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審決分類 |
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 G03G 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 G03G 審判 全部申し立て 2項進歩性 G03G |
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管理番号 | 1136208 |
異議申立番号 | 異議2003-72076 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-10-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-15 |
確定日 | 2006-04-19 |
異議申立件数 | 3 |
事件の表示 | 特許第3378347号「カラー画像形成装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3378347号の請求項に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3378347号に係る発明は、平成6年3月31日に特許出願され、平成14年12月6日にその特許の設定登録がなされ、その後、中石幸明、境恒徳、キヤノン株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成17年3月28日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年6月7日に特許異議意見書提出とともに訂正請求がなされ、平成17年11月22日付けで訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成18年1月30日に意見書及び訂正請求取下書が提出されたものである。 2.本件発明 特許査定時の明細書の特許請求項の範囲の請求項1ないし7に記載された発明は次のものである。 【請求項1】 イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラッ ク(K)のトナーを用いてカラー画像を形成する画像形成装置において、 光を試料に照射し、試料面からの鏡面反射光束をφ、標準面からの反射光束をφsとして光沢度Gを G=(φ/φs)×(使用した標準面の光沢度) で定義した場合において、 ブラック画像の光沢度をGk,ブラック画像以外のカラー画像の光沢度をGcとして、光沢度の関係が、 Gk≦15, Gc≦20 かつ Gk≦Gc となるようにすると共に、前記カラー画像とブラック画像の光沢度の差が 0≦(Gc-Gk)≦10 であることを特徴とするカラー画像形成装置。 【請求項2】 前記イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブ ラック(K)のトナーを用いて表現する色の種類がY,M,C,K,R,G,Bの7色であることを特徴とする請求項1記載のカラー画像形成装置。 【請求項3】 各トナーの粒子の粒径が10μm以下、トナー層は最大2層 までしか重ねないようにしたことを特徴とする請求項1記載のカラー画像形成装置。 【請求項4】 前記トナー層を重ねた時の厚さは、単一トナー層の厚さの1 .8倍以下となるようにしたことを特徴とする請求項3記載のカラー画像形成装置。 【請求項5】 前記ブラックの光沢度Gkが、Gk≦10であることを特徴 とする請求項1記載のカラー画像形成装置。 【請求項6】 前記した各条件を満足するように、現像剤,定着プロセス, 定着オイル供給量の少なくとも1つを最適化するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のカラー画像形成装置。 【請求項7】 前記画像形成装置が、50°以上85°以下のアスカーC 硬度の定着ローラを具備した定着器を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のカラー画像形成装置。 3.取消理由通知の概要 当審では平成17年3月28日付けの取消理由通知において、特許法第29条第2項の規定に違反する旨の取消理由と特許法第36条の規定を満たしていないという取消理由を指摘したが、そのうち特許法第36条に関連する明細書及び図面の記載不備についての取消理由の概要は以下のとおりである。 本件明細書段落【0043】から【0045】にかけて以下の記載がある。 