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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1138423
審判番号 不服2004-17894  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-30 
確定日 2006-06-14 
事件の表示 平成 6年特許願第 62340号「衛星放送受信装置における付加サウンド受信判別装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 1月10日出願公開、特開平 7- 7695〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成6年3月31日(パリ条約による優先権主張1993年3月31日、大韓民国)の出願であって、平成16年5月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月29日付で手続補正がなされたものである。
2.平成16年9月29日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月29日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1および2は、次のように補正される。
「 【請求項1】アンテナを通じて受信された放送信号のうち使用者により選択されたチャンネルの放送信号をチューニングするチューナーと、
前記チューナーにより選択されたチャンネルの放送信号のうちディジタルサウンド信号を通過させるバンドパスフィルターと、
前記バンドパスフィルターの出力信号を処理して本来のディジタルサウンドフレームに復調させた後、デインターリーブさせるディジタルサウンド処理部と、
前記ディジタルサウンド処理部から出力されるディジタルサウンド信号をアナログサウンドに変換してスピーカーを通じて出力させるD/A変換部と、
使用者により選択されたモードを実行するために前記各部へ制御信号を出力し、前記ディジタルサウンド処理部から出力されるディジタルサウンドフレームの制御データから第1ディジタルサウンドフレームであるか、又は第2ディジタルサウンドフレームであるかを判別すると共に、第1ディジタルサウンドフレームの付加サウンドデータが受信される場合、使用者の付加サウンドの選択による選択モード制御信号及び表示信号を出力し、前記付加サウンドデータが受信されない場合、前記ディジタルサウンド処理部から付加サウンドデータを選択的に出力するための使用者の付加サウンド選択信号を遮断するマイクロプロセッサーと、
前記表示信号によって、使用者により選択されたモードを表示する表示部と、を具備する放送受信装置における付加サウンド受信判別装置。
【請求項2】 アンテナを通じて受信された放送信号のうち、使用者により選択されたチャンネルの放送信号で復調されたディジタルサウンドフレームの制御データをデコーディングし、ディジタルサウンドフレームが第1ディジタルサウンドフレームであるか否かと、第1ディジタルサウンドフレームの付加サウンドデータが受信されるかをチェックする第1過程と、
前記第1過程により、付加サウンドデータが受信されると判断されると、使用者の付加音声の選択による選択モード制御信号及び表示信号を出力して、前記第1ディジタルサウンドフレームの付加サウンドデータをスピーカーを通じて出力し、付加サウンドデータが受信されないと判断されると、前記付加サウンドデータを選択的に出力するための使用者の付加サウンド選択信号を遮断する第2過程と、を具備する放送受信装置における付加サウンド受信判別方法。」

(2)補正の目的の適否
本件補正は、補正前の請求項1において、「アンテナを通じて受信された衛星放送信号」を「アンテナを通じて受信された放送信号」とする補正(以下、「補正事項1」)、「衛星放送受信装置における付加サウンド受信判別装置」を「放送受信装置における付加サウンド受信判別装置」とする補正(以下、「補正事項2」)、および、補正前の請求項2において、「フレーム単位に復調されたディジタルサウンドフレーム」を「アンテナを通じて受信された放送信号のうち、使用者により選択されたチャンネルの放送信号で復調されたディジタルサウンドフレーム」とする補正(以下、「補正事項3」)、「衛星放送受信装置における付加サウンド受信判別方法」を「放送受信装置における付加サウンド受信判別方法」とする補正(以下、「補正事項4」)、を含むものである。
