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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1138288
審判番号 無効2005-80322  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-10-21 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-11-08 
確定日 2006-04-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3556659号発明「食品組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3556659号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由
I.手続の経緯

本件特許3556659号の請求項1乃至2に係る発明は、平成15年3月27日に出願したものであって、平成16年5月21日に特許権設定の登録がなされたところ、これに対して、ホーファー リサーチ リミテッドより平成17年11月8日付けで本件無効審判の請求がなされ、平成18年1月26日付けで被請求人株式会社東洋新薬より答弁書及び訂正請求書が提出されたものである。

II.訂正請求について

1.訂正の内容

(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の【請求項1】に係る記載、
「【請求項1】松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物および平均分子量7,000以下のコラーゲンペプチドを含有する、飲料。」を、
「【請求項1】松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物および平均分子量7,000以下のコラーゲンペプチドを含有する飲料であって、前記プロアントシアニジンが5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンである、飲料。」と訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の【請求項2】を削除する。

(3)訂正事項3
発明の詳細な説明の段落【0008】に係る記載、
「すなわち、本発明は、プロアントシアニジンおよび平均分子量7,000以下のタンパク質分解ペプチドを含有する、食品組成物を提供し、該プロアントシアニジンは、2〜4量体のプロアントシアニジンを含有する。」を、
「すなわち、本発明は、松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物および平均分子量7,000以下のコラーゲンペプチドを含有する飲料であって、前記プロアントシアニジンが5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンである、飲料を提供する。」と訂正する。

(4)訂正事項4
発明の詳細な説明の段落【0009】乃至【0010】に係る記載を削除する。

2.訂正の適否

(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、発明を特定する事項である「プロアントシアニジン」を、これに含まれる事項である「5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジン」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、「このプロアントシアニジンとしては、重合度の低い縮重合体が多く含まれるものが好ましく用いられる。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)が特に好ましい。この重合度が2〜4の縮重合体を、本明細書ではOPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。」(段落【0013】)と、「・・・特に、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、OPCを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンが好ましい。・・・」(段落【0031】)と記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(3)訂正事項3及び4について
上記訂正事項3及び4は、訂正事項1に伴うものであり、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、発明の詳細な説明欄の記載を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項が、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3.むすび

以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、平成15年改正前特許法第134条第5項において準用する平成6年改正前第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.当事者の主張の概要

1.請求人の主張

請求人は、「第3556659号の請求項1乃至2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証乃至甲第11号証を提示し、その理由として、

(1)無効理由1
本件請求項1に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである、

(2)無効理由2
本件請求項2に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第6号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである、

(3)無効理由3
本件請求項1に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号及び第36条第6項第2号の要件を満たしておらず、そして、本件請求項2に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号及び第36条第6項第2号の要件を満たしておらず、また、当業者が実施出来る程度に記載されていないから特許法第36条第4項第1号の要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきである旨主張している。

甲第1号証:特開2002-51734号公報
甲第2号証:特開2001-106634号公報
甲第3号証:カナダ特許公開第2256133号公報
甲第4号証:「Whole Foods」14巻3号(1991年3月)83頁、97〜98頁
甲第5号証:シュビッタース外1名著「21世紀の生体防御物質OPC」フレグランスジャーナル社(平成9年10月30日発行)36頁
甲第6号証:「PHYTOCHEMISTRY」23巻6号(発行日1984年5月14日)1255〜1256頁
甲第7号証:「ジャーナル オブ ケミカル エコロジー」15巻6号(発行日1989年6月)1795〜1810頁
甲第8号証:ホーファー リサーチ リミテッド最高執行責任者副社長 ビクターフェラーリによる「ピクノジェノール」の成分についての陳述書
甲第9号証:平成9年8月26日付夕刊フジ 第10面、11面
甲第10号証:ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー 256巻9号(発行日1981年5月10日)4494〜4497頁
甲第11号証:特許第3556659号公報

2.被請求人の主張

一方、被請求人は、請求人の提出した証拠方法によっては、本件特許を無効にすることができないと主張し、証拠方法として、以下の乙第1乃至3号証を提示している。

乙第1号証:Bu11.Soc.Pharm.Bordeaux、1990年、第129巻、第51頁-第65頁
乙第2号証:特開平8-205818号公報
乙第3号証:特開2005-13208号公報

IV.本件発明

訂正後の本件請求項1に係る発明は、訂正後の特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項に記載された以下のとおりのものである。(以下、「本件発明」という。)
「【請求項1】松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物および平均分子量7,000以下のコラーゲンペプチドを含有する飲料であって、前記プロアントシアニジンが5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンである、飲料。」

