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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 E06B |
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管理番号 | 1136742 |
審判番号 | 無効2004-80048 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-09-12 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-05-14 |
確定日 | 2006-03-15 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3472717号発明「上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3472717号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3472717号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 |
理由 |
【1】手続の経緯 (1)本件特許3472717号は、平成11年2月25日に出願(特願平11-49014号)され、平成15年9月12日に特許の設定登録がなされた。 (2)請求人は、平成16年5月14日付けで本件無効審判の請求をし、本件の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)の特許を無効とする理由として次のように主張し、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 無効理由:本件発明1及び本件発明2の特許は、甲第1号証ないし甲第3号証あるいは甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同第123条第1項第2号の規定により、その特許は無効とすべきである。 甲第1号証 特開平8-260819号公報 甲第2号証 実公平2-47177号公報 甲第3号証 特開平8-135296号公報 甲第4号証 特開平6-313384号公報 (3)被請求人は、平成16年9月2日付けで答弁書を提出し、本件発明1及び本件発明2について、請求人主張の無効理由はないと主張した。 (4)請求人は、平成16年10月12日付けで弁駁書及び参考文献1ないし4を提出した。 参考文献1 特開平11-173002号公報 参考文献2 特開昭60-5984号公報 参考文献3 実願平5-39388号(実開平7-4752号)のCD-ROM 参考文献4 実公昭61-33805号公報 (5)当審は、平成17年1月31日付けで被請求人に無効理由を、請求人に職権審理結果を、それぞれ通知した。 (6)被請求人は、平成17年2月28日付けで訂正請求書及び意見書を提出し、本件発明1及び訂正後の請求項2に記載された本件発明2について、無効理由通知に記載された無効理由はないと主張した。 (7)請求人は、平成17年3月4日付けで職権審理通知に対する意見書を提出した。 (8)請求人は、平成17年4月25日付けで弁駁書及び参考文献5ないし8を提出するとともに、本件発明1及び本件発明2について、訂正請求の内容を勘案しても依然として無効理由を有する旨主張した。 参考文献5 特開平8-280987号公報 参考文献6 特開平7-217309号公報 参考文献7 実公昭63-24228号公報 参考文献8 実公昭63-46620号公報 【2】訂正事項 平成17年2月28日付けの訂正請求書による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として次のように訂正するものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項2 「【請求項2】 上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内の室外側に固定障子を、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子には前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材が縦溝内に嵌め込めるように引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられ、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなり、支持部材を支点に前記可動障子は室内側に内倒し可能であることを特徴とする上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸。 」を 「【請求項2】 上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内の室外側に固定障子を、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子には前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材が縦溝内に嵌め込めるように引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられ、 前記支持部材は、 支持部本体と、 該支持部本体の端部に形成されるとともに、前記吊り材の先端に設けられた輪を回動可能に引掛けることのできる環状溝を有する支持部と、 該支持部と同一又はそれ以上の径を有するとともに、前記縦溝内に収まる規制部と、 を備え、前記支持部材を支点に前記可動障子は室内側に内倒し可能であることを特徴とする上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸。 」 と訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の段落0008 「【0008】 請求項2に係る発明は、上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内の室外側に固定障子を、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子には前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材が縦溝内に嵌め込めるように引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられ、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなり、支持部材を支点に前記可動障子は室内側に内倒し可能であることを特徴とする。」