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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1136855
審判番号 不服2004-5818  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-24 
確定日 2006-05-19 
事件の表示 平成 7年特許願第 69993号「地図データ読出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月11日出願公開、特開平 8-262975〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成7年3月28日の出願であって、平成16年2月19日付けで拒絶の査定がされたため、同年3月24日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項1,2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成15年6月23日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項2】に記載されたとおりのものであり、これら請求項の記載は次のとおりである。
【請求項1】所定の範囲の地図を第1領域単位で分割することにより複数のユニットとして区分けした第1地図データと、前記ユニット毎にその領域を第2領域単位で分割することにより複数のブロックとして区分けした第2地図データと、を記憶した記録媒体から地図データを読み出す地図データ読出装置であって、
現在地又は指定された位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段による検出位置が複数のユニットのうちのいずれに属しているかを判別する第1判別手段と、
前記位置検出手段による検出位置が前記第1判別手段によって判別されたユニット内のいずれのブロックに属しているかを判別する第2判別手段と、
前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックに対応する地図データ群を前記記録媒体から読み出す読出手段と、を備えたことを特徴とする地図データ読出装置。
【請求項2】前記位置検出手段は、所定周期で前記現在地の位置を検出する現在地検出手段と、
前記現在地検出手段によって検出された前記現在地の今回検出位置についての前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックと、前記現在地検出手段によって検出された前記現在地の前回検出位置についての前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックとが同一であるか否かを判別する第3判別手段と、を含み、
前記第3判別手段によって所定数のブロックが前記現在地の今回検出位置と前回検出位置とが同一ではないと判別された場合に、前記読出手段は前記現在地の今回検出位置について前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックに対応する地図データ群を前記記録媒体からの読み出しを行うことを特徴とする請求項1記載地図データ読出装置。

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-10281号公報(以下「引用例」という。)には、次のア〜キの記載又は図示がある。摘記に当たっては、改行及び一字空白を省略することがあり、「ウインド-」とあるのは「ウインドー」に改める(後記5.で引用する箇所では「ウインドウ」と記載されている場合があるがこれも、「ウインドー」と表記する。)。
ア.「<産業上の利用分野>本発明は自動車ナビゲーションの地図描画方法に係わり、特にマニュアル操作により地図をスクロール表示する地図描画方法に関する。」(1頁右下欄9〜12行)
イ.「第1図は本発明を実現できる自動車用ナビゲーション・システムのブロック図である。図において、1は地図データ記憶手段となるCD-ROM、2は地図検索、自動車位置設定用のキー2a,2bや地図のスクロール方向を指定するジョイスティック2c..等を備えた操作部、3は絶対方位を検出する方位センサであり、地磁気センサやステアリングセンサを有している。4は移動量センサで、走行距離を検出する車速センサ、前後進を検出する変速機センサなどがある。5は位置計算用CPUで、方位センサ3,移動量センサ4から入力されるそれぞれの値により、自分の車両の現在位置(経度、緯度)を算出する。
6は処理装置で、システムコントローラ(CPU)7,地図データバッファメモリ8等を有している。システムコントローラ7は
(1)後述する2つのVRAMのうち、いずれのVRAMから画像を読み取って地図表示するかディスプレイ装置に指令すると共に、
(2)自動車位置に応じた画像読み出しアドレス(ウインドーアドレス)を発生し、
(3)更には自動車の実際の走行に応じた地図描画処理及びマニュアル操作による地図スクロール処理を行う。」(2頁右下欄1行〜3頁左上欄4行)