V.甲号証の記載事項

本件出願日前に頒布された刊行物である、甲第1号証乃至甲第7号証には以下の技術事項が記載されている

甲第1号証:特開2002-51734号公報
(1-1)【請求項1】コラーゲンに対して反応性を有するコラーゲン反応成分を含有し、酸性乳成分を含まない飲食品に対して、コラーゲンを低分子化処理した低分子コラーゲンペプチドを添加しているコラーゲン添加飲食品。・・・(【特許請求の範囲】)
(1-2)さらに、グレープやザクロの果汁、緑茶や紅茶のエキスのように、タンニン類を多く含む飲食品の場合には、これらタンニン類とコラーゲンとが反応を起こして、白濁や沈澱を生じることがある。したがって、従来は、上記のようなコラーゲンと反応を起こす成分を含んだ食品には、コラーゲンを添加する事をあきらめるか、もしくは、飲食品の透明性などの外観性を犠牲にしたり、安定剤や果汁などの配合成分をコラーゲンとの反応性がないものだけに限定したりしなければならず、飲食品の製造上の制約が多くなってしまっていた。(段落【0005】)
(1-3)飲食品とは、・・・果汁飲料、紅茶飲料を包含する乳不含清涼飲料にも適用できる。・・・飲食品を構成する成分に、コラーゲン反応成分が含まれる。(段落【0008】)
(1-4)コラーゲン反応成分としては、酸性多糖類やタンニン類が挙げられる。・・・タンニン類を多く含む食品素材としては、グレープ、ブルーベリー、ラズベリー、クランベリーを包含する果汁や、緑茶、紅茶を包含する茶系エキス類、赤ワイン等が挙げられる。・・・(段落【0010】)
(1-5)・・・低分子コラーゲンペプチドとして、平均分子量4000以下のものが用いられる。好ましくは、平均分子量3500以下のものを用いる。但し、コラーゲンペプチドを分解していくとアミノ酸(分子量100程度)にまで分解される。コラーゲンペプチドとアミノ酸とは性状に違いがある。本発明では、アミノ酸にまで分解されない程度のコラーゲンペプチドを用いる。具体的には、平均分子量が500以上のものが好ましい。(段落【0012】)
(1-6)・・・〔PH値〕コラーゲン反応成分は、特定のpH環境において、コラーゲンと反応することが多い。したがって、飲食品の製造過程で、コラーゲンとコラーゲン反応成分とが反応を起こし易いpH範囲になることがなければ、本発明の低分子コラーゲンペプチドを使用しなくても問題にはならない。通常のコラーゲンに比べて本発明の低分子コラーゲンペプチドを用いることが有用になるpH範囲として、コラーゲンの等電点よりも低いpH値の場合がある。コラーゲンを等電点よりも低いpH値におくことで、コラーゲン反応成分との反応性が発現する。(段落【0014】)
(1-7)コラーゲンの等電点は、コラーゲンの製造方法によって若干異なるが、多くの場合、PH=4.5〜9.5の範囲である。但し、本発明の低分子コラーゲンペプチドの場合、等電点よりも低いpH範囲であっても、コラーゲン反応成分との間で反応を起こすことはない。したがって、本発明の低分子コラーゲンペプチドを用いることの有用性は、従来技術ではコラーゲンを添加することが出来なかったコラーゲン反応成分を含む酸性飲食品に対しても、コラーゲンを添加できるようになり、配合原料に何ら制限を受けることなく、幅広いコラーゲン強化飲食品を提供できる点にある。(段落【0015】)
(1-8)・・・上記表2の結果から、平均分子量が4000以下のコラーゲンペプチドを使用すれば、製造後30日間が経過しても、レモン風味飲料に特有の濁りを十分に維持でき、沈澱物の発生もほとんどなく、良好な品質を備えたレモン風味飲料を提供できる。勿論、コラーゲンペプチドが添加されていることによる各種の機能向上も達成できた。(段落【0024】)
(1-9)・・・平均分子量が4000以下のコラーゲンペプチドを添加した紅茶飲料は、濁りや沈澱がほとんど発生せず、透明性に優れた良好な品質の紅茶飲料が得られた。勿論、コラーゲンペプチドが添加されていることによる各種の機能向上も達成できた。(段落【0031】)
(1-10)【発明の効果】本発明にかかるコラーゲン添加飲食品は、通常のコラーゲンを添加した場合にはコラーゲンと反応を起こして飲食品の品質性能を損なうコラーゲン反応成分を含有していても、コラーゲンとして、十分に低分子化処理を行った低分子コラーゲンペプチドを添加していることで、コラーゲン反応成分との有害な反応が生じない。その結果、飲食品の品質性能を損なったり、飲食品に配合する材料に大きな制約を受けたりすることなく、コラーゲン添加による各種の機能向上などの利点を享受することができる。・・・(段落【0032】)

甲第2号証:特開2001-106634号公報
(2-1)【請求項1】プロアントシアニジンを含有する植物抽出物を有効成分とする月経困難症治療薬。・・・(【特許請求の範囲】)
(2-2)フランス海岸松樹皮抽出物=FRENCH MARITIME PIN BARK EXTRACTSとは、フランスのボルドー地方の海岸に植生する学名:PINUS PINASTER(FRENCH MARITIME)という松の樹皮からの抽出物である(米国特許第3436407号)。ピクノジェノール(スイスのホーファー・リサーチ社の商品名)として、現在では世界的に広く栄養補助食品として使用されている。フランス海岸松樹皮抽出物は、OPC(オリゴメリックプロアントシアニジン)を主体とした約40種類の有機酸を含む生体フラボノイド複合体である。その薬理機序としては、・・・3)末硝血管拡張作用 4)血小板凝集阻止能(米国特許第4698360号)5)末梢血管抵抗減弱作用・・・また、フランス海岸松樹皮抽出物のもつ薬理効果は多彩で、1)老人の脳血流障害の改善(.Cahn and M.G.Borzeix,Sem.Hop.Paris,1983,59,No.27-28,2031-2034) 2)動脈硬化症による末梢血流障害の改善・・・6)美肌効果・・・(段落【0005】〜【0006】)
(2-3)(フランス海岸松樹皮抽出物について)フランス海岸松樹皮抽出物の抽出法は米国特許第3436407号に詳細に記載されているとおり、抽出法、一般的性状、組成、容量は次のとおりである。(1)抽出法(米国特許第3436407号)粗い粉末にした100kgフランス海岸松樹皮を350lの沸騰水で12時間抽出処理し、かすを絞り、抽出と絞りの合計液量が250lの液を集める。この液を20℃に冷却し濾過する。濾液に塩化ナトリウムを飽和するまで加える。沈澱物を濾過して取り除く。濾液を酢酸エチルで3回、各回とも水槽の1/10量を用いて抽出する。その酢酸エチルを集め、無水硫酸ナトリウム(NaSO4)で乾燥し、減圧下でその量の1/5になるまで蒸留する。次に、物理的に撹拌しながら3倍量のクロロフォルムに注ぐ。プロアントシアニジンが沈澱し、それを濾過して集める。酢酸エチルに再溶解して精製し、クロロフォルム中で新たに沈澱物を得る。最終的にクロロフォルムで洗い、50℃を越えぬ温度で乾燥させる。(段落【0008】)
(2-4)・・・フランス海岸松樹皮抽出物の組成成分は、プロアントシアニジン類80〜85wt%、カテキン及びエピカテキン5wt%、カテキン及びエピカテキンの前駆物質であるカフェイン酸を含む有機酸2〜4wt%、水8wt%以下、夾雑物残部である。(段落【0011】)
(2-5)(4)フランス海岸松樹皮抽出物のプロアントシアニジンの定量 フランス海岸松樹皮抽出物のプロアントシアニジン含有量を評価するため、この物質の特異なコラーゲン親和性を利用する。その抽出物質に含まれる成分で、皮膚のコラーゲンに対して同様な親和性を持つものは、プロアントシアニジンの他にはない。なめし皮産業で奨励されている方法は(タンニンとハイドパウダーを一緒に使う)樹皮抽出物質と置き換えることができる。すなわち、一定量の抽出物を水に溶かし、既知濃度の水溶液をつくる。ハイドパウダーと混合し、その混合物を濾過する。濾過液のアリコット量で、残った固体物質を定量する。調整した溶液の濃度と固体抽出物との差はプロアントシアニジンの合量に相当し、ハイドパウダーにそのまま残る。(【0012】)