を 「【0008】 請求項2に係る発明は、上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内の室外側に固定障子を、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子には前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材が縦溝内に嵌め込めるように引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられ、前記支持部材は、支持部本体と、該支持部本体の端部に形成されるとともに、前記吊り材の先端に設けられた輪を回動可能に引掛けることのできる環状溝を有する支持部と、該支持部と同一又はそれ以上の径を有するとともに、前記縦溝内に収まる規制部と、を備え、前記支持部材を支点に前記可動障子は室内側に内倒し可能であることを特徴とする。」 と訂正する。 【3】訂正の適否の判断 上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正事項2は、特許請求の範囲の訂正に伴う明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。 そして、上記訂正事項はいずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。 したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する特許法第126条第3項、第4項の要件を満たすものであるから、当該訂正を認める。 【4】無効理由についての検討 (1)本件各発明 (1-1)本件発明1 本件発明1は、特許公報の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子は前記左右の縦枠の対向する縦溝内に嵌め込み可能であり、該可動障子に前記縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材を可動障子の嵌め込みに邪魔にならない引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けてなり、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなることを特徴とする上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸。」 (1-2)本件発明2 本件発明2は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものである。 「上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内の室外側に固定障子を、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子には前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材が縦溝内に嵌め込めるように引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられ、 前記支持部材は、 支持部本体と、 該支持部本体の端部に形成されるとともに、前記吊り材の先端に設けられた輪を回動可能に引掛けることのできる環状溝を有する支持部と、 該支持部と同一又はそれ以上の径を有するとともに、前記縦溝内に収まる規制部と、 を備え、 前記支持部材を支点に前記可動障子は室内側に内倒し可能であることを特徴とする上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸。」 (2)引用刊行物記載の発明 (2-1)当審が通知した無効理由で引用した実公昭61-33805号公報(平成16年10月12日付け弁駁書添付の参考文献4。以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。 (a)「上げ下げ障子の下框の下面側端に固定され、かつ縦框側の外方に向つて突出する下向きのフツク部を有する吊り金具のフツク部に障子の吊りロープを係止させるとともに、板状の振れ止め具を前記吊り具の下面に重ねて装着し、この振れ止め具が上記振れ止め具を前記フツク部の下面まで延在し両者が近接している上げ下げ窓における障子吊り装置。」(第1頁第1欄第2行〜第9行) (b)「考案の詳細な説明 この考案は、上げ下げ窓における障子吊り装置に関するものである。 従来のこの種の上げ下げ窓におけるロープ吊り金具は障子の縦框に取付けられており、また、ロープが吊り金具から離脱しないようにロープの先端に予め吊り金具をかしめによつて固定したり、溶接などで固定していた。したがつて、このような構造のものでは障子を組み込む際に、窓枠の一部すなわち縦枠を別体として組み込めるようにしておかなければならず、また、障子を外したい場合には吊り金具を外した後、この吊り金具をロープと一体に巻き上げないと、障子が外れないという不都合があるため、取り付け及び取り外し作業に手間がかかる上、窓構造全体が複雑となるという問題があつた。 この考案は、上記問題を解決することを企図してなされたもので、吊り金具を障子下框の下面側端に固定することにより、組み込み作業の簡易化及び構造を簡略にし、しかも、吊り金具とロープとの係止状態を障子の下端に装着した振れ止め具によって確保して、ロープが吊り金具から外れるのを防止するようにしたことを特徴とする上げ下げ窓における障子吊り装置を提供しようとするものである。」(第1頁第1欄第10行〜第2欄第8行) (c)「以下にこの考案を図面に基づいて説明する。 第1図はこの考案の障子吊り装置を有する上げ下げ窓の正面図で、図中、1は窓枠であつて、この窓枠1内には閉じた状態において下方に位置する内障子2と、逆に閉じた状態において上方に位置する外障子3とが後述するロープ4を介して連結されている。この場合、ロープ4は、第2図に示すように、窓枠1の上枠1aの両側にそれぞれ2例(当審注:「2列」の誤記と認める。)に取り付けられたブラケット5によって回転可能に支承される滑車6に係合し、図示しないバランサに巻装されい(当審注:「巻装され」の誤記と認める。)、その両端部が縦枠1bと内外障子2,3の縦框2b,3bとの間に挿通し、その各端部に形成されたループ状の引掛け部4bが内外障子2,3の各下框2c,3cの下面側端に固定される吊り金具7のフック部7aに引掛けられている。(第4図及び第5図参照)。なお4bはロープを保護する保護板である。そして、このロープ4を介して内外障子2,3を開閉移動させることができるようになっている。この場合、内外障子2,3の下框2c,3cの下端は、前記吊り金具7を取り付ける面部の両側から下方に向かつて突出する係合壁部2c’,3c’が形成されており、この係合壁部2c’,3c’には内外障子2,3が開閉移動する際の振れを防止する振れ止め具8が第5図に示すようにるじ止め(当審注:「ねじ止め」の誤記と認める。)されている。前記振れ止め具8は、第6図に示すように、下框2c’,3c’(当審注:「2c,3c」の誤記と認める。)の係合壁部2c’,3c’に嵌合する係合溝8aを両側に有する本体8bの長手方向の一端に両側に向かって膨隆する縦枠1b内を摺動可能な耳片8cを形成し、かつ、本体8bの他端側に取り付け用長孔8b(当審注:「8d」の誤記と認める。)を設けて成り、係合溝8aを下框2c,3cの係合壁部2c’,3c’に嵌合させて耳片8c側を前記吊り金具7のフック部7aの下方に延在させるとともに、両者が近接した状態で、第5図に示すように取り付け用長孔8b(当審注:「8d」の誤記と認める。)