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審決分類 審判 訂正 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正しない C08F
審判 訂正 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正しない C08F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない C08F
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない C08F
管理番号 1137011
審判番号 訂正2005-39182  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-10-12 
確定日 2006-05-22 
事件の表示 特許第3456774号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3456774号の発明は、平成6年11月15日に特許出願され、平成15年8月1日に特許権の設定登録がなされたものであり、その後、名越 千栄子(以下、「特許異議申立人」という。)より請求項1〜4に係る特許について特許異議の申立てがあり、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年11月10日に特許異議意見書が提出された。そして、平成17年7月7日付けで請求項1〜4に係る特許を取り消す特許異議の決定がなされ、これを不服として平成17年8月26日付けで東京高裁に平成17年(行ケ)第10661号異議の決定取消請求の裁判が申し立てられ、平成17年10月21日付けで訂正審判が請求され、平成17年12月22日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成18年2月2日付けで意見書が提出されたものである。

2.訂正事項
訂正事項a:
特許請求の範囲の請求項1の「気相流動床反応器」を「ユニポール法気相流動床反応器」
と訂正する。
訂正事項b:
特許明細書の段落【0008】の「気相流動床反応器」を「ユニポール法気相流動床反応器」と訂正する。
訂正事項c:
特許明細書の段落【0011】の「気相流動床反応器」を「ユニポール法気相流動床反応器」と訂正する。
訂正事項d:
特許明細書の段落【0013】の「なお、上記製造条件中」を「なお、上記ユニポール法において、担体、重合触媒成分およびグラニュラー状物の平均粒径は、ふるい分け法によって測定された数値である。また、上記製造条件中」と訂正する。

3.訂正の可否
3-1.訂正要件の有無
本件訂正は、訂正事項dを含むものである。
そして、訂正事項dは、特許明細書に「上記ユニポール法において、担体、重合触媒成分およびグラニュラー状物の平均粒径は、ふるい分け法によって測定された数値である。」を追加するものである。
しかしながら、この追加された記載は、特許明細書になんら存在しないし、特許明細書の記載から自明でもない。
これについて、請求人は、訂正審判請求書の(4)請求の原因のIIにおいて、「特許明細書段落【0013】の記載、及びそこで引用されている特許公報である甲第1〜7号証を提出して、甲第1〜7号証には、『ユニポール法』という特定の重合方式において、重合に用いられる触媒担体や生成ポリマーであるグラニュラー状物の平均粒径は、ふるい分け法によって測定されたものであることが明確に記載されており、かりに直接的に記載されていない場合にあっても、十分に示唆されており、しかも、プラント運転上の技術的な制約、すなわち、流動床におけるプラントエンジニアリング上の特定の寸法の孔を通過できるか否かによって触媒担体やグラニュラー状物の粒径を管理、制御しているといったプラント運転実態に照らすと、それらの粒径は、ふるい分け法によって測定されたものであることは当業者の技術常識からみて明らかである。したがって、自明である事項を確認的な意味で追加したものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実施上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない」旨の主張をしている。
さらに、請求人は、平成18年2月3日付けの意見書において、甲第8号証を提出して、甲第8号証の記載から、「本件発明の『ユニポール法』という重合方法は、エチレン系モノマーを気相状態で重合させる代表的なプロセスである」旨の主張をしている。そして、この重合プロセスにあたっては、プラント面から生じる技術的制約から、プラント運転に用いられる担体、重合触媒成分、生成物等の固体材料の粒径は、すべてふるい分け法によって測定せざるを得ないことも、当業者の技術常識であるとして、甲第8号証の第66頁の表4の記載を挙げている。また、『ユニポール法』の場合、そのプラント運転に用いられる固体材料の粒径は、すべてふるい分け法によって測定されていることは技術常識であるとして、甲第1〜7号証の記載箇所を挙げている。