甲第3号証:カナダ特許第2256133号公報
(3-1)実施例1 心臓循環機能を最良にするための飲み物
成分:ビタミン:ビタミンC450mg/L〜1500mg/L・・・ミネラル:・・・微量元素:・・・アミノ酸及びその他の重要細胞要素:・・・ピクノジェノール5mg/L〜15mg/L 心臓循環を提供するこの飲料を製造するため、飲料水を基本として使用することができ、これは半透過性膜を圧力ろ過することにより、または蒸留など適当な方法によって清浄化する。(公報第16頁第15行〜第18頁第14行)
(3-2)ピクノジェノールはビオフラボノイド群を含んでおり、さまざまな代謝機能の触媒として重要である。特にピクノジェノールは、血管壁を含む身体の結合組織に作用するビタミンCの安定効果を改善し、さらにピクノジェノールは、抗酸化剤として機能する。(公報第25頁第10〜13行)

甲第4号証:「Whole Foods」14巻3号、1991年3月、83頁、97〜98頁
(4-1)しかしながら、ピクノジェノールは、防護だけでなく、治療にも役立つのである。証明されたピクノジェノールの利点として、以下のことが挙げられる。・毛細血管、動脈及び静脈の強化。・血液循環の改善及び細胞活性の向上。・毛細血管の脆弱性・・・の減少。・・・(83頁左欄下から23〜13行)
(4-2)ピクノジェノールは、実際にはプロアントシアニジンのオリゴマーと単量体の混合物である。混合割合は、プロアントシアニジンのオリゴマー85%と、プロアントシアニジンの単量体8%と、水分7%である。(5)(97頁左欄第2〜7行)
(4-3)皮膚:コラーゲンは、主要な皮膚のタンパク質であり、皮膚のきめ及び弾力性に関与している。ピクノジェノールは、損傷したコラーゲンを復活させ、フリーラジカル及びコラーゲン分解酵素、即ちエラスターゼ及びコラゲナーゼによってコラーゲンがさらに分解されるのを防ぐ。(文献26〜28)ピクノジェノールは、コラーゲン繊維を結合し、より若々しく損傷を受けていない状態に再調整する。・・・(98頁左欄下から24〜8行)

甲第5号証:シュビッタース外1名著「21世紀の生体防御物質OPC」フレグランスジャーナル社(平成9年10月30日発行)36頁
(5-1)・・・原材料の入手と扱いやすさの点で、松の樹皮とブドウの種子が、信頼性の高いOPCの工業原料であることが明らかとなった。・・・(第36頁第15〜17行)

甲第6号証:「PHYTOCHEMISTRY」23巻6号(発行日1984年5月14日)1255〜1256頁
(6-1) 分子量、単量体の立体構造、相対的収斂性に於けるB環酸化パターンを検討した。タンパク沈澱の可能性は、主にプロアントシアニジンポリマー(縮合型タンニン)の大きさが主たる要因であり、一方、プロアントシアニジンオリゴマーは、タンニン酸よりも相対的収斂性は小さい。十分に大きな平均分子量(Mn〜2500)の高分子プロアントシアニジンは、ヘモグロビンの沈澱に同じ効果がある。(1255頁上段要約)
(6-2)これらの結果から、RA(相対的収斂性)に影響を与える主たる要因はMW(分子量)である。Pn(平均重合度)が十分に大きい場合(〜8又は9,即ち平均分子量MW2400‐2700)、縮合タンニンとタンニン酸(平均分子量MW1250±60)は、非常に似通った相対的収斂性RAを示す。(1256頁左欄下から25〜20行)

甲第7号証:「ジャーナル オブ ケミカル エコロジー」15巻6号(発行日1989年6月)1795〜1810頁
(7-1)縮合型タンニンと加水分解型タンニンの何れもが、タンパクと反応して可溶性又は非水溶性の反応物を形成する(ハスラム1979年)。通常の条件下では、タンパクとの反応は非共有結合、水素結合および疎水性結合である(ハーゲルマン、バトラー1978年、1981年、マクマナス等1981年)。生成された反応物は、疎水性反応を妨げる界面活性剤によって、又は高pH値によってフェノール性ヒドロキシル基をイオン化し、その水素結合を壊すことによって解離することが出来る(ハーゲルマン、バトラー1978年、1981年)。縮合型タンニンと加水分解型タンニンの何れも高pH値では酸化し易い。(1798頁19〜26行)
(7-2)タンパク結合分析の各々は、タンニンの前処理の違いによって異なった反応を示す。タンニンがタンパクとの不溶性の複合体を形成する性質は、タンニンの特性(分子量、構造の不均質性)、タンパクの特性(ダリコシル度、アミノ酸構造、分子量)および反応条件(PH値、温度、反応時間、反応物質の相対濃度)などの要素の複合した作用である。(1802頁18〜23行)