ウ.「CD-ROM1に記憶される地図データはビューセットA,B,Cによる階層構造を有している。ここでビューセットAはある基準縮尺(例えば5万分の1縮尺)の1画面分の地図データ、ビューセットBはビューセットAで表示される区域の1/4の区域を拡大表示するための1画面分の地図データ、ビューセットCはビューセットBで表示される区域の更に1/4の区域を拡大表示するための1画面分の地図データであり、各ビューセットAi,Bi,Ciによりそれぞれ1画面に表示される範囲の関係は第2図(a)〜(b)に示す通りである。尚、ビューセットA5(第2図(a)参照)に着目すると、ビューセットA1〜A4,A6〜A9がビューセットA5により表示される区域の隣接地図データとなり、B1〜B4が拡大地図データとなる。又、ビューセットB1(第2図(b)参照)に着目すると、ビューセットA5が縮小地図データとなり、C1,C2,C5,C6が拡大地図データとなる。
第3図はCD-ROM1に記憶されるビューセットの構造図であり、上層ビューセットへのポインタPu,下層ビューセットへのポインタPd,隣接ビューセットへのポインタPn1〜Pn8,地図データを記憶するアドレスを示すユニット管理情報等を有している。従って、ビューセットAi,Bi,Ciの関係では、第4図に示すように、ビューセットAiのポインタPdによりビューセットBiの先頭アドレスが指示され、ビューセットBiのポインタPdによりビューセットCiの先頭アドレスが指示され、ビューセットCiのポインタPuによりビューセットBiの先頭アドレスが指示され、ビューセットBiのポインタPuによりビューセットAiの先頭アドレスが指示される。」(3頁左上欄15行〜左下欄8行)
エ.「地図検索又は自動車位置を設定するためのキー操作が行われるとシステムコントローラ7は、所定の3×3枚の地図データをCD-ROM1から読み取ってディスプレイ装置10に入力する。これによりディスプレイ装置10は9画面分の地図画像MP(第6図(a)参照)を生成して第1のVRAM12に格納し、しかる後、ウインドーWDの位置を設定し、該ウインドー位置から画像を読み出してCRT15に表示する(ステップ101)。」(3頁左下欄13行〜右上欄1行)
オ.「システムコントローラ7は1画素分(1ドット幅)地図がスクロール移動すると、スクロール方向に応じた隣接地図画像(3×3区域の地図画像)MP′の地図データをCD-ROM1から読み取ってディスプレイ装置10に入力する。これによりディスプレイ装置10は9画面分の地図画像MP′(第6図(b)参照)を生成して第2のVRAM13に格納する(ステップ104)。尚、ウインドーWDが裏描画開始ラインBDL1に到達する前に、次の隣接地図画像MP′を予測できるのは、マニュアル操作時においては単一方向スクロールが連続することが多いからであり、又たとえ予測が間違っても修正操作が行われ何等問題が生じないからである。」(3頁右下欄9行〜4頁左上欄2行)
カ.第4図では、「図葉管理情報より」との注釈が付された矢印がビューセットAiのみに延びており、ビューセットBi及びビューセットCiには延びてない。ビューセットBiについては、ビューセットAiのポインタPd(下層ビューセットへのポインタ)からの矢印が延びているとともに、ビューセットBiのポインタPu(上層ビューセットへのポインタ)からビューセットAiへの矢印が延びている。さらに、ビューセットCiについては、ビューセットBiのポインタPdからの矢印が延びているとともに、ビューセットCiのポインタPuからビューセットBiへの矢印が延びている。
キ.第2図には、各ビューセットが「1画面」であると図示されており、第6図には、ウインドーWDが1つのビューセットの区域と同サイズであることが図示されている。

2.引用例記載の発明の認定
ビューセットA,B,Cの1つにより表示される区域を「区画」ということにする。ビューセットBの1区画はビューセットAの1区画の1/4であるから、1つのビューセットAiに対応する下層のビューセットBiは4個あり、同じく1つのビューセットBiに対応する下層のビューセットCiも4個ある。そうである以上、ビューセットAi及びビューセットBiにおける「下層ビューセットへのポインタPd」は、4個あるビューセットのうちの1つを指定するものでなければならない。
そして、引用例第4図によれば、図葉管理情報より直接アクセスされる対象はビューセットAだけであり、ビューセットB又はCには、上層ビューセットたるビューセットA又はビューセットA及びBへのアクセスを経てからアクセスされている。下層ビューセットにアクセスする場合に、上層ビューセットへのアクセスを経るということは、最終的にアクセスすべき下層ビューセットを分割領域として含む上層ビューセットを確定し、上層ビューセットのポインタPdにより下層ビューセットを確定することである。そのことは、引用例第4図から明らかであるとともに、引用例の出願人の一人であるアルパイン株式会社出願に係る特開平4-319987号公報に、「地図画像描画部15aがCD-ROM11から、自動車位置に応じた地図データを読み出すには、(1)自動車が存在する図葉の図葉管理レコ-ドを求め、(2)該図葉管理レコ-ドのポインタP3が指示するアドレスからユニットAの地図アドレス情報を求め、Aレベルにおける地図がCRTに表示されている場合には、その地図アドレス情報が示すアドレスから順次地図データを読み取り、(3)Bレベルにおける地図がCRTに表示されている場合には、ユニットAのポインタPdが指示するユニットBの管理情報を求め、その地図アドレス情報が示すアドレスから順次地図データを読み取り、(4)Cレベルにおける地図がCRTに表示されている場合には、ユニットBのポインタPdが指示するユニットCの管理情報を求め、その地図アドレス情報が指示するアドレスから順次地図データを読み取る。」(段落【0027】)と記載があることからも頷けるところである。