補正事項1,2,4は、受信される放送信号を、「衛星放送信号」から「放送信号」へ拡張するものであり、補正事項3は、ディジタルサウンドフレームの復調を「フレーム単位」に行う旨の限定の削除を含むものであって、いずれも特許法第17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえないとともに、請求項の削除,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明,のいずれを目的とするものでもない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)新規事項
本件補正は、補正前の請求項1のマイクロプロセッサーの特定事項として「前記付加サウンドデータが受信されない場合、使用者の付加音声の選択を無視する」を、「前記付加サウンドデータが受信されない場合、前記ディジタルサウンド処理部から付加サウンドデータを選択的に出力するための使用者の付加サウンド選択信号を遮断する」とするとともに、補正前の請求項2の第2過程の特定事項として、「付加サウンドデータが受信されないと判断されると、使用者の付加音声の選択があっても、前記第1サウンドフレームのメインサウンドデータをスピーカーを通じて出力することが維持される」を、「付加サウンドデータが受信されないと判断されると、前記付加サウンドデータを選択的に出力するための使用者の付加サウンド選択信号を遮断する」とする補正を含むものであるが、「付加サウンド選択信号を遮断する」ことは、出願当初の明細書に記載されておらず、かつ、自明なことでもない。
この点について、請求人は、審判請求書において、「なお、請求項1,2に記載の表現、「使用者の付加サウンド選択信号を遮断する」の表現は明細書中には記載はないが、図6の左側の上から3つ目のステップで「付加サウンド選択キーが入力されたか」の判定でYESとなり、次のステップで「チェックされた制御データのうち付加サウンドがあるか」の判定でNOとなった場合には、その右のステップで「メインサウンド(LS1),(LS2)取得」と記載されていることから、「使用者の付加サウンド選択信号を遮断する」ことは明らかである。」旨主張しているが、図6は「付加サウンド選択キーが入力されたか」否かの判定結果および「チェックされた制御データのうち付加サウンドがあるか」否かの判定結果の両者により、「付加サウンド」または「メインサウンド」のいずれかを聴取することを表現するのみであって、「信号を遮断する」ことについて記載も示唆もされていない。
以上、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定に違反するものである。

(4)まとめ
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第2項および第3項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年9月29日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1および2に記載された発明は、本願明細書及び図面(平成16年5月10日付の手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1および2に記載したとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 【請求項1】 アンテナを通じて受信された衛星放送信号のうち使用者により選択されたチャンネルの放送信号をチューニングするチューナーと、
前記チューナーにより選択されたチャンネルの放送信号のうちディジタルサウンド信号を通過させるバンドパスフィルターと、
前記バンドパスフィルターの出力信号を処理して本来のディジタルサウンドフレームに復調させた後、デインターリーブさせるディジタルサウンド処理部と、
前記ディジタルサウンド処理部から出力されるディジタルサウンド信号をアナログサウンドに変換してスピーカーを通じて出力させるD/A変換部と、
使用者により選択されたモードを実行するために前記各部へ制御信号を出力し、前記ディジタルサウンド処理部から出力されるディジタルサウンドフレームの制御データから第1サウンドフレームであるか、又は第2ディジタルサウンドフレームであるかを判別すると共に、第1ディジタルサウンドフレームの付加サウンドが受信される場合、使用者の付加サウンドの選択による選択モード制御信号及び表示信号を出力し、前記付加サウンドデータが受信されない場合、使用者の付加音声の選択を無視するマイクロプロセッサーと、 前記表示信号によって、使用者により選択されたモードを表示する表示部と、を具備する衛星放送受信装置における付加サウンド受信判別装置。」

(1)引用例
(1-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-31382号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、以下の記載がある。

(ア)「この発明は人工衛星を用いて送信されるテレビジョン信号を受信する衛星放送受信装置に関する。」(第1頁左下欄第13行ないし同欄第14行)
