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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  G03G
管理番号 1136209
異議申立番号 異議2003-72620  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-28 
確定日 2006-04-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第3400054号「画像形成装置」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3400054号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3400054号に係る発明は、平成5年12月22日(国内優先権主張平成5年5月31日)に特許出願され、平成15年2月21日にその特許の設定登録がなされ、その後、大塚あさ子より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に特許異議意見書提出とともに訂正請求がなされ、平成17年9月29日付けで再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年12月12日に特許異議意見書及び訂正請求取下書が提出されたものである。

2.本件発明
本件特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9に記載された発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」、・・・「本件発明9」という。)は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9に記載された以下のとおりのものである。
【請求項1】 少なくとも弾性層と,前記弾性層の表面を覆う表面層の2層
を有する帯電ローラを用いた画像形成装置において,前記帯電ローラの弾性層の十点表面平均粗さRd が前記表面層の十点表面平均粗さRs よりも大きく,かつ,その十点表面平均粗さRd が5〜15μmであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 前記弾性層は,電気抵抗が107 〜1010Ω・cmの極性合成ゴムから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】 前記弾性層は,ゴム硬度40(JISA)以上であることを
特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】 前記弾性層は,厚さが1〜5mmのエピクロルヒドリンゴム
あるいはウレタンゴムであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】 前記表面層の平均膜厚は,前記弾性層の十点表面平均粗さR
d の2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】 前記表面層の表面平均粗さRs が3〜10μmであることを
特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】 前記表面層は,前記弾性層の表面凹部に厚く,凸部に薄く塗
布された非接着性樹脂被膜からなることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】 前記表面層は,アルコールに対して溶解性を持つ合成樹脂か
ら構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】 前記表面層は,各種無機充填剤,各種導電性粒子および前記
弾性層の構成材料のうち,少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

3.取消理由通知の概要
平成17年9月29日付け取消理由通知の概要は以下のとおりである。 本件出願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。