を介して吊り金具7及び下框2c,3cの中空部に配設された取り付け座10にねじ結合することによつて固定される。なお、11は縦框2b,3bと下框2c,3cとを連結するねじ、12は吊り金具7を固定するためのねじである。なお、前記内障子2及び外障子3は、それぞれ上框2a,3a、下框2c,3c及ぞ(当審注:「及び」の誤記と認める。)左右の縦框2b,3bで形成される方形状枠部内にガラス2b,3bを嵌装して成り、また、窓枠1の縦枠1bの中央部より上半分におけるロープ4は、縦枠1bの内面に装着されるロープカバー13によって保護されている。」(第1頁第2欄第9行〜第2頁第3欄第29行) (d)「上記のように構成されるこの考案の障子吊り装置は、その組み立てに当つて、まず窓枠1内に内外の障子2,3を逐次嵌め、上枠1aに装着された滑車6に係合して縦枠1bと縦框2b,3bとの間に垂下されるロープ4の引掛け部4aに吊り金具7のフック部7aを吊着した後、この吊り金具7を下框2c,3cの下面側端にねじ止めし、そして、下框2c,3cり(当審注:「の」の誤記と認める。)下端の係合壁部2c’,3c’にあらかじめ嵌装された振れ止め具8の耳片側の端部を前記ロープ4と吊り金具7との係止部直下に延在させて固定すればよいので、従来の吊り装置に比べて取り付けが簡単であり、しかも吊り金具のフック部と振れ止め具とが近接して取付けられているから、ロープの係止状態を確保することができるので、使用中にロープ4が外れるという不都合及び危険性がない。また、この考案によれば、障子2,3の下端で支持することになるので、障子全体の強度を大きくする必要がないなどの効果が得られ、その利用価値は顕著である。」(第2頁第3欄第30行〜第4欄第16行) (e)第1図および第2図の記載を参照すると、窓枠1は、下枠を有しているとともに、縦枠1bが左右に設けられていることは、当業者にとって明らかである。 (f)第1図および第3図の記載を参照すると、窓枠1は、左右の縦枠1bに溝部を有し、内障子2および外障子3が、前記縦枠1bの対向する溝部内に嵌め込まれて設けられていることは、当業者にとって明らかである。 (g)上記(c)、(d)の記載、および、第4図〜第6図の記載を参照すると、振れ止め具8は、取り付け用長孔8dを介してねじ結合によて固定されていることから、振れ止め具8が溝部方向へ突出可能で且つ調整可能であることは、当業者にとって明らかである。 以上のことから、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。 「上枠1a、下枠および左右の縦枠1bからなる窓枠1内に上げ下げ可能な内障子2および外障子3を設け、該内障子2および外障子3はロープ4を介して連結されるとともに、ロープ4を巻装するバランサを有する上げ下げ窓であって、前記内障子2および外障子3は前記左右の縦枠1bの対向する溝部内に嵌め込まれており、前記内障子2および外障子3に前記溝部内に位置して前記ロープ4を支持する吊り金具7を設けてなり、前記吊り金具7は、前記ロープ4を支持するフック部7aを有し、該フック部7aに前記ロープ4の引掛け部4aを引掛けてなり、振れ止め具8が溝部方向へ突出可能で且つ調整可能に設けてなる上げ下げ窓。」 (2-2)同、特開平8-135296号公報(請求人提出の甲第3号証。以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。 「【請求項1】線状障子吊下げ部材と、吊下げ部材巻取ドラムと、繰出されたときに可動障子を上向きに付勢する定荷重渦巻きばねと、吊下げ部材巻取ドラムおよび定荷重渦巻きばねの間に両者間で力を伝達するように設けられた伝動手段とを備えている上げ下げ窓用バランサー。」 「【0016】図1において、上げ下げ窓は、窓枠(1) の上部に固定障子(2) が嵌め止められ、固定障子(2) の屋内側において、窓枠(1) に上下動自在の可動障子(3) が配置されたものである。窓枠(1) は、上枠(1a)、下枠(1b)および左右の縦枠(1c)よりなり、可動障子(3) は左右の縦枠(1c)により案内されて上下動するようになっている。窓枠(1) の上枠(1a)は、横断面略U字状となっている。 【0017】窓枠(1) の上枠(1a)の下壁における左右両端部にバランサー(4) が取付けられている。以下、左側のバランサー(4) について、図2および図3を参照して説明する。 【0018】図2および図3において、バランサー(4) は、先端部に可動障子(3) が固定されている障子吊下げワイヤ(5) (線状障子吊下げ部材)と、ワイヤ巻取ドラム(6) (吊下げ部材巻取ドラム)とを備えている。」 (2-3)同、実公平2-47177号公報(同甲第2号証。以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。 「本考案は、サツシユにガラス戸が上下動自在に装着された上げ下げ窓を対象とする。・・・サツシユ1に内外のガラス戸2,3が嵌つている。」(第1頁第2欄第9行〜第13行) 「この状態から支軸9をスリーブ30側に退入させておけば、ガラス戸3の全体を支軸9がサツシユ1の縦溝5を構成する縦枠4やスライダ8の突部などに接当干渉することなくスライダ8の連結孔19に対向するよう乗り越え案内できる。」(第3頁第5欄第14行〜第19行) 「このように、本考案によれば、ガラス戸3に支軸9を取付金具29を介して出退自在に装着したので、狭い空間においても支軸9の先端をいつたん他物と接当干渉しないようにスリーブ30側に寄せておき、次に該支軸9を突出させることにより、支軸9の先端部9aをスライダ8の連結孔10に極めて容易に嵌合連結できる。従つて、現場での組付け作業性を格段に向上できる。」(第3頁第5欄第23行〜第30行) (3)対比・判断 (3-1)本件発明1について 本件発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明における「窓枠1」、「ロープ4」、「バランサ」、「溝部」、「吊り金具7」、「フック部7a」及び「ロープ4の引掛け部4a」は、それぞれ、本件発明1の「枠体」、「吊り材」、「バランサー」、「縦溝」、「支持部材」、「支持部」及び「吊り材の端部」に相当する。 また、刊行物1に記載された発明における「内障子2」と「外障子3」は、いずれも開閉移動することから、可動障子とみなすことができる。 そして、刊行物1に記載された発明も、内障子2および外障子3は、左右の縦枠1bの対向する溝部内に嵌め込まれていることから、縦枠1bの対向する溝部内に嵌め込み可能であることは明らかである。 さらに、刊行物1に記載された発明における「振れ止め具8」と本件発明1における「支持部材」は、いずれも、縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられた部材である点で共通する。 