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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1137796
異議申立番号 異議2003-71494  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-03-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-06 
確定日 2006-04-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3356172号「画像形成装置」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3356172号の請求項1ないし2、4ないし5に係る特許を取り消す。 同請求項3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3356172号の請求項1ないし11に係る発明は、平成4年1月17日に出願した特願平4-26269号の一部を平成11年1月14日に特願平11-8088号として新たな特許出願とし、さらにその一部を平成13年(2001年)6月11日に新たな特許出願としたものであって、平成14年10月4日にその特許権の設定登録がなされ、その後、小湊勇次(以下、「第1異議申立人」という。)及び小倉恵子(以下、「第2異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成16年5月11日に特許異議意見書が提出されるとともに、訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア)[訂正事項a]
[訂正事項a-1]
特許請求の範囲の請求項1ないし5項及び10項を削除する。
[訂正事項a-2]
特許請求の範囲の【請求項6】に
「用紙に画像を形成して記録紙とする画像形成部が内部に配置され、画像形成部の下方に当該画像形成部に用紙を供給する給紙部を備えた記録紙作成部と、前記記録紙作成部の上方に空間を介して設けられ、原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報を前記画像形成部に供給する画像読取り部と、前記記録紙作成部と画像読取り部との間に記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、前記記録紙作成部に対し画像読取り部を上方に持ち上げて支持する支持手段とを備え、前記記録紙作成部のうち画像形成部が内部に配置された装置本体と給紙部と、前記画像読取り部とを略同大とし、更に、前記支持手段が前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設けられていることを特徴とする画像形成装置。」
とあるのを、
「【請求項1】 用紙に画像を形成して記録紙とする画像形成部が内部に配置され、画像形成部の下方に当該画像形成部に用紙を供給する給紙部を備えた記録紙作成部と、略全域が前記記録紙作成部の上方に空間を介して設けられ、原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報を前記画像形成部に供給する画像読取り部と、前記記録紙作成部と画像読取り部との間に記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、前記記録紙作成部に対し画像読取り部を上方に持ち上げて支持する支持手段とを備え、前記記録紙作成部のうち画像形成部が内部に配置された装置本体と給紙部と、前記画像読取り部とを略同大とし、更に、前記支持手段が前記画像読取り部の両側端部を持ち上げて支持すると共に、前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設けられ、前記画像読取り部及び前記支持手段に囲まれた記録紙取り出しのための開口部が装置前面側に形成されていることを特徴とする画像形成装置。」
と訂正する。
[訂正事項a-3]
特許請求の範囲の【請求項7】を
「【請求項2】請求項1に記載の画像形成装置において、給紙部は、装置本体に対して装置前面側から挿入可能な用紙収容手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。」
と訂正する。
[訂正事項a-4]
特許請求の範囲の【請求項8】を
「【請求項3】請求項1又は2に記載の画像形成装置において、記録紙作成部は、装置本体の側部に設けられた用紙搬送路を介して記録紙を記録紙排出部に排出するものであることを特徴とする画像形成装置。」
と訂正する。
[訂正事項a-5]
特許請求の範囲の【請求項9】を
「【請求項4】請求項1乃至3いずれかに記載の画像形成装置において、記録紙作成部は、装置本体の側部にジャム処理用の開閉部を備えていることを特徴とする画像形成装置。」
と訂正する。
[訂正事項a-6]
特許請求の範囲の【請求項11】に
「請求項1乃至10いずれかに記載の画像形成装置において、前記記録紙作成部は、その上面両側部に配置され且つ画像読取り部底面に接触するように形成される立ち上がり部を備えていることを特徴とする画像形成装置。」
とあるのを、
「【請求項5】請求項1乃至4いずれかに記載の画像形成装置において、前記記録紙作成部は、その上面両側部に配置され且つ画像読取り部底面に接触するように形成される立ち上がり部を備え、この立ち上がり部が前記支持手段を構成していることを特徴とする画像形成装置。」
と訂正する。

イ)[訂正事項b]
明細書の段落【0005】を
「【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の基本構成は、は、用紙に画像を形成して記録紙とする画像形成部が内部に配置され、この画像形成部の下方に当該画像形成部に用紙を供給する給紙部を備えた記録紙作成部と、前記記録紙作成部の上方に空間を介して設けられ、原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報を前記画像形成部に供給する画像読取り部と、前記記録紙作成部と前記画像読取り部との間に前記記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、前記記録紙作成部に対し前記画像読取り部を上方に持ち上げて支持する支持手段とを備えたものである。」
と訂正する。

ウ)[訂正事項c]
明細書の段落【0006】を
「【0006】
このような技術的手段において、支持手段について補足すると、例えば図5において、画像形成装置の記録紙排出部5の両側にある上下方向に延びる部分は、画像読取り部2を記録紙作成部10から空間を隔てて上方に支持しており、「支持手段」に相当することは明らかである。