しかしながら、この追加された記載は、特許明細書になんら存在しないし、特許明細書段落【0013】には、「これらの担体、重合触媒成分、重合方法は、・・・に説明されている。この重合方法はユニポール法と呼ばれ、・・・、ユニポール法の装置を用いて、上記の特定条件で製造され得るものである。」と記載されているだけで、粒径の測定法さえ記載されておらず、さらに甲第1〜7号証の記載を参酌したとしても、ユニポール法とはいかなるものであるかすら明確ではなく、仮に、甲第1〜7号証に記載されたものがユニポール法であるとしたとしても、甲第1〜4、6号証には、ユニポール法の装置には、分配板が存在すること、限定されたメッシュの平均粒度のものが得られること、粒子寸法をふるい分け部の利用によって制御するための手段があるものもあること、甲第5号証には、「粒度は、ふるい分析によって測定され」との記載があり、甲第7号証には、表1に、得られた粒子特性の識別試験結果、ふるい寸法8,12,20,40,60、100メッシュにおける重量%と、平均粒度の値が記載されているだけで、ユニポール法の場合は、担体、重合触媒成分およびグラニュラー状物の平均粒径は、必ずふるい分け法であるとの記載も示唆する記載もなく、自明であるとする根拠もない。
また、甲第8号証には、各社のLLDPEプロセス比較が記載され、その中にUCC社のプロセスがあり、重合形式は気相法、流動床であることが開示され、<UNIPOL>法と表示されている。しかしながら、粒径の測定法さえ記載されておらず、平均粒径についてはなんらの示唆する記載もない。
さらに、請求人の提示する甲第8号証の第66頁の表4は、「現在市販されている粉状製品の粒度分布の一例を表4に示す。」と記載されているものであり、それが「<UNIPOL>法、パウダーの粒度分布」ということで、特定の篩サイズに対する篩上歩留まり(%)の測定結果が示されているにすぎず、「プラント面から生じる技術的制約から、プラント運転に用いられる担体、重合触媒成分、生成物等の固体材料の粒径は、すべてふるい分け法によって測定せざるを得ないことも、当業者の技術常識である」との根拠とはならないものである。また、平成18年2月3日付けの意見書において、担体の粒径に関しては、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、グラニュラー状物の粒径に関しては、甲第1号証、甲第5号証、甲第7号証、の記載事項を挙げているが、ユニポール法とはいかなるものかを明らかにするものではなく、仮にこれらがユニポール法としたとしても、ユニポール法の場合は、担体、重合触媒成分およびグラニュラー状物の平均粒径は、必ずふるい分け法であるとの記載も示唆する記載もなく、自明であるとする根拠もない。
なお、請求人は、「プラント運転上の技術的な制約、すなわち、流動床におけるプラントエンジニアリング上の特定の寸法の孔を通過できるか否かによって触媒担体やグラニュラー状物の粒径を管理、制御しているといったプラント運転実態に照らすと、それらの粒径は、ふるい分け法によって測定されたものであることは当業者の技術常識からみて明らか」、「プラント面から生じる技術的制約から、プラント運転に用いられる担体、重合触媒成分、生成物等の固体材料の粒径は、すべてふるい分け法によって測定せざるを得ないことも、当業者の技術常識である」と主張している。
しかし,「特定寸法の孔を通過できるか否か」がユニポール法のプラント運転実態とまで断定できるものとはいえないが、仮にそのようにいえたとしても、このことは、技術的には触媒担体やグラニュラー状物の個々の粒径が特定寸法の孔より小さければそこを通過し,大きければ通過できないことをいうにすぎず,そのことが,触媒担体やグラニュラー状物の粒径をふるい分け法で測定することに直ちにつながるものではない。平均粒径という大小種々の粒子を包含する粒子の集合体における粒径を平均した値とは関係ないものである。したがって,「特定寸法の孔を通過できるか否か」のプラント運転実態は,この平均粒径をふるいわけ法によって測定するとする根拠にはならず,まして平均粒径を特定のものとする根拠にもならない。
したがって、訂正事項dは、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるとはいえないものである。
以上のとおりであるから、上記訂正dを含む本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号。以下「平成六年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる平成六年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しない。
よって、本件訂正は認められない。
3-2 仮の独立特許要件の判断
ここで、仮に、訂正事項dを含む本件訂正が平成六年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合した場合として、以下、独立特許要件の判断を行う。