特願平4-77432号(特開平5-281831号公報参照)
[本件異議申立人が甲第1号証として提出した特許文献に係る特許出願]
4.甲第1号証記載事項
上記甲第1号証(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「芯金表面に、導電性弾性体層が形成されている帯電ロールにおいて、該導電性弾性体層は、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールのなかから選ばれた少なくとも一つのポリオールを含む混合物から調製されたポリウレタン弾性体層であって、その弾性体の体積抵抗値が8×104 ないし2×107 Ω、しかも該導電性ウレタン弾性体層表面はポリアミドあるいはポリウレタンからなる表面層が形成されていることを特徴とする帯電ロール。」(請求項1)
(2)「【産業上の利用分野】本発明は、導電性弾性体層を有する帯電ロールに関するものであり、特に、電子写真複写機あるいは電子写真式プリンターなどの画像形成装置にて用いられる、特定の表面層が形成された導電性弾性体層を有する帯電ロールに関するものである。」(段落【0001】)
(3)「さらに、この弾性体の表面平均粗さ(Rz)を、10μm以下に調整することが好ましい。ロールの表面が粗く、特にロールの表面平均粗さが10μmを超えると、感光体の表面を一様に帯電させることがむずかしくなり、特に、画像形成装置の置かれた環境が低温低湿度の時に一様に帯電させることが困難となる。」(段落【0013】)
(4)「この弾性体の硬度は15ないし50°(JIS A )が良く、さらに25ないし45°(JIS A )が好ましい。硬度が50°(JIS A )を越えると十分なニップ幅を確保することができず、安定した帯電性を与えにくくなる等の欠点があり、硬度が15°(JIS A )以下であると機械的強度が低下し、好ましくない。」(段落【0020】)
(5)「この芯金表面に形成された弾性体表面にポリアミドあるいはポリウレタンを含む表面層を形成させる。この表面層を形成させる方法は公知の方法を採用することができる。好ましい方法としては、ポリアミドあるいはポリウレタンを含む溶液ないし分散液を調製した後、その溶液ないし分散液に前記弾性体を浸漬し加熱する方法が挙げられる。別の好ましい方法としては、ポリアミドあるいはポリウレタンを生成しうる原料を含む溶液あるいは分散液を調製し、前記弾性体を浸漬し、加熱する方法が挙げられる。」(段落【0021】)
(6)「実施例1 〈ロールの製法〉ポリエーテルポリオール(商品名:PPTG3000、日本ポリウレタン社製)100 重量部に、過塩素酸リチウムを0.2部加え攪拌し溶解させた後、100 ℃に温調し、ついでポリイソシアネート(商品名:コロネート-HX、日本ポリウレタン社製)を15重量部添加・攪拌し、混合物を得た。この混合物を、あらかじめシャフト(φ:6mm 、l:240mm )が配置されている120 ℃に予熱された金型に注入し、120 ℃にて90分間加熱し、両端部を除くシャフト表面に、ガラス転移点が-75 ℃である導電性ポリウレタン弾性体層が形成されたロールを得た。次いでこのロールを研磨加工し、表面粗さが5 μmのロールを得た。このロールの硬度は30°(JIS A )であり、ロール抵抗値は1 ×106 Ωであった。
【0029】〈表面層の形成〉アルコール可溶性ナイロン(商品名:トレジンF30、帝国化学産業社製)をメタノールで希釈し10%メタノール溶液を得た。前記方法で得られたロールを上記メタノール溶液にてディップコートし、風乾後、120 ℃で30分間加熱し、厚さ15μmのナイロン層を表面に有するロールを得た。ロールの表面粗さは5 μmであり、」(段落【0028】〜【0029】)
(7)「実施例2〈ロールの製法〉 ポリエステルポリオール(商品名:クラポールP2010 、クラレ社製)100 重量部に過塩素酸リチウム0.5 重量部加え攪拌し溶解させた後、90℃に温調し、ポリイソシアネート(商品名:コロネート-HX)15重量部を添加・混合した。この混合物を、あらかじめシャフト(φ:6mm 、l:240mm )が配置されている130 ℃に予熱された金型に注入し、130 ℃にて60分間加熱し、両端部を除くシャフト表面に、ガラス転移点が-56℃である導電性ポリウレタン弾性体層が形成されたロールを得た。次いでこのロールを研磨加工し、表面粗さが8 μmのロールを得た。このロールの硬度は35°(JIS A )であり、ロール抵抗値は2 ×106 Ωであった。
【0033】〈表面層の形成〉ポリウレタン分散液(商品名Neo Rez R966、ポリビニルケミカル社製)を水にて希釈し、10%水分散液を得た。前記方法で得られたロールを上記水分散液にてディップコートし、風乾後、120 ℃で30分間加熱する。厚さ10μmのポリウレタン層を表面に有するロールを得た。ロールの表面粗さは5 μmであり、」(段落【0032】〜【0033】)
(8)「実施例3〈ロールの製法〉実施例1と同様な操作によりロールを得た。ただ、ロールの研磨加工の程度は表面平均粗さが12μmとなるようにした。
【0038】〈表面層の形成〉前記方法で得られたロールを、実施例1と同様に操作し表面に厚さが10μmのナイロン層が形成されたロールを得た。このロールの表面平均粗さは10μmであり、」(段落【0037】〜【0038】)
(9)「比較例3〈ロールの製法〉平均表面粗さが15μmに仕上げる以外は、実施例3と同様な操作により、ロールを得た。」(段落【0039】)