また、装置構成の簡略化を図るという観点からすれば、記録紙取り出しのための開口部は、前記記録紙作成部の上面と前記画像読取り部の下面とで形成されることが好ましい。
更に、装置全体をコンパクト化するという観点からすれば、記録紙作成部と画像読取り部とが略同大であることが好ましい。」
と訂正する。

エ)[訂正事項d]
明細書の段落【0007】を
「【0007】
特に、本発明は、用紙に画像を形成して記録紙とする画像形成部が内部に配置され、画像形成部の下方に当該画像形成部に用紙を供給する給紙部を備えた記録紙作成部と、前記記録紙作成部の上方に空間を介して設けられ、原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報を前記画像形成部に供給する画像読取り部と、前記記録紙作成部と画像読取り部との間に記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、前記記録紙作成部に対し画像読取り部を上方に持ち上げて支持する支持手段とを備え、前記記録紙作成部のうち画像形成部が内部に配置された装置本体と給紙部と、前記画像読取り部とを略同大とし、更に、前記支持手段が前記画像読取り部の両側側部を持ち上げて支持すると共に、前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設けられ、前記画像読取り部及び前記支持手段に囲まれた記録紙取り出しのための開口部が装置前面側に形成されていることを特徴とするものである。
この態様の具体例としては、例えば図5に示すものが挙げられる。
このような態様において、特に、支持手段を、前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設けるようにしているので、記録紙排出部からの記録紙の脱落を有効に防止することができる。
また、本態様において、給紙部は、装置本体に対して装置前面側から挿入可能な用紙収容手段を備えていることが好ましい。
更に、記録紙作成部の好ましい態様としては、装置本体の側部に設けられた用紙搬送路を介して記録紙を記録紙排出部に排出するようにしたり、装置本体の側部にジャム処理用の開閉部を備えるものが挙げられる。
更にまた、記録紙排出部に排出された記録紙の装置側部からの脱落を有効に防止するという観点からすれば、前記記録紙作成部は、その上面両側部に配置され且つ画像読取り部底面に接触するように形成される立ち上がり部を備え、この立ち上がり部が前記支持手段を構成していることが好ましい。」
と訂正する。

オ)[訂正事項e]
明細書の段落【0024】を
「【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、記録紙作成部と画像読取り部との間に記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、支持手段にて記録紙作成部に対し画像読取り部を上方に持ち上げて支持し、前記記録紙作成部のうち画像形成部が内部に配置された装置本体と給紙部と、前記画像読取り部とを略同大とし、更に、前記支持手段が前記画像読取り部の両側側部を持ち上げて支持すると共に、前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設け、前記画像読取り部及び前記支持手段に囲まれた記録紙取り出しのための開口部が装置前面側に形成するようにしたので、装置の設置スペースの低減を図りながら、記録紙排出部からの記録紙の取出し作業を容易に行うことができると共に、装置全体のコンパクト化を容易に実現することができることに加え、記録紙排出部からの記録紙の脱落を有効に防止することができる。」
と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項b〜eは、特許請求の範囲の減縮に伴って発明の詳細な説明をそれに整合させるためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項a〜eは、いずれも新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を実質的に変更したり、拡張するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし5に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものである。(訂正事項a参照、以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)

(2)引用刊行物
当審が平成16年3月3日に通知した取り消し理由において引用した刊行物には、それぞれ次のような技術事項が図面と共に記載されている。
[刊行物1(特開平1-133462号公報)]
ア)第1図及び第2図に示す画像形成装置1は、原稿に付された画像情報の読取走査を行う読取部3を内蔵した画像読取手段(スキャナ)2と、この画像形成手段2を上面に載置する状態で支持するレーザビームを用いた画像形成手段(レーザビームプリンタ)4とを有している。前記画像形成手段2は、筐体5と、この筐体5の上面部に水平状態に配置された透明ガラス製の原稿載置板6と、この原稿載置板6の側方で、かつ、前記筐体5の内部に設けられた原稿搬送手段7と、前記原稿載置板6上に載置される原稿及び原稿搬送手段7により搬送される原稿に対しそれぞれ読取走査を行う前記読取部3と、この読取部3の筐体5内における走行領域9を形成すると共に画像形成手段2の底面側を画する分離配置の第1底板部9A,第2底板部9Bと、前記原稿載置板6の上面を施蓋すると共に筐体5に対して開閉可能に連結され所定の傾斜角をもった開蓋状態のときその上面から前記原稿搬送手段7に原稿を挿入可能なプラテンカバー10とを具備している。(第2頁右上欄第15行〜左下欄第14行参照)
イ)前記画像形成手段4は、ケース22と、画像形成部17と、前記ヒートローラ15A,15Bにより形成される定着部18と、画像形成部17に画像形成媒体としての複写紙を供給するためこの複写紙を収容した給紙カセット19と、排紙ローラ20A,20Bと、排紙トレイ21とを具備している。(第3頁左上欄末行〜右上欄第6行参照)

[刊行物6(特開平3-120125号公報)]
カ)まず、第1図に従いファクシミリ装置の概略構成について説明する。このファクシミリ装置は、大きく分けて給紙ユニットA、記録ユニットB、読み取りユニットC及びオプション給紙トレイDの4ユニットから構成される。給紙ユニットAは、ファクシミリ装置の本体下部に設けられ、その上方に記録ユニットB及び読み取りユニットCがこの順に設けられ、記録ユニットBの右側に相当する本体右側壁にオプション給紙トレイDが装備される。・・・また、このファクシミリ装置が複写機として使用されるコピーモード時においても同様に記録ユニットBに記録紙を給紙する。かかる給紙ユニットAは、本体下部に装備され、多数の記録紙を収納する給紙カセット1と、給紙カセット1内の記録紙を一枚ずつ取り出し、記録ユニットBに給紙する給紙ローラ2と、給紙カセット1の上方部に装備されるファクシミリ制御基板3とを備えてなる。また、給紙ユニットAの外部にはハンドセット4と、操作表示部(図示せず)が設けられる。(第2頁右上欄第7行〜左下欄第9行参照)