訂正後における請求項1〜4に記載されている事項により特定された発明(以下、「訂正後の発明1〜4」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて、次に検討する。
3-2-1.独立特許要件の判断
(訂正後の本件発明1〜4)
訂正後の請求項1〜4に係る本件特許発明(以下、「訂正後の本件発明1〜4」という。)は、訂正後の本件明細書の請求項1〜4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】密度0.910〜0.935g/ml、メルトインデックス0.1〜5g/10分の直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体に不飽和アルコキシシラン、有機過酸化物を配合した後、押出機中で有機過酸化物の分解温度以上に温度を上げて製造された水架橋性不飽和アルコキシシラングラフト直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体であって、前記直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体として、比表面積50〜1000m2/g、平均粒径50〜200μm、細孔直径50〜200Åの無機酸化物多孔体からなる担体に酸化クロムを含有する重合触媒成分を担持させた重合触媒と、エチレン80〜98重量部およびα-オレフィン20〜2重量部からなるモノマー流体とを、ユニポール法気相流動床反応器中で、30〜105℃の温度、5〜70気圧の圧力、1.5〜10のGmfの条件で接触させて得た比表面積500〜2000cm2/g、かさ密度0.2〜0.5g/ml、平均粒径0.5〜1.5mmのグラニュラー状物を使用することを特徴とする水架橋性不飽和アルコキシシラングラフト直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体。
【請求項2】直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体、不飽和アルコキシシランおよび有機過酸化物の他に、シラノール縮合触媒をさらに配合し製造したことを特徴とする請求項1記載の水架橋性不飽和アルコキシシラングラフト直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体。
【請求項3】請求項1記載の水架橋性不飽和アルコキシシラングラフト直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体にシラノール縮合触媒を配合し、押出機より押出し成形物とし、水分に接触させて得られた水架橋成形物。
【請求項4】請求項2記載の水架橋性不飽和アルコキシシラングラフト直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体を押出機より押出し成形物とし、水分に接触させて得られた水架橋成形物。」
(判断)
訂正後の本件発明1〜4の特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項として、触媒担体及びグラニュラー状物の平均粒径を特定の範囲に限定している。
これについて、訂正後の特許明細書において、ユニポール法と限定し、これがふるい分け法で平均粒径を測定したものとしているが、平均粒径の定義についてそれ以外の記載はない。
平均粒径には、長さ平均径、面積長さ平均径、体面積平均径、重量平均径、面積平均径、体積平均径と様々な種類があり(例えば、(「最新粉体の材料設計」の5.粒度とその測定、(株)テクノシステム発行、1998年6月10日、103〜113頁)参照)、同一の分布の粉体の系でもその数値は異なるものとなる。
したがって、単に平均粒径と記載し、これがふるい分け法で測定したものとしても、いかなる意味の平均粒径かは不明であり一義的に決まるものではない。
そのような不明な限定を含む本件発明1〜4は、その特許請求の範囲が、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項に区分しているとはいえず、また、発明の詳細な説明に、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されているとはいえない。
尚、請求人は、平成18年2月3日付けで意見書で、「そもそも、ふるい分け法とは、2つの参考資料やASTM D-1921やJIS K 0069にあるように、2個以上のふるい目開き(メッシュ)のふるいを使用して、・・・平均粒径の測定法がふるい分け法であることが明らかであれば、おのずから平均粒子径が一義的に決定するものであります。ちなみに、例えば、甲第8号証に記載された表4の場合(<UNIPOL>法パウダーの粒度分布)を例にとり、ここに記載された数値から、上記規格に記載の算出法(例えば、「JIS K 0069」では、同第4〜5ページに説明されている。)に沿って、平均粒径を求めれば、以下のとおりとなります。1.・・・、6.得られた曲線上で、積分歩留まり(%)が50%に対応する点(中央値)を決め、その点(中央値)から、粒子径(μm)を読み取る。7.その粒子径がふるい分け法における「平均粒径」を意味する。以上の手順に沿って、甲第8号証に記載の表4の場合における平均粒径を求めれば、その数値は、735μm(0,7mm)となり、明らかに一義的に決定できます。そして、こうした「ふるい分け法」における「平均粒径」の考え方や算出方法については、特許異議申立人の提出した、参考資料3,参考資料2の記載から、「ふるい分け法」による「平均粒径」の算出方法自体が当業者にとって周知・慣用事項であることは、明らかであります。」旨の主張をしている。
