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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1137266
審判番号 不服2003-16473  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-01-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-27 
確定日 2006-06-01 
事件の表示 平成 6年特許願第142966号「超音波診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月 9日出願公開、特開平 8- 624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年6月24日の出願であって、平成13年6月25日付け及び平成15年1月6日付け各手続補正書をもって特許請求の範囲等の補正をしたが、平成15年7月18日付けで拒絶査定を受けたため、同年8月27日、これに対する不服の審判を請求し、さらに平成15年9月26日付け手続補正書をもって特許請求の範囲等を補正(以下、「本件補正」という。)したものである。

2.平成15年9月26日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年9月26日付け手続補正を却下する。

<本件補正の内容>
平成15年9月26日付け手続補正は、その補正の内容として、特許請求の範囲に関して、以下の補正前の特許請求の範囲を以下の補正後の特許請求の範囲に補正するものである。

[補正前の特許請求の範囲](平成15年1月6日付け手続補正書)
「【請求項1】 超音波ビームを被検体内に送信し、その反射波を受信しエコー信号を出力する探触子と、この探触子を駆動すると共に、前記探触子から出力されたエコー信号を処理する送受信器と、該処理されたエコー信号を超音波画像に変換する手段と、前記超音波画像を時系列的な静止画像として記憶する手段と、該記憶手段から読み出した静止画像を表示する表示手段と、該表示された各静止画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段と、該指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に前記記憶手段から読み出す手段と、該時系列的に読み出された輝度情報と時間とのグラフを生成する手段と、該生成されたグラフと前記記憶手段から読み出した静止画像とを合成する手段と、該合成されたグラフと静止画像とを前記表示手段に表示させる制御手段とを備えた超音波診断装置において、前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像の再生速度に合わせて前記グラフ生成手段で生成されたグラフを記憶するスクロールメモリを備え、前記制御手段は、前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像とその各静止画像の再生速度に合わせて前記スクロールメモリから読み出したグラフとを前記合成手段に合成させることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 超音波ビームを被検体内に送信し、その反射波を受信しエコー信号を出力する探触子と、この探触子を駆動すると共に、前記探触子から出力されたエコー信号を処理する送受信器と、該処理されたエコー信号を超音波画像に変換する手段と、前記被検体の心電情報を測定する手段から得られた心電グラフを記憶する手段と、前記超音波画像を時系列的な静止画像として記憶する手段と、該記憶手段から読み出した静止画像を表示する表示手段と、該表示された各静止画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段と、該指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に前記記憶手段から読み出す手段と、該時系列的に読み出された輝度情報と時間との輝度グラフを生成する手段と、前記記憶された心電グラフを読み出し、前記生成された輝度グラフに前記心電グラフの時間軸を対応づける手段と、該対応づけられた輝度グラフと前記読み出された心電グラフと前記記憶手段から読み出した静止画像とを合成する手段と、該合成された輝度グラフと心電グラフと静止画像とを前記表示手段に表示させる制御手段とを備えた超音波診断装置において、前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像の再生速度に合わせて、前記対応づけられた輝度グラフを記憶するスクロールメモリを備え、前記制御手段は、前記読み出された心電グラフと前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像とその各静止画像の再生速度に合わせて前記スクロールメモリから読み出した輝度グラフとを前記合成手段に合成させることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】 超音波ビームを被検体内に送信し、その超音波ビームの反射波として受信されたエコー信号を超音波画像に変換し、該変換された超音波画像を時系列的な静止画像として記憶するステップと、該記憶手段から読み出した静止画像を表示装置に表示するステップと、該表示された各静止画像上の関心部位の位置にマークを指定するステップと、該指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に読み出すステップと、該時系列的に読み出された輝度情報と時間とのグラフを生成するステップと、前記時系列的に記憶された各静止画像の再生速度に合わせて前記生成されたグラフをスクロールメモリに記憶するステップと、前記時系列的に記憶された各静止画像とその各静止画像の再生速度に合わせて前記スクロールメモリから読み出したグラフとを合成するステップと、該合成されたグラフと静止画像とを前記表示装置に表示させるステップとを備えたことを特徴とする超音波診断装置の解析方法。」(以下、「旧請求項1」「旧請求項2」「旧請求項3」という。)

