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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1138373
審判番号 不服2004-1242  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-12-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-15 
確定日 2006-06-15 
事件の表示 特願2000-163100「ドアハンドル内蔵アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月14日出願公開、特開2001-345615〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成12年5月31日を出願日とする出願であって,平成15年12月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同16年1月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年2月16日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
平成16年2月16日付けの手続補正(以下,「本願手続補正」という。)は,特許法第17条の2第1項第3号に該当する補正であって,平成15年11月17日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲である,
「【特許請求の範囲】
【請求項1】フェライトが内部に配設され,外周にコイルが巻かれた樹脂性のボビンが,開口部を有する金属性のドアハンドル内に配設され,前記コイルに給電がなされることによりアンテナとして機能するドアハンドル内蔵アンテナにおいて,
前記ボビンの一側面に前記ドアハンドルの長手方向に沿う端子を設け,該端子の長手方向における一端で前記コイルの端部と接続が成され,他端で外部から前記コイルへの給電がなされるようにしたことを特徴とするドアハンドル内蔵アンテナ。
【請求項2】前記ボビンを樹脂性のケースに収めて固定し,ポッティングを施したことを特徴とする請求項1に記載のドアハンドル内蔵アンテナ。
【請求項3】前記ボビンの一側面とは反対の他側面の一端にフランジを設け,該フランジと前記端子により共振容量を挟持したことを特徴とする請求項2に記載のドアハンドル内蔵アンテナ。
【請求項4】前記端子には外部から前記コイルに対して給電を行う接続点を設け,該接続点を前記ドアハンドルを操作時に回動範囲が後方に比べて少ないドアハンドル前方に集中させたことを特徴とする請求項3に記載のドアハンドル内蔵アンテナ。
【請求項5】前記端子の前記他端の端部を段部形状として,前記共振容量を段部にて電気的に固定したことを特徴とする請求項4に記載のドアハンドル内蔵アンテナ。」(以下,「補正前の特許請求の範囲」という。)を,
本願手続補正により,
「【特許請求の範囲】
【請求項1】フェライトが内部に配設され,該フェライトに対して第1方向に第1コイルおよびリンクコイルが巻かれ,外周に第2コイルが第2方向に巻かれた直方体形状の樹脂性のボビンが,開口部を有する金属性のドアハンドル内に配設され,前記第1コイルと前記第2コイルのいずれかに給電がなされるアンテナであって,
前記第1コイルと接続される第1共振容量とにより第1共振回路を形成する第1アンテナと,
前記リンクコイルと前記第2コイルが直列接続された状態で,第2共振容量が接続されて第2共振回路を形成する第2アンテナとを一体にしたドアハンドル内蔵アンテナにおいて,
前記ボビンの一側面に前記ボビンの長手方向に延在する一対の第1端子対および該第1端子対より外方に一対の第2端子対を設け,前記第1端子対の一端に第1コイルを接続すると共に,前記第2端子対の一端に前記第2コイルおよび前記リンクコイルをそれぞれ接続して,前記ボビンから延在した前記第2端子対の他端から給電がなされるようにし,前記ボビンと一体となった前記第1アンテナおよび前記第2アンテナを前記ドアハンドルのグリップ部に配設したことを特徴とするドアハンドル内蔵アンテナ。
【請求項2】前記ボビンを樹脂性のケースに収めて固定し,該ケース内の前記ボビン,前記第1端子対および第2端子対にポッティングを施したことを特徴とする請求項1に記載のドアハンドル内蔵アンテナ。
【請求項3】前記ボビンの一側面とは反対の他側面の一端にフランジを設け,前記ボビンの長手方向の端部にて,前記ボビンから延在した前記第1端子対および第2端子対と,前記フランジとにより前記第2共振容量を挟持したことを特徴とする請求項2に記載のドアハンドル内蔵アンテナ。
【請求項4】前記第2端子対の他端には外部からハーネスを介して給電を行う接続点を設け,前記ドアハンドルを操作時に可動量が少ないドアハンドル前方に前記接続点を集中させたことを特徴とする請求項3に記載のドアハンドル内蔵アンテナ。
【請求項5】前記第1端子対および第2端子対には,前記長手方向において前記第2共振容量の横に段部が形成され,該段部は給電が成される第2端子対に形成された段部と,前記第2共振容量と電気的に固定される第1端子対に形成された段部とで高さが異なることを特徴とする請求項4に記載のドアハンドル内蔵アンテナ。」(以下,「補正後の特許請求の範囲」という。)と,補正するものである。