VI.対比・判断

本件発明は、飲料に、松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られた、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物および平均分子量7,000以下のコラーゲンペプチドを含有せしめることにより、プロアントシアニジンとコラーゲンペプチドとの凝集沈殿が生ずることなく、そのため、プロアントシアニジンとコラーゲンペプチドに由来する肌質の改善効果や血流改善効果にすぐれた飲料を得るものである。
これに対して、甲第1号証刊行物(以下、「引用例」という。)には、上記記載事項から、「緑茶や紅茶のエキスのようにタンニン類を多く含む、コラーゲンに対して反応性を有するコラーゲン反応成分を含有する飲料に、コラーゲンを低分子化処理した平均分子量4000以下の低分子コラーゲンペプチドを添加することにより、コラーゲン反応成分との有害な反応が生じず、その結果、飲食品の品質性能を損なったり、飲食品に配合する材料に大きな制約を受けたりすることなく、コラーゲン添加による各種の機能向上などの利点を享受することができる。」ことが記載されているといえる。(以下、「引用例発明」という。)
本件発明と、引用例発明とを対比すると、技術常識を参酌すれば、前者の「プロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物」は、「コラーゲンに対して反応性を有するコラーゲン反応成分」といえるから、両者は、「コラーゲンに対して反応性を有するコラーゲン反応成分と平均分子量4,000以下のコラーゲンペプチドを含有せしめた飲料。」である点で一致し、「コラーゲンに対して反応性を有するコラーゲン反応成分」に関し、前者が「松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られた5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物」と特定しているのに対して、後者にそのような特定がない点で相違している。
そこで、この相違点について検討する。
引用発明は、上記記載事項(1-2)のとおり、緑茶や紅茶のエキスのように、タンニン類を多く含む飲食品の場合には、これらタンニン類とコラーゲンとが反応を起こして、白濁や沈澱を生じることを課題として、それを解決するために、平均分子量4,000以下のコラーゲンペプチドを含有せしめたものである。
ここで、本件明細書の段落【0002】に「プロアントシアニジンは、フラバン-3-オールおよび/またはフラバン-3,4ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる縮合型タンニンであり、古くから肌の収斂性を高め、整肌効果を目的として使用されていた。」と記載されているように、プロアントシアニジンは重合度が2以上の縮重合体からなる縮合型タンニンである。
また、本件明細書の段落【0013】或いは甲第5号証に記載のとおり、プロアントシアニジンは、果実、樹皮、緑茶、紅茶など、あらゆる植物に見出されること、松の樹皮、ブドウ種子は、プロアントシアニジンを豊富に含有していることは周知のことであり、引用例の実施例である紅茶も、松樹皮抽出物と同様にプロアントシアニジンを多く含んでいる。
ところで、甲第3号証にはピクノジェノールを飲料に配合して心臓循環機能を最良にすることが記載されているが、上記記載事項(2-2)、(2-4)或いは(4-2)のとおり、ピクノジェノール(スイスのホーファー・リサーチ社の商品名)は、末梢血管拡張作用を有するプロアントシアニジンのオリゴマーと単量体の混合物であるフランス海岸松樹皮抽出物であるから、甲第3号証には、オリゴメリックプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物を有効成分として飲料に配合することが記載されているといえる。
そして、プロアントシアニジンは縮合型タンニンであり、上記記載事項(2-5)のとおり、プロアントシアニジンが特異なコラーゲン親和性を有することが知られており、また、上記記載事項(2-2)或いは(4-3)のとおり、ピクノジェノール即ちプロアントシアニジンが損傷したコラーゲンを復活させ、コラーゲンの分解を防いで、美肌効果を有するものであることが知られているのだから、引用例発明において、コラーゲンに対して反応性を有するコラーゲン反応成分として、プロアントシアニジンのオリゴマーと単量体の混合物である松樹皮抽出物を使用することに困難性は見出せず、それを妨げる特段の理由も見出せない。
その際に、甲第6乃至7号証に記載されたように、重合度の高いプロアントシアニジンは、重合度の低いプロアントシアニジンよりもタンパクと反応して沈澱を生じやすいことは、プロアントシアニジンの分野では通常の知識であったから、タンパク質であるコラーゲンと併用するプロアントシアニジンとしては、重合度の高いプロアントシアニジンの割合を少なくして、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合とすることは当業者が適宜なし得るところであり、それにより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。
また、松樹皮を抽出する際に、松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出することも、上記記載事項(2-3)のとおり、通常のフランス海岸松樹皮の抽出方法にすぎない。
そして、本件発明の肌質の改善効果や血流改善効果にすぐれているという効果も、プロアントシアニジンとコラーゲンペプチドとの凝集沈殿が生ぜずに、それぞれの成分が、上記載事項(1-10)、(2-2)、(4-1)及び(4-3)に記載された機能を奏するものにすぎず、本件発明の効果は当業者が予期しうる範囲内のものである。

被請求人は、平成18年1月26日付答弁書において、乙第1乃至3号証を提出して、「(1)『松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジン』は、他の植物由来のプロアントシアニジンと構造および組成も異なり、得られる効果も全く異なる、すなわち、由来する植物、抽出方法が異なれば得られるプロアントシアニジンの構造および組成も異なり、得られる効果も全く異なる。(2)甲1の解決する手段は、『コラーゲン反応成分を含有する飲食品に、コラーゲンの等電点よりも低いpHにおいて、低分子コラーゲンを添加すること』にあり、本件特許発明の課題を解決する手段は、『特定の組成を有するプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物に分子量7000以下のコラーゲンを添加する』ことであるから、甲1の課題を解決する手段とは異なり、本件発明は酸性食品を前提とせず、かつpHをコラーゲンの等電点より低くするという前提がないから、分子量7000以下と分子量4000以下との相違点は、進歩性を付与する相違点である。」旨主張しているので検討する。

主張(1)について
「松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジン」は、甲第2号証記載のとおり周知のものであり、また、「5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合」とすることにより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもないから、被請求人の主張は採用できない。
また、本件明細書の表1には、5量体以上のプロアントシアニジンの割合を少なくすれば沈殿・懸濁が少なくなることしか示されておらず、本件明細書及び平成18年1月26日付答弁書等を検討しても、本件発明の「松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジン」は、コラーゲンと併用するプロアントシアニジンとして重合度の高いプロアントシアニジンの割合を少なくして、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合としたものにすぎないといわざるを得ない。