キ)一方、記録ユニットBには電子写真方式の作像行程を行うイメージングユニット10と、受信情報をレーザ光に変換してイメージングユニット10を構成する感光体ドラム12に露光するプリントヘッド11とが装置される。感光体ドラム12には搬送ローラ6とタイミングローラ7を介して前記記録紙が供給される。・・・感光体ドラム12に供給され、所定の作像工程によりトナー像が転写された記録紙は、感光体ドラム12から分離され、イメージングユニット10の左側部に設けられる定着ローラ8の位置に搬送され、ここでの定着工程が完了すると、排出ローラ9によりプリントヘッド11の上部に設けられる排出トレイ13上に排出される。(第2頁左下欄第12行〜右下欄第10行参照)
ク)プラテンローラ51の上側には原稿DCの原稿画像をアナログの画像信号として読み取る密着型の読み取りセンサ50が設けられる。読み取りセンサ50により、読み取られた画像信号は2値化基板52に装置される2値化処理回路(図示せず)に入力され、明暗2値の画像データに変換され、その後、電話回線に送出される。(第3頁右上欄第4行〜同欄第10行参照)

以上の記載を第1図、第7図等の図面と対応させながら対比のためにまとめると、
a)イメージングユニット10は用紙に画像を形成して記録紙とするものであり、給紙ユニットAはイメージングユニット10に用紙を供給するものであり、記録ユニットBの内部にはイメージングユニット10が配置されるとともに、その下方に給紙ユニットAを備えているということができ、
b)読み取りユニットCはその一部の2の領域において記録ユニットBの上部に空間を介して設けられており、原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報をイメージングユニット10に供給するものであるということができ、
c)記録ユニットBと読み取りユニットCとの間には記録ユニットBから排出された記録紙を収容し且つ読み取りユニットCに面した排出トレイ13を有する空間が形成されているということができ、
d)図1や図7には、読み取りユニットCの具体的な構造について違いはあるが、それを除けば略同一の構成からなるファクシミリ装置の正面断面図が示されている。
この他にファクシミリ装置の全体構成を示す図面はないが、記録ユニットBの上部に排出トレイ13が傾斜配置され、排出トレイ13の上方には記録紙を収納するための空間を介して読み取りユニットCが載置されていて、この載置構造は正面断面図の常識的な解釈からみて、記録ユニットBの上部に排出トレイ13を囲うように上部壁が設けられ、その上部壁に読み取りユニットCが支持されているとみることができ、また、読み取りユニットCと上部壁に囲まれた記録紙取り出しのための開口部がオプション給紙トレイDが取り付けられる装置の側部側に面するように形成されているということができ、
以上のことから刊行物6には次のような発明が図面と共に記載されている。
「用紙に画像を形成して記録紙とするイメージングユニット10が内部に配置された記録ユニットBと、イメージングユニット10の下方に設けられ、イメージングユニット10に用紙を供給する給紙ユニットAと、一部の領域が記録ユニットBの上方に空間を介して設けられ、原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報をイメージングユニット10に供給する読み取りユニットCと、記録ユニットBと読み取りユニットCとの間に記録ユニットBから排出された記録紙を収容し且つ読み取りユニットCに面した排出トレイ13を有する空間を形成するように、記録ユニットBに対し読み取りユニットCをその両側で支持する記録ユニットBの上部壁を備え、上部壁は排出トレイを囲むように設けられ、読み取りユニットCと上部壁に囲まれた記録紙取り出しのための開口部が装置側部側に面するように形成されているファクシミリ装置。」


[刊行物7(特開昭58-205367号公報)]
サ)ファクシミリ機能と複写機能を備えた複合ファクシミリにおいて、ファクシミリ本体の最上方部に原稿セットテーブル及び読取光学系を、これら原稿セットテーブル及び読取光学系の下方に記録ユニットを、この記録ユニットの側方又は下方にカット紙の給紙ユニットを、上記記録ユニットの下方にロール紙の給紙ユニットを、当該ファクシミリ本体の最下方部にパワーサプライユニットを各々配設するとともに、当該ファクシミリ本体の内側に記録済みの紙を貯えるスタッカーを設けた事を特徴とする複合ファクシミリ。(第1頁 特許請求の範囲の項参照)
シ)コピースタッカー24上に積載された記録紙を取出すには、当該ファクシミリの正面部(操作パネル21の操作位置にオペレータが位置した時にオペレータと対向する面)の第2領域2の相当部に形成された開閉扉28を第3図に示す如く開き、この扉の開放により形成される開口(図示されず)を経て行なう。(第3頁右下欄第8行〜同欄第14行参照)

[刊行物8(特開昭63-172172号公報)]
タ)第1図は本発明にかかる複写機の斜視図で、この複写機は、概略、複写機本体(1)、排紙装置(2)、給紙装置(3)、及び自動原稿給送装置(以下、「ADF」という)(4)、で構成されており、下方から給紙装置(3)、排紙装置(2)、複写機本体(1)、ADF(4)の順に積層配設されている。(第1頁右下欄第15行〜同欄末行参照)
チ)ii.排紙装置(2) 排紙装置(2)には外部に開方された空間である複写紙排紙部(21)が形成され、該排紙部(21)には排紙トレイ(22)が設けてあり、排紙部(21)の側部には排紙路(23)と給紙路(26)が形成されている。(第2頁右上欄第13行〜同欄第18行参照)
ツ)iii.給紙装置(3) 給紙装置(3)には収納ボックス(31)が第1図に示す要の着脱自在に装着されており、(第2頁左下欄第14行〜同欄第16行参照)

[刊行物10(特開平2-32371号公報)]
ナ)第1図は、本発明を適用したデジタル・カラー複写機の外形図を示している。全体は2つの部分に分けることができる。第1図の上部は原稿像を読み取り、デジタル・カラー画像データを出力するカラー・イメージ・スキャナ部1(以下、スキャナ部1と略す)と、スキャナ部1に内蔵されたデジタル・カラー画像データの各種の画像処理を行うとともに、外部装置とのインターフエース等の処理機能を有するコントローラ部2より構成される。スキャナ部1は、原稿押え11の下に下向きに置かれた立体物、シート原稿を読み取る他、大判サイズのシート原稿を読み取るための機構も内蔵している。(第1頁右下欄下から3行〜第2頁左上欄第11行参照)
