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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C23C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C23C
管理番号 1135992
審判番号 不服2003-17770  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-11 
確定日 2006-05-08 
事件の表示 平成9年特許願第134546号「硬質無機材料の表面処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月24日出願公開、特開平10-310859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯

本願は、平成9年5月9日の出願であって、平成15年5月13日付けの拒絶理由通知に対して、同年7月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月14日に手続補正書が提出されたものであり、さらに、当審において、平成17年12月1日付けで、平成15年10月14日提出の先の手続補正書による補正が却下されるとともに、同日付で拒絶の理由が通知され、これに対して、平成18年2月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

II.平成18年2月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年2月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成18年2月6日付けの手続補正は、平成15年7月18日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「【請求項1】 少なくとも表面層が硬質無機材料で形成された材料の表面にコーティング被膜を形成させる際の前処理方法であって、表面層の硬質無機材料の表面にレーザビームを用いて穴径または溝幅が100〜150μmであり、深さが20〜60μmであり、間隔が100〜150μmである穴開けまたは溝掘り加工による粗面化処理を施すことを特徴とする硬質無機材料の表面処理方法。」を、
「【請求項1】 表面層が化学蒸着法により形成されたSiC層である、炭素繊維強化炭素材(C/C複合材)又は黒鉛からなる硬質無機材料の表面にレーザビームを用いて穴径が100〜150μmであり、深さが30〜60μmであり、間隔が250μmである穴開け加工、または深さが20μmであり、溝幅が100μmであり、間隔が500μmである溝掘り加工による粗面化処理を施した後、該粗面化処理が施された面に高融点金属又は酸化物系無機材料からなる、厚さ30〜150μmのコーティング被膜を形成させて耐酸化性および耐熱性を付与することを特徴とする硬質無機材料の表面処理方法。」
と補正することを含むものである。

2.補正の適否についての判断
上記手続補正は、特許法第17条の2第1項第2号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正であるから、同条第4項各号に掲げる事項を目的とするものか否かについて以下検討する。
まず、特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮という目的に該当するか否かについてみると、補正前の請求項1には、当該請求項に記載した発明を特定するために必要な事項として、穴または溝の「間隔が100〜150μmである」ことが記載されていたわけであるから、当該目的に合致するためには、この発明特定事項を限定するもの、すなわち、「100〜150μm」という数値範囲をさらに限定するものでなければならないところ、上記手続補正は、この範囲を逸脱する、250μmあるいは500μmという値に補正しようとするものである。
したがって、当該補正は、上記発明特定事項を限定するものとはいえないから、特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮に該当しない。
次に、その他の目的要件についてみると、上記補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、及び同項第3号の誤記の訂正に該当しないことは明らかであり、また、同項第4号に規定されるような、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りようでない記載の釈明を目的とするものともいえない。

3.むすび
以上のように、平成18年2月6日付けの手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反しているので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明

平成18年2月6日付けの手続補正は上記II.のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成15年7月18日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】 少なくとも表面層が硬質無機材料で形成された材料の表面にコーティング被膜を形成させる際の前処理方法であって、表面層の硬質無機材料の表面にレーザビームを用いて穴径または溝幅が100〜150μmであり、深さが20〜60μmであり、間隔が100〜150μmである穴開けまたは溝掘り加工による粗面化処理を施すことを特徴とする硬質無機材料の表面処理方法。」

IV.当審の拒絶理由

当審において平成17年12月1日付けで通知した拒絶の理由の概要は、平成15年7月18日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。

平成15年7月18日付けの手続補正は、補正前の請求項1及び段落【0004】に記載されていた「レーザビームを用いて粗面化処理を施す」を「レーザビームを用いて穴径または溝幅が100〜150μmであり、深さが20〜60μmであり、間隔が100〜150μmである穴開けまたは溝掘り加工による粗面化処理を施す」と補正するものであるが、出願当初の明細書等には、
「【実施例】
以下実施例により本発明の方法をさらに具体的に説明する。
本発明の1実施例について図1、4、5を参照しながら説明する。図1は本発明に係るレーザビームによる表面処理方法の概念図である。本発明の表面処理を施す材料として図1に示すようにC/C複合材又は黒鉛からなる基材1の表面に厚さ100μmのCVDによるSiCの表面層2を形成させたものを使用した。この材料について次の3種類の方法により表面の粗面化処理を行った。図1中の矢印はレーザビームの移動方向を示す。
(a)エキシマレーザを使用し、深さ20μm、幅100μmの溝を500μmの間隔で格子状に形成させる溝堀り加工を行った。
(b)YAGレーザを使用し、レーザビーム5のスポット径、焦点距離、パルス周波数を適当に制御し穴径:100〜150μm、深さ:30〜60μmの穴が100μmの間隔で形成される程度に調整し、加工速度:3600mm/minでレーザ銃を移動させながら連続スポット穴開け加工を行うことにより粗面化処理を行った。
(c)CO2 レーザを使用し、穴の間隔が250μmとなるように調整したほかは(b)と同様にして穴開け加工を行った。」(段落【0010】)という記載はあるものの、例えば、溝掘り加工において溝幅が100〜150μmであることや、穴開け加工において深さが20〜60μmであることなど、補正後の請求項1に記載された穴または溝についての数値限定に関する明示的な記載は見当たらない。
また、上記数値限定が当初明細書等の記載から自明な事項であるともいえないから、この補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえない。
したがって、当該補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満足していない。

V.当審の判断

審判請求人が提出した平成18年2月6日付けの手続補正は、上記II.の項に示したとおり却下されたこと、及び、同日付けで提出された意見書をみても、上記IV.の項に示した拒絶理由を撤回するに足る主張は見当たらないことに照らしながら、再度、当審の拒絶理由について検討してもその妥当性を否定するには至らない。
したがって、平成15年7月18日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

VI.むすび

以上のとおり、本願は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-02 
結審通知日 2006-03-07 
審決日 2006-03-22 
出願番号 特願平9-134546
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (C23C)
P 1 8・ 55- WZ (C23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 明弘  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 日比野 隆治
市川 裕司
発明の名称 硬質無機材料の表面処理方法  
代理人 萩原 亮一  
代理人 萩原 亮一  

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