• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B01J
管理番号 1136200
異議申立番号 異議2003-73492  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-02-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2006-02-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3441755号「油中水形エマルジョンの製造方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3441755号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯、本件発明
特許第3441755号の請求項1〜5に係る発明についての出願は、平成 5年 2月26日(パリ条約による優先権主張 1992年 2月29日 (GB)イギリス)に特許出願され、平成15年6月20日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1〜5に係る発明の特許について、特許異議申立人 近藤武より特許異議の申立てがなされた。そして、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされるとともに特許異議意見書が提出され、それに対し、当審で特許異議申立人に審尋したところ回答がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件の特許査定時の明細書(以下、「本件特許明細書」という」)を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち訂正事項ア〜イのとおりに訂正しようとするものである。
訂正事項ア.
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項1に『5重量%』とあるのを「1重量%」に訂正する。
訂正事項イ.
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項2を削除し、請求項4及び5を請求項3及び4に訂正すると共に、訂正前の請求項5に『0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物をエマルジョンの総重量を基準にして0.5〜30重量%含む油中水形エマルジョンであって、エマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する1種以上の乳化剤と、エマルジョンの総重量を基準にして10〜60重量%の油相と、エマルジョンの総重量を基準にして少なくとも40重量%の水相とを含む油中水形エマルジョン』とあるのを、「請求項1または2に記載の方法に従って製造された油中水形エマルジョンを含むかまたは請求項3に記載の油中水形エマルジョン」に訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張又は変更の存否
訂正事項アは、訂正前の請求項1の『5重量%』を「1重量%」と限定するものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項アについては、特許明細書に「用いる乳化剤の総量がエマルジョンの1重量%未満である請求項1または2に記載の方法。」(【請求項3】)との記載があることから、上記訂正事項アは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項イは、訂正前の請求項5の『0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物をエマルジョンの総重量を基準にして0.5〜30重量%含む油中水形エマルジョンであって、エマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する1種以上の乳化剤と、エマルジョンの総重量を基準にして10〜60重量%の油相と、エマルジョンの総重量を基準にして少なくとも40重量%の水相とを含む油中水形エマルジョン』を「請求項1または2に記載の方法に従って製造された油中水形エマルジョンを含むかまたは請求項3に記載の油中水形エマルジョン」とするものであって、訂正前の請求項5の油中水形エマルジョンの由来に関して特許請求の範囲の記載内で整合させるものであるから、これらの訂正は、不明瞭な記載の釈明を目的とするものであるとみることができる。そして、上記訂正事項イについては、特許明細書に、「本発明によると、油中水形エマルジョンの製造方法は、0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物の粒子の油中分散液を1種以上の乳化剤及び水相と、油中水形エマルジョンが形成されるような条件下で混合することを含み、このようにして形成された油中水形エマルジョン中に存在する乳化剤の総量が5重量%未満であり、金属酸化物の粒子がエマルジョンの0.5〜30重量%を成し、油相がエマルジョンの10〜60重量%を成し、水相がエマルジョンの少なくとも40重量%を成す方法である。」(【0004】)、「また、本発明によると、油中水形エマルジョンは0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物をエマルジョンの総重量を基準にして0.5〜30重量%含み、エマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する1種以上の乳化剤と、エマルジョンの総重量を基準にして10〜60重量%の油相と、エマルジョンの総重量を基準にして少なくとも40重量%の水相とを含む。」(【0005】)、「本発明の油中水形エマルジョンは例えば日焼け止め、皮膚保護剤、保湿剤及びアフターサンローションとしての用途を見い出しており、可視光線に対して透過性であるがUV光線に対しては吸収性である製品の製造に特に有用である。」(【0017】)との記載があることから、上記訂正事項イは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
3-1.取消理由の概要
本件特許第3441755号の請求項1〜2に係る発明、又は、請求項4〜5に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであり、また、同請求項1〜5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。また、本件発明1〜5についての特許は、特許法第36条第4項又は第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。

引用文献1.国際公開第90/06103号(特許異議申立人が提示した甲第1号証)
引用文献2.特開平2-258712号公報(同甲第2号証)
引用文献3.英国特許出願公開第2243780号明細書(同甲第3号証)
引用文献4.特開平2-167212号公報(同甲第4号証)

3-2.明細書の記載要件について
(1)平成16年5月10日付け取消理由の明細書の記載不備に関する具体的な理由は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1には「油中水形エマルジョン中に存在する乳化剤の総量が5重量%未満であり」、同請求項3には「用いる乳化剤の総量がエマルジョンの1重量%未満である」、同請求項4及び5には「エマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する1種以上の乳化剤」との記載があること、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、任意成分である分散剤、界面活性剤を使用する旨の記載があること、からみて、上記請求項1、3、4及び5のエマルジョン中の乳化剤の総量が意味する技術的事項は明確ではない旨、よって、発明の詳細な説明の記載は一般的な技術背景と充分に整合しない部分を含む点で、当業者がその発明を実施することができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されておらず、或いは、特許請求の範囲の記載は乳化剤の量が明確に定まらない場合を含む点で、発明の構成に欠くことのできない事項のみが記載されていないものであるから、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第4項又は同法第36条第5項第2号及び第6項の規定を満たしておらず、本件特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである旨、を指摘するものである。

(2)上記の2.訂正の適否でみたように、訂正後の本件特許明細書(以下、「本件訂正明細書」という)は上記のとおりに訂正されたものであり、特許権者は、本件訂正明細書の請求項1の「油中水形エマルジョン中に存在する乳化剤の総量が1重量%未満であり」(以下「構成要件あ」という)、本件発明3の「エマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する1種以上の乳化剤」(以下、「構成要件い」という)について、参考資料1及び2(化学大事典)を添付した特許異議意見書を提出し、該参考資料1及び2には「分散剤:固体微粒子を液中に分散させて、なるべく安定な懸濁液をつくるために加えられる第三成分をいう」及び「乳化剤:互いに混合しない2種の液体(通常水とこれと混ざらない油などの有機液体)が安定なエマルジョンをつくるためには、一般に第3の物質を加える必要があり、この物質を乳化剤という」と記載されているように、乳化剤と分散剤との違いは当業者には明確であり、(あ)乳化剤の総量といった場合、上記(参考資料1及び2)の定義どおり、これは互いに混合しない2種の液体から安定なエマルジョンを調製するために使用したものの総量を意味し、金属酸化物の粒子の分散のために使用された分散剤は含まない旨、(い)分散剤が乳化剤として使用できる特性をも備える場合がある点については反論しない旨、(う)これを固体微粒子を液中に分散させるために使用した場合には、乳化剤の総量に含めるべきではない点は明らかである旨、(え)当業者は分散に使用したものを、それが乳化剤に使用できる可能性があるからといって、上記の定義に反して、分散剤ではなく乳化剤であると考えることもない旨、(お)界面活性剤についても分散剤と同様である旨、を主張する。
そこで、以下、上記主張をみつつ本件訂正明細書の記載について検討する。

