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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1137108
審判番号 不服2003-18744  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-25 
確定日 2006-05-25 
事件の表示 平成 8年特許願第156736号「波長変換レーザー」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月 6日出願公開、特開平10- 4233〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
出願 平成 8年 6月18日
拒絶理由の通知(起案日)平成15年 5月20日
手続補正 平成15年 7月28日
意見書 平成15年 7月28日
拒絶査定(起案日) 平成15年 8月19日
審判請求 平成15年 9月25日
手続補正 平成15年10月27日

2.平成15年10月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成15年10月27日付けの手続補正は、下記(ア)に記載した補正前の請求項1を下記(イ)に記載のように補正しようとするものを含むものである。
(ア)「【請求項1】
レーザー結晶を光によって励起し、それによって発せられた固体レーザービームを共振器内に配したタイプIの位相整合を果たす非線形光学結晶により波長変換する波長変換レーザーにおいて、
共振器内にエタロンと偏光制御素子として作用するブリュースタ板とが配され、それらにより発振モードが単一縦モード化されたことを特徴とする波長変換レーザー。」
(イ)「【請求項1】
レーザー結晶を光によって励起し、それによって発せられた固体レーザービームを共振器内に配したタイプIの位相整合を果たす非線形光学結晶により波長変換する波長変換レーザーにおいて、
共振器内にエタロンと偏光制御素子として作用するブリュースタ板とが配され、それらにより発振モードが単一縦モード化されるとともに、
前記共振器が所定の温度に維持され、
少なくとも前記共振器を構成する光学部品が金属製のホルダに固定されていることを特徴とする波長変換レーザー。」

そして、補正により追加された上記(イ)下線部は、発明を特定するために必要な事項(以下、発明特定事項という。)の直列的付加に該当し、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項のいずれの限定とも認められない。
よって、本件補正は、発明特定事項を限定するものでないとともに、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明にも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものに該当するということができない。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とする補正に該当しない補正を含んでいるので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年10月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年7月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は、以下のものである。
「【請求項1】
レーザー結晶を光によって励起し、それによって発せられた固体レーザービームを共振器内に配したタイプIの位相整合を果たす非線形光学結晶により波長変換する波長変換レーザーにおいて、
共振器内にエタロンと偏光制御素子として作用するブリュースタ板とが配され、それらにより発振モードが単一縦モード化されたことを特徴とする波長変換レーザー。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平7-302946号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は固体レーザーに関し、特に詳細には、レーザー共振器内にエタロン等を配して発振モードを単一縦モード化するようにした固体レーザーに関するものである。」
(イ)「【0025】次に図7を参照して、本発明の第3実施例について説明する。この第3実施例の固体レーザーもレーザーダイオードポンピング固体レーザーであり、第1実施例のレーザーダイオードポンピング固体レーザーと比べると、共振器ミラー15が省かれ、Nd:YAG結晶13に代えてNd:YLF結晶50が用いられ、KN結晶16に代えて周期ドメイン反転構造を有するLiNbO3 結晶(以下、LN結晶と称する)51が用いられ、そしてλ/4板19とエタロン17との間にはカルサイト(方解石)板52が配されている点が基本的に異なる。
【0026】半導体レーザー11としては、波長λ1 =795 nmのレーザービーム60を発するものが用いられている。cカットのNd:YLF結晶50は、上記レーザービーム60によってネオジウムイオンが励起されることにより、中心波長λ2 =1313nmのレーザービーム61を発する。このレーザービーム61はLN結晶51に入射して、波長λ3 =λ2 /2=657 nmの第2高調波62に変換される。」
(ウ)「【0030】本実施例でも2枚のλ/4板18、19が配されたことにより、レーザービーム61はそれら両者の間でツイスト・モード化する。そのためレーザービーム61は、自ずとゲインピーク波長で発振する。それだけでは、固体レーザーを高出力化したとき、ゲインピーク波長から0.4 nm離れたところ、つまり縦モードが8本離れたところに別の共振器モードが立ってしまうことが分かった(この現象は、半導体レーザー11による励起パワーが例えば1Wと低い場合は生じない)。しかしこの場合も、エタロン17が設けられていることにより、この別の共振器モードが抑制される。」
(エ)「【0033】また本実施例では、固体レーザー媒質として異方性のNd:YLF結晶50が用いられているので、λ/4板19から出射するレーザービーム61は、相直交する方向に直線偏光した2つの直線偏光成分を含むものとなる。このレーザービーム61は、光通過端面が光学軸に対して角度をなすようにカット(いわゆるアングル・カット)されたカルサイト板52に入射して、その一方の直線偏光成分のみが選択され、その直線偏光の向きがLN結晶51のZ軸と一致するようにして該LN結晶51に入射せしめられる。」
(オ)「【0037】次に図8を参照して、本発明の第4実施例について説明する。この第4実施例の固体レーザーもレーザーダイオードポンピング固体レーザーであり、第3実施例のレーザーダイオードポンピング固体レーザーと比べると、偏光制御素子としてカルサイト板52の代わりにブリュースター板70が用いられている点のみが異なる。」
(カ)「【0038】このようなブリュースター板70と周期ドメイン反転構造を有するLN結晶51とを組み合わせる場合は、基本波であるレーザービーム61と第2高調波62の直線偏光の向きが互いに一致する。周知の通りブリュースター板70は、P偏光に対してほとんど損失を生じない。そこで、このようにレーザービーム61と第2高調波62の直線偏光の向きが一致している場合は、これら双方をともにP偏光状態でブリュースター板70に入射させて、損失を抑えることができる。そうであれば、このブリュースター板70に第2高調波62に対するAR(無反射)コートを施す必要がなくなる。」
(キ)図8には、共振器(18,14)内に配した、周期ドメイン反転構造を有するLN結晶51,エタロン17,ブリュースター板70が見てとれる。

したがって、上記(ア)〜(キ)の記載事項からみて、引用例には以下の発明が記載されていると認められる。
「Nd:YLF結晶を光によって励起し、それによって発せられたレーザービーム61を共振器内に配した周期ドメイン反転構造を有するLN結晶により波長変換する固体レーザーにおいて、
共振器内にエタロンと偏光制御素子として作用するブリュースター板とが配された固体レーザー。」(以下、引用発明という。)

(3)対比・判断
次に、本願発明と引用発明とを対比すると、
(ア)引用発明における「Nd:YLF結晶」、「レーザービーム61」、「周期ドメイン反転構造を有するLN結晶」、「固体レーザー」及び「ブリュースター板」は、それぞれ、本願発明における「レーザー結晶」、「固体レーザービーム」、「非線形光学結晶」、「波長変換レーザー」及び「ブリュースタ板」に相当する。
(イ)周期ドメイン反転構造を有するLN結晶はタイプIの位相整合を果たす非線形光学結晶である。
なお、この点は、審判請求人が平成15年7月28日付け意見書の「(5)記載不備について」において認めているばかりでなく、特開平8-116121号公報にも記載されている事項である。
(ウ)エタロン及びブリュースタ板の機能に鑑みれば、これらにより発振モードが単一縦モード化されていることは明らかである。

以上、上記(ア)〜(ウ)のとおり両者に相違点は認められないので、両者は同一である。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-22 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-04-11 
出願番号 特願平8-156736
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01S)
P 1 8・ 113- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古田 敦浩土屋 知久杉山 輝和  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 樋口 信宏
吉野 三寛
発明の名称 波長変換レーザー  
代理人 佐久間 剛  
代理人 柳田 征史  

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