よって、両者は、 「上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子を吊り材を介して吊下げるバランサーを有する上げ下げ窓であって、前記可動障子は前記左右の縦枠の対向する縦溝内に嵌め込み可能であり、該可動障子は、縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられた部材とともに、該可動障子に前記縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材を設けてなり、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなる上げ下げ窓。」 である点で両者は一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では、バネ力で巻取り付勢された吊り材を介して可動障子を吊り下げるバランサーが枠体に取付けられているのに対して、刊行物1に記載された発明では、バランサーを有するものの、バランサーの構造や取付けられた部位は不明であり、また、バランサー、吊り材、可動障子の関係が不明確である点。 <相違点2> 本件発明1では、可動障子が有する縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられた部材が支持部材であり、前記支持部材が可動障子の嵌め込みに邪魔にならない引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられているのに対して、刊行物1に記載された発明では、そのような構成になっていない点。 上記相違点について検討する。 <相違点1について> バネ力で巻き取り付勢された吊り材を介して可動障子を吊り下げるバランサーが枠体に取付けられている構成は、刊行物2に記載されている。 よって、刊行物2に記載された発明を刊行物1に記載された発明に適用し、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できることにすぎない。 <相違点2について> 刊行物1に記載された発明では、振れ止め具8と吊り材を支持する部材を別部材として設けているが、製造コスト等の観点から部品数を低減させ、複数の機能を有する部材を一体とすることは、例示するまでもなく従来周知の事項であることから、両者を一体とし、本願発明1のような、吊り材を支持する支持部材とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。 また、可動障子を嵌め込む際に、嵌め込みに邪魔になる部材を引込み位置に移動可能とした構成は、刊行物3に記載されている。 よって、刊行物3に記載された発明、および、従来周知の事項を、刊行物1に記載された発明に適用し、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到できることにすぎない。 以上のことから、本件発明1は、刊行物1ないし3に記載された発明および従来周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (3-2)本件発明2 本件発明2と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明における「窓枠1」、「ロープ4」、「バランサ」、「溝部」、「吊り金具7」、「フック部7a」及び「ロープ4の引掛け部4a」は、それぞれ、本件発明2の「枠体」、「吊り材」、「バランサー」、「縦溝」、「支持部材」、「支持部」及び「吊り材の端部」に相当する。 また、刊行物1に記載された発明における「内障子2」は、開閉移動することから、可動障子とみなすことができる。 そして、刊行物1に記載された発明も、内障子2は、左右の縦枠1bの対向する溝部内に嵌め込まれていることから、縦枠1bの対向する溝部内に嵌め込めるように構成されていることは明らかである。 さらに、刊行物1に記載された発明における「振れ止め具8」と本件発明2における「支持部材」は、いずれも、縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられた部材である点で共通する。 よって、両者は、 「上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子を吊り材を介して吊下げるバランサーを有する上げ下げ窓であって、前記可動障子には、前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられた部材とともに、前記吊り材を支持する支持部材が設けられ、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなる上げ下げ窓。」 である点で両者は一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 本件発明2では、バネ力で巻き取り付勢された吊り材を介して可動障子を吊り下げるバランサーが枠体に取付けられているのに対して、刊行物1に記載された発明では、バランサーを有するものの、バランサーの構造や取付けられた部位は不明であり、また、バランサー、吊り材、可動障子の関係が不明確である点。 <相違点4> 本件発明2では、可動障子が有する縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられた部材が支持部材であり、前記支持部材が可動障子の嵌め込みに邪魔にならない引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられているのに対して、刊行物1に記載された発明では、そのような構成になっていない点。 <相違点5> 本件発明2では、室外側に固定障子を、室内側に上げ下げ可能な可動障子を設けているのに対して、刊行物1に記載された発明では、そのような構成になっていない点。 <相違点6> 本件発明2では、支持部材が、支持部本体と、該支持部本体の端部に形成されるとともに、前記吊り材の先端に設けられた輪を回動可能に引掛けることのできる環状溝を有する支持部と、該支持部と同一又はそれ以上の径を有するとともに、前記縦溝内に収まる規制部と、を備え、前記支持部材を支点に可動障子が室内側に内倒し可能であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、そのような構成になっていない点。 上記相違点のうち、まず、相違点6について検討する。 <相違点6について> 可動障子を室内側に内倒し可能に構成すること自体は、従来周知の事項(必要あれば特開平6-313384号公報(甲第4号証)、刊行物3等参照)である。 しかしながら、支持部材が、吊り材の先端に設けられた輪を回動可能に引掛けることのできる環状溝を有する支持部を備えた構成は、刊行物1ないし刊行物3のいずれにも記載されておらず、また、請求人が提出した他の甲各号証及び各参考文献にも記載されていない。かつ、前記構成が、従来周知の事項であるということもできない。 そして、本件発明2の発明特定事項が奏する訂正明細書に記載の、 「【0036】・・・・。また、支持部材22は、ワイヤ12を回動可能に支持する支持部26を有しているため、可動障子3をピボット25を支点に室内側に倒す場合に、可動障子3を容易に倒すことができる。前記支持部26は、円形に形成され、その外周にワイヤ12の輪16を引掛ける環状溝27を形成してなるため、簡単な構造でワイヤ12を回動可能に支持することができ、また、部品の構造が簡素化され、部品点数が減少し、コストを抑えられる。」 