引用例は、発明の名称を「地図描画方法」とする文献であるが、そこには「地図描画装置」としての発明も記載されており、記載又は図示ア〜キを含む引用例の全記載及び図示によれば、それは次のようなものと認めることができる。
「ビューセットA,B,Cによる階層構造を有した地図データを記憶するCD-ROMから、地図データを読み出し、地図画像を生成し2つのVRAMに交互に格納し、一方のVRAMから画像を読み出す地図描画装置であって、
ビューセットBの1区画はビューセットAの1区画の1/4、及びビューセットCの1区画はビューセットBの1区画の1/4であり、
各ビューセットは、上層ビューセットへのポインタPu,下層ビューセットへのポインタPd,隣接ビューセットへのポインタ,地図データを記憶するアドレスを示すユニット管理情報等を有しており、
地図検索又は自動車位置を設定するためのキー操作が行われると、図葉管理情報によりビューセットAにアクセスし、ビューセットAのポインタPdによりビューセットBにアクセスし、ビューセットCのポインタPdによりビューセットCにアクセスすることにより、上記キー操作により定まる区画のビューセット及びそれに隣接する区画のビューセットの地図データを読み出し、一方のVRAMに格納し、ビューセット区画と同サイズのウインドーの位置を設定し一方のVRAMから画像を読み出すものであり、
地図がスクロール移動すると、スクロール方向に応じた隣接地図画像の地図データを読み出し、地図画像を生成し、現在読み出されていないVRAMに格納する地図描画装置。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明1と引用発明との対比
引用発明におけるビューセットAの各区画は本願発明1の「第1領域」に相当し、それゆえビューセットAの地図データは本願発明1の「所定の範囲の地図を第1領域単位で分割することにより複数のユニットとして区分けした第1地図データ」に相当する。
引用発明におけるビューセットB又はCの各区画は、ビューセットAの各区画を1/4又は1/16に分割したものであるから、本願発明1の「第2領域」に相当し、それゆえビューセットB又はCの地図データは本願発明1の「前記ユニット毎にその領域を第2領域単位で分割することにより複数のブロックとして区分けした第2地図データ」に相当する。ビューセットB又はCの各ビューセット(Bi又はCi)は「ブロック」に当たる。したがって、引用発明の「CD-ROM」と本願発明1の「記録媒体」に相違はない。
引用発明では「地図検索又は自動車位置を設定するためのキー操作が行われる」ことにより地図が描画されるのだから、「現在地又は指定された位置を検出する位置検出手段」を当然有する(記載イの「5は位置計算用CPUで、方位センサ3,移動量センサ4から入力されるそれぞれの値により、自分の車両の現在位置(経度、緯度)を算出する。」も参照。)。そして、「キー操作により定まる区画」が、位置検出手段により検出された位置を含む区画であることは自明である。
引用発明では、上記キー操作がされると「図葉管理情報によりビューセットAにアクセス」するものであり、アクセスすべきビューセットAiが操作により定まるから、「図葉管理情報」はアクセスすべきビューセットAiの情報を含んでいる。すなわち、引用発明は本願発明1の「前記位置検出手段による検出位置が複数のユニットのうちのいずれに属しているかを判別する第1判別手段」を備えている。
引用発明において、ビューセットB又はCの地図を表示する場合には、これらビューセットにアクセスしなければならないが、そのためには位置検出手段により検出された位置を含むビューセット(B又はC)の上層であるビューセットAの1つにアクセスしてから、ポインタPdにより下層ビューセットBの1つ(4個あるうちの1つ)にアクセスし、更にビューセットはCの地図を表示する場合には、上記のようにアクセスされたビューセットBの1つから更に下層のビューセットBの1つ(4個あるうちの1つ)にアクセスしなければならない。4つある下層のビューセットの1つを選ぶためには、その選択情報(本願発明1の「第1判別手段によって判別されたユニット内のいずれのブロックに属しているか」の情報)が必要であるから、引用発明は「前記位置検出手段による検出位置が前記第1判別手段によって判別されたユニット内のいずれのブロックに属しているかを判別する第2判別手段」を備えている。