「【0043】被写体画像の評価は、その画像支持体の光沢性及び画像部の光沢性を測定することにより行った。その評価結果を図5にまとめて示す。この測定は、画像支持体として上質紙を用いて行った。縦軸は満足度を、横軸は光沢度を示す。f1は有彩色Gtcと無彩色Gtkの差、f2は有彩色,f3は黒(ブラック)である。前記実施例に記載した方法で作成した種々の画像サンプルについて、官能評価による満足度を求めた。その結果、無彩色(黒)の光沢度としては、15以下、有彩色の光沢度としては20以下にすることが好ましいことが分かった。無彩色(黒)の光沢度が10以下あると、出力画像の光沢度が抑えられて見やすくなって特に好ましい。しかも、無彩色の光沢度は有彩色の光沢度よりも小さい方がよい結果が得られることが分かった。以上の結果を式で表わすと、前述したように以下のようになる。 【0044】 Gk≦15, Gc≦20かつ Gk≦Gc (1) 更に同一画像サンプル上に無彩色と有彩色が共に存在する場合、有彩色と無彩色の光沢度の差が15以下であることが好ましいことが分かった。特に、有彩色と無彩色の光沢度の差が0から10の間にあることがより好ましいことが分かった。以上の結果を式で表わすと以下のようになる。 【0045】 0≦(Gc-Gk)≦10 (4) 但し、複数の有彩色が使用されている場合には、光沢度が最も大きい有彩色の光沢度を用いている。」 また、本件図5は以下に示すものである。 (1)「官能評価による満足度」について 「満足度」、「官能評価」とは具体的に何を示すものであり、誰が評価者として選定され、何を対象としてどのような評価項目を設けてどのような手法を用いて評価したのか全く不明である。また、「種々の画像サンプルについて、官能評価による満足度を求めた」としているが、「前記実施例に記載した方法で作成した種々の画像サンプル」とはいったいどのような画像サンプルであり、何種類の画像サンプルを評価したのか不明である。画像サンプルとして写真とか絵画を含むのであるか、転写紙上における画像部分と非画像部分の割合がどの程度の範囲のものを用いて実験した結果を示すものであるのかも全く不明である。 また、図5のような連続曲線で表される評価結果を得るためには多量の画像サンプルを作成して一枚毎に有彩色の光沢度及び無彩色の光沢度を計測するとともに、評価しなければならない筈であるが、どのようにして各画像サンプルを作成し、各画像サンプルの光沢度が計測され、さらに「官能評価」が行われたのか明細書中に何ら記載されていない。 (2)図5における曲線f1の範囲について 図5における曲線f1を得るためには有彩色画像と無彩色画像との光沢度の差を調整しなければならない筈であるが、本件明細書中には実施例として定着器のローラの温度又は定着線速を変更することに有彩色画像と無彩色画像の光沢度を同時に調整することについて、本件図4及びその説明文に記載されているように36種類が示されているにすぎない。しかも有彩色画像と無彩色画像の光沢度の差については9種類の例しか示されていない。サンプル画像の有彩色画像と無彩色画像の光沢度の差を図5のような広範な範囲に調整する手法については何ら記載されていない。 (3)図5における曲線f1の「満足度」の高い領域について 曲線f1の左側に有彩色を示す曲線であるf2及び無彩色を示す曲線であるf3よりも「満足度」が高い領域が存在するが、その理由が不明である。例えば有彩色の光沢度が50で無彩色の光沢度が45である場合に光沢度の差は5であり、f1の「満足度」は80に近い。しかしながら、図5によると有彩色の光沢度が50の場合のf2の「満足度」は30程度であり、無彩色の光沢度が45の場合のf3の「満足度」も30程度である。曲線f1において「満足度」なるものが示す意味が著しく不明瞭である。 以上述べた理由により、本件明細書には明細書に記載されている事項に基づいて当業者が追試を行いその効果を確認して本件発明を実施可能な程度に発明の具体的構成が記載されているものとは到底認められない。 4.明細書の記載不備に関する取消理由に対する特許異議意見書における特許権者の主張の概要 (1)「官能評価による満足度」について 本件発明における「官能評価」は画像品質の評価方法の1つである主観評価に該当するものであり、本件発明における「満足度」は、例えば、主観評価を「見やすい、疲れない」等にし、これらを「非常によい、よい、普通、悪い、非常に悪い」といった判断基準に基づく検査員の目視評価によるものであって、画像品質の評価方法である主観評価については、証拠cの「第26回電子写真学会講習会 電子写真における現像の基礎と実際」の記載により確認できる。 