• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1136793
審判番号 不服2003-24557  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-18 
確定日 2006-05-17 
事件の表示 特願2000- 32116「光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月17日出願公開、特開2001-223388〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月9日の出願であって、平成15年11月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し平成15年12月18日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年1月15日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成16年1月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年1月15日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1を、下記のように補正することを含むものである。
「【請求項1】反射性を有するパターンと、
前記パターン上に設けられ、橙色蛍光顔料や橙色蛍光染料の波長変換材料を混入した透明樹脂と、
InGaAlPやInGaAlNやInGaNおよびGaN系の半導体発光素子の何れかからなり、前記透明樹脂により該透明樹脂上に接着固定され、青色発光する透明性を有する半導体発光素子とを備え、
前記半導体発光素子下方に放射した青色光を前記波長変換材料により前記半導体発光素子が放射した青色光とは異なる黄色光に色変換するとともに、該色変換した黄色光を前記パターンで反射し、再度上方に反射し前記半導体発光素子を透過した黄色光の反射光と、
前記半導体発光素子上方に放射した前記半導体発光素子自身の青色光の放射光とが混合して、前記半導体発光素子自身の上面から前記黄色光および前記青色光とは異なる色の白色光を放射することを特徴とする光源装置。」

上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)刊行物記載の発明
この出願前公知の刊行物1:特開平11-68166号公報には、下記の事項が記載されている。
「【請求項1】一対の配線導体(13、14)と、該一対の配線導体(13、14)の一方の端部に接着された発光ダイオードチップ(2)と、該発光ダイオードチップ(2)の上面に形成された電極(2a、2b)と前記一対の配線導体(13、14)とを電気的に接続するボンディングワイヤ(5、6)と、前記発光ダイオードチップ(2)、ボンディングワイヤ(5、6)及び配線導体(13、14)の端部を被覆する光透過性の封止樹脂(8)とを備えた発光ダイオード装置において、
前記発光ダイオードチップ(2)から照射される光に対して光透過性を有するバインダと、該バインダ内に混合され且つ前記発光ダイオードチップ(2)から照射される光を吸収して他の発光波長に変換する蛍光物質とを含む蛍光バインダ層(10)を介して前記発光ダイオードチップ(2)を前記一対の配線導体(13、14)の一方に固着したことを特徴とする発光ダイオード装置。・・・
【0007】・・・蛍光バインダ層(10)は、発光ダイオードチップ(2)から照射される光に対して光透過性を有するホットメルト接着剤等のバインダと、バインダ内に混合され且つ発光ダイオードチップ(2)から照射される光を吸収して他の発光波長に変換する蛍光物質とを含む。・・・
【0008】バインダ中に含まれる蛍光物質は、発光ダイオードチップ(2)の光線を吸収しながら、その光線の波長とは異なる波長の光線を発する。蛍光物質は、・・・無機蛍光体の外、・・・市販の蛍光顔料、蛍光染料等の有機蛍光体を使用できる。本実施の形態では、蛍光バインダ層(10)は、例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体の粉末をエポキシ樹脂のバインダに混合して製造するが、一般の蛍光顔料や蛍光染料をバインダーに混合したものでもよい。
【0009】 ・・・使用の際に配線導体(13、14)間に電圧を印加して発光ダイオードチップ(2)に通電すると、発光ダイオードチップ(2)から下方に照射される光は、蛍光バインダ層(10)内を通過した後、カップ部(16)の側壁(16b)で反射して封止樹脂(8)の外部に放出される。その際に、発光ダイオードチップ(2)から四方に放射された光成分の内、下方向に放出された光成分及び横方向に放出されカップ部(16)の側壁(16b)で散乱し反射した光成分の一部は蛍光バインダ層(10)に達し、そこで波長変換されて異なった波長の光となった後に蛍光バインダ層(10)から放出され、波長変換されない発光ダイオードチップ(2)からの光成分と混合して封止樹脂(8)を通して発光ダイオード装置(11)の外部に放出される。
【0010】具体的には、例えば発光ダイオードチップ(2)に発光波長のピークが約440nmから約470nmのGaN系の青色発光ダイオードチップ(2)を用い、また蛍光バインダ層(10)に付活剤としてCe(セリウム)を適量添加したYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット、化学式Y3A15O12、励起波長のピーク約450nm、発光波長のピーク約540nmの黄緑色光)の単結晶を用いれば、青色発光ダイオードチップ(2)の発光波長とYAG蛍光体の励起波長とがほぼ一致するため効率よく波長変換が行われる。またYAG蛍光体の発光スペクトル分布が半値幅約130nmと広域なため、発光ダイオード装置(11)の外部に放出される光は発光ダイオードチップ(2)の発光と蛍光バインダ層(10)の発光とが混色された青みがかった白色光となる。蛍光バインダ層(10)の発光スペクトル分布をシフトさせて発光ダイオード装置(11)の発光を更に所望の色調に調整するときは、YAG蛍光体の結晶構造を一部変更すればよい。例えばGa(ガリウム)又は/及びLu(ルテチウム)を適量添加すれば短波長側にシフトし、Gd(ガドリニウム)等を適量添加すれば長波長側にシフトする。・・・
【0016】図6は、チップ形発光ダイオード装置(21)に適用した本発明の他の実施の形態を示す。チップ形発光ダイオード装置(21)では、絶縁性基板(17)の一方の主面にカップ部(16)と、相互に離間した配線導体(13、14)とが形成され、配線導体(13、14)の一方の端部は、カップ部(16)内に配置される。発光ダイオードチップ(2)はカップ部(16)の底部(16a)にて配線導体(3)に蛍光バインダ層(10)を介して固着される。配線導体(13、14)の他方の端部は、絶縁性基板(17)の側面及び他方の主面に延びて配置される。発光ダイオードチップ(2)のカソード電極(2a)及びアノード電極(2b)はそれぞれボンディングワイヤ(5、6)により配線導体(13、14)に接続される。発光ダイオードチップ(2)、カップ部(16)、ボンディングワイヤ(5、6)、配線導体(13、14)の一方の端部側は絶縁性基板(17)の一方の主面に形成された断面台形状の封止樹脂(8)によって被覆される。図6の発光ダイオード装置(21)でも、発光ダイオードチップ(2)から照射された光の一部が蛍光体バインダ層(10)の蛍光物質によって発光波長が変換され、図1の発光ダイオード装置と同様の作用効果が得られる。」
また、図6には、絶縁性基板上に配線導体(13)が形成され、その一方の端部がカップ部(16)内の側壁(16b)及び底部(16a)に配置され、他方の端部は、絶縁性基板(17)の側面及び他方の主面に延びて端子部を構成し、前記発光ダイオードチップ(2)が、蛍光バインダ層(10)を介して前記カップ部の底部で配線導体(13)に固着されたチップ形発光ダイオード装置が見て取れる。

