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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K |
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管理番号 | 1135980 |
審判番号 | 不服2003-14275 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-12-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-24 |
確定日 | 2006-05-08 |
事件の表示 | 特願2000-167519「弁装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月21日出願公開、特開2001-349447〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成12年6月5日の出願であって、本願の請求項1〜5に係る発明は、平成15年8月22日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのもの(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)と認める。 「【請求項1】 流体通路を内部に構成する弁箱と、その流体通路に形成された弁座と、前記弁箱内に設けられ、前記流体通路を選択的に遮断及び開放するように前記弁座に対して係合・離脱可能に支持された弁体と、前記弁箱を貫通して前記弁体を支持する弁棒と、前記弁棒の上端に固定されたハンドホイールとを備え、該ハンドホイールを回転させることによって、前記弁棒がその軸方向に直動する弁装置において、 前記弁棒は上部弁棒と下部弁棒とに分割され且つこれら上部弁棒と下部弁棒とは互いに独立して回転可能にジョイントで結合され、 前記ハンドホイールの回転により前記上部弁棒は回転作動しながら軸方向に直動し且つ前記下部弁棒は前記弁箱の貫通部に設けられたパッキンとの摺動抵抗により回転せずに直動し、 相互に接触する前記上部弁棒及び下部弁棒の接触面のうち、一方の接触面は球面、他方の接触面は平面であることを特徴とする弁装置。」 なお、上記手続補正書による補正は、特許法第17条の2第1項第3号に規定する審判請求時の補正に該当するが、補正後の請求項1,2,3,4,5は、それぞれ補正前の請求項5,4,6,2,3に対応するから、上記補正は、実質的に請求項1の削除に該当するものであって、特許請求の範囲の減縮に該当せず、又、新規事項の追加に該当するものでもないので、上記補正は認められるものである。 2.引用刊行物およびその記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された実願昭51-62955号(実開昭52-153119号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。なお、当該引用例の出願番号について、原査定の拒絶理由通知書には「実願昭51-62055号」と記載されているが、これについては出願人も正しい出願番号の引用例に基づいて意見を述べているので、正しい出願番号が記載されていたものとして扱う。)には「弁軸操作機構」に関して、第1〜6図とともに以下の記載がある。 A)「従来から弁の開閉に用いる弁軸操作機構としては、ボンネツトと弁軸との間に、シールのためのグランドパツキンを介装して成る構造のものが多用されている。 然し、この構造では、弁開閉の際に、グランドパツキンが弁軸に密着しているため弁軸を回動するには多大の力を要するという難点がある。・・・ 本考案は、叙上の従前技術の欠点を解消するため・・・、弁口間の開閉を行なう弁体に係止される弁軸の上端と、前記弁体の収納部に固着されたボンネツトに進退自在に螺挿される作動棒の下端とを、該ボンネツト内に嵌装されたピストンに夫々スナツプリング又はスパイラルリングにより連結したことを特徴とした弁軸操作機構を提供するものである。」(第2頁13行〜第3頁11行) B)「第1図に示す如く、弁口10,12間の開閉を行なう弁体14は、弁口10,12間に設けられた弁座44に弁体のシートパツキン50が着座するように配置している。弁体14のデイスクリング52を載置した凹部48には、弁軸16が嵌入し、スナツプリング46を介して弁体14は弁軸16に係止されている。弁体の収納部18にはボルト54によりボンネツト20が固着されている。該ボンネツト20内にはピストン24が摺動自在に嵌装されている。弁軸16の上端は、ピストン24にスナツプリング26により連結されている。また、ボンネツト20に進退自在に螺挿される作動棒22の下端は、ピストン24にスナツプスプリング28により連結されている。」