しかしながら、ふるい分け法とは、ふるい分けにより粒度分布を計測するものであり、特定の試験方法であるASTM D-1921やJIS K 0069に限られるものではないのであるから、この特定の試験方法を前提にした主張は本件特許の粒径に関するものとして的確なものではないし、平均粒子径が一義的に決定する根拠とはならないものである。
仮に、請求人主張のとおり、「JIS K 0069」にしたがったとしても、「JIS K 0069」には、ふるい分けの方法とその結果の例が記載されているだけで、平均粒径についてはなんら記載されていない。「JIS K 0069」の6.16.6の(2)には、粒子径分布として、「粒子径範囲に対応するふるい残分を求める。試験結果を積算分布で表す場合は、・・・・粒子径範囲に対応する積算百分率を求める。」と記載されているのであり、試験結果の表示の例として積算分布が記載されているだけであり、ふるい分けの場合は必ず積算分布で表示するものということではなく、いわんや、平均粒径についてはなんら記載されていない。請求人は、積算分布の中央点である、いわゆるメジアン径(中径、中央累積値、50%粒径)をふるい分けの際の平均粒径であるとの主張をしているようだが、そのように解すべき根拠はない。ふるい分け法であれば、重量分布基準の粒径分布が明らかになるだけで、それを基にした平均粒子径としては、長さ平均径、面積長さ平均径、体面積平均径、重量平均径、面積平均径、体積平均径と様々な種類があり(例えば、(「最新粉体の材料設計」の5.粒度とその測定、(株)テクノシステム発行、1998年6月10日、103〜113頁)参照)等多数の平均粒径があり、さらに、分布関数形から間接的に求める方法でも、メジアン径の他に、モード径、一定パーセント通過径があり(化学大辞典8,共立出版株式会社、縮刷版34刷、1993年6月1日、224〜225頁、参照)、一義的に決定されるものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(むすび)
以上のとおりであるから、本件特許明細書は、その特許請求の範囲が、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項に区分しているとはいえず、また、発明の詳細な説明に、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されているとはいえないので、訂正後の本件発明1〜4は、特許法第36条第4項、第5項第2号及び第6項に規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正は、平成六年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる平成六年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しない。
3-3結論
以上のとおり、本件訂正は、平成六年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる平成六年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合せず、さらに特許法第126条第3項の規定にも適合しないので、当該訂正は認められない。
 
審理終結日 2006-03-23 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-04-10 
出願番号 特願平6-305645
審決分類 P 1 41・ 841- Z (C08F)
P 1 41・ 856- Z (C08F)
P 1 41・ 534- Z (C08F)
P 1 41・ 531- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小出 直也  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 船岡 嘉彦
石井 あき子
登録日 2003-08-01 
登録番号 特許第3456774号(P3456774)
発明の名称 水架橋性不飽和アルコキシシラングラフト直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法および水架橋成形物  
代理人 河備 健二  

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