ニ)第1図の下部は、コントローラ部2より出力されたカラー・デジタル画像信号を記録紙に記録するためのプリンタ部3である。本実施例において、プリンタ部3は・・・インクジェット記録方式の記録ヘッドを使用したフル・カラーのインク・ジェット・プリンタである。(第2頁左上欄末行〜右上欄第6行参照)
ヌ)第2図において、記録紙は小型定型サイズ(本実施例ではA4〜A3サイズまで)のカット紙を収納する給紙カセット20と、大型サイズ(本実施例ではA2〜A1サイズまで)の記録を行うためのロール紙29より供給される。(第2頁左下欄第1行〜同欄第5行参照)
ネ)プリントされた記録紙は、排紙トレイ23に排出されプリント動作を完了する。(第3頁左上欄第13行〜同欄第14行参照)

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1について
本件発明1を刊行物6記載の発明と対比すると、
a)刊行物6記載の発明の「イメージングユニット10」、「給紙ユニットA」、「読み取りユニットC」、「排出トレイ13を有する空間」は、それぞれ本件発明1の「画像形成部」、「給紙部」、「画像読取り部」、「記録紙載置面を有する記録紙排出部」に相当し、
b)刊行物6記載の発明の「給紙ユニットAと記録ユニットBとからなる構成部」、「記録ユニットB」は、本件発明1の「記録紙作成部」、「記録紙作成部のうち画像形成部が内部に配置された装置本体」に相当し、
c)刊行物6記載の発明において、記録ユニットBの上部に設けられた上部壁は、記録紙作成部に対して画像読取り部を支持し、記録紙作成部と画像読み取り部との間に記録紙排出部を形成する支持手段であるということができ、
d)刊行物6記載の発明の「ファクシミリ装置」も、読み取りユニットCで読み取った原稿の画像を記録ユニットBで記録紙に転写して画像を形成するコピーモードを有するものであるから、本件発明1の「画像形成装置」に相当し、
以上のことから、両者間には次のような一致点、相違点がある。
(一致点)
用紙に画像を形成して記録紙とする画像形成部が内部に配置され、画像形成部の下方に当該画像形成部に用紙を供給する給紙部を備えた記録紙作成部と、記録紙作成部の上方に空間を介して設けられて、原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報を画像形成部に供給する画像読取り部と、記録紙作成部と画像読取り部との間に記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ画像読取り部に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、記録紙作成部に対し画像読取り部を支持する支持手段とを備え、更に支持手段が画像読取り部の両側を支持すると共に、記録紙排出部の側方両側を囲うように設けられ、画像読取り部及び支持手段に囲まれた記録紙取り出しのための開口部が形成されている画像形成装置。
(相違点)
(1)画像読取り部が、本件発明1はその略全域が記録紙作成部の上方に空間を介して設けられているとともに、原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取るものであるのに対して、刊行物6記載の発明は全領域ではなく一部の領域が記録紙作成部の上方に空間を介して設けられているし、読み取りの態様についてもプラテンローラに搬送される原稿の画像を読み取るものである点
(2)記録紙排出部の記録紙載置面が、本件発明1では画像読取り部の略全域に面しているのに対して、刊行物6記載の発明はさほどの違いはないものの全領域とはいえない点
(3)支持手段が、本件発明1では記録紙作成部に対し画像読取り部の両側端部を上方に持ち上げて支持するものであり、また、開口部が装置前面側に形成されているのに対して、刊行物6記載の発明は、記録紙作成部に対し画像読取り部の両側を支持するものではあるが両側端部とまではいえないし、上方に持ち上げて支持するものでもないし、開口部も装置側部に面するように設けられている点
(4)本件発明1は画像形成部が内部に配置された装置本体と給紙部と画像読取り部とを略同大とするものであるのに対して、刊行物6記載の発明はそれらの大きさにさほどの違いはないものの、略同大とはいえない点
(相違点の検討)
最初に、相違点(4)について検討する。
刊行物6記載の発明も図1や図7の記載からみて装置本体と給紙部と画像読取り部の大きさにさほどの違いはないものと読みとれるし、それらの大きさを略同一にした画像形成装置が刊行物8に記載されており、この点は当業者が容易に考えつくことができた構成の変更である。
相違点(1)について検討する。
上記刊行物1や刊行物10には、画像読取り部が原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取る画像形成装置が記載されていて、刊行物6記載の発明の画像読取り部を原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取る構成とすることは、当業者ならば容易に考えつくことができた構成の変更である。
その場合、記録紙排出部としての空間がとれなくなるが、空間確保のために記録紙作成部に対して画像読取り部を上方に持ち上げて支持することは当業者が必要に応じて採用し得る設計的事項であり、その際「画像読取り部の略全域が記録紙作成部の上方に空間を介して設けられ」る構成についても当業者ならば普通に考えつくことである。
相違点(2)について検討する。
相違点4の検討において述べたように装置本体と給紙部と画像読取り部とを略同大にした場合、結果的に記録紙載置面も画像読取り部とほぼ同大となるものであるし、刊行物6記載の発明おいても記録紙載置面と画像読取り部の大きさにさほどの違いがないことから、記録紙排出部の記録紙載置面を画像読取り部の略全域に面するように構成することは、当業者ならば容易に考えつくことができた構成の変更である。
相違点(3)について検討する。
相違点(1)の検討において述べたように、記録紙作成部に対して画像読み取り部の略全域を上方に空間を介して設けるにあたって、刊行物6記載の発明の支持手段を上方に延長して記録紙作成部に対して画像読取り部を上方に持ち上げて支持することは、具体化に当たって当業者ならば普通に考えつくことができる構成の変更である。
そして、相違点(4)の検討において述べたように装置本体と給紙部と画像読取り部とを略同大とすると、支持手段は結果的に画像読取り部の両側端部を支持することになる。
また、装置のどの面を前面とするかは設計上任意に決めることができることであり、刊行物6記載の発明おいて給紙などの便宜のために装置側部の方を前面側と規定することも当業者が普通に考えつくことであり、その場合結果的に開口部は装置前面側に面するように形成されることになる。