(第3頁13行〜第4頁5行) C)「ピストン24にはO-リング30が設けられており、ピストンを軽快に上下動せしめると共に、流体の上方への漏洩を防止する二次シールとして機能するものである。 ボンネツト20は、上ボンネツト20′と、下ボンネツト20″とに分離されている。上部ボンネツトには前記ピストンが嵌合され、下部ボンネツトには弁軸に摺動する1個又は複数個のO-リング32が設けられて弁軸を軽快に滑動せしめると共に、流体の上方への漏洩を回避する一次シールとしての役目を行なうものである。」(第5頁3〜9行) D)「作動棒はビス68により固着されたハンドル66により進退自在に螺挿され、回転される・・・」(第6頁5〜7行) E)「本考案においては、弁軸と作動棒とをボンネツト内に嵌装されたピストンに夫々連結しているので、弁体の開閉のためにハンドルを回動して作動棒を回動させながら進退する際には、作動棒を回動させる力が僅少でよく、軽快に弁体を上下動することが可能であり、かつ、弁軸、弁体は作動棒が回転して進退しても回動することなく上下動のみを行うようにすることができる。」(第6頁19行〜第7頁7行) F)第1図には、弁体の収納部18とボンネツト20とが、一体となって弁箱を構成していることと、上端にハンドル66が固定された作動棒22と弁軸16とがピストン24で結合され、一つの弁棒を構成して該弁箱を貫通していることと、これら作動棒22,弁軸16の対向する各先端が、ピストン24中央に形成された平面部に接触する球面として形成されていることが、それぞれ記載されている。 弁箱(弁体の収納部18)の弁口10,12間に流体通路が形成されていることは自明であるから、上記A)〜F)の記載と第1図とからみて、上記引用例の弁軸操作機構は、弁箱内に設けられた流体通路に弁座44が形成されるとともに、前記弁箱内には、前記弁座44に対して係合・離脱可能に支持された弁体14が、前記弁箱内を上下動することにより前記流体通路を選択的に遮断及び開放するように設けられ、さらに、前記弁箱を貫通して前記弁体14を支持する弁棒が設けられるとともに、弁棒の上端にハンドル66が固定され、該ハンドル66を回転させることによって、前記弁棒を軸方向に直動させるようにしたものであって、前記弁棒は、作動棒22と弁軸16とに分割され、且つ、これら作動棒22と弁軸16とは、上記E)の「弁軸、弁体は作動棒が回転して進退しても回動することなく上下動のみを行う」との記載から明らかなように、互いに独立して回転可能なようにスナツプリング28,26でピストン24で結合されるとともに、前記ハンドル66の回転により前記作動棒22が回転作動しながら軸方向に直動すると、前記弁軸16が、ピストン24に設けられたO-リング30と、収納部18の下ボンネツト20″の貫通部に設けられたO-リング32の摺動抵抗により、回転せずに直動するものと認められる。 さらに、相互に接触する前記作動棒22とピストン24、及び、弁軸16とピストン24の接触面のうち、作動棒22と弁軸16の接触面は球面、ピストン24の接触面は平面であるものと認められる。 したがって、上記引用例には、 「流体通路を内部に構成する弁箱と、その流体通路に形成された弁座44と、前記弁箱内に設けられ、前記流体通路を選択的に遮断及び開放するように前記弁座44に対して係合・離脱可能に支持された弁体14と、前記弁箱を貫通して前記弁体14を支持する弁棒と、前記弁棒の上端に固定されたハンドル66とを備え、該ハンドル66を回転させることによって、前記弁棒がその軸方向に直動する弁装置において、 前記弁棒は作動棒22と弁軸16とに分割され且つこれら作動棒22と弁軸16とは互いに独立して回転可能にピストン24で結合され、 前記ハンドル66の回転により前記作動棒22は回転作動しながら軸方向に直動し且つ前記弁軸16は前記弁箱の貫通部に設けられたO-リング32との摺動抵抗により回転せずに直動し、 相互に接触する前記作動棒22及びピストン24、弁軸16及びピストン24の接触面のうち、作動棒22と弁軸16の接触面は球面、ピストン24の接触面は平面である弁装置。」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。 3.本願発明と引用例記載の発明との対比 本願発明と引用例記載の発明とを対比すれば、O-リングとは、断面が円形のリング状のスクィーズパッキンを指す(JIS B0116)から、引用例記載の発明の「O-リング32」は本願発明の「パッキン」に対応しており、以下同様に、引用例記載の発明の「弁座44」は本願発明の「弁座」に、「弁体14」は「弁体」に、「ハンドル66」は「ハンドホイール」に、「作動棒22」は「上部弁棒」に、「弁軸16」は「下部弁棒」に、それぞれ対応している。また、引用例記載の発明の「ピストン24」は、上部弁棒である作動棒22と下部弁棒である弁軸16とを、互いに独立して回転可能に結合するジョイントとして機能しているから本願発明の「ジョイント」に対応している。 