[補正後の特許請求の範囲](平成15年9月26日付け手続補正書)
「【請求項1】 超音波ビームを被検体内に送信し、その反射波を受信しエコー信号を出力する探触子と、この探触子を駆動すると共に、前記探触子から出力されたエコー信号を処理する送受信器と、該処理されたエコー信号を超音波画像に変換する手段と、前記超音波画像を時系列的に記憶する手段と、該記憶手段から読み出した画像を表示する表示手段と、所定画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段と、前記記憶手段に記憶された画像の指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に読み出す手段と、該時系列的に読み出された輝度情報と時間とのグラフを前記記憶手段に記憶された前記画像の再生速度に合わせて生成する手段と、前記各画像の再生速度に合わせて生成されたグラフと前記各画像とを合成する手段と、該合成されたグラフと各画像とを前記表示手段に表示させる制御手段とを備えた超音波診断装置において、
各前記画像中の前記関心部位の位置を検査対象である臓器の特徴部を基準に求め、その位置で前記マークを抽出する手段を備え、前記臓器の動きに合わせて前記マークを移動させることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 超音波ビームを被検体内に送信し、その反射波を受信しエコー信号を出力する探触子と、この探触子を駆動すると共に、前記探触子から出力されたエコー信号を処理する送受信器と、該処理されたエコー信号を超音波画像に変換する手段と、前記被検体の心電情報を測定する手段から得られた心電グラフを記憶する手段と、前記超音波画像を時系列的に記憶する手段と、該記憶手段から読み出した画像を表示する表示手段と、所定画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段と、前記記憶手段に記憶された画像の指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に読み出す手段と、該時系列的に読み出された輝度情報と時間との輝度グラフを前記記憶手段に記憶された前記画像の再生速度に合わせて生成する手段と、前記記憶された心電グラフを読み出し、前記生成された輝度グラフに前記心電グラフの時間軸を対応づける手段と、該対応づけられた輝度グラフと前記読み出された心電グラフと前記記憶手段から読み出した各画像とを合成する手段と、該合成された輝度グラフと心電グラフと各画像とを前記表示手段に表示させる制御手段とを備えた超音波診断装置において、
各前記画像中の前記関心部位の位置を検査対象である臓器の特徴部を基準に求め、その位置で前記マークを抽出する手段を備え、前記臓器の動きに合わせて前記マークを移動させることを特徴とする超音波診断装置。」(下線部分は、補正箇所である。以下、「新請求項1」「新請求項2」という。)

上記補正後の特許請求の範囲と上記補正前の特許請求の範囲とを対比すると、旧請求項3は削除され、「新請求項1」及び「新請求項2」は、それぞれ「旧請求項1」及び「旧請求項2」と対応するものであるから、「旧請求項1」から「新請求項1」への補正、及び、「旧請求項2」から「新請求項2」への補正は、補正事項として次の内容を含むものである。

(ア)「旧請求項1」から「新請求項1」への補正事項
a.「前記超音波画像を時系列的な静止画像として記憶する手段」を「前記超音波画像を時系列的に記憶する手段」とする補正。
b.「該記憶手段から読み出した静止画像を表示する表示手段」を「該記憶手段から読み出した画像を表示する表示手段」とする補正。
c.「該表示された各静止画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段」を「所定画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段」とする補正。
d.「該指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に前記記憶手段から読み出す手段」を「前記記憶手段に記憶された画像の指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に読み出す手段」とする補正。
e.「該時系列的に読み出された輝度情報と時間とのグラフを生成する手段」を「該時系列的に読み出された輝度情報と時間とのグラフを前記記憶手段に記憶された前記画像の再生速度に合わせて生成する手段」とする補正。
f.「該生成されたグラフと前記記憶手段から読み出した静止画像とを合成する手段」を「前記各画像の再生速度に合わせて生成されたグラフと前記各画像とを合成する手段」とする補正。
g.「該合成されたグラフと静止画像とを前記表示手段に表示させる制御手段」を「該合成されたグラフと各画像とを前記表示手段に表示させる制御手段」とする補正。
h.「前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像の再生速度に合わせて前記グラフ生成手段で生成されたグラフを記憶するスクロールメモリ」を削除する補正。
i.「前記制御手段は、前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像とその各静止画像の再生速度に合わせて前記スクロールメモリから読み出したグラフとを前記合成手段に合成させる」を削除する補正。
j.「各前記画像中の前記関心部位の位置を検査対象である臓器の特徴部を基準に求め、その位置で前記マークを抽出する手段を備え、前記臓器の動きに合わせて前記マークを移動させる」を追加する補正。