引用発明では「キー操作により定まる区画のビューセット及びそれに隣接する区画のビューセットの地図データを読み出し」ており、このことと本願発明1の「前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックに対応する地図データ群を前記記録媒体から読み出す」ことに相違はない。すなわち、本願発明1と引用発明の「読出手段」には相違がない。
この点請求人は、「引用文献1(審決注;引用例)の上記したビューセットA,B,Cによる階層構造を有する地図データは地図の拡大又は縮小表示のために用いられるものであり、地図データにおいて階層間の関係を付けて特定の地図データを特定して読み出す構成については全く開示されていない。例えば、ビューセットAで現在位置に対応した地図データを判別し、その判別した地図データの領域内で現在位置に対応したビューセットBの区域のうちの地図データを特定するというような構成は全く示されていない。」(平成16年4月22日付け手続補正書(方式)4頁9〜15行)、「本願請求項1に係る発明の「検出位置が複数のユニットのうちのいずれに属しているかを判別する第1判別手段と、前記位置検出手段による検出位置が前記第1判別手段によって判別されたユニット内のいずれのブロックに属しているかを判別する第2判別手段と」に対応した構成が引用文献1には示されてない。」(同書同頁16〜19行)及び「引用文献1〜4の開示技術は、先ず、大なる領域単位で現在位置に対応した1つの地図データを判別し、次に、その判別結果に基づいて小なる領域単位で現在位置に対応した地図データを判別するという構成のものでは全くない。」(同書同頁34〜37行)と主張するが、第4図図示からみて、上記のとおり認定するのが妥当であるから、この主張を採用することができない。
本願発明1は「地図データ読出装置」の発明であるが、【請求項1】を引用する【請求項5】には「前記読出手段は、読み出した地図データ群をメモリに書き込み、前記メモリに書き込まれた地図データ群のうちの表示手段の表示画面に応じたデータだけを読み出して前記表示手段に供給することを特徴とする請求項1記載の地図データ読出装置。」と記載されているから、本願発明1の「読出手段」は、記録媒体からの読出にとどまらず、読み出した地図データ群をメモリ(引用発明の「VRAM」がこれに相当する。)に書き込み(引用発明では「格納」)し、さらにメモリに書き込まれた地図データ群のうちの表示手段の表示画面(引用発明の「ウインドー」がこれに相当する。)に応じたデータだけを読み出して表示手段に供給するものであってもよく、そのような読出手段を備えた「地図データ読出装置」であれば「地図描画装置」ということもできる。逆にいうと、引用発明は「地図描画装置」であるが、これを「地図データ読出装置」ということもできる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、
「所定の範囲の地図を第1領域単位で分割することにより複数のユニットとして区分けした第1地図データと、前記ユニット毎にその領域を第2領域単位で分割することにより複数のブロックとして区分けした第2地図データと、を記憶した記録媒体から地図データを読み出す地図データ読出装置であって、
現在地又は指定された位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段による検出位置が複数のユニットのうちのいずれに属しているかを判別する第1判別手段と、
前記位置検出手段による検出位置が前記第1判別手段によって判別されたユニット内のいずれのブロックに属しているかを判別する第2判別手段と、
前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックに対応する地図データ群を前記記録媒体から読み出す読出手段と、を備えたことを特徴とする地図データ読出装置。」である点で一致し、両者に相違点は存在しない。
すなわち、本願発明1は引用発明そのものであるから、特許法29条1項3号に該当する発明であるから、同項の規定により特許を受けることができない。

4.本願発明2と引用発明との一致点及び相違点の認定
本願発明2と引用発明とは、本願発明1の構成を備えた地図データ読出装置である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉本願発明が「前記位置検出手段は、所定周期で前記現在地の位置を検出する現在地検出手段と、
前記現在地検出手段によって検出された前記現在地の今回検出位置についての前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックと、前記現在地検出手段によって検出された前記現在地の前回検出位置についての前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックとが同一であるか否かを判別する第3判別手段と、を含み、
前記第3判別手段によって所定数のブロックが前記現在地の今回検出位置と前回検出位置とが同一ではないと判別された場合に、前記読出手段は前記現在地の今回検出位置について前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロックに対応する地図データ群を前記記録媒体からの読み出しを行う」のに対し、引用発明では「地図がスクロール移動すると、スクロール方向に応じた隣接地図画像の地図データを読み出」す点。