(3)化学大事典1(縮刷版 1963年7月1日発行)の「エマルジョン」の項目には、「二つの溶解し合わない液体(たとえば水と油)をふり混ぜるとエマルジョンを生成するが、これは一般に不安定で、静置するとやがて2液相に分離する。安定な濃いエマルジョンをつくるには第三の物質を加える必要がある。この物質を乳化剤という。」との記載がある。この記載に加え、参考資料2の上記記載を参酌すると、エマルジョンとは、単に二つの溶解し合わない液体をふり混ぜることで生成するものであるが、これは静置するとやがてもとの二つの液体相に分離すること、及び、安定な濃いエマルジョンをつくるにはこれらとは異なる第三の物質を加える必要があり、このために加えられる第三の物質が乳化剤であること、がわかる。これらの技術常識を参酌すると、乳化剤とは安定な濃いエマルジョンをつくるために添加する第三の物質であるから、構成要件あ及び構成要件いの「油中水形エマルジョン中に存在する乳化剤の総量」及び「エマルジョンの総重量を基準にして総量で存在する1種以上の乳化剤」とは、「油中水形エマルジョン中に存在する安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の総量」及び「エマルジョンの総重量を基準にして総量で存在する、1種以上の、安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質」を意味すると解される。
しかるに、構成要件あの意味する「油中水形エマルジョン中に存在する安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の総量」及び構成要件いの意味する「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の、エマルジョンの総重量を基準にして存在する総量」とは、次の(一)〜(三)に示すように明確ではない。
(一)「安定な」エマルジョンをつくるとは、どの程度のエマルジョンがつくられれば当該「安定な」エマルジョンをつくるに該当するかは客観的に明確には定まらない。
(二)「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の総量」及び「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の、エマルジョンの総重量を基準にして存在する総量」とは、(ア)添加する目的が乳化剤であるものの量が当該総量であることを意味する、とも、(イ)結果的にエマルジョンをつくる作用をするものの量が当該総量であることを意味するとも解されるため、客観的に明確には定まらない。
(三)技術常識及び技術背景を参酌するに「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質(乳化剤)」に何が含まれるかは明確でない。

(4)上記(一)〜(三)の理由について詳述する。
(一)について
引用文献3には「2-ヒドロキシオクタン酸のようなヒドロキシアルカン酸を含む古典的な水中油型エマルジョンのような、あるエマルジョンは、0〜45℃までの範囲で変化し得る温度での長期間の保存にあたり、十分な安定性を欠くという不利を受け、それはそのようなエマルジョンが、製造後及び販売され、消費者が使用する前にさらされる条件である。このことは少なくとも、その製品に慣用される乳化剤により、油相と水相の分離が起こるという結果を伴う、ヒドロキシアルカン酸の部分的な可溶化によると信じられている。」(第5頁第19〜30行)と記載された箇所がある。
ヒドロキシアルカン酸のうち比較的長鎖のものである2-ヒドロキシオクタン酸は、親水基と疎水基とを有する両親媒性物質、つまり界面活性剤の一種であるから、乳化剤として作用し得るものであるが、引用文献3の上記箇所には、乳化剤による可溶化を受けるため、油相と水相とが分離してしまうことが示されている。
すると、この記載によれば、使用する乳化剤によっては、2-ヒドロキシオクタン酸が可溶化されるためにエマルジョンの相分離が生じるのであるから、2-ヒドロキシオクタン酸は「安定な」エマルジョンをつくる実質的な役割を果たしているとはいえない場合があることとなる。
また、本件訂正明細書の記載をみてもどの程度までが「安定な」エマルジョンをつくる役割を果たしたことにあたるのかは明らかではない。
してみれば、一般に乳化剤としての作用を有することが期待される上記の両親媒性物質であっても、どの程度のエマルジョンがつくられれば「安定な」エマルジョンをつくるに該当するかは客観的に明確には定まらない。

(二)について
第三の物質として、例えば、分散剤及び乳化剤の双方の機能を有するものを用いた場合、「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の総量」及び「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の、エマルジョンの総重量を基準にして存在する総量」とは、上記(ア)及び(イ)のいずれの場合をも意味することとなり得るから明確ではない。
すなわち、金属酸化物の粒子の分散のために添加した分散剤(該双方の機能を有する第三の物質)は、その添加の目的(上記(ア)の場合)からみれば、上記総量には含まれない。
しかし、該分散剤を分散に使用した場合において、一般に分散系中に添加した添加剤の全量が必ず該粒子の表面にのみとどまるとはいえないのであり、添加量が多くなると該粒子の表面に拘束されない分散剤が存在することも起こり得る。その場合、エマルジョンの形成時には、該拘束されない分散剤は、結果的に安定なエマルジョンをつくる作用をする(上記(イ)の場合)ことにつながる。つまり、上記(ア)の添加の目的により乳化剤ではないとされた添加剤が実際には、上記(イ)の結果的にエマルジョンをつくる作用をするということとなり得る。
また逆に、後述する(一)で示すようにエマルジョンが静置後に相分離する場合もあり得ることを勘案すると、表面が処理されていない金属酸化物の粒子を用いた場合、エマルジョン中の乳化剤が該粒子表面に移行することが全く起こらない(つまり、最初に乳化剤として添加した添加剤がエマルジョンを形成する際に該粒子の表面に拘束されて実質的に分散剤の役割を果たすことが全く起こらないさ)と断言することもできない。
するとそれらのような場合に何が第三の物質の総量となるかは、本件訂正明細書の記載では明らかではなく、また、特許権者の上記主張(あ)〜(お)をみても十分に明らかではない。

更に、別の観点から上記(ア)及び(イ)の点を検討するに、引用文献3の従来技術に関する記載箇所によれば、炭素原子数3〜28個の2-ヒドロキシアルカン酸の添加目的は乳化剤ではなく、人の皮膚の質を強化するための成分としての局所使用のためのものとされている(刊行物3の第2頁第19〜21行)。同様に、刊行物3の先行技術文献にあたる特開平2-121906号公報にも皮膚に有益な成分として該2-ヒドロキシアルカン酸を添加する旨記載されている。すると、引用文献3の従来技術及び該先行技術文献では、該2-ヒドロキシアルカン酸は、皮膚に作用する有益な成分として添加されているのであって、乳化剤として添加されてはいないのであるから、この場合該2-ヒドロキシアルカン酸(例えば2-ヒドロキシオクタン酸、これは上述のとおり両親媒性物質である)は、エマルジョンを形成させる乳化剤とする目的で添加していないこととなる。するとこの場合、該2-ヒドロキシオクタン酸は、使用する目的からみて(ア)の意味において「安定なエマルジョンをつくるために添加したもの」にはあたらないと見ることができる。
ところが、引用文献3の上記箇所とは別の箇所には、「ここで、驚くべきことに、2-ヒドロキシアルカン酸、ポリジメチルシクロシロキサン、シリコーン乳化剤成分及び無機電解質並びに無機日光遮断剤すなわち超微細二酸化チタンを含有することにより前記所望特性を有する油中水型エマルジョンが得られることが発見された。」との記載もある。この記載によれば、シリコーン乳化剤成分を用いることにより、上記(一)に記載の可溶化を受けて油相と水相とに分離してしまうことを防ぐことができるのであるから、結果的には、安定なエマルジョンがつくられたこととなる(シリコーン乳化剤のみによるのか、或いは、シリコーン乳化剤と2-ヒドロキシアルカン酸との相互作用によるのかは不明であるが結果として安定なエマルジョンができたことには変わりがない)のであり、そうするとこの場合には(イ)の意味において「結果的にエマルジョンをつくる作用をするもの」に含まれると見ることもできる。
そうすると、(ア)の意味に該当すると捉えるか、または、(イ)の意味に該当すると捉えるかによって、「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の総量」或いは「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質の、エマルジョンの総重量を基準にして存在する総量」に該当したり、該当しなかったりすることになり得るから客観的に明確とはいえない。