(イ)「旧請求項2」から「新請求項2」への補正事項
a’.「前記超音波画像を時系列的な静止画像として記憶する手段」を「前記超音波画像を時系列的に記憶する手段」とする補正。
b’.「該記憶手段から読み出した静止画像を表示する表示手段」を「該記憶手段から読み出した画像を表示する表示手段」とする補正。
c’.「該表示された各静止画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段」を「所定画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段」とする補正。
d’.「該指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に前記記憶手段から読み出す手段」を「前記記憶手段に記憶された画像の指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に読み出す手段」とする補正。
e’.「該時系列的に読み出された輝度情報と時間との輝度グラフを生成する手段」を「該時系列的に読み出された輝度情報と時間との輝度グラフを前記記憶手段に記憶された前記画像の再生速度に合わせて生成する手段」 とする補正。
f’.「該対応づけられた輝度グラフと前記読み出された心電グラフと前記記憶手段から読み出した静止画像とを合成する手段」を「該対応づけられた輝度グラフと前記読み出された心電グラフと前記記憶手段から読み出した各画像とを合成する手段」とする補正。
g’.「該合成された輝度グラフと心電グラフと静止画像とを前記表示手段に表示させる制御手段」を「該合成された輝度グラフと心電グラフと各画像とを前記表示手段に表示させる制御手段」とする補正。
h’.「前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像の再生速度に合わせて、前記対応づけられた輝度グラフを記憶するスクロールメモリ」を削除する補正。
i’.「前記制御手段は、前記読み出された心電グラフと前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像とその各静止画像の再生速度に合わせて前記スクロールメモリから読み出した輝度グラフとを前記合成手段に合成させる」を削除する補正。
j’.「各前記画像中の前記関心部位の位置を検査対象である臓器の特徴部を基準に求め、その位置で前記マークを抽出する手段を備え、前記臓器の動きに合わせて前記マークを移動させる」を追加する補正。

[理由1]
<目的外の補正(第17条の2第3項違反)>
(1)補正の目的の適否の判断
(1-1)a〜c,f,g及びa’〜c’,f’,g’について
旧請求項1,2の「静止画像」を「画像」と補正することは、下位概念から上位概念への変更であり、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。また、当該補正事項が、請求項の削除(第1号)を目的とするものにも、誤記の訂正(第3号)を目的とするものにも、明りょうでない記載の釈明(第4号)を目的とするものにも、該当しないことは明らかである。

(1-2)h、i及びh’,i’について
旧請求項1,2の「スクロールメモリ」を削除することは、発明の構成に欠くことができない事項の削除であり、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。また、当該補正事項が、請求項の削除(第1号)を目的とするものにも、誤記の訂正(第3号)を目的とするものにも、明りょうでない記載の釈明(第4号)を目的とするものにも、該当しないことは明らかである。