上記によれば、刊行物1には、
「絶縁性基板(17)上に配線導体(13)が形成され、その一方の端部がカップ部(16)内の側壁(16b)及び底部(16a)に配置され、他方の端部は、絶縁性基板(17)の側面及び他方の主面に延びて端子部を構成し、GaN系の青色発光ダイオードチップ(2)が、光透過性を有するバインダ内に前記発光ダイオードチップ(2)から照射される光を吸収して他の発光波長に変換する蛍光顔料、蛍光染料等が混合された蛍光バインダ層(10)を介して前記カップ部の底部で配線導体に固着されてなり、前記発光ダイオードチップ(2)から四方に放射された光成分の内、下方向に放出された光成分及び横方向に放出されカップ部の側壁で散乱し反射した光成分の一部は蛍光バインダ層(10)に達し、そこで波長変換されて異なった波長の光となった後に蛍光バインダ層(10)から放出され、波長変換されない発光ダイオードチップ(2)からの光成分と混合して青みがかった白色光を発光するチップ形発光ダイオード装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本願補正発明の「パターン」には、端子電極に電気的に接続されるパターン、即ち、配線導体が含まれる。(本願明細書の【0053】参照。)
一方、引用発明においては、「配線導体の一方の端部がカップ部(16)内の側壁(16b)及び底部(16a)に配置され、他方の端部は、絶縁性基板(17)の側面及び他方の主面に延びて端子部を構成し」ており、放出された光が「側壁で散乱し反射」するのであるから、カップ部底部の配線導体も光を反射することは明らかである。
よって、引用発明の「配線導体」は、本願補正発明の「反射性を有するパターン」に相当する。
(イ)引用発明の「GaN系の青色発光ダイオードチップ」は、本願補正発明の「GaN系の半導体発光素子」に相当する。
また、引用発明の青色発光ダイオードチップは、光成分を四方に放射する(【0009】)こと、及びその材質がGaN系であることから見て、透明性を有するものと解される。
(ウ)引用発明の「光透過性を有するバインダ内に前記発光ダイオードチップ(2)から照射される光を吸収して他の発光波長に変換する蛍光顔料、蛍光染料等が混合された蛍光バインダ層(10)」は、本願補正発明の「波長変換材料を混入した透明樹脂」に相当する。
(エ)引用発明の「青みがかった白色光」は、結局白色光を意味するものであるから、本願補正発明の「白色光」に相当することは明らかである。
(オ)引用発明の「チップ形発光ダイオード装置」は、本願補正発明の「光源装置」に相当する。