以上のように、相違点(3)は相違点(1)についての変更をするに際して、具体化に当たって当業者が普通に考えつくことができる程度の構成の変更である。
そして、本件発明1は全体として上記公知技術から窺い知れないような格別の作用効果を奏するものでもない。

(むすび)
したがって、本件発明1は刊行物6、刊行物1、刊行物8、刊行物10記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-2)本件発明2について
刊行物6記載の発明は記録紙取り出しのための開口部と同じ面から給紙カセット1が挿入可能であることから、記録紙取り出しのための開口部を装置前面側に形成した場合結果として「給紙部は、装置本体に対して装置前面側から挿入可能な用紙収容手段を備えている」という構成となる。
そうすると、本件発明2と刊行物6記載の発明との間には、本件発明1についての対比で挙げた以外に相違点はないことになり、本件発明1についての検討と同様に、刊行物6、刊行物1、刊行物8、刊行物10記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-3)本件発明3
本件発明3は「装置本体と給紙部と画像読取り部とを略同大とし、画像読み取り部及び画像読取り部の両側端部を支持する支持手段に囲まれた記録紙取り出しのための開口部が装置前面側に形成されている」ことを前提として「装置本体の側部に設けられた用紙搬送路を介して記録紙を記録紙排出部に排出する」構成を有するものであり、この点に関して刊行物1〜3、刊行物6、刊行物8のいずれにも記載されていない。
また、刊行物8記載の発明は画像読取り部と画像形成部とからなる複写機本体の下方に記録紙排出部、給紙部を配設したものでありいわゆるアナログ式の複写機であることから、画像形成部を記録紙排出部の下方に配設することを想定するものではないし、刊行物10にいわゆるデジタル式画像記録再生装置が記載されているとしても、画像形成部が記録紙排出部の下方に配設されたものではなく、刊行物8記載の発明に刊行物10記載の発明を組み合わて本件発明3を構成することが、当業者にとって容易になし得たものであるとすることはできない。
したがって、本件発明3が取消理由で示した刊行物1〜3、6〜8、10記載の発明及び第1及び第2異議申立人が引用したその他の刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(3-4)本件発明4
本件発明4を刊行物6記載の発明と対比すると、上記(3-1)本件発明1の対比で挙げた相違点(1)〜(4)に加えて、
相違点(5)
本件発明4が「記録紙作成部は、装置本体の側部にジャム処理用の開閉部を備えている」のに対して、刊行物6記載の発明はその点について記載されていない点
で相違する。
相違点(1)〜(4)については上の(3-1)で述べたとおり、当業者が容易に考えつくことができた構成の変更である。
相違点(5)については、装置本体の記録紙搬送路に沿った面に扉を設けて、ジャム処理を容易にする構成は周知であり(実開平3-47553号公報、実開昭61-135345号公報参照)、上記(3-1)の相違点(3)の検討で述べたように、開口部を装置の前側に形成した場合、記録紙搬送路に沿った面は装置本体の側部となるから、装置の側部にジャム処理用の開閉部を設けることは当業者ならば容易に考えつくことができた構成の変更である。
したがって、本件発明4は刊行物6、刊行物1、刊行物8、刊行物10記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-5)本件発明5
本件発明5を刊行物6記載の発明と対比すると、上記(3-1)本件発明1の対比で挙げた相違点(1)〜(4)に加えて、
相違点(6)
本件発明5は記録紙作成部の上面両側部に立ち上がり部が形成されているのに対して、刊行物6記載の発明は、画像読取り部の底面に接触する支持部材は形成されているが記録紙作成部の上面両側部に立ち上がり部は形成されていない点
で相違している。
相違点(6)については、上の(3-1)の相違点(3)において述べたように、「空間を確保するために記録紙作成部に対して画像読取り部を上方に持ち上げて支持する」場合、刊行物6記載の発明において記録紙作成部の支持手段を延長して立ち上がり部を設けることが設計上普通に考えつくことであるから、相違点(6)は相違点(1)についての変更をするに際して、具体化に当たって当業者が普通に考えつくことができる程度の構成の変更である。
したがって、本件発明5は刊行物6、刊行物1、刊行物8、刊行物10記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本件発明1、2、4及び5は刊行物1ないし8及び10記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって本件発明1、2、4及び5についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
また、本件発明3は第1異議申立人や第2異議申立人による異議申し立ての理由によっては取り消すことができないし、他に取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像形成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】用紙に画像を形成して記録紙とする画像形成部が内部に配置され、画像形成部の下方に当該画像形成部に用紙を供給する給紙部を備えた記録紙作成部と、
略全域が前記記録紙作成部の上方に空間を介して設けられ、原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報を前記画像形成部に供給する画像読取り部と、
前記記録紙作成部と画像読取り部との間に記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、前記記録紙作成部に対し画像読取り部を上方に持ち上げて支持する支持手段とを備え、
前記記録紙作成部のうち画像形成部が内部に配置された装置本体と給紙部と、前記画像読取り部とを略同大とし、
更に、前記支持手段が前記画像読取り部の両側端部を持ち上げて支持すると共に、前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設けられ、
前記画像読取り部及び前記支持手段に囲まれた記録紙取り出しのための開口部が装置前面側に形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】請求項1に記載の画像形成装置において、
給紙部は、装置本体に対して装置前面側から挿入可能な用紙収容手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