(1-3)j及びj’について
新請求項1,2に「マークを抽出する手段」の構成を直列的に付加することは、特許請求の範囲の減縮には該当するものの、旧請求項1,2には「マークを抽出する手段」に対応する発明の構成に欠くことのできない事項(上位概念で記載された事項等)は記載されておらず、旧請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものではなく、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものに限る。)」を目的とするものに該当しない。また、当該補正事項が、請求項の削除(第1号)を目的とするものにも、誤記の訂正(第3号)を目的とするものにも、明りょうでない記載の釈明(第4号)を目的とするものにも、該当しないことは明らかである。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
新規事項の追加(第17条の2第2項違反)>
(1)新規事項の有無の判断
(1-1)j及びj’について
各画像中で臓器の特徴部を基準にマークを抽出し、臓器の動きに合わせてマークを移動させることは、当初明細書等において明示的な記載はなく、段落【0032】、図1,図3等を斟酌しても、各静止画像毎に心腔と心筋との境界部を基準にマークを描出することが記載されているだけであり、この記載から当該補正事項が自明な事項ということもできない。
また、臓器の特徴部という記載も当初明細書等において明示的な記載はなく、心腔と心筋との境界部を上位概念で記載することを裏付ける記載もない。
よって、新請求項1及び2に「各前記画像中の前記関心部位の位置を検査対象である臓器の特徴部を基準に求め、その位置で前記マークを抽出する手段を備え、前記臓器の動きに合わせて前記マークを移動させる」という構成を追加する補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
そして、平成15年9月26日付け手続補正書による明細書の補正(【0009】,【0010】,【0011】,【0014】)は、上記と同様の理由により、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年9月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記2.の旧請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-272750号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】超音波を生体内に送波し、生体内の音響インピーダンスが異なる組織からの反射波を受波する複数の振動を有する探触子と、この探触子を所望の周波数,波数で振動させる送波信号発生手段と、前記探触子からの各受波信号の増幅,整相,加算,圧縮,検波等を行う受波信号処理手段と、この受波信号処理手段の出力信号を基に断層像を構成するA/D変換器,ラインメモリ,画像メモリを含むディジタルスキャンコンバータと、所定期間内の複数の前記断層像を記憶する手段と、これら画像を時系列的に読み出した後表示する手段とを備えた超音波診断装置において、各画像上に任意の画像範囲を指定する手段と、この画像範囲指定手段によって指定された範囲内での画像信号の輝度の発生頻度を各画像にたいし順次演算する演算手段と、この演算手段の演算結果を順次グラフ化する手段と、このグラフ化手段の出力を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】請求項1記載の超音波診断装置において、発生頻度,輝度,時間の3変数の中から複数の変数を選びグラフ化し表示することにより、所望の期間中これらのグラフと超音波画像を観察可能としたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】請求項1または2に記載の超音波診断装置において、画像の指定された範囲内で求めた輝度の度数分布の最頻値,最大値,最小値,平均値,半値幅,最小値-最大値幅,標準偏差等度数分布の形状を評価するパラメータを数値もしくはグラフ化し、所望の期間中超音波画像とこれらのパラメータとを観察可能としたことを特徴とする超音波診断装置。」
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は超音波診断装置に係り、特に、時間により画像輝度が変化する血流の流速分布像,心臓の拍動により偏位を生じる循環器系の画像等において、任意の画像範囲内で生体内からの超音波画像の輝度の発生頻度や分布の評価パラメータとそれら経時的変化を表示可能とした超音波診断装置に関するものである。」
(ウ)「【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1から図9により説明する。
【実施例1】図1は本発明の第1の実施例のブロック図を示す。図において、1は探触子で、生体内に超音波を送波,受波するもの、2は切換器で、探触子内の超音波発生素子へ送る送波信号と電気信号に変換された生体内からの反射波との通過を切り換えるもの、3は送波信号発生器で、所望の周波数,波数の超音波を発生させるための送波信号を出力するもの、4は受波信号処理器で、各受波信号の増幅,整相,加算,圧縮,検波等を行うもの、5はディジタルスキャンコンバータ(以下、DSCと記す。)でA/D変換器を内蔵し、アナログ信号であった受波信号をディジタル信号に変換し、次いで、複数のラインメモリで超音波走査線毎に受波信号を一時記憶し送受信の繰り返し毎に、記憶したラインのデータを画像メモリへ出力し、画像メモリ内で超音波走査線毎のデータで2次元画像である断層像を作成するものである。
【0017】・・・6は画像メモリで、複数の超音波断層像を記憶可能な記憶容量を持ち、DSC5より出力される画像データを順次読み込むもの、7は複数のラインメモリで、送られてくる表示画像データを順次書き込み、TV走査線毎に、TV同期信号に同期して読み出すもの、8はD/A変換器で、表示画像データをTV用アナログ信号に変換するもの、9は表示器で、・・・10は外部画像記憶装置で、・・・11は公知の画像停止回路でスイッチ等から成る。12はコントローラで、各回路の制御及び画像輝度の度数計算と、その結果からキャラクタ選択のための制御を行う。
【0018】13はアドレス発生回路で各画像メモリ,ラインメモリ,グラフィックメモリのリード,ライトアドレスを発生するもの、14は、RW(リード,ライト)制御回路で、どのメモリにアクセスするかを選択し、かつ、書き込み状態か,読み出し状態かを制御するものである。20は切換器で、DSC5と画像メモリ27と外部画像記憶装置10のうち信号線路を一つ選択し、画像メモリ6と接続するもの、21は切換器で、画像メモリ6からの出力をラインメモリ7へ出力するか加算器26へ出力するかを選択するもの、22は領域指定回路で、例えばトラックボール等から成る。23は演算用メモリで、コントローラ12内で行なう輝度の発生頻度計算に必要な画像データ,計算結果を記憶するもの、24はキャラクタ発生回路で、グラフ化するために必要な数字,図形をROMに記憶しており、コントローラ12からの指示に従いキャラクタのデータを出力するもの、25はグラフィックメモリで、TV画面に相当する記憶容量を持ち、グラフィックデータを記憶し、必要に応じ書き換えが可能なもの、26は加算器で、画像メモリ6とグラフィックメモリ25のデータを加算するもの、27は画像メモリで、画像メモリ6とグラフィックメモリ25の2種類のメモリデータを加算した結果を一時保存するものである。」
(エ)「【0027】この動作を基準画像から次の時相の画像というように画像メモリ7に書き込まれている全ての画像に順次行っていくことにより、ある所望の期間、例えば1心拍以上の全ての断層像で輝度の度数分布グラフが得られる。例えば、コントローラ12は、基準画像から次の時相の画像へと連続的に再生していくと、その期間中輝度の発生頻度グラフが常に表示されることになる。・・・」
(オ)「【0030】・・・本発明の説明では、領域指定は最初に一度行うように説明しているが、各時間の断層像ごとに行なっても良い。・・・」
(カ)図5,図8には、時間-輝度グラフが第2,第3実施例の表示例として示されている。