(イ)「ここで、送信されてくるSHF信号は次のような信号である。すなわち、テレビ音声信号はPCM信号にされ、そしてこのPCM音声データが所定時間分毎にブロツク化されるとともにエラー訂正符号が形成されて付加された後、5.73MHzをサブキヤリア周波数としてこのPCM信号が4相位相変調されて第2図に示すようにアナログ映像信号の高域側を占める信号とされ、この変調されたPCM信号とアナログ映像信号とが合成され、その合成信号がFM変調されて12GHz程度のSHF信号にされたものである。
このSHF放送波は第1図の受信システムの受信用パラボラアンテナ(1)にて受信される。このアンテナ(1)に受信されたSHF帯の信号は屋外ユニツト(2)において第1中間周波信号としての例えば1GHz程度のUHF帯の信号に周波数変換される。そして、このUHF帯の信号が同軸ケーブル(3)を通じて室内ユニツト(10)のチユーナ(11)に供給される。このチユーナ(11)には選局回路(12)からの視聴者の選局操作に応じた選局信号が供給されて、このチユーナ(11)からはその選択された局の放送波(UHF信号)が第2中間周波信号に変換されて得られる。
この第2中間周波信号はバンドパスフイルタ(13)を介して第2中間周波アンプ(14)に供給される。このアンプ(14)の出力はAGC電圧検出回路(15)に供給されてAGC電圧が形成され、これがアンプ(14)に帰還されてこのアンプ(14)の出力が一定となるようにAGCがかけられる。
この第2中間周波アンプ(14)の出力はFM復調回路(16)にてFM復調され、そのFM復調出力がビデオアンプ(17)に供給され、出力端子(18)に映像信号が導出される。
FM復調回路の出力は、また、バンドパスフイルタ(21)に供給されて音声サブキヤリア成分が取り出され、これが4相位相復調回路(22)に供給されて音声PCM信号が復調され、デジタルデコーダ(23)に供給される。このデコーダ(23)ではPCM信号がエラー訂正符号によつて訂正可能なエラーが訂正された後、元の時系列に戻され、アナログ音声信号に戻される。このデコーダ(23)からのアナログ音声信号はゲインコントロール回路(24)を通じて音声出力端子(25)に導出される。」(第1頁右下欄第4行ないし第2頁右上欄第5行)
(ウ)「ところでこの衛星テレビ放送におけるPCM音声としては比較的高品位の音声が得られるようにするためのBモードと通常の状態のビツト数が低いが多チヤンネル音声を可能にするAモードの2通りのモードがある。即ち、Aモードはテレビ音声信号の1サンプル当り14ビツトを10ビツトに圧縮して限られた帯域内で多チヤンネル音声を可能にするものであり、一方、Bモードは1サンプル当り16ビツトの信号に変換し更に高品位の音声を得るものである。Aモードは第1音声〜第4音声からなるモノーラル4チヤンネル(ステレオ2チヤンネル)、Bモードは第1音声、第2音声からなモノーラル2チヤンネル(ステレオ1チヤンネル)とされ、2チヤンネル当りについて、放送局の送信信号の内容に応じた放送ができるようになされている。これらをまとめて説明すると第3図のようになる。
即ちAモードの4チヤンネルの内、第1音声と第2音声はテレビ音声、第3音声と第4音声は付加音声と呼ばれ、テレビ音声及び付加音声のそれぞれに対して、ステレオ放送、モノーラルの1チヤンネルの放送、モノーラルの2チヤンネルの放送、放送なしという態様がある。」(第2頁右上欄第15行ないし同頁左下欄第17行)
(エ)「即ち、PCMテレビ音声信号は所定時間分を単位時間として1フレームのデータを構成し、この1フレームのデータは第4図に示すようにPCM音声データの前に16ビツトのフレーム同期信号、その次に同じく16ビツトの制御ビツト、さらにその後に32ビツトのレンジビツトが付加され、そして、PCM音声データの後に誤り訂正符号であるBCHコードが付加されて構成される。そして、制御ビツトは現在の所、16ビツト内の最初の1ビツトは放送番組がAモード〔0〕かBモード〔1〕かを判別するためのビツトとされ、その後の2ビツトは第1音声及び第2音声について、さらにその後の2ビツトは夫々ステレオ〔00〕かモノーラル1チヤンネル〔10〕か、モノーラル2チヤンネル〔01〕か放送なし〔11〕の状態かを判別するためのビツトとされる。6ビツト目以降15ビツトまでは拡張ビツトとされ、最後の1ビツトは例えばプログラムソースがAモードからBモードに切り換わつた時等に発生するノイズを抑圧するための指令ととなる音声制御ビツトと定められている。」(第2頁右下欄第17行ないし第3頁左上欄第17行)
(オ)「したがつて、制御ビツト中の第1ビツト及び第2〜第5ビツトによつて受信の態様がある程度特定され、受信者は単にAモードの時は付加音声がテレビ音声か、モノーラル2チヤンネル放送のときは第1音声か、第2音声かあるいは第3音声か第4音声かを選択することになる。