主張(2)について
本件発明と引用例発明は、「平均分子量4,000以下のコラーゲンペプチドを含有せしめる」点でコラーゲンの分子量範囲が重複するからこの点は相違点とはいえない。
また、本件発明において飲料のpHについては何ら記載されていないので、本件発明の飲料のpH範囲と沈殿の生成との関係は不明であるが、上記記載事項(2-4)によれば、フランス海岸松樹皮抽出物は、有機酸2〜4wt%含有するものであるから、本件発明の飲料もある程度酸性になっているものと考えられる。
また、甲第1号証には、上記記載事項(1-7)に「コラーゲンの等電点は、コラーゲンの製造方法によって若干異なるが、多くの場合、PH=4.5〜9.5の範囲である。但し、本発明の低分子コラーゲンペプチドの場合、等電点よりも低いpH範囲であっても、コラーゲン反応成分との間で反応を起こすことはない。したがって、本発明の低分子コラーゲンペプチドを用いることの有用性は、従来技術ではコラーゲンを添加することが出来なかったコラーゲン反応成分を含む酸性飲食品に対しても、コラーゲンを添加できるようになり、配合原料に何ら制限を受けることなく、幅広いコラーゲン強化飲食品を提供できる点にある。」と記載されているように、引用例発明は、pH範囲に関係なく、幅広いコラーゲン強化飲食品を提供できる点を課題とするものであるから、本件発明と前提、課題や解決手段が異なるとまではいえないし、この記載がコラーゲン反応成分として「松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジン」を選定する上での阻害要因となるとまではいえないので、被請求人の主張は採用できない。

したがって、本件発明は本件特許の優先日前に頒布された甲第1号証乃至甲第7号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VII.むすび