(三)について
本件訂正明細書の実施例2の記載によれば、乳化剤とは別のC成分として「エロジールR972」が添加されている。
技術背景を参酌するに、例えば特開平3-72942号公報には、「乳化剤として特定のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン系界面活性剤を、また乳化安定化剤として特定の疎水性シリカを用いれば、乳化状態が長く、安定性に優れ、また良好な使用感触や使用性を有し、しかも幅広い粘土領域の調製が可能な油中水型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。」(第2頁左下欄下から6行〜同頁右下欄第2行)、「疎水性シリカ(エロジールR972)」(第1表)との記載がある。この特許公報では「乳化剤」と「乳化安定化剤」とは区別されていることから、この場合「乳化安定化剤」とは、それ自身は単独で「乳化剤」として添加はされないが、「乳化剤」とは別に更に加えることにより、つくられたエマルジョンを安定にさせる働きをもつものであるといえる。よって、このような狭義の観点に基づけば、上記「エロジールR972」、つまりこの「乳化安定化剤」は「乳化剤」とは異なるとみることができる。
一方、特許権者の提示した参考資料1の記載には、「互いに混合しない2種の液体(通常水とこれと混ざらない油などの有機液体)が安定なエマルジョンをつくるためには、一般に第三の物質を加える必要があり、この物質を乳化剤という」、「以上のほかスス、粘土その他の固体微粉末が乳化剤として役だつこともある。」との記載があり、また、上記(1)でもみたように「乳化剤」とは安定なエマルジョンをつくるために添加する第三の物質である。すると、上記「疎水性シリカ(エロジールR972)」は固体の微粉末であり、これを添加してつくったエマルジョンは安定性に優れているのであるから、この「疎水性シリカ(エロジールR972)」は、添加することにより結果としてエマルジョンをつくるのに役立つ固体微粉末であるといえる。よって、この技術常識に基づけば、上記「疎水性シリカ(エロジールR972)」、つまり上記「乳化安定化剤」は(広義には)「乳化剤」にあたるとみることもできる。
してみれば、上述のように見方によっては「安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質(乳化剤)」に、上記「乳化安定化剤」が含まれたり、含まれなかったりすることになり得るから、該「乳化剤」に何が含まれるかは客観的に明確には定まらない。
更に、上記参考資料1の定義及び技術背景を参酌すると、本件訂正明細書の請求項1及び3に記載の、分散剤と共に油中に分散された「0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物(特に有用な製品が得られるとされる0.01〜0.03ミクロンのもの)」は、「乳化剤」として役立つ固体微粉末にあたるとみることもできる(このようにみた場合、本件発明1及び3で、「乳化剤」の総量を1重量%として安定なエマルジョンが得られるのは、上記技術常識でいう「乳化剤」として役立つ固体微粒子が、本件発明1及び3の「乳化剤」から除外されていることによるといえることにもなるのである。)。
するとこの場合、本件訂正明細書の請求項1及び3の「乳化剤(安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質)」は上記参考資料1の定義とは整合しないことともなり得る点で、該「乳化剤(安定なエマルジョンをつくるために添加した第三の物質)」に何が含まれるかは客観的に明確には定まらない。

なお、特許権者の上記(あ)〜(お)の主張について検討するに、(あ)の点については、上述したように添加の目的を主観的に捉えることにより、同一の添加剤であっても上記総量とみたり、みなかったりすることが生じうるのであり、この点につき(い)〜(え)の点は、単に添加の目的から区別できるというにとどまるものであるから、そのような主張に基づいて、上記総量がどのように明確に画定されるのかは明らかではない(更に、(お)の点の界面活性剤の場合についても同様に乳化剤との区別が明確でないこととなり得る。)。

(5)以上のことから、上記(一)〜(三)の点で、依然として、乳化剤の総量が明確に定まらない点で本件訂正明細書の請求項1及び3の記載は明確ではなく、このことは特許権者の主張をみても明らかではないから、本件訂正明細書の請求項1及び3及びそれらを引用する請求項2、4の記載は、特許を受けようとする発明が明確であることに該当せず、また、発明の詳細な説明は当業者が該請求項1〜4に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって、本件訂正明細書の記載は、特許法第36条第4項又は同法第36条第5項第2号及び第6項の規定を満たしていない。

3-3.本件発明
上記2.でみたとおり訂正は認められたが、上記3-2.でみたとおり、本件訂正明細書の請求項1〜4の記載では、特許を受けようとする発明が明確ではない。
そこで、以下では、A.本件訂正明細書の請求項1または3に記載された「乳化剤の総量」または「総量で存在する1種以上の乳化剤」とは、『結果的に「安定なエマルジョンを調製する」ために添加されたものであるが、固体微粒子(後述する「乳化安定化剤」)は除外される』ものであると仮定する。
すると、本件特許の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1〜4」という)は、上記A.のとおりに仮定した上で、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】 0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物の粒子の油中分散液、1種以上の乳化剤及び水相を、油中水形エマルジョンが形成されるような条件下で混合することを含み、このようにして形成された油中水形エマルジョン中に存在する乳化剤の総量が1重量%未満であり、金属酸化物の粒子がエマルジョンの0.5〜30重量%を成し、油相がエマルジョンの10〜60重量%を成し、水相がエマルジョンの少なくとも40重量%を成す油中水形エマルジョンの製造方法。
【請求項2】 用いる乳化剤の少なくとも1種がシリコーンベースド乳化剤、脂肪アルコール、脂肪酸、グリセリルエステル、ソルビタンエステル、メチルグリコシドエステル、又はスクロースエステルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】 0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物をエマルジョンの総重量を基準にして0.5〜30重量%含む油中水形エマルジョンであって、エマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する1種以上の乳化剤と、エマルジョンの総重量を基準にして10〜60重量%の油相と、エマルジョンの総重量を基準にして少なくとも40重量%の水相とを含む油中水形エマルジョン。
【請求項4】 請求項1または2に記載の方法に従って製造された油中水形エマルジョンを含むかまたは請求項3に記載の油中水形エマルジョンを含む日焼け止め、皮膚保護剤、保湿剤又はアフターサンローション。」

3-4.特許法第29条について
3-4-1.発明の新規性について
(1)引用文献4の記載内容
エ-1.
「シリコーン油が油相成分中30重量%以上である油相10〜80重量%と、親油性界面活性剤0.1〜20重量%と、無機及び/又は有機粉末5〜50重量%と、水10〜80重量%、低級アルコール5〜30重量%、水溶性のオキシ酸及び水溶性のオキシ酸塩の一種又は二種以上が水相成分中の0.01重量%〜5重量%以上、水溶性の多糖硫酸塩および水溶性の単糖硫酸塩の一種又は二種以上が水相成分中の0.01〜5重量%、よりなる水相と、を含むことを特徴とする油中水型化粧料。」(請求項1)
エ-2.
「乳化化粧料としては油中水型乳化化粧料、水中油型乳化化粧料等があり、特に油中水型乳化化粧料は肌表面をオイル膜でカバーし、水分蒸発を防ぐことから肌荒れ等に効果があり、また…(略)…ことから、広く用いられている。」(第2頁左上欄10-15行)
エ-3.
「無機顔料としては、…(略)…粒子径0.1μm以下の微粒子酸化チタン、…(略)…が挙げられる。…(略)…本発明で用いる無機顔料および有機顔料は、疎水化処理で処理されたものが好適である。…(略)…疎水化処理剤としてはデキストリン脂肪酸エステル、金属石鹸、シリコーン系化合物、ジベンジリデンソルビトール等の有機化合物が挙(げ)られる。これらの疎水化処理剤を用いて疎水化処理する方法は、従来公知の方法を用いればよい。例えば…(略)…に記載された方法で得られた粉末等が挙げられる。」(第4頁左上欄下から3行-同頁左下欄下から3行)