(ア)この手続補正によれば,「端子」の「方向」に関して,補正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記ボビンの一側面に前記ドアハンドルの長手方向に沿う端子」と記載されていたものを,補正後の特許請求の範囲の請求項1では,「前記ボビンの一側面に前記ボビンの長手方向に延在する」と補正しているが,補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載には,「ボビン」と「ドアハンドル」の間の方向関係が何ら規定されていないから,「端子」が「ドアハンドルの長手方向に沿う」旨の発明を特定するために必要な事項が削除されたことになる。したがって,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは明らかであって,特許法第17条の2第4項各号の規定に適合しない。
(イ)補正後の特許請求の範囲の請求項3によれば,「第2共振容量」はドアハンドル内蔵アンテナ内に載置されていることになるが,この請求項3は,同請求項1に係る発明を引用して記載されたものであるから,結果として,「第2共振容量」は第2端子対を経由して,給電されることになる。しかし,本願出願当初の明細書又は図面の何処にも,ドアハンドル内蔵アンテナ内の共振容量が第2端子対を経由して給電されるとは,記載も,示唆もされていない。したがって,特許法17条の2第3項の規定に違反するものである。
(ウ)補正後の特許請求の範囲の請求項5は同請求項4を引用して記載され,同請求項4は同請求項3を引用して記載され,同請求項3は同請求項2を引用して記載され,そして,同請求項2は同請求項1を引用して記載されているから,同請求項5は,最終的には,請求項1を引用している。しかし,同請求項5の記載によれば,第2共振容量と第1端子対が電気的に固定される旨記載されており,一方,同請求項1によれば,第2共振容量は,リンクコイルと第2コイルを経由して第2端子に接続されているから,両者は明らかに矛盾していおり,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。したがって,特許法第36条第6項第2号に適合せず,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

以上のとおりであるから,本願手続補正は,上記(ア)(イ)(ウ)の何れの点においても,特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年2月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成15年11月17日付けの手続補正によって補正された,上記「補正前の特許請求の範囲」の請求項1に記載された事項により特定されるものである。
再掲すれば,以下のとおりである。
「フェライトが内部に配設され,外周にコイルが巻かれた樹脂性のボビンが,開口部を有する金属性のドアハンドル内に配設され,前記コイルに給電がなされることによりアンテナとして機能するドアハンドル内蔵アンテナにおいて,
前記ボビンの一側面に前記ドアハンドルの長手方向に沿う端子を設け,該端子の長手方向における一端で前記コイルの端部と接続が成され,他端で外部から前記コイルへの給電がなされるようにしたことを特徴とするドアハンドル内蔵アンテナ。」

(1)引用文献
これに対し,原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-340734号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

a.「【0016】(第1実施形態)図1から図3は,第1実施形態を示している。ループアンテナ装置10はコイル13,13a,14が巻かれた第1アンテナANT1および第2アンテナANT2を備えている。この第1アンテナANT1は,・・・薄いフェライト12に,導電性の良い材質(例えば,銅等)から成るコイル(第1コイル)14が巻かれている。
【0017】第2アンテナANT2はフェライト12の外側に設けられ,フェライト12の長手方向の外周にフェライト12と所定の空隙を保った状態でフェライト12に対して相似形となっており,ABS樹脂やポリカーボネート等の樹脂により形成されたボビン11に導電性の良い材質から成るコイル(第2コイル)13が巻かれている。」(第3頁第3欄第38行〜同頁第4欄第3行)

b.「フェライト12に巻かれたコイル14の両端1,1’にコンデンサC1と電源(発振器)OCを直列接続する。」(第3頁第4欄第18〜20行)

c.「フェライト12に巻かれたコイル14と直列に接続された共振容量C1により直列共振回路を形成する第1アンテナANT1・・・第1アンテナANT1に直列に給電する」(第3頁第4欄第21〜28行)

d.「【0022】具体例として,ボビン11を72×14×4.5mmの中に,所定間隔1mmだけ離してフェライト(66×8×2.5mm)12を配設」(第3頁第4欄第48〜50行)