記録紙作成部は、装置本体の側部に設けられた用紙搬送路を介して記録紙を記録紙排出部に排出するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】請求項1乃至3いずれかに記載の画像形成装置において、
記録紙作成部は、装置本体の側部にジャム処理用の開閉部を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】請求項1乃至4いずれかに記載の画像形成装置において、
前記記録紙作成部は、その上面両側部に配置され且つ画像読取り部底面に接触するように形成される立ち上がり部を備え、この立ち上がり部が前記支持手段を構成していることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル方式の画像形成装置に係り、特に、画像読取り部と記録紙作成部との間に記録紙排出部を配置した画像形成装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるデジタル方式の画像形成装置としては、例えば電子写真方式などの記録紙作成部の上方に記録紙排出部を設け、更に、この記録紙排出部の上方に原稿移動型画像読取り部を配設した態様が既に知られている(例えば特開平3-120125号公報参照)。
この態様によれば、装置本体の側方に記録紙排出部としての排出トレイを突出配置した態様(例えば特開昭62-131668号公報参照)に比べて、装置の設置スペースを低減できるという利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種の画像形成装置にあっては、記録紙作成部と画像読取り部との間に設けられた記録紙排出部に記録紙を排出するようにしたため、記録紙排出部に排出された記録紙に対する取り出し作業が面倒になり易いという技術的課題が見い出された。
また、この種の画像形成装置にあっては、更に、装置全体のコンパクト化をどのような観点から実現すべきかという明確な基準がなく、装置全体のコンパクト化を如何に効率的に実現していくかが解決すべき技術的課題になっている。
【0004】
本発明は以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、装置の設置スペースの低減を図りながら、記録紙排出部に排出された記録紙に対する取出し作業を容易に、更に、装置全体のコンパクト化を効率的に実現できる画像形成装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の基本的構成は、用紙に画像を形成して記録紙とする画像形成部が内部に配置され、この画像形成部の下方に当該画像形成部に用紙を供給する給紙部を備えた記録紙作成部と、前記記録紙作成部の上方に空間を介して設けられ、原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報を前記画像形成部に供給する画像読取り部と、前記記録紙作成部と前記画像読取り部との間に前記記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、前記記録紙作成部に対し前記画像読取り部を上方に持ち上げて支持する支持手段とを備えたものである。
【0006】
このような技術的手段において、支持手段について補足すると、例えば図5において、画像形成装置の記録紙排出部5の両側にある上下方向に延びる部分は、画像読取り部2を記録紙作成部10から空間を隔てて上方に支持しており、「支持手段」に相当することは明らかである。
更に、装置全体をコンパクト化するという観点からすれば、記録紙作成部と画像読取り部とが略同大であることが好ましい。
【0007】
特に、本発明は、用紙に画像を形成して記録紙とする画像形成部が内部に配置され、画像形成部の下方に当該画像形成部に用紙を供給する給紙部を備えた記録紙作成部と、前記記録紙作成部の上方に空間を介して設けられ、原稿押さえ部にて水平に固定した状態の原稿を読み取ると共に、読み取った画像情報を前記画像形成部に供給する画像読取り部と、前記記録紙作成部と画像読取り部との間に記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、前記記録紙作成部に対し画像読取り部を上方に持ち上げて支持する支持手段とを備え、前記記録紙作成部のうち画像形成部が内部に配置された装置本体と給紙部と、前記画像読取り部とを略同大とし、更に、前記支持手段が前記画像読取り部の両側端部を持ち上げて支持すると共に、前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設けられ、前記画像読取り部及び前記支持手段に囲まれた記録紙取り出しのための開口部が装置前面側に形成されていることを特徴とするものである。
この態様の具体例としては、例えば図5に示すものが挙げられる。
このような態様において、特に、支持手段を、前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設けるようにしているので、記録紙排出部からの記録紙の脱落を有効に防止することができる。
また、本態様において、給紙部は、装置本体に対して装置前面側から挿入可能な用紙収容手段を備えていることが好ましい。
更に、記録紙作成部の好ましい態様としては、装置本体の側部に設けられた用紙搬送路を介して記録紙を記録紙排出部に排出するようにしたり、装置本体の側部にジャム処理用の開閉部を備えるものが挙げられる。
更にまた、記録紙排出部に排出された記録紙の装置側部からの脱落を有効に防止するという観点からすれば、前記記録紙作成部は、その上面両側部に配置され且つ画像読取り部底面に接触するように形成される立ち上がり部を備え、この立ち上がり部が前記支持手段を構成していることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
図示される実施の形態にしたがって、本発明の画像形成装置を説明する。
図1に示されるように、本実施の形態に係る画像形成装置1は画像読取り部2と記録紙作成部10とを重ねた状態の装置として構成しており、両装置の間に記録紙排出部5を形成して、記録紙を排出させるようにしている。前記画像読取り部2では、一般の画像読取り装置の場合と同様に、装置本体の上部に原稿をセットして、原稿の画像を走査する機構が設けられており、その原稿を押圧保持させるためのプラテンカバー3が設けられている。また、前記画像読取り部2は、下部に配置される記録紙作成部10に対してヒンジ4を介して支持されており、該ヒンジ4を介して、画像読取り部2を後方に向けて揺動させることができるようにされる。
【0009】