(2)本件発明3について
エ-1.及びエ-3.で摘示した事項によれば、引用文献4には、「疎水化処理した粒子径0.1μm以下の微粒子酸化チタン5〜50重量%と、シリコーン油が油相成分中30重量%以上である油相10〜80重量%と、親油性界面活性剤0.1〜20重量%と、水10〜80重量%、低級アルコール5〜30重量%、水溶性のオキシ酸及び水溶性のオキシ酸塩の一種又は二種以上が水相成分中の0.01重量%〜5重量%以上、水溶性の多糖硫酸塩および水溶性の単糖硫酸塩の一種又は二種以上が水相成分中の0.01〜5重量%、よりなる水相と、を含むことを特徴とする油中水型化粧料。」の発明(以下、引用発明4-1という)が記載されている。
そこで、本件発明3と引用発明4-1とを対比するに、引用発明4-1の「0.1μm以下の微粒子酸化チタン」、「親油性界面活性剤」、「シリコーン油が油相成分中30重量%以上である油相」、「水10〜80重量%、低級アルコール5〜30重量%、水溶性のオキシ酸及び水溶性のオキシ酸塩の一種又は二種以上が水相成分中の0.01重量%〜5重量%以上、水溶性の多糖硫酸塩および水溶性の単糖硫酸塩の一種又は二種以上が水相成分中の0.01〜5重量%、よりなる水相」は、本件発明3の「0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物」、「乳化剤」、「油相」、「水相」にそれぞれ相当し、また、本件発明3では疎水化に使用した金属石鹸等の表面処理剤は本件発明3における乳化剤には該当しないから、結局、両者は、「0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物をエマルジョンの総重量を基準にして5〜30重量%含む油中水形エマルジョンであって、エマルジョンの総重量を基準にして0.1〜1重量%の総量で存在する1種以上の乳化剤と、エマルジョンの総重量を基準にして10〜60重量%の油相と、エマルジョンの総重量を基準にして40〜80重量%の水相とを含む油中水形エマルジョン」の点で一致する。
なお、特許権者は特許異議意見書で、引用文献4の油中水型化粧料は、多層型化粧料であって、本件発明の油中水形エマルジョンはない旨、乳化剤の使用量が2.0%より少ない範囲では多層型化粧料が提供される旨、主張するが、引用文献4の多層型化粧料は、長期間静置したとき二層以上の多層に分かれても使用時には油中水型乳化化粧料として用いられるものであるから、この油中水型乳化化粧料として用いられるものは油中水型エマルジョン(本件発明3の「油中水形エマルジョン」)であることに変わりはない。
したがって、本件発明3は、引用文献4に記載された発明である。

(3)本件発明4について
本件発明4は、本件発明3に係る油中水型エマルジョンを日焼け止め、皮膚保護剤、保湿剤又はアフターサンローションとするものであるところ、エ-2.で摘示した事項にあるとおり、引用発明4-1は、皮膚を保湿して保護する作用を持つものであるから、このものは皮膚保護剤又は保湿剤に該当する。
したがって、本件発明4は引用文献4に記載された発明である。

3-4-2.発明の進歩性について
(1)引用文献3の記載内容
ウ-1.
「この発明のエマルジョンは、哺乳類の皮膚や毛への局所使用に適した、特に人間向けのものであって、日光のダメージから保護を与えるシリコーン油中水型のエマルジョンである。該エマルジョンはその例外的な安定性と同様に飛び抜けている。」(第7頁下から5行-第8頁第1行)
ウ-2.
「水分散性及び油分散性の2つ形式の超微細二酸化チタンが市販されており、本発明のエマルジョンではいずれか又はその両方を使用することができる。本発明の水分散性の二酸化チタンは超微細二酸化チタンであり、その粒子は、粒子の表面に親水性表面を付与する物質で被覆されていることとないことがある。このような物質の例には酸化アルミニウム及び珪酸アルミニウムが含まれる。本発明の油分散性の二酸化チタンは微細に分割された二酸化チタンであり、その粒子は疎水性表面を有し、このためにステアリン酸アルミニウム…(略)…のような金属石鹸又は有機シリコーン化合物で被覆することができる。」(第12頁第23行-第13頁第9行)
ウ-3.
「水に加え、i.揮発性のポリジメチルシロキサンを重量で1-50%、ii.シリコーン界面活性剤を重量で0.1-25%、iii.炭素数3-28個の2-ヒドロキシアルカン酸又はその塩、石鹸、それらの酸性石鹸又はそれらの混合物を重量で0.1-10%、iv.平均粒径が1-100nmである超微細二酸化チタンを重量で1-10%及びv.無機電解質を重量で0.001-10%、を含む哺乳類の皮膚や毛への局所使用に適したシリコーン油中水型エマルジョン」(請求項1)
ウ-4.
「2-ヒドロキシオクタン酸のようなヒドロキシアルカン酸を含む古典的な水中油型エマルジョンのような、あるエマルジョンは、0〜45℃までの範囲で変化し得る温度での長期間の保存にあたり、十分な安定性を欠くという不利を受け、それはそのようなエマルジョンが、製造後及び販売され、消費者が使用する前にさらされる条件である。このことは少なくとも、その製品に慣用される乳化剤により、油相と水相の分離が起こるという結果を伴う、ヒドロキシアルカン酸の部分的な可溶化によると信じられている。」(第5頁第19〜30行)

(2)引用文献4の記載内容
上記3-4.のエ-1〜エ-3.で摘示した事項に加え、引用文献4には、次の記載がある。
エ-4.
「本発明の油中水型乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に用いられる成分を配合することができる。例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリン等の保湿剤、…(略)…紫外線吸収剤等が配合可能である。」(第7頁右上欄第1-9行)
エ-5.
「本発明において用いる内相を形成する水は、油中水型乳化化粧料全量中10〜80重量%である。」(第6頁左上欄第2-3行)
エ-6.
「実施例1 油中水型乳化ファンデーション <油相>デカメチルシクロペンタンシロキサン20.0香料 適量、<親油性界面活性剤>ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン5.0(一般式[3]、ポリオキシアルキレン基20%)<粉末>デキストリン脂肪酸エステル処理顔料20.0<水相>イオン交換水 残部、95%エチルアルコール15.0、1,3ブチレングリコール3.0、メチルパラベン0.1、クエン酸ナトリウム0.05、コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05<製法>油相及び親油性界面活性剤を70℃に加熱攪拌後、粉末を添加し、さらに予め70℃に加熱しておいた水相を添加し乳化分散する。その後室温まで攪拌冷却して目的の乳化ファンデーションを得た。ここで用いたデキストリン脂肪酸エステル処理顔料は…(略)…マイカ、二酸化チタン、酸化鉄の混合物を肌色に着色した後、デキストリン脂肪酸エステルのアイソーバーER(エクソン化学)溶液に添加、撹拌後脱溶媒し、乾燥、粉砕して得た。…(略)…以降のデキストリン脂肪酸エステル処理顔料は、同様の方法で得たものである。」(実施例1)
エ-7.
「実施例8 多層ファンデーション <油相>デカメチルシクロペンタンシロキサン(沸点210℃)30.0、ジメチルポリシロキサン(n=5〜10)5.0、紫外線吸収剤2.4、香料0.3、<親油性界面活性剤>ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン(一般式[A]、ポリオキシアルキレン基20%)2.0、<粉末>デキストリン脂肪酸エステル処理粉末25.0、<水相>イオン交換水 残部、エチルアルコール10.0、防腐剤0.3、クエン酸ナトリウム0.05、コンドロイチン硫酸ナトリウム0.05<製法>実施例1に準じる。」(実施例8)