5.相違点についての判断及び本願発明2の進歩性の判断
引用例の記載イにおける「自動車の実際の走行に応じた地図描画処理」とは、車両位置(現在地の位置)が移動することに伴うスクロールと解するのが自然であり、その際所定周期で現在地の位置を検出することはせいぜい設計事項である。
次に、本願発明2の「第3判別手段」は、「第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロック」と、「現在地の前回検出位置についての前記第2判別手段によって判別されたブロックを中心とする所定数のブロック」が同一であるか否かを判別するのであるが、今回と前回との「第2判別手段によって判別されたブロック」が同一であれば、同ブロックを中心とする所定数のブロックも同一であるし、同一でなければ同ブロックを中心とする所定数のブロックも同一でない。すなわち、第3判別手段とは、「前記現在地検出手段によって検出された前記現在地の今回検出位置についての前記第2判別手段によって判別されたブロックと、前記現在地検出手段によって検出された前記現在地の前回検出位置についての前記第2判別手段によって判別されたブロックとが同一であるか否かを判別する」判別手段と等価である。
引用例には、1.で摘記した記載のほか、「〈従来技術〉」として、「地図をスクロールするには予めm×n(例えば3×3)枚の地図画像MP1を第7図に示すように第1のビデオRAM(VRAM)に展開しておき、車両CARの移動に応じて該VRAMから地図データを読み出す範囲(ウインドー、一点鎖線で示す)WDを移動させて地図をディスプレイ画面上でスクロールさせる。そして、ウインドーが予め設定されている裏描画開始ラインBDL1に到達すれば、自動車CARの存在区域が中央となるように新たな3×3の隣接地図画像MP2を生成して第2VRAMに記憶し、しかる後、第2VRAMの指定ウインドーから地図画像を読み出してCRTにスクロール表示する。」(2頁左上欄3〜15行)との記載もある。「裏描画開始ラインBDL1」は、引用発明の処理説明図である第6図にも図示されており、第7図の「裏描画開始ラインBDL1」で形成される四角形は第6図のそれよりも大きく描かれており、第6図ではウインドーが裏描画開始ラインBDL1に到達するのと、ウインドー(1画面)中心が隣接区域に到達するのがほぼ同時となるように描かれている。
引用発明は、上記従来技術の「2つのVRAMを用いても裏描画(他方のVRAMに地図を格納する処理)が間に合わない事態を生じ、マニュアル操作による高速スクロール表示が円滑に行えないという問題がある。」(2頁右上欄6〜10行)との課題を解決するために、「ウインドーWDが裏描画開始ラインBDL1に到達する前」(記載オ)に裏描画(次の地図の描画)をするのであるが、要は早めに裏描画をすることが従来技術の課題解決に結びつくのであるから、スクロール移動すると直ちに裏描画することに代えて、従来技術の「裏描画開始ラインBDL1」で形成される四角形を小さくし、早めに裏画像描画をすることは当業者にとって想到容易である。その際、どの程度小さくするかは設計事項であり、第6図図示の程度まで小さくすることは設計事項というべきである。そして、「裏描画開始ラインBDL1」で形成される四角形を第6図図示の程度まで小さくした場合には、ウインドーが裏描画開始ラインBDL1に到達することと、現在地が隣接区域にさしかかることは同じであるから、現在地が所属する区画ビューセット(「前記現在地検出手段によって検出された前記現在地の検出位置についての前記第2判別手段によって判別されたブロック」)が今回と前回とで同一か否かを判別基準とすること、すなわち本願発明2の「第3判別手段」を採用することも設計事項というべきである。
相違点に係る残余の構成は、第3判別手段により現在地の所属するブロックが前回と異なると判別された場合に、新たな読出を行う(読出対象は本願発明2と引用発明において異ならない。)というだけであるから、本願発明2の「第3判別手段」を採用した場合に、付随的に採用しなければならない構成にすぎない。
以上によれば、相違点に係る本願発明2の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明2は引用発明及び引用例記載の従来技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明1及び本願発明2が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-24 
結審通知日 2006-03-27 
審決日 2006-04-07 
出願番号 特願平7-69993
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
P 1 8・ 113- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 長島 和子
國田 正久
発明の名称 地図データ読出装置  
代理人 藤村 元彦  
代理人 藤村 元彦  

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