以上のとおり、本件発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
食品組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物および平均分子量7,000以下のコラーゲンペプチドを含有する飲料であって、
前記プロアントシアニジンが5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンである、飲料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロアントシアニジンを含有する食品組成物に関し、さらに詳細には、優れた肌質の改善効果を有する食品組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロアントシアニジンは、フラバン-3-オールおよび/またはフラバン-3,4ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる縮合型タンニンであり、古くから肌の収斂性を高め、整肌効果を目的として使用されていた。近年、プロアントシアニジンは、抗酸化作用や美白効果などの種々の活性を有することから、食品や化粧品への応用が図られている(特許文献1および2)。例えば、タンパク質を配合した化粧料にも応用されている(特許文献3〜6)。また、特に溶液中におけるタンニンとタンパク質の安定性を高める種々の改良もなされている(特許文献7)。
【0003】
一方、プロアントシアニジンは、タンパク質との結合能力が高い性質を持つため、ゼラチン高融点ゲルの製造やコラーゲンの架橋剤としても用いられてきている(特許文献8および9)。
【0004】
しかし、プロアントシアニジンはタンパク質との結合能力が極めて高いため、プロアントシアニジンの抽出方法や植物種などによっては、タンパク質と結合して凝集沈殿や懸濁を生じる。そのため、製剤化が困難なだけでなく、コラーゲンやプロアントシアニジンが沈殿し、飲食物の製造工程における損失などが起こり、それぞれの有する生体への効果が非常に低下するという問題から、食品への応用範囲が限られていた。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61-16982号公報
【特許文献2】
特開平2-134309号公報
【特許文献3】
特開平11-75708号公報
【特許文献4】
特開2000-60482号公報
【特許文献5】
特開平6-336423号公報
【特許文献6】
特開2002-238497号公報
【特許文献7】
特開2002-51734号公報
【特許文献8】
特開平2-163046号公報
【特許文献9】
特開2001-8634号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プロアントシアニジンによる生体への効果が損なわれず、さらにプロアントシアニジンが有するタンパク質の収斂性に関する問題を解決した食品組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、驚くべきことに、2〜4量体のプロアントシアニジンと一定の分子量のペプチドとを組み合わせることによって、タンパク質の凝集沈殿が起こらず、その結果、それぞれの効果が相殺されずに得られることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、松樹皮を水または有機溶媒、あるいは水および有機溶媒の組み合わせを用いて抽出して得られたプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物および平均分子量7,000以下のコラーゲンペプチドを含有する飲料であって、前記プロアントシアニジンが5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンである、飲料を提供する。
【0009】
(削除)
【0010】
(削除)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の食品組成物について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。
【0012】
本発明の食品組成物に用いられるプロアントシアニジンとは、フラバン-3-オールおよび/またはフラバン-3,4-ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。
【0013】
このプロアントシアニジンとしては、重合度の低い縮重合体が多く含まれるものが好ましく用いられる。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)が特に好ましい。この重合度が2〜4の縮重合体を、本明細書ではOPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。プロアントシアニジン、特にOPCは、具体的には、松、樫、山桃などの樹皮、ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子、大麦、小麦、大豆、黒大豆、カカオ、小豆、トチの実の殻、ピーナッツの薄皮、イチョウ葉などに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶にも、OPCが含まれることが知られている。OPCは、ヒトの体内では、生成することのできない物質である。
【0014】
本発明の食品組成物に含有されるプロアントシアニジンとしては、上記の樹皮、果実もしくは種子の抽出物のような食品原料を使用することができる。特に、松樹皮の抽出物を用いることが好ましい。松樹皮は、プロアントシアニジンの中でもOPCに富むため、プロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。
【0015】
以下、OPCを豊富に含む松樹皮の抽出物を例に挙げて、プロアントシアニジンの調製方法を説明する。
【0016】
松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮抽出物が好ましい。
【0017】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、プロアントシアニジン、有機酸、ならびにその他の生理活性成分などを含有し、その主要成分であるプロアントシアニジンに、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0018】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には、温水または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、および1,1,2-トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0019】
松樹皮からプロアントシアニジンを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0020】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0021】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0022】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n-ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、得られた抽出流体で超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類(後述)などの目的とする被抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
【0023】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0024】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
【0025】
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0026】
本発明の食品組成物に用いられる松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法により調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
【0027】
フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和水溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mlで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液を合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0028】
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mlを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mlに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、2〜4量体のOPCを20重量%以上含み、かつカテキン類を5重量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物が得られる。
【0029】
上記松樹皮のような原料植物に由来する抽出物は、OPCを乾燥重量換算で好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上含有する。このようにOPCを高い割合で含有する原料として、松樹皮抽出物が好ましく用いられる。
【0030】
なお、上記のように水やエタノールを用いて植物体から抽出した抽出物中には、5量体以上のプロアントシアニジンも含有するが、プロアントシアニジンの極性溶媒への溶解度から、そのほとんどは10〜20量体以下である。
【0031】
上記松樹皮抽出物のようにOPCを含有するプロアントシアニジンは、コラーゲンペプチドと凝集沈殿や懸濁を生じにくい。OPCを多く含有するほど沈殿は生じにくく、通常は20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有するプロアントシアニジンが用いられる。特に、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、OPCを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンが好ましい。5量体以上のプロアントシアニジンが含有されているにもかかわらず、凝集沈殿が起こらない理由は明らかではないが、上記所定の比率以上でOPCを含有する場合は、プロアントシアニジンとタンパク質との凝集沈殿や懸濁を防止することができる。
【0032】
上記植物抽出物には、プロアントシアニジン、特にOPCとともにカテキン(catechin)類が上記原料植物抽出物中に5重量%以上含まれていることが好ましい。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン-3-オールの総称である。カテキン類としては、(+)-カテキン、(-)-エピカテキン、(+)-ガロカテキン、(-)-エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなどが知られている。上記松樹皮のような原料植物由来の抽出物からは、狭義のカテキンといわれている(+)-カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)-カテキンまたはガロカテキンの3-ガロイル誘導体が単離されている。カテキン類には、発癌抑制作用、動脈硬化予防作用、脂肪代謝異常の抑制作用、血圧上昇抑制作用、血小板凝集抑制作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、腸内細菌叢正常化作用、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用などがあることが知られている。カテキン類には、血糖の上昇を抑制する抗糖尿病効果があることが知られている。カテキン類は、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、OPCを活性化する性質があり、OPCとともに摂取することによって、OPCの作用を増強する。
【0033】
カテキン類は、上記原料植物抽出物に含まれていても、タンパク質と反応せず、そしてOPCの溶解性や機能を向上させるため、プロアントシアニジン1重量部に対し、0.1重量部以上含有されていることが好ましい。より好ましくは、OPCを20重量%以上含有する原料植物油出物に、カテキン類が5重量%以上含有されるように調製される。例えば、松樹皮抽出物のカテキン類含量が5重量%未満の場合、5重量%以上となるようにカテキン類を添加してもよい。カテキン類を5重量%以上含有し、かつOPCを20重量%以上含有する松樹皮抽出物を用いることが最も好ましい。