(3)本件発明1について
エ-7.で摘示した事項によれば、粉末として、デキストリン脂肪酸エステル処理粉末25.0を、油相として、デカメチルシクロペンタンシロキサン30.0、ジメチルポリシロキサン5.0、紫外線吸収剤2.4及び香料0.3を、親油性界面活性剤として、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン2.0を、水相として、残部のイオン交換水、エチルアルコール10.0、防腐剤0.3、クエン酸ナトリウム0.05及びコンドロイチン硫酸ナトリウム0.05を、それぞれ含む多層ファンデーションは、エ-6.で摘示した実施例1に準じた方法、すなわち、油相及び親油性界面活性剤を70℃に加熱攪拌後、デキストリン脂肪酸エステル処理粉末を添加し、さらに予め70℃に加熱しておいた水相を添加し乳化分散する方法により製造されるものである。この「油相及び親油性界面活性剤を70℃に加熱攪拌後、デキストリン脂肪酸エステル処理粉末を添加し」は、70℃に加熱して攪拌されて油相と親油性界面活性剤が均一になった状態のところにデキストリン脂肪酸エステル処理粉末を添加することを示しているから、このときデキストリン脂肪酸エステル処理粉末は油相に分散された状態に置かれるものである。
すると、引用文献4には、「デキストリン脂肪酸エステル処理粉末の油相分散液、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン及び水相を多層ファンデーションが形成されるような条件で乳化分散することを含み、形成された多層ファンデーション中に存在するポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの量が2.0重量%であり、デキストリン脂肪酸エステル処理粉末が25.0重量%を成し、油相が多層ファンデーション中の37.7重量%を成し、水相が多層ファンデーションの35.3重量%を成す多層ファンデーションの製造方法」の発明(以下、引用発明4-2という)が記載されている。
本件発明1と引用発明4-2とを対比する。上記3-4-1.(2)でみたとおり、引用文献4の多層型化粧料は使用時に油中水型乳化化粧料として用いられるものであるから、この油中水型乳化化粧料として用いられるものとは油中水型エマルジョン(本件発明の「油中水形エマルジョン」)であることに変わりはない。また、エ-6.で摘示したとおり引用発明4-2の「デキストリン脂肪酸エステル処理粉末」であるデキストリン脂肪酸エステル処理顔料とは、マイカ、二酸化チタン、酸化鉄の混合物を肌色に着色した後粉砕して得た微粉状のもの、すなわち、金属酸化物の粉末である。
すると、引用発明4-2の「油相分散液」、「デキストリン脂肪酸エステル処理粉末」、「多層ファンデーション」、「乳化分散する」、「ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン」は、それぞれ本件発明1の「油中分散液」、「金属酸化物の粒子」、「油中水形エマルジョン」、「混合する」、「乳化剤」に相当し、また本件発明1では疎水化に使用する金属石鹸等の表面処理剤は本件発明1における乳化剤には該当しないから、結局、両者は「金属酸化物の粒子の油中分散液、1種以上の乳化剤及び水相を、油中水形エマルジョンが形成されるような条件下で混合することを含み、金属酸化物の粒子がエマルジョンの25重量%を成し、油相がエマルジョンの37.7重量%を成す油中水形エマルジョンの製造方法」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1.本件発明1では金属酸化物の粒子が0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有するのに対し、引用発明4-2にはその技術的事項を有さない点

相違点2.本件発明1では、水相が少なくとも40重量%であるのに対し、引用発明4-2では35.3重量%である点

相違点3.本件発明1では、形成された油中水形エマルジョン中に存在する乳化剤の総量が1重量%未満であるのに対し、引用発明4-2では2重量%である点

以下、上記相違点について検討する。
相違点1について
エ-3.で摘示した事項にあるように、引用文献4においては、添加する無機顔料として、0.1μm以下の微粒子酸化チタンを用いることができる。してみれば、引用発明4-2において無機顔料として、デキストリン脂肪酸エステル処理粉末に代えて、0.1μm以下の微粒子酸化チタンを用いることに当業者は容易になし得たことである。
相違点2について
エ-5.で摘示した事項にあるように、引用文献4における油中水型乳化化粧料中の水は、10〜80重量%の間とすることができるのであるから、引用発明4-2の水相の量を40重量%以上にすることは当業者が容易になし得たことである。
相違点3について
エ-1.で摘示した事項にあるように、引用文献4の油中水型乳化化粧料は、親油性界面活性剤を0.1〜20重量%の範囲で含むことができるものである。ここで引用発明4-2は実例の一つとして乳化剤を2.0重量%使用しているものであると認められるのであって、引用文献4の乳化剤の下限0.1重量%とは、この下限から1重量%未満の間では油中水型乳化化粧料が形成されない値であると認めることはできない。
すると、引用発明4-2において、使用する乳化剤の量を0.1以上1重量%未満とすることは当業者が容易になし得たことである。

特許権者は特許異議意見書で、上記3-4-1.(2)でみたとおり、引用文献4の油中水型化粧料は、多層型化粧料であって、これは本件発明の油中水形エマルジョンではない旨、乳化剤の使用量が3%と2%の使用量の間に油中水型乳化化粧料を提供するかあるいは多層型化粧料を提供するかの何らかの境界があり、2.0%より少ない範囲では2.0%と同様に多層型化粧料が提供される旨主張するが、引用文献4の多層型化粧料は、長期間静置したときに二層以上の多層に分かれるものの、使用時には油中水型乳化化粧料として用いられるものであるから、この油中水型乳化化粧料は油中水型エマルジョン(本件発明の「油中水形エマルジョン」)であることに変わりはない。なお、引用文献4の各種多層型化粧料の実施例では、親油性界面活性剤(「乳化剤」に相当する)の使用量が8.0重量%のものがあることを示されていることからみても、乳化剤の使用量が3%と2%の使用量の間に多層型化粧料ができる境界があるとは認められない。
そして、本件発明1により奏される作用効果について検討するに、本件訂正明細書には、特許権者が主張する本件発明1の特徴(「あらかじめ金属酸化物を油相に分散させて油中分散液とし、これと、乳化剤及び水相を混合する」)を有する、引用文献4の如き従来技術の開示及び合理的な条件に基づく対比はないから、従来技術とは異なる本件発明1の構成により奏される作用効果が何であるかは十分に把握することはできないが、少なくとも本件訂正明細書の記載によれば「本発明の方法は今までに可能であったよりも少量の乳化剤を用いる金属酸化物粒子を含む油中水形エマルジョンの製造手段を提供する」ことが本件発明1により奏される主要な作用効果であるといえる。
一方、引用発明4-2は、親油性界面活性剤を0.1〜1重量%未満とできることが示されているのであるから、本件発明1の上記主要な作用効果は引用発明4-2に基づいて当業者が普通に予測し得たものであるといえる。
よって、本件発明1により奏される効果は、引用文献4の記載からみて格別予想しがたいものであるということもできない。
したがって、本件発明1は、引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明2について
本件発明2は本件発明1を引用する発明であるので、以下、本件発明2の発明の構成要件について検討する。
引用発明4-2のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、本件発明2の「シリコーンベースド乳化剤」に相当する。
したがって、この点において本件発明2と引用発明4-2との差違はないから、本件発明2は、引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明3について
ウ-1.及びウ-2.で摘示した事項を勘案すると、引用文献3には、「水に加え、平均粒径が1-100nmである超微細二酸化チタンを重量で1-10%、シリコーン界面活性剤を重量で0.1-25%、炭素数3-28個の2-ヒドロキシアルカン酸又はその塩、石鹸、それらの酸性石鹸又はそれらの混合物を重量で0.1-10%、揮発性のポリジメチルシロキサンを重量で1-50%、無機電解質を重量で0.001-10%を含む哺乳類の皮膚や毛への局所使用に適したシリコーン油中水型エマルジョン」の発明(以下、「引用発明3」という)が記載されている。
ウ-2.で摘示した事項によれば引用発明3の「二酸化チタン」は、表面処理をしてもしなくてもよいものであるので、引用発明3の「平均粒径が1-100nmである超微細二酸化チタン」、「揮発性のポリジメチルシロキサン」は、本件発明3の「0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物」、「油相」に相当し、引用発明3の「無機電解質」を加えた水は、本件発明3の「水相」に相当する。
すると両者は、「1-100nmの平均一次粒度を有する二酸化チタンをエマルジョンの総重量を基準にして1〜10重量%含む油中水形エマルジョンであって、乳化剤と、エマルジョンの総重量を基準にして10〜50重量%の油相と、水相とを含む油中水型エマルジョン」の点で一致し、次の1及び2の点で相違する。