の作用効果は、刊行物1ないし刊行物3に記載の技術事項及び従来周知の事項から当業者が予測できる範囲以上のものと認められる。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、刊行物1に記載の発明に、刊行物2に記載の発明、刊行物3に記載の発明、及び、従来周知の事項を適用したとしても、当業者が容易に本件発明2の構成を得ることができたものということができないから、本件発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明に対してなされたものではない。 【5】まとめ 以上のことから、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件発明1に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当するから、本件発明1に係る特許は無効とすべきものである。 また、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定に該当しないから、本件発明2に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当せず、無効とすべきものとすることができない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子は前記左右の縦枠の対向する縦溝内に嵌め込み可能であり、該可動障子に前記縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材を可動障子の嵌め込みに邪魔にならない引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けてなり、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなることを特徴とする上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸。 【請求項2】上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内の室外側に固定障子を、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子には前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材が縦溝内に嵌め込めるように引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられ、 前記支持部材は、 支持部本体と、 該支持部本体の端部に形成されるとともに、前記吊り材の先端に設けられた輪を回動可能に引掛けることのできる環状溝を有する支持部と、 該支持部と同一又はそれ以上の径を有するとともに、前記縦溝内に収まる規制部と、 を備え、 前記支持部材を支点に前記可動障子は室内側に内倒し可能であることを特徴とする上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、上げ下げ窓に係り、特に可動障子の建て込み性の向上を図った上げ下げ窓に関する。 【0002】 【従来の技術】上げ下げ窓としては、上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内に上げ下げ可能な可動障子を設け、この可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材(ワイヤ)を介して任意の高さ位置に停止可能に吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなるものが知られている(特開平8-135296号公報等)。また、上げ下げ窓としては、外障子と内障子を共に可動障子としたダブルハング式のものと、外障子を固定障子とし、内障子を可動障子としたシングルハング式のものがある。 【0003】ダブルハング式の上げ下げ窓は、一般に、左右の縦枠に対向して形成された縦溝内に可動障子を室内側からけんどん式に嵌め込んで構成されている。また、前記可動障子をバランサーの吊り材に吊下げるために、前記縦溝内には吊り材に支持されたスライダーが昇降移動可能に設けられており、このスライダーを前記可動障子の下側部に固定するようになっている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記上げ下げ窓においては、枠体に可動障子を建て込む場合、前記スライダーを吊り材の張力に抗して予め引き下げておき、枠体の縦溝内に可動障子を嵌め込んでからその可動障子の下側部に前記スライダーを固定しなければならない。そのため、可動障子の建て込みには、スライダーを引き下げる者、可動障子を枠体の縦溝内に嵌め込む者等、複数の作業者が必要であり、多くの手間がかかるという問題があった。 【0005】なお、シングルハング式の上げ下げ窓においては、可動障子の室外面の清掃性を向上させるために、可動障子をけんどん式に嵌め込む構造は採用せず、前記スライダーに設けたピボットを支点に可動障子を室内側に内倒し可能に構成しているが、このシングルハング式の上げ下げ窓においても、スライダーを吊り材の張力に抗して予め引き下げてから、可動障子の下側部にスライダーのピボットを固定しなければならず、可動障子の建て込みに手間がかかるという問題があった。 【0006】本発明は、前記事情を考慮してなされたもので、可動障子の建て込み性の向上が図れる上げ下げ窓を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明のうち、請求項1に係る発明は、上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子は前記左右の縦枠の対向する縦溝内に嵌め込み可能であり、該可動障子に前記縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材を可動障子の嵌め込みに邪魔にならない引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けてなり、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなることを特徴とする。 【0008】請求項2に係る発明は、上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内の室外側に固定障子を、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子には前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材が縦溝内に嵌め込めるように引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられ、前記支持部材は、支持部本体と、該支持部本体の端部に形成されるとともに、前記吊り材の先端に設けられた輪を回動可能に引掛けることのできる環状溝を有する支持部と、該支持部と同一又はそれ以上の径を有するとともに、前記縦溝内に収まる規制部と、を備え、前記支持部材を支点に前記可動障子は室内側に内倒し可能であることを特徴とする。 