前記画像読取り部2の下部に配置される記録紙作成部10は、装置本体のフロントフレーム12側を、ヒンジ13を介して開閉可能に構成し、該フロントフレーム12を開くことにより、内部の各デバイスに対するメンテナンスや、装置本体内の用紙搬送路40内でのジャム紙の処理を行うことができるようにされる。また、前記フロントフレーム12に給紙ユニット20を挿入するための開口15を形成し、前記開口15から給紙ユニット20を着脱できるように構成される。さらに、前記記録紙作成部10の所定の位置にコントロールパネル11を配置し、画像読取り部2と記録紙作成部10との操作の制御を行うことができる。
【0010】
前述した本実施の形態に係る画像形成装置1においては、図2および図3に示されるように、記録紙作成部10を構成することができる。
すなわち、前記記録紙作成部10の内部に配置される画像形成部では、一般のレーザプリンタの場合と同様に、感光体ドラム30に対して書き込み装置31を配置し、画像読取り部2から入力されるデジタル信号により、レーザビームを出力させ、そのレーザビームを感光体ドラム30に照射して、画像の書き込みを行うようにしている。また、前記感光体ドラム30の周囲には、電子写真方式を用いた画像形成機構の場合と同様に、帯電器38、現像装置32、および、転写コロトロン33、クリーニング装置34を配置している。そして、感光体ドラム30を帯電器38により一様に帯電させ、書き込み装置31により書き込みを行って静電潜像を形成し、その静電潜像に対して現像装置32からトナーを供給して、トナー画像を形成し、そのトナー画像を転写コロトロン33の放電により、用紙に転写させるようにする。
【0011】
前記画像形成部に向けて用紙を送るために、前記記録紙作成部10においては、装置本体の下部に給紙ユニット20を装着する方式を用いており、前記給紙ユニット20の前側にハンドル21を配置し、用紙Pを用紙収容装置22に装着する。また、前記給紙ユニット20に対して、装置本体内の用紙搬送路40の下端に位置する用紙供給口に接続される部分に、搬送ローラ装置24を配置し、給紙ローラ23により送り出された用紙Pを、装置本体の用紙搬送路40に向けて搬送させるようにする。前記用紙収容装置22から用紙Pを送り出すための給紙ローラ23は、図示を省略した支持手段と駆動機構とに接続され、用紙収容装置22を記録紙作成部10に装着した状態で、給紙ローラ23が用紙Pの端部に押圧され、用紙Pの送り出しの動作を行い得るようにされる。
【0012】
なお、前記用紙収容装置22としては、任意の構成の装置を用いることができるものであり、搬送ローラ装置24を給紙カセットに設けた機構の他に、従来の一般の給紙カセットや給紙トレイの場合のように、用紙収容装置としてのみ作用させる手段を用いることもできる。さらに、前記給紙ユニット20による給紙手段の他に、記録紙作成部10においては、装置本体のフロント部に手差しトレイ26を配置し、給紙ローラ27を用いて、用紙Pを用紙搬送路40に向けて送り込むことができる。
【0013】
更に、画像形成部の転写部位の下流側に位置する用紙搬送路40には定着装置35が設けられており、この定着装置35の更に下流側に位置する用紙搬送路40には搬送ローラ装置36と排出ローラ37とが設けられ、用紙搬送路40の上端が記録紙排出口6になっている。
本例では、搬送ローラ装置36、排出ローラ37及び記録紙排出口6が本件発明の記録紙排出手段を構成している。
【0014】
また、前記図2に示される例において、画像読取り部2と記録紙作成部10との間には、記録紙排出部5として用いる空間部が形成されており、本実施の形態では、前記記録紙排出部5が、前記画像読取り部2より突出配置されており、該記録紙排出部5に対しては、画像読取り部2と記録紙作成部10との間で、フロント側に形成されるスペースSの部分から手を挿入して、記録紙を取り出すことができるようにしている。
なお、前記図1に示されるように、記録紙排出部5の部分を側部にも開口させた機構として構成する場合には、記録紙を装置本体の側部からも取り出すことができる。さらに、前記スペースSの部分は、装置本体のリヤ側からフロント側にまで通じるスペースとして構成されており、前記スペースSに対して、装置本体の左右どちらからでも手を挿入して、記録紙を取り出すことができる。
【0015】
更に、本実施の形態では、前記記録紙排出部5は、図1及び図2に示すように、記録紙載置面5aを有し、この記録紙載置面5aの記録紙排出口6側には他の部分よりも低く構成される略V字状の凹溝5bを形成したものである。
【0016】
前述したようにして、給紙部(給紙ユニット20又は手差しトレイ26)から記録紙作成部10の装置本体内の用紙搬送路40に向けて送り出される用紙Pは、感光体ドラム30からの画像転写部(転写コロトロン33)の直前部に配置されたレジローラ25により、用紙Pの先端部と感光体ドラム30に形成されるトナー画像とのタイミングを合わせて送り出される。そして、転写コロトロン33の放電により、トナー画像を用紙Pに転写し、そのトナー画像を担持する用紙Pを、定着装置35を通して定着して記録紙を作成し、搬送ローラ装置36と排出ローラ37を介して、記録紙排出口6から記録紙排出部5に向けて排出させるようにする。
【0017】
そして、記録紙排出部5に排出された記録紙は記録紙載置面5aに順次載置されるが、記録紙載置面5aのうち記録紙排出口6側に略V字状の凹溝5bが形成されているため、記録紙の排出後端部が前記凹溝5b側に自重で自然に移動し、凹溝5bに記録紙の排出後端部が揃えられた状態で、記録紙が記録紙排出部5に収容される。
このため、フロント側に形成されるスペースSの部分から手を挿入して、記録紙を簡単に取り出すことができる。
更に、本実施の形態においては、画像読取り部2をヒンジ4を介して後方に揺動させれば、記録紙排出部5の上方が完全に開放されるため、より簡単に記録紙を取り出すことも可能である。
【0018】
また、前記図3に示される記録紙作成部10では、用紙搬送路40のフロント側の部材を、フロントフレーム12に設けておき、該フロントフレーム12を装置本体から開くように構成するようにしたものである。そして、前述したように、装置本体のフロントフレーム12を開閉可能に構成することにより、用紙搬送路40内でジャムが生じた場合の処理や、画像形成装置の各機構に対するメンテナンスを行う場合等に、装置のフロント側から作業を行うことができる。さらに、記録紙作成部10の内部に配置される各構成部材を、フロント側に引き出す機構を構成することにより、それ等の部材を機外に引き出して点検等を行うこともできる。
【0019】
また、本発明の他の実施の形態では、前記図1に示されるように、記録紙を収容する記録紙排出部5に対して、フロント側と両側側部から手を挿入して、記録紙を取り出すことができるように構成することに代えて、図4に示されるような装置として構成することができる。
前記図4に示される画像形成装置1aでは、記録紙作成部10の両側の側部に立ち上がり部7、8を配置し、その一方の立ち上がり部7に記録紙排出口6を形成し、記録紙作成部10において作成された記録紙を記録紙排出部5に向けて排出させるようにする。また、記録紙作成部10の上部に支持される画像読取り部2は、前記図1に示された装置の場合と同様に、原稿を走査した情報を、デジタル情報として記録紙作成部10に向けて出力する装置として構成している。