したがって、本願発明と引用例記載の発明は、 「流体通路を内部に構成する弁箱と、その流体通路に形成された弁座と、前記弁箱内に設けられ、前記流体通路を選択的に遮断及び開放するように前記弁座に対して係合・離脱可能に支持された弁体と、前記弁箱を貫通して前記弁体を支持する弁棒と、前記弁棒の上端に固定されたハンドホイールとを備え、該ハンドホイールを回転させることによって、前記弁棒がその軸方向に直動する弁装置において、 前記弁棒は上部弁棒と下部弁棒とに分割され且つこれら上部弁棒と下部弁棒とは互いに独立して回転可能にジョイントで結合され、 前記ハンドホイールの回転により前記上部弁棒は回転作動しながら軸方向に直動し且つ前記下部弁棒は前記弁箱の貫通部に設けられたパッキンとの摺動抵抗により回転せずに直動する弁装置。」である点で一致し、以下の相違点で相違しているものと認める。 <相違点> 本願発明のジョイントは、上下の弁棒を互いに独立して回転可能に結合するものであって、ジョイントで結合される上部弁棒と下部弁棒とが、一方の接触面が球面であり、他方の接触面が平面であるような、相互に接触する接触面を有するのに対し、引用例記載の発明のジョイントは、上下の弁棒を互いに独立して回転可能に結合する機能以外の機能(シール機能と回転防止機能)をも有するピストン24であって、該ピストン24で結合される作動棒22(上部弁棒)と弁軸16(下部弁棒)とは、ピストン24との接触面がそれぞれ球面として形成されてはいるものの、一方の接触面が球面であり、他方の接触面が平面であるような、相互に接触する接触面を有するものとして形成されたものではない点。 4.相違点の検討 引用例記載の発明のように、上下に2分割された弁棒を、ハンドル側の弁棒のみを回転させながら上下動させるものにおいて、上下の弁棒のジョイントを、該弁棒を互いに独立して回転可能に結合する機能だけを有するものとして構成することは、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭60-145703号(実開昭62-55777号)のマイクロフィルムや実公昭61-6389号公報にみられるように、従来周知技術であるとともに、このような、上下の弁部材を互いに独立して回転可能に結合するジョイントを有する弁装置において、ジョイントで結合される上部部材と下部部材を、一方の接触面が球面であり、他方の接触面が平面であるような、相互に接触する接触面を有するものとして形成することも周知技術(例えば、特公昭45-24751号公報における軸36とデイスク66の接合面、又は昭和5年実用新案出願公告第597号公報を参照されたい。)である。 してみれば、引用例記載の発明のピストン24を、O-リング30を有しない、弁棒(作動棒22と弁軸16)を互いに独立して回転可能に結合する機能だけを有するジョイントとして構成し(この場合、シール機能と弁軸16の回転防止機能とが、O-リング32のみによっても奏し得ることは当業者が容易に理解しうるところである。)、該ピストン24で結合される上部部材の作動棒22と下部部材の弁軸16を、一方の接触面が球面であり、他方の接触面が平面であるような、相互に接触する接触面を有するものとして形成することは、引用例記載の発明に上記各周知技術を適用することにより、当業者が容易に行い得たものである そして、本願発明が奏する作用効果は、上記引用例記載の発明と上記各周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。 したがって、本願発明は、上記引用例記載の発明に上記各周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上詳述したとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例記載の発明と上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、本願の請求項2〜5に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-01 |
結審通知日 | 2006-03-07 |
審決日 | 2006-03-22 |
出願番号 | 特願2000-167519(P2000-167519) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 細川 健人 |
特許庁審判長 |
大野 覚美 |
特許庁審判官 |
永安 真 ぬで島 慎二 |
発明の名称 | 弁装置 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 古川 秀利 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 武井 義一 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 曾我 道治 |