【0009】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を添付図面に基いて詳述する。 【0010】先ず、本発明をダブルハング式の上げ下げ窓に適用した第1の実施の形態について、図1〜図5を参照して説明する。図1〜図3において、1は上げ下げ窓の枠体で、この枠体1は、例えばアルミニウム合金の押出形材からなる上枠1a、下枠1bおよび左右の縦枠1c,1cにより方形に組立てられている。枠体1内には、上げ下げ可能な可動障子である外障子2と内障子3が設けられている。この上げ下げ窓は、外障子2を上げ、内障子3を下げることにより全閉状態になるように構成されている。 【0011】外障子2は、例えばアルミニウム合金の押出形材からなる上框4a、下框4bおよび左右の縦框4c,4cを方形に組み、その区画内にパネル例えばガラスパネル5を装着して構成されている。内障子3も同様に、上框6a、下框6bおよび左右の縦框6c,6cを方形に組み、その区画内にパネル例えばガラスパネル7を装着して構成されている。ガラスパネル5,7は、図示例では断熱性を有する複層ガラスからなっているが、普通のガラスであってもよい。 【0012】内障子3の下框6bの室内面には、内障子3を上げ下げ操作する操作部としての取っ手8が設けられている。外障子2の下框4b室外面には、外障子2を室内側から上げ下げ操作する操作部としての手掛け部9が設けられており、外障子2を室内側から容易に上げ下げ操作できるように構成されている。内障子3の上框6aにはクレセント錠10が設けられ、外障子2の下框4bにはクレセント受け11が設けられている。 【0013】前記上枠1a内には、可動障子である外障子2と内障子3をそれぞれバネ力で巻取り付勢された吊り材例えばワイヤ12を介して任意の高さ位置に停止可能に吊下げるバランサー13が左右に取付けられている。本実施の形態の上げ下げ窓は、ダブルハング式であるため、バランサー13は、図4に示すように、外障子用のバランサー13aと、内障子用のバランサー13bとから構成されている。各バランサー13a,13bは、周知のように、ワイヤ12を巻取る傘車と、この傘車を巻取り方向に付勢するゼンマイバネとから主に構成されている(図示省略)。 【0014】バランサー13a,13bは、上枠1aの長手方向に沿って長い台板14上に取付けられており、この台板14の一端には、各バランサー13a,13bから引き出されたワイヤ12,12を下方へ案内するガイドローラ15,15が設けられている。各バランサー13a,13bから引き出されたワイヤ12の端部には、引掛け部としての輪16が設けられている。前記台板14には、これを上枠1a内の天井に取付けるためのブラケット17a,17bが設けられている。 【0015】これらのブラケット17a,17bのうち、台板14の端部のブラケット17aは、予め台板14にネジ(固着具)18aで取付けられているが、台板14上のブラケット17bは、上枠1a内の天井に予め取付けられており、後で台板14にネジ18bで固定されるようになっている。このように構成されたバランサー13は、ワイヤ12がガイドローラ15を介して縦枠1cの縦溝19内に垂下されるようにして上枠1a内の天井左右位置にそれぞれ取付けられる。 【0016】前記上枠1aは、図5にも示すように、少なくとも室外面20aと上面20bとからなり、室内側および下方が開放されている。このように上枠1aの室内側および下側が大きく開放されていることにより、上枠1aの見込み寸法を大きくすることなく上枠1a内にバランサー13を容易に取付けられるようになっている。上枠1aには、その開放された室内側および下側を覆う室内面21aと下面21bを有するカバー材21が取外し可能に設けられている。なお、図示例の上枠1aは、室内面の一部20cを有しているが、室内面の一部20cを有していなくてもよい。 【0017】また、図示例の上枠1aは、天井にブラケット17a,17bをネジ(図示省略)で取付けるための取付部20dを有しているが、取付部20dを有していなくてもよい。前記カバー材21は、例えばアルミニウム合金の押出形材からなっている。カバー材21は、下面21bの側縁部を上枠1aの室外面20a裏側に形成した係合片20eに係合させ、室内面21aを上枠1aの室内面の一部20cにネジ(図示省略)で固定することにより、取外し可能に取付けられる。 【0018】上枠1aにカバー材21を取付けることにより、上枠1aの内部およびバランサー13が覆い隠され、見栄えがよくなる。前記カバー材21の下面には、外障子2の上框4a室内面に設けた気密材(図示省略)を障子全閉時に接触させるためのリブ21cが一体形成されている。また、カバー材21の下面21bの長手方向両端部は、バランサー13からガイドローラ15を介して引き出されたワイヤ12と干渉しないように適宜切欠されている(図示省略)。 【0019】可動障子である外障子2および内障子3は、左右の縦枠1c、1cの対向する縦溝19,19内に室内側から嵌め込み可能(横けんどん可能)であり(けんどん式建て込み構造を採用している。)、可動障子2,3の側部(側端部ともいう。)には、前記縦溝19内に位置して前記ワイヤ12を支持する支持部材22が可動障子2,3の嵌め込みに邪魔にならない引込み位置から側方(縦溝方向)へ突出移動調性可能(突出量調整可能)に設けられている。支持部材22は、可動障子である外障子2および内障子3の両側下部にそれぞれ設けられている。 【0020】前記支持部材22は、図6ないし図7に示すように、可動障子2,3の下框4b,6b下部に長手方向に沿って形成された下向きの断面略C字状の係合溝23に摺動可能に嵌挿されるピボットバー(支持軸部)24と、このピボットバー24の一端に設けられたピボット(支持部本体)25とから主に構成されている。ピボットバー24は例えば断面略U字状の金属製溝形材からなり、ピボット25は例えば合成樹脂材からなっている。なお、剛性を有していればピボットバー24とピボット25は合成樹脂材で一体成形されていてもよい。 【0021】前記支持部材22は、吊り材であるワイヤ12を回動可能に支持する支持部26を有している。この支持部26は、前記ピボット25の端部に円形に形成されており、その外周にワイヤ12の輪16を回動可能に引掛けるための環状溝27を有している。このワイヤ12を回動可能に支持する構造は、特に後述するシングルハング式の上げ下げ窓における可動障子(内障子)3をピボット25を支点に室内側に倒す場合に役立つようになっている。なお、前記ワイヤ12を回動可能に支持する構造は、ダブルハング式の上げ下げ窓には特に必要とされるものではないが、部品の共通化により採用されている。従来の上げ下げ窓では、スライダーにピボットを回動可能に設けていたため、これらの接合構造が複雑となり、部品のコストアップを招いていたが、本実施の形態では、支持部材の支持部を円形にしたため、部品の構造が簡素化され、部品点数が減少し、コストを抑えられる。 【0022】ピボット25の基部側は略上半分が切除されており、その上面にピボットバー24が載置されて下方からネジ28で固定されている。ピボットバー24の先端は、円形の支持部26に形成した嵌入溝29に嵌入されて一体的に固定されている。