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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16B |
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管理番号 | 1137568 |
審判番号 | 不服2003-9620 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-10-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-29 |
確定日 | 2006-06-08 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第 60513号「集成材用釘」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月17日出願公開、特開平 7-269536〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【一】手続の経緯・本願発明 本願は、平成6年3月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年11月7日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】密度が高く、堅固な集成材へ打込むことができる集成材用釘であって、一方向に潰されて薄く、対角方向に膨らんで厚くなるといった凹部と凸部からなる複数の凹凸を所定間隔で配した曲折部を先端から所定長さの範囲内に設けてなる集成材用釘。」 なお、平成15年6月27日付け補正書は、当審において、平成17年12月14日付けで却下された。 【二】引用例に記載された事項 これに対して、当審において平成17年12月27日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物「特開平4-282006号公報(以下、「刊行物1」という。)」及び「実願昭53-28973号(実開昭54-182773号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。) 」には、それぞれ、次の事項が記載されていると認める。 (1)刊行物1 〔あ〕「本発明は、建築構造物等において釘打ち可能な木材、プラスチック、プラスター等の軟質材が釘打ち不可、又は困難な金属、コンクリート等の硬質材上に固定された内装面に対して、装飾材やアンカー材等を取付けるために用いる釘に関する。」(2頁1欄11〜15行、段落【0001】参照) 〔い〕「本発明の釘は、釘先1から所定間隔をあけて、強度的な弱点3を一個所又は複数個所設けて、湾曲又はかぎ状に曲がる手段を施している。ここでいう強度的な弱点3とは胴部2を切削した切欠き部4やプレスで変形した偏平部5などをいい、胴部2の中心から非対称で片側にのみ形成されるのが好ましい。」(2頁1欄41〜47行、段落【0004】参照) 〔う〕「釘の胴部2に設けた弱点3は釘先1が硬質材に突き当たり、未だ釘頭が打込面より突出している状態から更に力を入れて打込むと、軟質材中で座屈して曲がる。このことにより軟質材中で強固なアンカーとなって抜け難くなる。」(2頁2欄7〜11行、段落【0005】参照) 〔え〕「弱点3の形成は図2aに示すように、胴部2のプレスで片面を変形させて偏平部5を形成させても、打込みにより図2bのように図1bと同様J字形に変形し、強力なアンカ-となる。」(2頁2欄37〜40行、段落【0007】参照) 等の記載があり、併せて図面を参照すると、刊行物1には、 “胴部2に、一方向に潰されて薄くなった偏平部5を配した湾曲又はかぎ状に曲がる手段を、先端から所定長さの範囲内に設けてなり、釘先1が硬質材に突き当たると前記偏平部5が座屈して曲がる釘” の発明が記載されていると認められる。 (2)刊行物2 〔お〕「業界でも浮上しない釘を強く求められながら出現しなかった。本考案はその欠点を除くため考案されたもので、これを図面について説明すれば釘1に斜リブ2を付し釘の先端を扁芯3にしてある本考案の釘を木に直角に打込んでも釘は打力により先端が扁芯し且つ斜リブが付いているため木の内部で斜に彎曲して進入する。釘の彎曲と斜リブのため木より釘の浮上防止の効果を有する釘である。」(昭和53年4月25日付け手続補正書による明細書1頁11〜19行参照) の記載があり、また、図面(昭和53年4月25日付け手続補正書による図面)を参照すると、 〔か〕釘1は、斜リブ2が形成されている部分で、一方向に薄く、対角方向に厚くなる凹部と凸部を有する形状に形成されている と認められる。 したがって、併せて図面を参照すると、刊行物2には、 “一方向に薄く、対角方向に厚くなる凹部と凸部からなる凹凸を配した、木の内部で彎曲して進入する釘” が記載されていると認められる。 【三】対比・判断 (1)本願の請求項1に係る発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者の「偏平部5」が前者の「凹部」に対応し、また、後者の「湾曲又はかぎ状に曲がる手段」が前者の「曲折部」に対応するから、 両者は、 「一方向に潰されて薄くなるといった凹部を配した曲折部を先端から所定長さの範囲内に設けてなる釘」 で一致し、次の相違点A,Bで相違する。 [相違点A] 上記「釘」が、本願の請求項1に係る発明は、「密度が高く、堅固な集成材へ打込むことができる集成材用釘」であるのに対して、上記刊行物1に記載された発明は、集成材用に用途限定されたものでない点 [相違点B] 上記「曲折部」が、本願の請求項1に係る発明は、「一方向に潰されて薄く、対角方向に膨らんで厚くなるといった凹部と凸部からなる複数の凹凸を所定間隔で配した」ものであるのに対して、上記刊行物1に記載された発明では、一方向に潰されて薄くなった凹部を有するものの、対角方向に膨らんで厚くなる凸部を有するものか否か不明であり、また、複数の凹部を所定間隔で配したものでない点 (2)次に、上記各相違点について検討する。 (2-1)相違点Aについて 「集成材」に釘を打つことは本願の出願前より普通に実施されている周知の事項と認められ(例示の必要もないと思われるが、実願昭57-50970号(実開昭58-153641号)のマイクロフィルム、実願昭60-17439号(実開昭61-133636号)のマイクロフィルム、特開昭64-11741号公報、実願平4-55580号(実開平6-9907号)のCD-ROM等参照)、また、上記刊行物1に記載された発明の釘も、硬質材に突き当たると凹部(偏平部5)で曲がるものであるから、「集成材」中の硬質部分に突き当たったとき前記凹部(偏平部5)で折れ曲がり、打ち込みが可能なことは十分予測し得るから、刊行物1に記載された発明の釘を上記相違点Aに係る本願の請求項1に係る発明のように、「密度が高く、堅固な集成材へ打込むことができる集成材用釘」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2-2)相違点Bについて 上記刊行物2には、前述のとおり、「一方向に薄く、対角方向に厚くなる凹部と凸部からなる凹凸を配した、木の内部で彎曲して進入する釘」が記載されている。そして、刊行物1には前記「凹部」即ち「偏平部5」が「プレス」で変形して形成されることが記載されており(上記摘記事項〔い〕、及び〔え〕参照)、「プレス」で「偏平部5」を形成する際に、対角方向に膨らんで厚くなる凸部を形成することも可能なことは、当業者にとって技術常識であるから、刊行物1に記載された発明における「曲折部」(湾曲又はかぎ状に曲がる手段)を「一方向に潰されて薄く、対角方向に膨らんで厚くなるといった凹部と凸部からなる凹凸」によって構成することは、上記刊行物2に記載された釘の構成に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 また、上記摘記事項〔い〕の「本発明の釘は、釘先1から所定間隔をあけて、強度的な弱点3を一個所又は複数個所設けて、湾曲又はかぎ状に曲がる手段を施している。ここでいう強度的な弱点3とは胴部2を切削した切欠き部4やプレスで変形した偏平部5などをいい」のとおり、上記刊行物1には、「曲折部」を「複数の弱点3を所定間隔で配した」構成とすること、前記「弱点3」が「プレスで変形した偏平部5」を含むことも記載されているから、前記凹凸を「複数」として「所定間隔で配した」構成とすることは、刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、上記相違点Bに係る本願の請求項1に係る発明の「一方向に潰されて薄く、対角方向に膨らんで厚くなるといった凹部と凸部からなる複数の凹凸を所定間隔で配した曲折部」は、上記刊行物1、2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 (3)本願の請求項1に係る発明は、その発明の構成に欠くことができない事項が上記説示のとおり当業者が容易に想到し得るものであり、その作用効果も上記刊行物1及び2にそれぞれ記載された事項並びに本願の出願前周知の事項から予測し得る程度のものであるから、上記刊行物1及び2に記載された発明並びに本願の出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【四】請求人が求める補正の機会について 請求人は、平成18年3月6日付け意見書に、「補正の機会が得られることを希望します。」と記載しているが、本願については、当審において先述のとおり平成17年12月27日付けで拒絶の理由を通知している。 したがって請求人は、特許法(平成6年法律第116号による改正前の特許法)第17条の2第1項第3号に掲げる場合に該当し、その指定期間内に同法同条第3項第1〜4号に掲げる事項を目的とするものに限定されることなく明細書又は図面について補正をする機会があったにもかかわらず補正をしなかったものであるから、上記希望に沿うために再度拒絶の理由を通知することは行わない。 【五】むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された上記刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-30 |
結審通知日 | 2006-04-04 |
審決日 | 2006-04-17 |
出願番号 | 特願平6-60513 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F16B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 熊倉 強 |
特許庁審判長 |
亀丸 広司 |
特許庁審判官 |
平田 信勝 常盤 務 |
発明の名称 | 集成材用釘 |
代理人 | 森 廣三郎 |