以上のように衛星放送においては放送態様が多種あるので、衛星放送受信装置の場合、従来のテレビジヨン受像機と異なり、単なるチヤンネル選択だけでなくAモードにおけるテレビ音声と付加音声の選択、モノーラル2チヤンネル放送の場合の第1音声又は第2音声あるいは第3音声又は第4音声の選択等の複雑な受信モードの選択が必要になる。」(第3頁左上欄第18行ないし同頁右上欄第11行)
(カ)「一方、デジタルデコーダ(23)内に設けられる制御ビツトの抽出回路(35)においてPCM音声信号中の制御ビツトが抽出され、それが制御ビツトのデコーダ(36)に供給されてその時のプログラムソースがどのような受信モードであるかが判断される。」(第4頁左上欄第10行ないし同欄第15行)
(キ)「以上の動作は実際にはマイクロコンピユータにより制御されるもので、その場合のフローチヤートを第6図に示す。」(第4頁左下欄第9行ないし同欄第11行)
(ク)「なお、Aモード及びBモードの場合において、受信モード、つまり制御ビツトの状態が夫々音声情報なしの状態のときには、受信側における選択権はないと凝制し音声プログラムのあるモードが後述する優先順位に従つて定められる。」(第4頁右下欄第16行ないし第5頁左上欄第1行)
(ケ)「即ち受信側で選択を要するモードは前述もしたように
(1)Aモードのとき、テレビ音声か付加音声かの選択。
(2)Aモードにおいて、テレビ音声且つモノーラル2チヤンネルのときの第1音声か第2音声かの選択。
(3)Aモードにおいて、付加音声且つモノーラル2チヤンネルのときの第3音声か第4音声かの選択。
(4)Bモードにおいて、モノーラル2チヤンネルのときの第1音声か第2音声かの選択。
の以上の4通りが考えられる。
ここで、現在考えられている衛星放送においては、Aモードにおいては第1、第2音声からなるテレビ音声が主となる。また、モノーラル2チヤンネルのとき、A、B両モード共に第1音声が主音声となる。第3、第4音声の場合は第3音声が主音声となる。
以上から、上記(1)の場合には第1、第2音声のテレビ音声を選択、また(2)、(4)の場合には第1音声を選択、(3)の場合は第3音声を選択するように優先順位が定められる。ただし、Aモードにおいて第1、第2音声が放送なしであつて音声がない場合もあることを考慮して、その場合にはそのときの制御ビツトにより第3、第4音声を優先するようにする。」(第5頁左上欄第16行ないし同頁左下欄第2行)

(1-2)同じく原査定の拒絶理由において引用された特開平4-49783号公報(以下、「引用例2」)には、図面とともに、以下の記載がある。

(コ)「この発明は、衛星放送(以下BSと称す)チューナー内蔵カラーテレビジョン受信機に関し、特に独立音声放送無信号時に独立音声放送を受信しようとした場合、自動的にテレビ音声放送に切り換えるかそれとも独立音声放送をそのまま受信し続けるかを選択する手段を備えたものに関する。」(第1頁左下欄第16行ないし同頁右下欄第1行)
(サ)「BS放送の音声信号モードにはAモードとBモードの2種類があり、Bモードはサンプリング周波数48kHzと高品位であるが、2チャンネル分の帯域しか持たないモードであり、一方、Aモードはサンプリング周波数が32kHzであるが、帯域が4チャンネルと多く確保されている。そしてこの4チャンネルのうち2チャンネルだけを使って通常のテレビ音声放送が放送されており、残りの2チャンネルも併用して放送されるのが独立音声放送である。」(第1頁右下欄第3行ないし同欄第12行)
(シ)「また、4はマイコンで、このマイコン4は上記選局回路3に選局情報を送るとともに、上記音声信号処理回路5から放送中の音声モード、チャンネルの情報を受けとり、かつ選択された音声モードの指令を上記音声信号処理回路5に与える。7は画面表示回路で、上記マイコン4から与えられる選局チャンネル、放送中の音声モード、選択した音声モードの情報を映像信号9に重畳させて、画面上に表示する(第4図参照)。」(第2頁右上欄第5行ないし同欄第13行)
(ス)「従来のBSチューナー内蔵カラーテレビジョン受信機は、独立音声放送が無信号時に独立音声放送を選択した場合、音声が出ないために機器が故障したと誤解されたり、また独立音声放送無信号時に独立音声放送を選択できない機種では、独立音声放送の開始と同時に独立音声放送を受信したい場合に、そうした要求を実現できないという問題点があった。」(第2頁右上欄第16行ないし同頁左下欄第3行)
(セ)「独立音声放送無信号である時、自動的にテレビ音声放送に切り換わることを選択した場合は、独立放送無信号時に独立音声放送を選択してもテレビ音声放送に切り換わる。」(第2頁右下欄第4行ないし同欄第7行)
(ソ)「第1図はこの発明の一実施例によるBS受信用テレビジョン受信機の概略構成を示すブロック図であり、同図において、第3図に示す従来例と相違する点は、マイコン14の処理内容のみで、その他の構成は第3図に示す従来例と同一であるため、同一の符号を付して、それらの詳しい説明は省略する。」(第2頁右下欄第14行ないし同欄第20行)