【0034】
プロアントシアニジン、特にOPCは、上述のように抗酸化物質であるため、ガン・心臓病・脳血栓などの成人病の危険率を低下する効果、関節炎・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の改善効果などを有することが知られている。
【0035】
さらにOPCは、抗酸化作用のほか、口腔内のバクテリア増殖を抑制してプラーク(歯こう)を減少させる効果、血管の弾力性を回復させる効果、肌質を改善させる効果、コラーゲンの増強効果、高脂血症改善効果、血液中でのリポたんぱくが活性酸素によりダメージを受けるのを防止して、損傷した脂肪が血管の内壁に凝集し、コレステロールが付着することを防止する効果、活性酸素によって分解されたビタミンEを再生させる効果、ビタミンEの増強剤としての効果などを有することが知られている。この中でも、血管の弾力性を回復させる効果により血流が改善され得る。さらにコラーゲンの増強効果との相乗作用によって、肌質も改善され得る。
【0036】
本発明の食品組成物は、プロアントシアニジンを、好ましくは組成物中に乾燥重量換算で0.00001重量%〜50重量%、より好ましくは0.001重量%〜40重量%、さらに好ましくは0.01重量%〜20重量%含有する。
【0037】
本発明の食品組成物のもう一つの必須成分は、タンパク質を分解して得られる平均分子量が7,000以下のペプチド(本明細書において、タンパク質分解ペプチドという)である。タンパク質分解ペプチドは、有機合成によって得られたペプチドであってもよい。タンパク質分解ペプチドとしては、各種の動植物性タンパク質を酸、アルカリ、または酵素を用いて分解したものであれば特に限定されるものではない。原料となるタンパク質としては、例えば、牛、豚、鶏などの畜肉類、魚類、獣乳、卵などに由来する動物性タンパク質;例えば、大豆、小麦、トウモロコシ、えんどう豆などに由来する植物性タンパク質が挙げられる。特に、原料タンパク質としてはコラーゲンが好ましく、そしてタンパク質分解ペプチドとしては、その分解物であるコラーゲンペプチドが最も好ましい。
【0038】
コラーゲンは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質であり、骨、腱、皮膚、血管壁などに多く含まれる。分子内に1または複数の3重らせん構造を有し、構成するポリペプチド鎖のアミノ酸配列が異なる種々のタイプが存在する。コラーゲンの変性物であるゼラチンは、コラーゲンを含む原料を温(熱)水抽出することにより得られる分子量30万から数万程度の水溶性タンパク質であり、アルカリ処理ゼラチン(等電点4.8〜5.3)と酸処理ゼラチン(等電点7〜9)とがある。
【0039】
コラーゲンまたはゼラチンからのコラーゲンペプチドの具体的な調製方法を、以下に説明する。まず、牛、豚などの皮または骨を、アルカリ溶液に2〜3ヶ月浸漬するアルカリ処理または希塩酸などに短期間浸漬する酸処理を施して、原料に含まれる不純物を除去し、かつ抽出を容易にするための前処理を行う。例えば、原料が牛骨である場合は、骨の中にリン酸カルシウムなどの無機質が含まれているため、予め希塩酸に漬けて無機質を除去し、これを温(熱)水抽出することによりゼラチンを得る。温(熱)水抽出は、一般には、最初の抽出温度は50〜60℃で、2回目以降は抽出温度を徐々に上げ、最終的には煮沸させる。次いで、得られたゼラチンを、通常用いられる酸あるいは酵素で加水分解することにより、コラーゲンペプチドを得ることができる。
【0040】
こうして得られたコラーゲンペプチドは、平均分子量が約7,000以下、好ましくは約6,000以下である。このような分子量を有するコラーゲンペプチドのうち、OPCとともに溶液中で安定に溶解し、そしてタンパク質の沈殿を防止するという効果を得るためには、分子量が約200以上、好ましくは約3,000以上、より好ましくは約5,000以上のペプチドを用いる。平均分子量が7,000より大きくなると、高分子のプロアントシアニジン(10〜30量体)が結合し、沈殿や懸濁を生じやすくなる。
【0041】
このような分子量のコラーゲンペプチドは、市販のものを容易に入手することができる。例えば、動物性コラーゲン由来のコラーゲンペプチドとしては、ニッピペプタイドPBF、ニッピペプタイドPRA(いずれも(株)ニッピ製)、SCP-5000、SCP-3100(いずれも新田ゼラチン(株)製)、コラーゲンペプチドDS(協和ハイフーズ株式会社製)、ファルコニックスCTP(一丸ファルコス株式会社製)などが挙げられる。このような動物由来のコラーゲンペプチド以外では、動物性コラーゲンとアミノ酸組成が類似しているものが好ましく、例えば、コラーゲン類似ペプチドとして、ニンジン(Daucus carota L.)由来ペプチドが挙げられる。
【0042】
本発明の食品組成物は、タンパク質分解ペプチド、好ましくはコラーゲンペプチドを、組成物中に乾燥重量換算で好ましくは0.00001重量%〜90重量%、より好ましくは0.0001重量%〜50重量%含有する。
【0043】
本発明の食品組成物には、上記プロアントシアニジンおよびタンパク質分解ペプチド以外に、医薬部外品、化粧料などに通常使用される他の成分を、該組成物の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような成分としては、例えば、水、他の薬効成分、他の油剤、保湿剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、吸収促進剤、香料、色素、保存剤、増粘剤、キレート剤、防腐防黴剤などを挙げることができる。ここで、他の薬効成分としては、活性酸素除去剤、抗酸化剤、消炎鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、止痒剤、殺菌剤、ビタミン剤、ホルモン剤などが挙げられる。
【0044】
また、プロアントシアニジンの安定性を高める目的で、酸化防止剤を添加しても良い。これにより、体内のタンパク質や脂質の酸化を防止し、肌質を改善および保護する効果を得ることができる。
【0045】
酸化防止剤としては、ビタミンAなどのカロテノイド類、ビタミンB類、アスコルビン酸、ビタミンE、これらの誘導体またはこれらの塩、L-システインおよびこれらの誘導体やその塩、リボフラビン、SOD、マンニトール、トリプトファン、ヒスチジン、ケルセチン、没食子酸およびその誘導体、茶抽出物、およびグルタチオン酵母抽出物などの抽出物が挙げられる。
【0046】
この中でも、アスコルビン酸は、プロアントシアニジンの安定性を高めるだけでなく、肌へ相乗的に効果を発揮し、肌質の改善効果(例えば、ハリやツヤが良くなる効果)および血管保護効果も高める。アスコルビン酸を添加する場合は、プロアントシアニジンに対して、重量比で、好ましくは1:0.1〜50、より好ましくは1:0.2〜20となるように、本発明の食品組成物に含有され得る。なお、アスコルビン酸の量は、上記比より多くてもかまわない。
【0047】
本発明の食品組成物は、通常用いられる方法により、プロアントシアニジンおよびタンパク質分解ペプチドと他の成分とを混合して調製することができ、錠剤、粉末、液体の形態で、飲料などの食品として使用できる。
【0048】
例えば、本発明の食品組成物は、、必要に応じて、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などの添加剤と混合され得る。例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、卵殻カルシウムなどのカルシウム、キトサン、レシチン、クロレラ末、アシタバ末、モロヘイヤ末などの栄養成分としての食品添加物;ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖液などの調味料が混合され得る。そしてこれらは、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいは粉末状、顆粒状、茶状、ティーバッグ状、飴状、液体、ペースト状などの形態に成形され得る。これらは、形状または好みに応じて、そのまま飲食してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良い。
【0049】
本発明の食品組成物の一日の摂取量は、特に限定されず、好ましくは、プロアントシアニジンとして0.02g〜1gの範囲内である。この範囲内のプロアントシアニジンに対して適切なタンパク質分解ペプチドの量は、好ましくは0.04g〜0.5gである。
【0050】
本発明の食品組成物は、適切な量を摂取した場合、肌質の改善効果および血流改善効果を有する。特に、OPCが乾燥重量換算で20重量%以上含有される抽出物をプロアントシアニジンとして用いた場合、特に優れた効果が得られる。このように、本発明の食品組成物は、健康食品として利用され得る。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0052】
(プロアントシアニジンの調製)
松樹皮抽出物(2〜4量体:40重量%、5量体以上:8.7重量%、カテキン:5.1重量%、商標名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)20gを、Sephadex LH-20(ファルマシアバイオテク株式会社製)に供して分離し、乾燥粉末重量で7.6gの2〜4量体および1.6gの5量体以上のプロアントシアニジンを回収した。得られた5量体以上のプロアントシアニジン1gを、上記の松樹皮抽出物の粉末2gと混合し、5量体以上のプロアントシアニジンを多く含む松樹皮抽出物(2〜4量体:27重量%、5量体以上:39重量%、カテキン1.7重量%)を調製した。これらの松樹皮抽出物を、最終濃度が0.2重量%となるように水溶液へ溶解した。
【0053】
なお、Sephadex LH-20による分離は、以下の条件で2回行った。まず、水で膨潤させたSephadex LH-20をカラム体積で500mLとなるように50×500mmのカラムに充填し、500mLのエタノールで洗浄した。上記松樹皮抽出物10gを200mLのエタノールに溶解し、これをカラムに通液して吸着させた後、100〜80%(v/v)エタノール-水混合溶媒でグラジエント溶出し、100mLずつ分取した。各画分について、シリカゲルクロマトグラフィー(TLC)により、2〜4量体のOPCの各標品(2量体:プロアントシアニジンB-2(Rf値:0.6)、3量体:プロアントシアニジンC-1(Rf値:0.4)、4量体:シンナムタンニンA2(Rf値:0.2))を指標として、OPCの溶出を検出した。TLCの条件は、以下のとおりである:
TLC:シリカゲルプレート(Merck & Co.,Inc.製)
展開溶媒:ベンゼン/ギ酸エチル/ギ酸(2/7/1)
検出試薬:硫酸およびアニスアルデヒド硫酸
サンプル量:各10μL
【0054】
OPCが検出された画分を集め、凍結乾燥して粉末を得た。次いで、OPCが検出されなくなったカラムに、50%(v/v)水-アセトン混合溶媒1000mLを通液し、5量体以上のプロアントシアニジンを溶出させ、回収した画分を凍結乾燥させて粉末を得た。
【0055】
(コラーゲンおよびコラーゲンペプチドの調製)
コラーゲン(平均分子量30万:株式会社高研製)、ニッピペプタイドPA-100(平均分子量10,000:株式会社ニッピ製)、コラーゲンペプチドDS(平均分子量7,000:協和ハイフーズ社製)、SCP-5000(平均分子量5,000:新田ゼラチン株式会社製)、ファルコニックスCTP(平均分子量3,000:一丸ファルコス株式会社製)、ニッピペプタイドPA-10(平均分子量1,000:株式会社ニッピ製)、およびグリシン(分子量75:和光純薬工業株式会社製)を用いて、これらのコラーゲン、コラーゲンペプチド、またはアミノ酸が10.0重量%となるように水溶液を各10mLずつ調製した。
【0056】
(実施例1:凝集沈殿評価)
上記のように調製したコラーゲン、コラーゲンペプチド、またはアミノ酸溶液各1mLに、上記プロアントシアニジン溶液1mLを混合し、1週間室温で放置し、1週間後に沈殿および懸濁の有無を目視により観察した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1からわかるように、5量体以上のプロアントシアニジンと分子量のコラーゲンペプチドまたはコラーゲンとの混合液では、いずれも懸濁または沈殿が観察された。これに対して、2〜4量体のプロアントシアニジンと分子量7,000以下のコラーゲンペプチドまたはアミノ酸との混合液では、ほとんど懸濁が見られなかった。2〜4量体の割合が多いプロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物では沈殿が見られなかった。また、平均分子量300,000のコラーゲンを用いた場合は、ゲル化した固形分が析出した。このように、2〜4量体のプロアントシアニジン(OPC)またはプロアントシアニジンとしてOPCを多く含む松樹脂抽出物は、分子量7,000以下のコラーゲンペプチドと懸濁または沈殿を生じず、混合物溶液として安定であることがわかった。
【0059】
(実施例2:皮膚改善効果)
上記松樹皮抽出物の最終濃度が0.2重量%およびコラーゲンペプチドの最終濃度が5重量%となるように、表2に記載の組み合わせで水溶液を調製し、滅菌のために0.45μmフィルターで濾過して、飲料1〜3を得た。なお、濾過前の飲料3は、やや懸濁が見られた。
【0060】
【表2】