よって、両者は、
「反射性を有するパターンと、前記パターン上に設けられ、蛍光顔料や蛍光染料の波長変換材料を混入した透明樹脂と、GaN系の半導体発光素子からなり、前記透明樹脂により該透明樹脂上に接着固定され、青色発光する透明性を有する半導体発光素子とを備え、前記半導体発光素子が放射した青色光を前記波長変換材料により前記半導体発光素子が放射した青色光とは異なる色光に色変換するとともに、該色変換した色光と前記半導体発光素子自身の青色光の放射光とが混合して、前記色光および前記青色光とは異なる色の白色光を放射する光源装置」である点で一致し、下記の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明の波長変換材料は、「橙色」蛍光顔料や「橙色」蛍光染料であるのに対して、引用発明は、蛍光顔料、蛍光染料を用いるものの、橙色との限定を有するものではない点、
(相違点2)
本願補正発明では、前記半導体発光素子下方に放射した青色光を前記波長変換材料により前記半導体発光素子が放射した青色光とは異なる「黄」色光に色変換するとともに、該色変換した「黄」色光を「前記パターンで反射し、再度上方に反射し前記半導体発光素子を透過した黄色光の反射光と、前記半導体発光素子上方に放射した」前記半導体発光素子自身の青色光の放射光とが混合して、「前記半導体発光素子自身の上面から」前記黄色光および前記青色光とは異なる色の白色光を放射するのに対して、引用発明は、四方に放射された光成分のうち、下方向に放出された光成分及び横方向に放出されカップ部の側壁で散乱し反射した光成分の一部は蛍光バインダ層(10)に達し、そこで波長変換されて異なった波長の光となった後に蛍光バインダ層(10)から放出され、波長変換されない発光ダイオードチップ(2)からの光成分と混合して白色光を発光するものである点。

(4)判断
上記相違点につき検討する。
(相違点1について)
刊行物1には、前掲のとおり、【0010】に「蛍光バインダ層(10)の発光スペクトル分布をシフトさせて発光ダイオード装置(11)の発光を更に所望の色調に調整するときは、YAG蛍光体の結晶構造を一部変更すればよい。例えばGa(ガリウム)又は/及びLu(ルテチウム)を適量添加すれば短波長側にシフトし、Gd(ガドリニウム)等を適量添加すれば長波長側にシフトする。」ことが記載されているのであるから、所望の白色光を得るために、青色発光ダイオードの発光を黄色光に波長変換する橙色の蛍光顔料や蛍光染料を選択することは、適宜なし得る設計事項である。
(なお、橙色の蛍光顔料等は、特開平7-176794号公報及び特開平8-7614号公報に記載されているように周知のことでしかない。)

(相違点2について)
刊行物1には、発光ダイオードチップから下方向に放出された光成分は蛍光バインダ層に達し、そこで波長変換されて異なった波長の光となった後に蛍光バインダ層から放出されることは記載されているが、前記異なった波長の光の内、配線導体側に向かう光については記載がない。しかし、この配線導体側に向かう光は、配線導体で反射し、その反射したものの中には発光ダイオードチップを透過する光が存在することは明らかである。そして、これらの異なった波長の光は、発光ダイオードチップから放出された光成分と混合して白色光を発光することも当業者に明らかである。
一方、本願補正発明においては、透明性を有する半導体発光素子からは、下方のみならず、上方及び側方にも青色発光を放射し、かつ、透明樹脂の側方にも色変換した黄色光を放射することは明らかである。
要するに、本願補正発明の上記相違点2は、半導体発光素子下方に放射した青色光とそれが色変換して反射した光の内の、発光ダイオードチップを透過する光のみに着目し、その作用を記載したものにすぎない。しかし、本願発明の第2の実施の形態を示す図2のような光源装置全体としてみれば、引用発明とその作用において格別異なるところはない。
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、刊行物1記載のものから予測し得る程度のものである。
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に適宜設計変更を施すことにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年1月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年10月17日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】反射性を有するパターンと、
前記パターン上に設けられ、橙色蛍光顔料や橙色蛍光染料の波長変換材料を混入した透明樹脂と、
InGaAlPやInGaAlNやInGaNおよびGaN系の半導体発光素子の何れかからなり、前記透明樹脂により該透明樹脂上に接着固定され、青色発光する透明性を有する半導体発光素子とを備え、
前記半導体発光素子下方に放射した青色光を前記波長変換材料により黄色光に色変換して再度上方に反射した黄色光の反射光と、前記半導体発光素子上方に放射した前記半導体発光素子自身の青色光の放射光とが前記半導体発光素子の上面で混ざり合って白色光を放射することを特徴とする光源装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用した、この出願前公知の刊行物1:特開平11-68166号公報には、上記2.(2)刊行物記載の発明において摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、上記本願補正発明とを比較すると、「色変換した黄色光をパターンで反射する」などの発明特定事項を欠くものであるから、本願補正発明に対するとほぼ同様の理由により、刊行物1に記載された発明に適宜設計変更を施すことにより当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-28 
結審通知日 2006-03-07 
審決日 2006-03-24 
出願番号 特願2000-32116(P2000-32116)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 向後 晋一
樋口 信宏
発明の名称 光源装置  
代理人 西村 教光  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