5.対比・判断
(1)本件発明1について
先願明細書には、上記4.(1)に、少なくとも弾性層と、弾性層の表面を覆う表面層の2層を有する帯電ローラ(帯電ロール)であることが記載されている。
また、上記4.(2)に、先願明細書に記載されている帯電ローラは、複写機や電子写真式プリンターなどの画像形成装置に用いられることが記載されている。
表面粗さには、JIS B 0601に規定されているように、十点平均粗さRz、中心線平均粗さRa、最大高さRmax等の種々の定義があり、特許明細書等の技術文献において表面粗さの値を記述する場合に、どの種類のものを使用するのかを明記しなければならないことは、画像形成装置の技術分野において技術常識であるから、上記4.(3)に記載された事項により、先願明細書において用いられている「表面平均粗さ(Rz)」は本件発明1におけるものと同じく十点表面平均粗さであることは明らかである。
さらに、上記4.(6)に、発明の実施例1として、弾性層の表面粗さが5μm、表面層の表面粗さ5μmであるものが記載されており、上記4.(7)に発明の実施例2として、弾性層の表面粗さが8μm、表面層の表面粗さが5μmであるものが記載されており、さらに上記4.(8)には発明の実施例3として、弾性層の表面粗さが12μm、表面層の表面粗さが10μmであるものが記載されている。
してみると、先願明細書における発明の実施例1ないし実施例3の構成を総合勘案すると先願明細書には、帯電ローラの弾性層の十点表面平均粗さを少なくとも5〜12μmの範囲とすることが実質的に記載されている。
そして、上記実施例1では帯電ローラの弾性層の十点表面平均粗さと表面層の十点表面平均粗さは等しいものの、上記実施例2及び実施例3では帯電ローラの弾性層の十点表面平均粗さは表面層の十点表面平均粗さよりも大きいので、先願明細書には、帯電ローラの弾性層の十点表面平均粗さを表面層の十点表面平均粗さより大きくしたことが実質的に記載されている。
以上のことから、先願明細書には、弾性層の十点表面平均粗さが表面層の十点表平均面粗さより大きく、かつ、弾性層の十点表面平均粗さが5〜12μmのものが開示されている。
本件発明1と先願明細書に記載されている発明を対比すると、両者ともに帯電ローラの弾性層の十点表面粗さが表面層の十点表面粗さより大きく、本件発明1と先願明細書に記載の発明における帯電ローラの弾性層の十点表面平均粗さは5〜12μmの範囲で重なっている。
したがって、本件発明1は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1における弾性層が、電気抵抗が107〜1010Ω・cmの極性合成ゴムであることを構成要件として追加したものである。
先願明細書には、上記摘記事項4(7)に、極微量の過塩素酸リチウム(アルカリ金属塩)を配合して重合・成形した、非導電性粒子分散型で、略107Ω・cmの導電性を有する本件発明2(本件特許明細書段落【0050】参照)と同じ組成・構造のウレタン系「極性合成ゴム」により、弾性層を構成することが記載されている。
したがって、本件発明2は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1における弾性層が、ゴム硬度40(JIS A)以上であることを構成要件として追加したものである。
先願明細書には、上記摘記事項4.(4)に、弾性体の硬度を15°ないし50°(JIS A)とすることが記載されている。
したがって、本件発明3は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1における弾性層が、厚さ1〜5mmのエピクロルヒドリンゴムあるいはウレタンゴムであることを構成要件として追加したものである。
ところで、帯電ローラの弾性層が厚さ1〜5mmの範囲に含まれるものとすることは周知であり[特開平1-211779号公報、特開平2-198468号公報、特開平3-24977号公報、特開平4-145463号公報、特開平4-285974号公報]、帯電ローラの弾性層としてウレタンゴムを使用することも先願明細書に示されているので、弾性層の構成として上記のようなものとすることは単なる設計事項にすぎない。
したがって、本件発明4は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1における表面層の平均膜厚が、弾性層の表面平均粗さの2倍以下であることを構成要件として追加したものである。
先願明細書には、上記摘記事項4.(7)に、弾性体層の平均表面粗さが8μmであって、表面層が厚さ10μmのポリウレタン層であるものが記載されている。
したがって、本件発明5は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

(6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1における表面層の表面平均粗さが3〜10μmであることを構成要件として追加したものである。
先願明細書には、上記摘記事項4.(7)に、表面層の平均表面粗さが5μmであることが記載されている。
したがって、本件発明6は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

(7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1における表面層が、弾性層の表面凹部に厚く、凸部に薄く塗布された非接着性樹脂皮膜からなることを構成要件として追加したものである。
先願明細書には、上記摘記事項4.(7)に、表面が研磨された弾性層の上にポリウレタン分散液をディップコートすることにより形成された表面層の平均表面粗さが弾性層の平均表面粗さよりも小さいことが記載されており、先願明細書に記載のものも表面層が弾性層の表面凹部に厚く、凸部に薄く塗布されているものと認められる。
したがって、本件発明7は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

(8)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1における表面層が、アルコールに対して溶解性を持つ合成樹脂から構成されていることを構成要件として追加したものである。
先願明細書には、上記摘記事項4.(6)に、アルコール可溶性ナイロンをメタノールで希釈したメタノール溶液でディップコートして表面層を形成することが記載されている。
したがって、本件発明8は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

(9)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1における表面層が、各種無機充填剤、各種導電性粒子および弾性層の構成材料のうち、少なくとも一つを含有することを構成要件として追加したものである。
先願明細書には、上記摘記事項4.(7)に、弾性層が導電性ポリウレタン弾性体層であり、表面層がポリウレタン層であることが記載されている。 したがって、本件発明9は先願明細書に記載された発明と実質的に同一である。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1ないし9に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1ないし9に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年制令205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2006-02-28 
出願番号 特願平5-346527
審決分類 P 1 651・ 16- Z (G03G)
最終処分 取消  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 山口 由木
伏見 隆夫
登録日 2003-02-21 
登録番号 特許第3400054号(P3400054)
権利者 株式会社リコー
発明の名称 画像形成装置  
代理人 酒井 宏明  
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