これらの記載及び図面から刊行物1には、
超音波を生体内に送波し、生体内の反射波を受波する探触子1と、この探触子1を振動させる送波信号発生器3と、前記探触子1からの受波信号を処理する受波信号処理器4と、この受波信号処理器の出力信号を基に断層像を構成するディジタルスキャンコンバータ5と、複数の前記断層像を時系列的に記憶する画像メモリ6と、この画像メモリ6から画像を読み出し表示する表示器9と、各画像上に任意の画像範囲を指定する領域指定回路22と、この領域指定回路22によって指定された範囲内での画像信号の輝度情報を各画像に対し順次読み出すRW制御回路14と、このRW制御回路14によって順次読み出された輝度情報と時間とのグラフを生成するキャラクタ発生回路24と、このキャラクタ発生回路24で生成されたグラフを記憶するグラフィックメモリ25と、このグラフィックメモリ25に記憶されたグラフと断層像とを加算する加算器26と、この加算器26によって加算されたグラフと断層像とを前記表示器9に表示させるコントローラ12とを備え、前記コントローラ12は、各断層像とその指定領域の輝度情報とを併せて連続的に再生させ、所望期間につき各断層像に合わせた輝度情報を経時的に観察可能とした超音波診断装置、
が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

(3)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、
刊行物1発明の「探触子1」、「送波信号発生器3と受波信号処理器4」、「ディジタルスキャンコンバータ5」、「画像メモリ6」、「表示器9」、「領域指定回路22」、「RW制御回路14」、「キャラクタ発生回路24」、「グラフィックメモリ25」、「加算器26」、「コントローラ12」は、それぞれ機能的にみると、本願発明の「探触子」、「送受信器」、「変換手段」、「記憶手段」、「表示手段」、「指定手段」、「読み出す手段」、「生成手段」、「(スクロール)メモリ」、「合成手段」、「制御手段」に対応するから、両者は、
「超音波ビームを被検体内に送信し、その反射波を受信しエコー信号を出力する探触子と、この探触子を駆動すると共に、前記探触子から出力されたエコー信号を処理する送受信器と、該処理されたエコー信号を超音波画像に変換する手段と、前記超音波画像を時系列的な静止画像として記憶する手段と、該記憶手段から読み出した静止画像を表示する表示手段と、該表示された各静止画像上の関心部位の位置にマークを指定する手段と、該指定されたマークの位置の輝度情報を時系列的に前記記憶手段から読み出す手段と、該時系列的に読み出された輝度情報と時間とのグラフを生成する手段と、該生成されたグラフと前記記憶手段から読み出した静止画像とを合成する手段と、該合成されたグラフと静止画像とを前記表示手段に表示させる制御手段とを備えた超音波診断装置において、前記グラフ生成手段で生成されたグラフを記憶するメモリを備え、前記制御手段は、前記記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像と前記メモリから読み出したグラフとを前記合成手段に合成させる超音波診断装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像の再生速度に合わせてグラフをスクロールメモリに記憶させ、記憶手段に時系列的に記憶された各静止画像とその各静止画像の再生速度に合わせてスクロールメモリから読み出したグラフとを合成させるのに対し、刊行物1発明では、このような構成が明確ではない点。

(4)判断
上記相違点について検討するに、
刊行物1発明においても、各静止画像と同期させてグラフを合成して表示させるものである(【0027】,【0036】,【0040】,図4など)。また、超音波診断装置において、各静止画像を時系列的に記憶するフレームメモリと、各静止画像に関連した生体情報等のグラフを記憶するスクロールメモリとを備え、スクロールメモリから出力される生体情報等のグラフを、フレームメモリから出力される各静止画像の再生速度に合わせて合成して表示することは、周知技術(例えば、特開平3-90141号公報,特開平2-206443号公報,特開平4-84957号公報等を参照。)であり、この周知技術は刊行物1発明と同じ技術分野に属するものであるから、刊行物1発明において、輝度情報のグラフを記憶するメモリとしてスクロールメモリを用い、各静止画像と同期させてグラフを合成して表示させることは、当業者が容易に為し得ることである。
そして、本願発明の作用効果は、刊行物1発明及び上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-29 
結審通知日 2006-04-04 
審決日 2006-04-17 
出願番号 特願平6-142966
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 572- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右▲高▼ 孝幸  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
菊井 広行
発明の名称 超音波診断装置  
代理人 秋田 収喜  

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