前記ピボット25の基部側略下半分は、前記支持部26と同じか若干大きい径の規制部30として形成されており、図2に示すように、この規制部30が縦枠1cの縦溝19の開口部19aに収まることにより可動障子2,3の室内外方向の動き(振れ)を規制(抑制)するようになっている。前記ピボット25の基部側両側部には、下框4b,6bの係合溝23に対するピボットバー24の摺動を許容するための摺動溝31が形成されている。 【0023】前記支持部材22を所望の突出位置で固定する手段として、ピボットバー24には、ネジ32が下方から係合溝23を挟むように捩じ込まれている。可動障子2,3を枠体1の左右の縦溝19,19内に室内側からけんどん式に建て込んだり、逆に可動障子2,3を枠体1から取外したりする場合には、支持部材22にワイヤ12を引掛けた状態で支持部材22を邪魔にならないように引込めておくことにより可動障子2,3の建て込み作業や取外し作業が一人でも容易にでき、可動障子2,3の建て込み後に、支持部材22を側方へ突出させてネジ32で固定すればよい。可動障子2,3の側部には、支持部材22の支持部26を引込めたときに、この支持部26を収容可能な溝50が形成されていることが、建て込み性の更なる向上を図る上で好ましい。 【0024】支持部材22を側方へ突出させることにより、可動障子2,3の横振れを抑制することができる。可動障子2,3の左右に設けられる支持部材22が突出し過ぎると、縦溝19の奥壁19bに摺接する摩擦抵抗で開閉抵抗が増大し、また、左右の突出量がアンバランスであると、可動障子2,3が傾いて開閉が困難になるため、可動障子2,3の建て込み後に支持部材22の突出量を適宜調整すればよい。なお、図2において、33は可動障子2,3の上部両側位置に設けられた上部振れ止め部材である。 【0025】次に、以上の構成からなるダブルハング式の上げ下げ窓の作用を述べる。先ず、上枠1a、下枠1bおよび左右の縦枠1c,1cにより枠体1を組立て、上枠1a内にバランサー13を取付ける場合、上枠1aが少なくとも室外面20aと上面20bとからなり、室内側および下方が大きく開放されているため、上枠1aの見込み寸法を大きくすることなく上枠1a内にバランサー13を容易に取付けられることが可能となる。上枠1a内の天井左右位置にバランサー13をそれぞれ容易に取付けることができ、組立性の向上が図れる。従来の上げ下げ窓では、上枠にバランサーを挿入する切欠部と、バランサーを左右に振り分けて載置固定するためのスペースとを確保しなければならず、上げ下げ窓の幅寸法を小さくすることが困難であったが、本実施の形態の上げ下げ窓では、上枠にバランサーを取付けるスペースさえあれば、前記切欠部を確保する必要がないので、上げ下げ窓の幅寸法を小さくすることが可能である。 【0026】上枠1a内に、バランサー13を取付けたなら、その開放された室内側および下側を覆う室内面21aと下面21bを有するカバー材21を上枠1aに取付ければよい。上枠1aにカバー材21を取付けることにより、上枠1aの内部およびバランサー13が覆い隠され、見栄えがよくなる。また、カバー材21が取外し可能であり、カバー材21を取外すと、上枠1aの室内側および下側が大きく開放されるため、バランサー13のメンテナンスを容易に行うことができる。 【0027】次に、前記枠体1内に可動障子である外障子2および内障子3を順に建て込む。この場合、先ず可動障子2,3の両側下部に設けられている支持部材22を引込めて抜けないようにネジ32で固定しておき、支持部材22の支持部26の環状溝27にバランサー13から引き出したワイヤ12の先端の輪16を引掛ける。次いで、可動障子2,3を枠体1の左右の縦溝19内にけんどん式に建て込んだなら、ネジ32を緩めて支持部材22を突出させ、突出量を適宜調整したなら、ネジ32で固定すればよい。 【0028】このように、可動障子2,3の側部に設けられた支持部材22の支持部26にワイヤ12を引掛けてから可動障子2,3を枠体1内に建て込むため、一人作業でも容易に建て込み作業を行うことができ、可動障子2,3の建て付け性ないしダブルハング式上げ下げ窓の組立性の向上が図れる。また、支持部材22が可動障子2,3の側部に突出移動調整可能(突出可能で且つ調整可能を意味する、以下同様。)に設けられているため、支持部材22を引込めることにより可動障子2,3を枠体1内に容易に建て込むことができると共に、建て込み後支持部材22を縦溝19内に突出させて突出量を適宜調整することにより可動障子2,3の横振れを抑制することが可能となる。 【0029】また、支持部材22は、縦溝19の開口部19aに収まる規制部30を有しているため、可動障子2,3の室内外方向の振れを抑制することができる。また、本実施の形態の上げ下げ窓は、外障子2の下框4bに操作部としての手掛け部9を有しているため、内障子3を上げた状態で室内側から外障子2を容易に開閉操作することができる。 【0030】図8ないし図9は、本発明をシングルハング式の上げ下げ窓に適用した第2の実施の形態を示している。この上げ下げ窓は、枠体1内の室外側上方にパネル例えばガラスパネル5を有する固定障子(外障子)2Fを、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子(内障子)3を設けている。固定子2Fのガラスパネル5の下部を支持するために、左右の縦枠1b,1b間には中間横枠1dが掛け渡されて固定されている。 【0031】中間横枠1dおよび左右の縦枠1c、1cは、固定障子2Fのガラスパネル5Fの下縁部およぎ左右の側縁部を室内外から支持する押し縁1e,1fを有しており、上枠1aはガラスパネル5Fの上縁部を室外側から支持する押し縁1gを有している。また、中間横枠1dには、クレセント受け11が設けられている。可動障子3は、前記実施の形態のもとほぼ同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。なお、図示例の上げ下げ窓は、枠体1の枠材1a,1b,1cおよび可動障子3の框材6a,6b,6cを、それぞれ室外側形材1x,6xと室内側形材1y,6yに分割し、室外側形材1x,6xと室内側形材1y,6yを合成樹脂製のブリッジ材1z,6zを介して結合した断熱構造とされている。 【0032】上枠1aは、前記実施の形態と同様に構成されているため、同一参照符号を付して説明を省略する。上枠1a内に取付けられるバランサー13は、内障子用のバランサー13bのみを備えている。また、上枠1aに取外し可能に設けられるカバー材21は、上枠1aの開放された室内側および下側を覆う室内面21aと下面21bを有しており、その下面21bには前記固定障子2Fのガラスパネル5Fの上縁部を室内側から支持する押し縁35が一体に形成されている。なお、図示例のカバー材21は、下面21bが上枠1aの下側の一部のみを覆うようになっているが、上枠1aの下側の全部を覆うようになっていてもよい。 【0033】可動障子3は、前記実施の形態と同様に両側下部に支持部材22を前記左右の縦枠1c,1cの対向する縦溝19,19内に位置して前記ワイヤ12を支持する支持部材22が室内側から縦溝19内に嵌め込めるように引込み位置から側方へ突出移動調整可能(突出量調整可能)に設けられている。可動障子3は、室外面の清掃性を向上させるために、支持部材22を構成するピボット25を支点に室内側に倒れる倒伏可能ないし内倒し可能な構造になっている。このため、可動障子3は、前記実施の形態のようなけんどん式建て込み構造にはなっていない。