【0020】
そして、前記図4に示される画像形成装置1aにおいても、画像読取り部2をヒンジ4を介してリヤ側に揺動させる機構を設けることや、フロントフレーム12を開閉可能に構成することができる。また、前記記録紙作成部10のフロント側に、コントロールパネル11、給紙ユニット20の開口15等を設けることができ、必要に応じて手差しトレイ等をフロントフレーム12に対して配置することも可能である。したがって、前記図4に示される例においても、記録紙作成部10の内部に配置される電子写真方式の各機構に対して、装置のフロント側から、メンテナンス等を行うことができるものとなる。
【0021】
また、本発明の更に他の実施の形態では、図5に示されるような画像形成装置を構成することもできる。
前記図5に示される画像形成装置1bにおいて、記録紙作成部10を含む装置本体の上部には、プラテンカバー3により原稿を押圧保持して、画像の読取りを行う画像読取り部2を配置している。特に、本実施の形態では、前記画像読取り部2と前記画像形成部を内部に有する装置本体とが略同大に構成されているため、装置全体がコンパクトになっている。
また、前記画像読取り部2の下部には、記録紙排出部5の開口を設けている。
さらに、装置本体の下部には、給紙ユニット20を装着して、用紙を装置本体の側部に配置した用紙搬送路を通して、感光体ドラムに形成されたトナー画像を用紙に転写し、そのトナー画像を担持する用紙を定着装置を通して定着し、記録紙排出部5に排出させるようにする。
特に、本実施の形態では、記録紙排出部5の開口は、給紙ユニット20の挿入方向に開放されているため、給紙ユニット20の交換作業と記録紙排出部5からの記録紙の取り出し作業とを同じ側から容易に行うことができる。
【0022】
前記図5に示されるように、装置本体の側部に用紙搬送路と画像形成部とを配置した場合には、開閉フレーム12を開閉してジャムの処理等を行う際、前記図1または図4に示される画像形成装置のように、ジャム処理と、装置のメンテナンスとを装置の正面からのみ行うことはできないことになる。しかし、前記図5に示されるように画像形成装置1bを構成することにより、排出トレイを側部に突出させる画像形成装置に比較して、画像形成装置の占めるスペースを小さくすることができる。さらに、前記画像形成装置1bは、比較的小型に構成することができるので、複写機等の画像形成装置で、用紙搬送路にジャムが発生したり、装置に対するメンテナンスを行う場合には、該装置を移動させることも容易に行い得るものである。したがって、装置本体の側部に配置した開閉フレーム12を開いたりする場合に、若干の不便さがあっても、通常の使用状態では大きな問題とはならない。
【0023】
前記図1または図5に示されるように、画像形成装置の中央部に記録紙排出部5を配置し、該記録紙排出部5に対してフロント側から記録紙の取り出しを行い得るように構成してなる画像形成装置は、電子複写機として用いることの他に、デジタル機能を利用するレーザプリンタやファクシミリとしても用いることができる。例えば、電子複写機とファクシミリの機能を複合した装置を構成する場合には、画像読取り部2に対して原稿を自動的に送る機構を設けると、一般のファクシミリの場合と同様に、多数枚の原稿を連続して送信する機能を持たせることができる。さらに、前記複合機に対して、コンピュータ等の装置との接続機構を設ける場合には、レーザプリンタとしても使用することができる。そして、そのような多機能を持たせた画像形成装置を、コンピュータや他の装置に密接させた状態で配置した場合でも、記録紙をフロント側から取り出すことができ、装置のメンテナンスの作業も、フロント側からのみ行うことができるものとなる。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、記録紙作成部と画像読取り部との間に記録紙作成部から排出された記録紙を収容し且つ前記画像読取り部の略全域に面した記録紙載置面を有する記録紙排出部を形成するように、支持手段にて記録紙作成部に対し画像読取り部を上方に持ち上げて支持し、前記記録紙作成部のうち画像形成部が内部に配置された装置本体と給紙部と、前記画像読取り部とを略同大とし、更に、前記支持手段が前記画像読取り部の両側端部を持ち上げて支持すると共に、前記記録紙排出部の側方両側を囲うように設け、前記画像読取り部及び前記支持手段に囲まれた記録紙取り出しのための開口部を装置前面側に形成するようにしたので、装置の設置スペースの低減を図りながら、記録紙排出部からの記録紙の取出し作業を容易に行うことができると共に、装置全体のコンパクト化を容易に実現することができることに加え、記録紙排出部からの記録紙の脱落を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された画像形成装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係る記録紙作成部の構成を示す拡大説明図である。
【図4】本発明が適用された画像形成装置の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図5】本発明が適用された画像形成装置の更に別の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…画像形成装置、2…画像読取り部、4…ヒンジ、5…記録紙排出部、6…記録紙排出口、10…記録紙作成部、11…コントロールパネル、12…フロントフレーム,開閉フレーム、20…給紙ユニット、23…給紙ローラ、26…手差しトレイ、30…感光体ドラム、31…書き込み装置、32…現像装置、35…定着装置
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-07-06 
出願番号 特願2001-175921(P2001-175921)
審決分類 P 1 651・ 121- ZD (G03G)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 江成 克己  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 井出 和水
伏見 隆夫
登録日 2002-10-04 
登録番号 特許第3356172号(P3356172)
権利者 富士ゼロックス株式会社
発明の名称 画像形成装置  
代理人 成瀬 勝夫  
代理人 成瀬 勝夫  
代理人 中村 智廣  
代理人 小泉 雅裕  
代理人 中村 智廣  
代理人 小泉 雅裕  

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