したがって,引用文献1には,
「フェライトが内部に配設され,外周にコイルが巻かれた樹脂性のボビンがあり,前記コイルに給電がなされることによりアンテナとして機能するアンテナ。」(以下,「引用発明1」という。)が示されている。
同じく,原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-292702号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

e.「【0005】また,アウトサイドドアハンドルの近傍又は内側にアンテナを装着することは,樹脂製のアウトサイドドアハンドルの場合には問題は少い・・・
【0007】
【課題を解決する為の手段】
(1)少くとも表面が導電体であるアウトサイドドアハンドル(20),該導電体に開けたスリット(23),および,該導電体に設けた給電点(24,25)を含むスロットアンテナ(21,23〜25);および,電波発振電圧を前記給電点(24,25)に与える送信器(26);を備えるドア近接通信装置。なお,理解を容易にするためにカッコ内には,図面に示し後述する実施例の対応要素の符号又は対応事項を,参考までに付記した。」(第3頁第3欄第22〜31行)

スロットアンテナはアンテナの一種であるから,引用文献2には,
「金属性のドアハンドルに配設されたアンテナ。」(以下,「引用発明2」という。)が示されている。

(2)対比
そこで,本願発明と引用発明1とを比較すると,
両者は
「フェライトが内部に配設され,外周にコイルが巻かれた樹脂性のボビンがあり,前記コイルに給電がなされることによりアンテナとして機能するアンテナ。」
の点で一致し,以下の相違点1,2で相違している。

[相違点1]本願発明では,引用発明1に係るアンテナを,「開口部を有する金属性のドアハンドル内に配設」し,「ドアハンドル内蔵」としているのに対し,引用文献1には,ドアハンドルへの適用も,内蔵のための前記配設についても記載されていない。

[相違点2]本願発明では,アンテナの端子に関し,「前記ボビンの一側面に前記ドアハンドルの長手方向に沿う端子を設け,該端子の長手方向における一端で前記コイルの端部と接続が成され,他端で外部から前記コイルへの給電がなされるように」しているが,引用発明1では,このような具体的構成はない。

(4)判断
そこで,上記相違点について検討する。

[相違点1]について
引用発明2では,アンテナの配設されたドアハンドルを金属性としており,また,ドアハンドル内にアンテナを内蔵させることも,例えば,特開平11-245770号公報の図11及び関係記載,国際公開国際公開第99/19585号パンフレット(対応する日本公報は、特表2001-520337号公報)の図1及び関係記載に示されているように,周知技術にすぎず,しかも,上記摘記事項「d」によれば,引用発明1のアンテナの大きさは,通常のドアハンドルのサイズであれば,内蔵可能なことは明白であるから,引用発明1を,金属性のドアハンドル内に配設させる程度のことは単なる転用の域を出ず,その際,開口部を設けることも,ほとんど自明の設計的事項である。

[相違点2]について
アンテナに限らず,電気,電子部品の外部接続用の端子の配置は,端子の位置による電気的特性の優劣,部品が取り付けられる部位の寸法形状,外部回路への接続の容易性等によって,決められているから,ドアハンドルのように,載置される部位が長尺な場合,引用発明1のアンテナの端子に関し,「ボビンの一側面にドアハンドルの長手方向に沿う端子を設け,該端子の長手方向における一端で前記コイルの端部と接続が成され,他端で外部から前記コイルへの給電がなされるよう」にすることは,単なる設計的事項にすぎない。

(4)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1,2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして,本願の請求項1に係る発明について特許を受けることができないものである以上,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-29 
結審通知日 2006-04-04 
審決日 2006-04-27 
出願番号 特願2000-163100(P2000-163100)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻生 哲朗鈴木 圭一郎右田 勝則  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 小林 紀和
宮下 誠
発明の名称 ドアハンドル内蔵アンテナ  

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