可動障子3の両側上部には、縦溝19の開口部19aに係合して可動障子3が室内側に勝手に倒れないように保持する保持部材40が突出付勢された状態に設けられており、可動障子3の上部左右位置には、可動障子3を内倒しにする場合にその保持部材40を引込み操作するための操作部材41が設けられている。 【0034】以上の構成からなるシングルハング式の上げ下げ窓によれば、前記実施の形態と同様に、上枠1aが少なくとも室外面20aと上面20bとからなり、室内側および下側が大きく開放されているため、上枠1a内にバランサー13を容易に取付けることができると共に、上枠1aの室内側および下側を覆う室内面21aと下面21bを有するカバー材21を取外し可能に設けているため、上枠1aの内部およびバランサー13を覆い隠せて見栄えがよく、また、カバー材21を取外すことによりバランサー13のメンテナンスを容易に行うことができる。しかも、カバー材21に固定障子2Fのガラスパネル5Fを室内側から支持する押し縁35を一体に形成してなるため、部品点数の削減が図れる。 【0035】また、前記可動障子3の下側部には、前記左右の縦枠1c,1cの対向する縦溝19,19内に位置して前記ワイヤ12を支持する支持部材22が室内側から縦溝19内に嵌め込めるように引込み位置から側方(縦溝方向)へ突出移動調整可能に設けられ、この支持部材22を支点に前記可動障子3は室内側に内倒し可能であり、前記支持部材22はワイヤ12を回動可能に支持する支持する支持部26を有しているため、支持部材22の支持部26にワイヤ12を引掛け、かつ支持部材22を引込めることにより枠体1内に可動障子3を容易に建て込むことができ、建て込み後に支持部材22を突出させて突出量を適宜調整することにより可動障子3の横振れを抑制することが可能となる。支持部材22の支持部26に吊り材12を引掛けた状態で支持部材22を枠体1の左右の縦溝19,19内に容易に嵌め込むことができ、可動障子3の建て込み性ないしシングル式上げ下げ窓の組立性の向上が図れる。 【0036】しかも、支持部材22は、縦溝19の開口部19aに収まる規制部30を有しているため、可動障子3の室内外方向の振れを抑制することができる。また、支持部材22は、ワイヤ12を回動可能に支持する支持部26を有しているため、可動障子3をピボット25を支点に室内側に倒す場合に、可動障子3を容易に倒すことができる。前記支持部26は、円形に形成され、その外周にワイヤ12の輪16を引掛ける環状溝27を形成してなるため、簡単な構造でワイヤ12を回動可能に支持することができ、また、部品の構造が簡素化され、部品点数が減少し、コストを抑えられる。 【0037】以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。例えば、前記ダブルハング式の上げ下げ窓は、枠体1および可動障子2,3の框が断熱構造になっていてもよく、また、支持部材22の支持部26がワイヤ12を回動可能に支持するようになっていなくてもよい。前記シングルハング式の上げ下げ窓は、必ずしも断熱構造である必要はない。吊り材12としては、ワイヤが好ましいが、ワイヤに限定されるものではない。また、、カバー材21の室内面21aと下面21bは、垂直面と水平面からなっているが、これらは略垂直面と略水平面であってもよく、また、傾斜面、曲面、凹凸等を有していてもよい。本発明は、前記実施の形態を上げ下げ窓を戸体に組み込んでなる上げ下げ窓付戸にも適用可能である。 【0038】 【発明の効果】以上要する本発明によれば、次のような効果を奏することができる。 【0039】(1)請求項1に係る発明によれば、上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子は前記左右の縦枠の対向する縦溝内に嵌め込み可能であり、該可動障子に前記縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材を可動障子の嵌め込みに邪魔にならない引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けてなり、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなるため、支持部材に吊り材を支持させた状態で可動障子を枠体の左右の縦溝内に室内側から容易に嵌め込むことができ、可動障子の建て込み性の向上が図れる。 【0040】(2)請求項2に係る発明によれば、上枠、下枠および左右の縦枠からなる枠体内の室外側に固定障子を、かつ室内側に上げ下げ可能な可動障子を設け、該可動障子をバネ力で巻取り付勢された吊り材を介して吊下げるバランサーを前記枠体に取付けてなる上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸であって、前記可動障子には前記左右の縦枠の対向する縦溝内に位置して前記吊り材を支持する支持部材が縦溝内に嵌め込めるように引込み位置から縦溝方向へ突出可能で且つ調整可能に設けられ、前記支持部材は吊り材を支持する支持部を有し、該支持部に前記吊り材の端部を引掛けてなり、支持部材を支点に前記可動障子は室内側に内倒し可能であるため、支持部材に吊り材を支持させた状態で支持部材を枠体の左右の縦溝内に容易に嵌め込むことができ、可動障子の建て込み性の向上が図れる。また、可動障子を支持部材を支点に室内側に倒す場合に、可動障子を容易に倒すことができ、しかも、部品の構造が簡素化され、部品点数が減少し、コストを抑えられる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明をダブルハング式の上げ下げ窓に適用した第1の実施の形態を概略的に示す室内側正面図である。 【図2】図1のA-A矢視拡大横断面図である。 【図3】図1のB-B矢視拡大縦断面図である。 【図4】バランサーを示す図である。 【図5】上枠にバランサーを取付ける方法を概略的に示す図である。 【図6】支持部材を示す斜視図である。 【図7】同支持部材の側面図である。 【図8】本発明をシングルハング式の上げ下げ窓に適用した第2の実施の形態を示す横断面図である。 【図9】同上げ下げ窓の縦断面図である。 【符号の説明】 1 枠体 1a 上枠 1b 下枠 1c 縦枠 2,3 可動障子 12 ワイヤ(吊り材) 13 バランサー 19 縦溝 22 支持部材 26 支持部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2005-05-13 |
結審通知日 | 2005-05-18 |
審決日 | 2005-05-31 |
出願番号 | 特願平11-49014 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
ZD
(E06B)
|
最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 引地 麻由子 |
特許庁審判長 |
山田 忠夫 |
特許庁審判官 |
高橋 祐介 伊波 猛 |
登録日 | 2003-09-12 |
登録番号 | 特許第3472717号(P3472717) |
発明の名称 | 上げ下げ窓または上げ下げ窓付戸 |
代理人 | 湯田 浩一 |
代理人 | 湯田 浩一 |
代理人 | 星野 哲郎 |
代理人 | 星野 哲郎 |