たすものであり、いわば、二段シールともいうべきものである。
そうであれば、引用発明のタンデムシールを、刊行物2に記載されたものと同じく安全シールとして使用することは、創意を要することなく想起できるものということができ、引用発明のタンデムシールにおいて、中間室の圧力を被密封流体より低くすること(安全シールとして利用すること)は、当業者であれば容易に想到できることというべきである。

なお、審判請求人は、「かかるご判断はバリア流体を液体とする場合とガスとする場合とを同一視するものであり、承服できません。」(意見書第6頁第20、21行)、「刊行物2の図2及び図3に記載されたものは、何れも、バリア流体として液体を使用するものであります。」(意見書第7頁第6〜7行)と主張しているが、上述したように、バージガスを窒素ガスとしている引用発明を、刊行物2に記載されたものと同じく安全シールとして使用することが創意を要することなく想起できるものであるということであり、上記審判請求人の主張は採用することができない。(上記判決書の第21頁第11行〜第28頁第25行の「第5 当裁判所の判断」の項を参照されたい。)

(相違点2について)
軸封装置において、シールケーシングを洞貫する回転軸に回転密封環を固定保持すると共にシールケーシングに回転密封環へとスプリングにより押圧附勢させた静止密封環を軸線方向摺動可能に保持させてなる2組のメカニカルシールとすることは、従来周知の技術手段(例えば、刊行物3の第45頁右欄第4行〜第46頁左欄第7行の「7.低温用」の項及び図6の記載)に過ぎない。
引用発明の構成は接触型シールと非接触型シールとの組み合わせにおいてなされたものであり、これらはともにメカニカルシールであるから、例えば、刊行物3に記載されたメカニカルシールによる軸封装置の構成を従来周知の手段として、引用発明に適用することに何ら阻害要因はない。
してみれば、引用発明に上記従来周知の技術手段を適用して、上記相違点2に係る訂正発明のように構成することは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点3について)
軸封装置において、被密封流体を揮発性流体ないし低沸点流体とすることは、従来周知の技術手段(例えば、刊行物1の第373頁右欄第1〜20行(翻訳文第5頁第23行〜第6頁第9行の記載)、及び刊行物3の第45頁右欄第4行〜第46頁左欄第7行の「7.低温用」の項の記載)に過ぎない。
してみれば、引用発明に上記従来周知の技術手段を適用して上記相違点3に係る訂正発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点4について)
軸封装置において、2つのメカニカルシールを、静止密封環が回転密封環より大気領域側に位置されるように、同じ向きで配置することは、従来周知の技術手段(例えば、刊行物1の373頁の図10及び図11の記載、及び刊行物3の第45頁の図6の記載)に過ぎない。
してみれば、引用発明に上記従来周知の技術手段を適用して、上記相違点4に係る訂正発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点5について)
軸封装置において、メカニカルシールの接触型シールの摺動部分にフラッシング液を噴射してシール部の冷却を行うことは、従来周知の技術手段(例えば、刊行物2の第54頁の図3の記載、刊行物3の第45頁右欄第4行〜第46頁左欄第7行の「7.低温用」の項及び図6の記載、及び刊行物4の第168頁第8行〜第171頁第17行、及び図4.2〜4.4の記載)に過ぎない。
してみれば、引用発明のメカニカルシール(接触型シール)の摺動面に上記従来周知の技術手段を適用して、上記相違点5に係る訂正発明のように構成することは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到し得たものである。

訂正発明の効果についてみても、引用発明、刊行物2に記載された発明及び従来周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

なお、審判請求人は、「フラッシング(「フラッシン」は誤記と認める。)液を静止密封環の外周面に対向する孔から噴出させる点についても、このような構成が刊行物1〜4に教示,示唆されておらず、格別の作用効果を奏しうるものであります。」(意見書第8頁第24〜26行)と述べ、当該構成が奏するという作用効果について縷々主張しているが、これらは、フラッシング液を用いたことによる自明の作用効果に過ぎないものであり、格別の作用効果を奏するとは認められないので、上記審判請求人の主張は採用することができない。

4.独立特許要件についてのむすび
以上のとおり、訂正発明は、上記刊行物1及び2に記載された発明及び上記従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、訂正事項1は、平成6年改正前特許法第126条第3項の規定に違反するものであるので、訂正事項1を含む本件訂正は認められない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法第1条の規定による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第3項の規定に適合しないから、本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-27 
結審通知日 2006-03-02 
審決日 2006-03-16 
出願番号 特願平4-39621
審決分類 P 1 41・ 121- Z (F16J)
P 1 41・ 856- Z (F16J)
P 1 41・ 841- Z (F16J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就大槻 清寿  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 常盤 務
村本 佳史
登録日 1996-05-23 
登録番号 特許第2055326号(P2055326)
発明の名称 軸封装置  
代理人 三木 久已  

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