相違点1.本件発明3では、乳化剤がエマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する一種以上のものであるのに対し、引用発明3では「シリコーン界面活性剤を重量で0.1-25%、炭素数3-28個の2-ヒドロキシアルカン酸又はその塩、石鹸、それらの酸性石鹸又はそれらの混合物を重量で0.1-10%」それぞれ含む点

相違点2.本件発明3では、水相がエマルジョンの総重量を基準にして少なくとも40重量%であるのに対し、引用発明3では、水相の下限の記載がない点

以下、相違点1及び2について検討する。
相違点1について
引用発明3記載の、炭素数3-28個の2-ヒドロキシアルカン酸…(略)…混合物には、一般的に長鎖といわれる部類に入る炭素数のものがあり、技術背景を参酌するに、それらは親油基と親水基とを分子内に有するので乳化剤としての性質を有するものも含まれているといえる。
しかし、少なくとも引用文献3の記載からみて、このものは界面活性剤として添加されているものではなく、ヒトの皮膚の質を改善する成分として添加していると認められるから、このような成分の添加量は、エマルジョンとするための界面活性剤とは独立に、任意の量で添加できるものと解するのが相当である。
すると、上記の2-ヒドロキシアルカン酸は、最低限の量(重量で0.1%)として添加してもエマルジョンの生成には影響を与えない成分と認められるのであるから、仮に2-ヒドロキシアルカン酸が「結果的に安定なエマルジョンを調製する」という作用効果を有する成分であったとしても、界面活性剤の総量としては、0.2〜1重量%未満とすることは当業者が容易になし得たことであるといえる。
相違点2について
引用文献3の実例をみても、油中水型エマルジョンの水相の含有量の下限が40%であることは、油中水型エマルジョンにおいて、ごく普通の範囲である。
してみれば、引用発明3において、水相をエマルジョンの総重量を基準にして少なくとも40重量%と定めることに当業者は容易に想到し得たといえる。
特許権者は、引用文献3の請求項1に記載された5つ成分の範囲を加算して、その上限では水を含む余地がなく、その下限では水相が97.799%になるから、このようなエマルジョンが現実的なものではない旨主張するが、油中水中型エマルジョンに添加できる水量は特許権者が主張する上限或いは下限の値に限定される必然性はなく、他の引用文献や先行技術や技術常識等にあるような現実的な油中水型エマルジョンとする適量を添加できることは当業者に明らかである。
また、本件発明4により奏される作用効果について検討しても、格別予想しがたい効果を奏したということもできない。
したがって、本件発明4は、引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1または2に記載の方法に従って製造された油中水形エマルジョン或いは本件発明3に記載の油中水形エマルジョンを含む日焼け止め、皮膚保護剤、保湿剤又はアフターサンローションであるところ、ウ-1.で摘示した事項によれば、引用発明3のエマルジョンは、人間の皮膚への使用に適した、日光のダメージから保護を与えるシリコーン油中水型のエマルジョンであるから、引用発明3は、皮膚保護剤、保湿剤、アフターサンローションとしての使用が示唆されるものである。したがって、本件発明4は引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