また、本件発明の実験で作成された画像サンプルは、テストチャートとして文字が記載されている証拠dの「電子写真学会テストチャート No.5-2 1988」を用いて作成されたものである。 なお、特許異議意見書とともに提出された上記証拠dである「電子写真学会テストチャート No.5-2 1988」は、用紙の左半分に人物を中心に各種の質感をもつ静物を配置したカラー写真があり、右半分にカラーテストパターンが配置され、下部に各種フォントの黒色文字が配置されたテスト用のものであり、画像形成プロセスの再現性をテストするために使用されるものである。 (2)図5における曲線f1の範囲について 図5に示される連続曲線は実施例記載外のデータも用いて折れ線を作成し、これをスムーズ化して作成したものであり、図5には曲線f1が光沢度が10を超えている場合も満足度の値が得られていることでわかるように図4に示す結果だけで作成されたものではない。図4に示された9種類のデータの中でブラック画像の光沢度Gkが15以下、カラー画像の光沢度Gcが20以下という前提を満たすものは実施例1〜16であり、これらの結果からではGc-Gkで表される光沢度は2と6のときしかない。すなわち、図4に記載された結果からのみでは曲線F1を作成することはできない。 有彩色画像と無彩色画像との光沢度の差を調整する方法は、本件明細書の段落0020等に記載のように、「熱ローラ定着器でのローラ温度と定着線速を画像支持体の光沢性に応じて変化させる」ことにより、光沢度の差を調整することができる。 (3)図5における曲線f1の「満足度」の高い領域について 図5には曲線f1の左側にf2及びf3よりも満足度が高い領域が存在しているが、これは、ブラック画像の光沢度が15以下、カラー画像の光沢度が20以下の範囲で評価判定しているものであり、有彩色の光沢度が50の場合や無彩色の光沢度が45の場合はいずれもこの条件から外れており、これらの光沢度の場合の満足度と曲線f1の満足度における高い領域とは関連がない。 5.当審の判断 (1)「官能評価による満足度」について フルカラー画像形成装置において、カラー写真等の再現性を向上させるため等の理由によりカラー画像の光沢度が高いことが要求されていることは本件明細書の段落【0014】や、特開平3-28865号公報、特開平4-333868号公報、特開平5-19660号公報、特開平6-19213号公報に記載されているように周知であり、例えば上記特開平5-19660号公報には、本件発明における測定方法であるJIS-Z8741で測定した画像の光沢度を、テキスト部で30度以上、テキスト部とイメージ(写真等)が混在している部分で約50度、イメージ部分では約55度とすることも示されている。 上記周知事項に対して、本件発明は請求項1に記載されているように、 「ブラック画像の光沢度をGk,ブラック画像以外のカラー画像の光沢度をGcとして、光沢度の関係が、 Gk≦15, Gc≦20 かつ Gk≦Gc となるようにすると共に、前記カラー画像とブラック画像の光沢度の差が 0≦(Gc-Gk)≦10 」としたものであるが、その根拠を本件図5に記載されている「満足度」に関する実験結果のみにおいている。 しかしながら、取消理由通知で指摘したように、本件明細書には「満足度」を得るために、どのような画像サンプルや評価項目を用い、誰を評価者として実験が行われたのかについてなんら記載されていない。 特許権者は、4.(1)において、本件発明の実験で作成された画像サンプルは、テストチャートとして文字が記載されている「電子写真学会テストチャート No.5-2 1988」を用いて作成されたものであると主張しているが、特許権者が提出した画像サンプルは、画像形成装置のカラー写真の再現性をチェックするために用いられるテストチャートであり、これを用いて本件明細書における「満足度」が具体的にどのように導かれるのか特許異議意見書においても説明されていない。 また、仮にこのテストチャートに基づいて作成されたカラー写真画像を用いて「官能評価」が行われたのであれば、評価者の評価に対して、有彩色トナーと無彩色トナーのそれぞれの光沢度が相互に影響を及ぼしあうあうものと考えられるのに対して、明細書の段落【0043】に記載されているように、有彩色トナーの「満足度」と無彩色トナーの「満足度」が相互の光沢度に影響されないようにして評価できる理由が不明である。 (2)図5における曲線f1の範囲について 図4に記載されている実施例1〜4、実施例5〜8、・・・、実施例33〜36の9種類の組を全て参照すると、有彩色トナーと無彩色トナーの光沢度の差は、実施例17〜21における20が最大で、残りは全て6以下であり、しかも、光沢度が大きい実施例21〜24、・・・、実施例33〜36においても光沢度の差は最大でも4であり、図5に記載されているような光沢度の差が40であるものを含む広い範囲のものが、段落【0043】にあるように、「実施例に記載した方法で作成」できる理由が全く不明である。 