【0061】
3週齢のモルモット(日本エスエルシー株式会社)に、一般の固形飼料(RC4;オリエンタル酵母株式会社)を与えて1週間馴化させた後、総無作為化法により1群5匹ずつ4群に割り振った。各群のモルモットに、上記のように調製した飲料1〜3を、1日当たり1mL、ゾンデを用いて28日間強制経口投与した。対照として、精製水を投与した群を設けた。試験期間中、飼料および水は自由摂取させた。最終投与終了後に、被験動物の背部皮膚中央部を剥離摘出し(3cm×3cm)、60℃にて一晩乾燥させた。乾燥させた皮膚を破砕し、その50mgを5mLの6M塩酸に添加し、ヒーティングブロックを用いて110℃にて24時間加熱して加水分解した。次いで、この加水分解物について、クロラミンT法により、ヒドロキシプロリン(Hyp)含量を測定した。Hypは、コラーゲンに多く含まれており、Hyp含量が高ければ、コラーゲンが生成されていることを示す指標となる。結果を図1に示す。
【0062】
図1からわかるように、飲料1〜3を投与した群の方が、わずかではあるがHyp量が多かった。このことは、投与群の方が、皮膚中のコラーゲン量が多く、皮膚に新陳代謝が促進されたと思われる。
【0063】
(実施例3:血流改善効果)
20〜50歳の健常人を1群20人の4群にランダムに割り振った。まず、摂取前に血流量を測定し、次いで、被験者に上記飲料1〜3または水を200mL摂取させ、摂取後1時間後に再度血流量を測定した。血流量は、血流計(レーザー血流画像化装置PIM II;Sweden Permied社)を用いて右前腕部の皮下の血流量を測定した。結果を表3に示す。表の値は、平均値±標準誤差であり、数値が大きいほど、血流量が多いことを示す。
【0064】
【表3】

【0065】
表3に示すように、飲料1〜3はいずれも、血流量が増加しており、血流改善効果が見られた。また、飲料1および2の方が、飲料3よりも血流量が多くなっていることから、凝集沈殿や懸濁によってプロアントシアニジンの効果が相殺されることなく十分に発揮されていることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
本発明の食品組成物は、プロアントシアニジンとタンパク質分解ペプチドとの凝集沈殿が生じにくいため、それぞれの有する作用・効果が損なわれることなく発揮され得る。そのため、例えば、プロアントシアニジンおよびコラーゲンに由来する肌質の改善効果や血流改善効果が、従来のものよりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】
各飲料を投与した群のモルモットにおける、皮膚のHyp量を示すグラフである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-02-21 
結審通知日 2006-02-24 
審決日 2006-03-07 
出願番号 特願2003-87732(P2003-87732)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A23L)
最終処分 成立  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
種村 慈樹
登録日 2004-05-21 
登録番号 特許第3556659号(P3556659)
発明の名称 食品組成物  
代理人 南條 博道  
代理人 長塚 俊也  
代理人 丸山 敏之  
代理人 南條 博道  
代理人 宮野 孝雄  
代理人 北住 公一  

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