本件発明4と3-4-1.(2)で摘示した油中水型化粧料に係る引用発明4-1(「疎水化処理した0.1μm以下の微粒子酸化チタン5〜50重量%と、シリコーン油が油相成分中30重量%以上である油相10〜80重量%と、親油性界面活性剤0.1〜20重量%と、水10〜80重量%、低級アルコール5〜30重量%、水溶性のオキシ酸及び水溶性のオキシ酸塩の一種又は二種以上が水相成分中の0.01重量%〜5重量%以上、水溶性の多糖硫酸塩および水溶性の単糖硫酸塩の一種又は二種以上が水相成分中の0.01〜5重量%、よりなる水相と、を含むことを特徴とする油中水型化粧料。」)とを対比するに、引用発明4-1は、日焼け止めではない点で両者は相違し、その余の点で一致すると認められる。
上記相違点について検討するに、エ-4.で摘示した事項によれば、引用発明4-1には、更に紫外線吸収剤を添加することができる。
すると、引用発明4-1において、紫外線吸収剤を添加して日焼け止めに供することは当業者が容易になし得たことである。
また、本件発明4によって、引用文献4の記載からみて格別予想しがたい効果を奏したということもできない。
したがって、本件発明4は引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜4についての特許は、特許法第36条第4項又は第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。また、本件発明3、4は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであり、また、本件発明1〜4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
油中水形エマルジョンの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物の粒子の油中分散液、1種以上の乳化剤及び水相を、油中水形エマルジョンが形成されるような条件下で混合することを含み、このようにして形成された油中水形エマルジョン中に存在する乳化剤の総量が1重量%未満であり、金属酸化物の粒子がエマルジョンの0.5〜30重量%を成し、油相がエマルジョンの10〜60重量%を成し、水相がエマルジョンの少なくとも40重量%を成す油中水形エマルジョンの製造方法。
【請求項2】用いる乳化剤の少なくとも1種がシリコーンベースド乳化剤、脂肪アルコール、脂肪酸、グリセリルエステル、ソルビタンエステル、メチルグリコシドエステル、又はスクロースエステルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物をエマルジョンの総重量を基準にして0.5〜30重量%含む油中水形エマルジョンであって、エマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する1種以上の乳化剤と、エマルジョンの総重量を基準にして10〜60重量%の油相と、エマルジョンの総重量を基準にして少なくとも40重量%の水相とを含む油中水形エマルジョン。
【請求項4】請求項1または2に記載の方法に従って製造された油中水形エマルジョンを含むかまたは請求項3に記載の油中水形エマルジョンを含む日焼け止め、皮膚保護剤、保湿剤又はアフターサンローション。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】
本発明は油中水形エマルジョンに関し、特に小粒度を有する金属酸化物を含む油中水形エマルジョンに関する。
【0002】
【従来の技術】
存在する乳化剤量が典型的にエマルジョンの5〜10重量%である、小粒度を有する金属酸化物を含む油中水形エマルジョンは公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
今までに可能であったよりも少量の乳化剤を含む、安定な油中水形エマルジョンを提供することが、本発明の目的である。少量の乳化剤を含む、安定な油中水形エマルジョンの便利な製造方法を提供することが、本発明の他の目的である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、油中水形エマルジョンの製造方法は、0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物の粒子の油中分散液を1種以上の乳化剤及び水相と、油中水形エマルジョンが形成されるような条件下で混合することを含み、このようにして形成された油中水形エマルジョン中に存在する乳化剤の総量が5重量%未満であり、金属酸化物の粒子がエマルジョンの0.5〜30重量%を成し、油相がエマルジョンの10〜60重量%を成し、水相がエマルジョンの少なくとも40重量%を成す方法である。
【0005】
また、本発明によると、油中水形エマルジョンは0.2ミクロン未満の平均一次粒度を有する金属酸化物をエマルジョンの総重量を基準にして0.5〜30重量%含み、エマルジョンの総重量を基準にして1重量%未満の総量で存在する1種以上の乳化剤と、エマルジョンの総重量を基準にして10〜60重量%の油相と、エマルジョンの総重量を基準にして少なくとも40重量%の水相とを含む。
【0006】
本発明の製造方法と製品との好ましい実施態様では、金属酸化物はチタン、亜鉛又は鉄の酸化物を含む。
本発明による油中水形エマルジョンの製造に用いる金属酸化物の粒子の平均一次粒度は0.2ミクロン未満であり、粒子が実質的に球形である場合には、この寸法は直径を表すことになる。しかし、本発明は非球形である金属酸化物の粒子をも含み、このような場合には、平均一次粒度は最大寸法を意味する。
好ましくは、粒子の平均一次粒度は、実質的に球形である場合に、0.01〜0.15ミクロン、特に好ましくは0.01〜0.06ミクロンである。0.01〜0.03ミクロンの平均一次粒度を有する実質的に球形の粒子を用いて、特に有用な製品が得られる。針状形を有する粒子では、一次粒子の平均最大寸法は好ましくは0.15ミクロン、特に好ましくは0.02〜0.10ミクロンである。
【0007】
金属酸化物が二酸化チタンである場合には、粒子は好ましくは針状形であり、8:1から2:1までの最大寸法対最小寸法の比を有する。
金属酸化物が酸化亜鉛である場合には、粒子は好ましくは0.005〜0.15ミクロンの平均一次粒度を有し、さらに好ましくは0.03〜0.07ミクロンの平均一次粒度を有する。
金属酸化物の粒子は実質的に純粋な金属酸化物を含むが、無機被覆層又は有機被覆層をも有することができる。例えば、二酸化チタンの粒子は他の元素の酸化物、例えばアルミニウム、ケイ素又はジルコニウムの酸化物によって被覆されることができ、本発明の製品に特に有用である、針状の、被覆された二酸化チタンの形式は英国特許第2,205,088号に開示されている。
【0008】
金属酸化物の粒子は、任意に、例えばポリオール、アミン、アルカノールアミン、ポリマーの有機ケイ素化合物、例えばポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース及びキサンカンガムのような親水性ポリマー又は界面活性剤のような、1種以上の有機物質の被覆層を有することもできる。
【0009】
本発明の方法に用いるために適した乳化剤はシリコーンベースド(silicone-based)乳化剤と、例えば脂肪アルコール、脂肪酸、グリセリルエステル、ソルビタンエステル、メチルグリコシドエステル及びスクロースエステルのような、脂質乳化剤とを含む。これらの乳化剤の多くは補充可能な原料物質から容易に製造することができ、容易に生分解可能であり、有害な副生成物を含まない。
【0010】
本発明の方法を実施する場合に、前述のような一次粒度を有する金属酸化物の油中分散液が用いられる。典型的に、粒状粉砕媒体の存在下及び分散剤の存在下の油中で金属酸化物を微粉砕することによって、該分散液が製造される。
【0011】
英国特許第2,206,339号は有機分散剤を含む、平均粒度0.01〜0.15ミクロンを有する二酸化チタンの油中分散液を開示する。英国特許第2,206,339号に開示された分散液は、二酸化チタンを含む油中水形エマルジョンを製造することが望ましい場合に、本発明の方法に用いるために特に適する。
英国特許第2,206,339号に述べられた方法を用いて、本発明の方法に用いるために適した、二酸化チタン以外の金属酸化物の池中分散液を製造することができる。
【0012】
金属酸化物の分散液の製造に用いることができる適当な分散剤には、例えば式:X.CO.AR[式中、Aは二価架橋基であり、Rは第一、第二もしくは第三アミン基又は酸によるその塩又は第四アンモニウム塩基であり、XはーCO-基と共に式:HOR1 COOH(式中、R1は飽和もしくは不飽和ヒドロカルビル基を表す)で示されるヒドロキシカルボン酸から誘導されるポリエステル鎖残基である]で示される分散剤のような、英国特許第2,206,339号に開示されている分散剤がある。典型的な分散剤はリシノール酸、ヒドロキシステアリン酸及び水素化ヒマシ油脂肪酸に基づく。
【0013】
1種以上のポリエステル又はヒドロキシカルボン酸もしくはヒドロキシ基を含まないカルボン酸の塩に基づく分散剤も用いることができる。他の適当な分散剤は、脂肪酸アルカノールアミドと、C6〜C22飽和もしくは不飽和脂肪酸に基づくカルボン酸又はその塩とのモノエステルである。例えば、アルカノールアミドはエタノールアミン、プロパノールアミン又はアミノエチルエタノールアミンに基づくことができる。代替え分散剤はアクリル酸もしくはメタクリル酸のポリマーもしくはコポリマーに基づく分散剤、又は例えばエトキシル化リン酸エステルに基づく分散剤のように、成分ラジカルにエトキシ基を有する分散剤である。
【0014】
本発明の方法に用いる乳化剤の総量はエマルジョンの5重量%未満、好ましくは1重量%未満であり、適当な乳化剤は前述した通りである。本発明の方法は今までに可能であったよりも少量の乳化剤を用いる金属酸化物粒子を含む油中水形エマルジョンの製造手段を提供する。本発明の1態様による新規な油中水形エマルジョンは全体で1%未満の乳化剤を含む。
【0015】
油相の組成はエマルジョンの目的の用途に適するように選択する。例えば、エマルジョンが日焼け止めとしての使用に予定される場合には、油相は一般にパラフィン油、トリグセリドエステル、脂肪酸と脂肪アルコールとのエステル又はシリコーン油を含む。