なお、特許権者は特許異議意見書において、段落【0025】の記載に基づき光沢度の差を調整することが可能であると主張しているが、段落【0024】、【0025】等には、光沢度の大きさを調整することは記載されているが、光沢度の差の大きさを広い範囲にわたって調整することについては記載されていない。 (3)図5における曲線f1の「満足度」の高い領域について 曲線f1における、左側の部分は有彩色トナーと無彩色トナーの光沢度の差が小さい部分を示すものである。 図4に記載されている実施例21〜24、実施例25〜28、実施例29〜32、実施例33〜36の各組の実験結果は、有彩色トナーと無彩色トナーの光沢度の差が4以下であるからも当然この領域に含まれるものと考えられる。しかしながら、例えば、実施例33〜36は、有彩色トナーと無彩色トナーの光沢度の差は3であるものの、有彩色トナーの光沢度の最大値が46であり、無彩色トナーの光沢度は3である。このように、ぞれぞれの「満足度」が低い(図5によると40以下)ものであっても、その光沢度の差が小さなものは「満足度」が高い(図5によると70以上)理由が全く不明である。 なお、特許権者は特許異議意見書において、図5における曲線f1の左側の「満足度」が、有彩色トナー及び無彩色トナーよりも高い部分は、有彩色トナーの光沢度が20度以下であり、無彩色トナーの光沢度が15度以下の範囲で評価したものであると主張しているが、このような事項は明細書になんら記載されておらず、また、上記実施例21〜36の実験結果を図から除外することを意味しており、また、図5における曲線f1のそれ以外の範囲のデータとの整合性が不明となる。 また、有彩色トナーと無彩色トナー(ブラックトナー)の光沢度の差が小さい方が望ましいということは、例えば特開平4-369970号公報の段落【0008】に、「例えば図8のようなフルカラーの人物画像において、肌(Y+M),服(Y),りんご(M+Y),マスカット(C+Y)をそれぞれカラートナーによって色再現すると画像表面の光沢度は高いが、髪,瞳,まゆなどブラックトナー印字領域は光沢度が低く、一画像上のカラー領域と無彩色k領域において画像表面の光沢度が異なり特に人物に対する評価は厳しく、著しく画質品位を損ねるものであった。」と記載されており、さらにブラックトナーの光沢度を高くすることにより、有彩色領域と無彩色領域の光沢度の差を小さくすることが記載されているように周知である。 したがって、高光沢度のトナーを用いた場合であっても有彩色トナーと無彩色トナーの光沢度の差は小さい方が良いことは明らかであるので、図5において、光沢度の高いものであって有彩色トナーの光沢度と無彩色トナーの光沢度の差が小さいものは曲線f1の左側の領域から除外したことの合理的理由は存在せず、上記特許権者の主張を採用することができない。 (4)まとめ 上述したように、本件発明におけるトナーの光沢度の範囲を規定するための根拠とされる「満足度」なるものや、「満足度」を導き出すための具体的実験方法が著しく不明りょうであり、当業者が容易に実施できるように記載されているとはいえないので、本件特許明細書の発明な詳細には当業者が容易にその実施をすることができる程度に本件発明の構成が記載されていないし、本件特許明細書の特許請求の範囲は発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本件出願は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。 したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2006-03-02 |
出願番号 | 特願平6-63171 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
Z
(G03G)
P 1 651・ 121- Z (G03G) P 1 651・ 534- Z (G03G) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 島▲崎▼ 純一 |
特許庁審判長 |
山下 喜代治 |
特許庁審判官 |
松本 泰典 伏見 隆夫 |
登録日 | 2002-12-06 |
登録番号 | 特許第3378347号(P3378347) |
権利者 | コニカミノルタホールディングス株式会社 |
発明の名称 | カラー画像形成装置 |
代理人 | 倉橋 暎 |