本発明の方法によると、油中水形エマルジョンが形成されるような条件下で水相を油相と混合することによって油中水形エマルジョンが製造される。
典型的には、金属酸化物の油点分散液に乳化剤と、望ましい場合には、他の親油性成分とを混合して、油相を形成する。次に、この油相に水相を混合して、油中水形エマルジョンを形成する。或いは、乳化剤を含む油相に水相を混合することによって予め製造したエマルジョンを金属酸化物の分散液に混合することができる。
【0016】
該エマルジョンは室温において製造することができるが、少なくとも40℃の温度を用いることが好ましい、室温において固体である成分が存在する場合には、混合前に1相又は両相を加熱することが通常必要である。
予定の用途に依存して、エマルジョンに他の成分を加えることもできる。これらの成分をエマルジョンに混合するか、又は分散液、油相もしくは水相に、これらの構成要素を共に混合する前に、加えることができる。例として、コスメチックとしての用途に予定されるエマルジョンに香料、酸化防止剤、保湿剤及び増粘剤が通常加えられる。
【0017】
本発明の油中水形エマルジョンは例えば日焼け止め、皮膚保護剤、保湿剤及びアフターサンローションとしての用途を見い出しており、可視光線に対して透過性であるがUV光線に対しては吸収性である製品の製造に特に有用である。
該エマルジョンは公知のエマルジョンよりも少量の乳化剤を用い、好ましい乳化剤は容易に製造され、容易に生分解可能である。
本発明を下記実施例によって説明する。
【0018】
【実施例】
実施例1
重量%
1)パラフィン油 12.5
2)鉱油とカプリン酸/カプリル酸トリグリセリドとの1:1混合物中の二酸化チタンの分散液(商品名Tioveil MOTGで販売)
12.5
3)ソルビタンモノオレエート(商品名Span80で販売) 0.9
4)硫酸マグネシウム7水和物 0.6
5)プロピレングリコール 5.0
6)脱イオン水 100重量%まで
成分1〜3を一緒に混合し、75℃に加熱して、油要素を形成して、75℃においてサーモスタット付き混合器に入れた。成分4〜6を一緒に混合し、75℃に加熱して、水性要素を形成する。水性要素を油要素に激しく撹拌しながら(モーター駆動パドルスターラー)徐々に加えて、エマルジョンを形成する。エマルジョンを絶えず激しく撹拌しながら、約1年分間にわたって室温に冷却した。生じたエマルジョンは50℃において少なくとも4日間安定であった。
【0019】
実施例2
A相 重量%
PEG-1グリセリルソルビタンイソステアレート(商品名Arlacel582)
3.25
PEG-40ソルビタンパーオレエート(商品名Arlatone T)
0.75
パラフィン油 8.00
ひまわり油 8.00
カプリル酸-カプリン酸トリグリセリド(商品名Miglyol 812N)
4.00
ステアリン酸マグネシウム 1.00
鉱油とカプリン酸/カプリル酸トリグリセリドとの1:1混合物中の二酸化チタンの分散液(商品名Tioveil MOTG)
10.00
B相
グリセロール 4.00
硫酸マグネシウム7水和物 0.70
脱イオン水 59.78
5-クロロー2-メチルー4-イソチアゾリンー3-オン(及び)2-メチルー4-イソチアゾリンー3-オン(商品名Kathon CG)
0.02
C相
ヒュームド二酸化ケイ素(商品名Aerosil R972) 0.50
A相とB相とを別々に80℃に加熱した。加熱された容器中でパドルスターラーを用いて激しく撹拌しながら、A相にB相を加えた。C相を激しく撹拌しながら加え、生成物を300rpmで撹拌しながら25℃に冷却した。
【0020】
実施例3
下記処方に従って、サンクリーム(suncream)を油中水形エマルジョンとして製造した。
A相 重量%
ラウリルメチコーンコポリオール(DC Q2-5200[5]) 0.833
PEG-40ソルビタンパーオレエート(商品名Arlatone T[1])
0.147
イソヘキサデカン(Arlamol HD[1]) 6.00
ひまわり油 6.00
カプリル酸-カプリン酸トリグリセリド(商品名Miglyol 812N[4])
3.00
鉱油とカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド中の二酸化チタン分散液(商品名 Tioveil MOTG[2])
10.00
B相
塩化ナトリウム 1.00
グリセリン 4.00
アラントイン 0.20
D-Panthenol[3] 0.80
脱イオン水 68.02
提供者
[1]ICI Specialty Chemicals、[2]Tioxide Specialties Limited、[3]Hoffmann La Roche、[4]Huls、[5]Dow Corning
A相とB相とを別々に75℃に加熱し、A相にB相を加え、両相を激しく撹拌することによって混合した。生じた混合物を、迅速な撹拌を維持しながら、45分間かけて25℃に冷却した。
【0021】
実施例4
下記処方に従って、サンクリームを油中水形エマルジョンとして製造した。
A相 重量%
セチルジメチコーンコポリオール(Abil EM90[4]) 0.833
PEG-40ソルビタンパーオレエート(商品名Arlatone T[1])
0.147
水素化ヒマシ油(Castor Wax) 0.30
ステアリルアルコール 0.10
ステアリン酸マグネシウム 0.20
鉱油 11.00
イソプロピルミリステート 4.00
鉱油とカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド中の二酸化チタン分散液(商品名 Tioveil MOTG[2])
10.00
B相
塩化ナトリウム 0.80
硫酸マグネシウム7水和物 0.20
グリセリン 4.00
アラントイン 0.20
D-Panthenol[3] 0.80
脱イオン水 67.42
提供者
[1]ICI Specialty Chemicals、[2]TioxideSpecialties Limited、[3]Hoffmann La Roche、[4]Th Goldschmidt AG。
A相とB相とを別々に75℃に加熱し、加熱された容器においてA相にB相を加えた。循環速度3.115m/秒を有するブレードスターラーで両相を混合した。混合後に、撹拌を維持しながら、45分間かけて生成物を25℃に冷却した。
【0022】
実施例5
下記処方に従って、サンクリームを油中水形エマルジョンとして製造した。
A相 重量%
ラウリルメチコーンコポリオール(DC Q2-5200[5]) 0.833
PEG-40ソルビタンパーオレエート(商品名Arlatone T[1])
0.147
ひまわり油 14.00
鉱油 14.00
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド(Miglyol 812N[4])
7.00
鉱油とカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド中の二酸化チタン分散液(商品名 Tioveil MOTG[2])
10.00
B相
塩化ナトリウム 1.00
グリセロール 4.00
アラントイン 0.20
D-Panthenol[3] 0.80
脱イオン水 48.02
提供者
[1]ICI Specialty Chemicals、[2]TioxideSpecialties Limited、[3]Hoffmann La Roche、[4]Huls、[5]Dow Corning。
A相とB相とを別々に75℃に加熱し、加熱された容器においてA相にB相を加えた。循環速度3.115m/秒を有するブレードスターラーで両相を混合した。混合後に、撹拌を維持しながら、45分間かけて生成物を25℃に冷却した。
【0023】
実施例6
下記処方に従って、サンクリームを油中水形エマルジョンとして製造した。
A相 重量%
ラウリルメチコーンコポリオール(DC Q2-5200[5]) 0.833
PEG-40ソルビタンパーオレエート(商品名Arlatone T[1])
0.147
ひまわり油 12.80
鉱油 12.80
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド(Miglyol 812N[4])
6.40
鉱油とカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド中の二酸化チタン分散液(商品名 Tioveil MOTG[2])
10.00
イソアミルp-メトキシシンナメート(Neo Heliopan Eタイプ1000[6])
3.00
B相
塩化ナトリウム 1.00
グリセロール 4.00
アラントイン 0.20
D-Panthenol[3] 0.80
脱イオン水 48.02
提供者
[1]ICI Specialty Chemicals、[2]TioxideSpecialties Limited、[3]Hoffmann La Roche、[4]Huls、[5]Dow Corning、[6]Haarmann&Reimer。
A相とB相とを別々に75℃に加熱し、加熱された容器においてA相にB相を加えた。循環速度3.115m/秒を有するブレードスターラーで両相を混合した。混合後に、撹拌を維持しながら、45分間かけて生成物を25℃に冷却した。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-30 
出願番号 特願平5-38577
審決分類 P 1 651・ 113- ZA (B01J)
P 1 651・ 534- ZA (B01J)
P 1 651・ 121- ZA (B01J)
P 1 651・ 536- ZA (B01J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 新居田 知生  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 岡田 和加子
中村 泰三
登録日 2003-06-20 
登録番号 特許第3441755号(P3441755)
権利者 インペリアル・ケミカル・インダストリーズ・ピーエルシー
発明の名称 油中水形エマルジョンの製造方法  
代理人 浅村 皓  
代理人 梶原 斎子  
代理人 池田 幸弘  
代理人 梶原 斎子  
代理人 池田 幸弘  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