(タ)「次に構成の動作について第2図のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、独立音声放送無信号時に同一チャンネルのテレビ音声放送に自動的に切り換わることを希望する(Aとする)か、独立音声放送のままであることを希望する(Bとする)かを選択する(S10)。次にBS受信時において、独立音声放送を選択した時、音声信号処理回路5の出力を受けて、マイコン14は受信放送が独立音声放送に変更されたことを検知する(Sll)。この検知にともなって、独立音声放送が無信号かどうかを示す音声信号処理回路5の出力がマイコン14に入る(S12)。その検知により、独立音声放送の信号が有る場合は独立音声放送を持続する(S15)。また、独立音声放送無信号時は、S10のAを選択していたか、S10のBを選択していたかの情報をマイコン14から音声信号処理回路5へ出力し(S13)、その出力によりS10のAを選択していた場合は、テレビ音声放送に切り換わり(S14)、S10のBを選択していた場合は独立音声放送を持続する(S15)。
なお、上記実施例では、独立音声放送無信号時に自動的にテレビ音声放送に切り換わることを希望するか否かを選択する手段を備えたBSチューナー内蔵カラーテレビの場合について説明したが、選択する手段は、画面表示を見ながら入力操作できるものであってもよいし、音声による指示を受けながらであってもよいし、またICカードに記憶させることも可能である。」(第3頁左上欄第1行ないし動頁右上欄第9行)

(2)対比
そこで、本願発明と上記(ア)ないし(ケ)の記載から認定される引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)とを比較すると、両者はいずれも衛星放送受信装置における付加サウンド(付加音声)受信判別に関するものであって、引用発明1の「受信用パラボラアンテナ(1)」,「チューナ(11)」,「PCM音声信号」,「バンドパスフィルタ(21)」,「4相移相復調回路(22)」,「受信者」,「制御ビット」,「付加音声」および「マイクロコンピュータ」は、本願発明の「アンテナ」,「チューナー」,「ディジタルサウンド信号」,「バンドパスフィルター」,「ディジタルサウンド処理部」,「使用者」,「制御信号」,「付加サウンド」および「マイクロプロセッサー」に相当する。
また、上記(イ)から、引用発明1の「デジタルデコーダ(23)」は、本願発明の「D/A変換部」等を含むものと認められ、上記(エ)から、引用発明1の、PCM音声信号の「1フレームのデータ」は、本願発明の「ディジタルサウンドフレーム」に相当し、「Aモード」の「1フレームのデータ」および「Bモード」の「1フレームのデータ」は、本願発明の「第1ディジタルサウンドフレーム(第1サウンドフレーム)」および「第2ディジタルサウンドフレーム」に相当するものと認められる。
また、本願発明の「第1サウンドフレーム」は、本願明細書の記載からみて、「第1ディジタルサウンドフレーム」と同一のものと認められ、本願発明の「付加音声」は、本願明細書の記載からみて、「付加サウンド」と同一のものと認められる。
また、上記(オ)から、引用発明1において、使用者が付加音声かテレビ音声か等の受信モードを選択することが認められるとともに、上記(キ)から、マイクロプロセッサーから各部へ制御信号を出力することが認められる。
さらに、上記(ク)(ケ)から、音声情報がない場合に音声プログラムのあるモードを所定の優先順位に従って選択することが認められる。

したがって、両者は、
「【請求項1】 アンテナを通じて受信された衛星放送信号のうち使用者により選択されたチャンネルの放送信号をチューニングするチューナーと、
前記チューナーにより選択されたチャンネルの放送信号のうちディジタルサウンド信号を通過させるバンドパスフィルターと、
前記バンドパスフィルターの出力信号を処理して本来のディジタルサウンドフレームに復調させるディジタルサウンド処理部と、
前記ディジタルサウンド処理部から出力されるディジタルサウンド信号をアナログサウンドに変換してスピーカーを通じて出力させるD/A変換部と、
使用者により選択されたモードを実行するために前記各部へ制御信号を出力し、前記ディジタルサウンド処理部から出力されるディジタルサウンドフレームの制御データから第1サウンドフレームであるか、又は第2ディジタルサウンドフレームであるかを判別すると共に、第1ディジタルサウンドフレームの付加サウンドが受信される場合、使用者の付加サウンドの選択による選択モード制御信号を出力するマイクロプロセッサーと、を具備する衛星放送受信装置における付加サウンド受信判別装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
ディジタルサウンド処理部が、バンドパスフィルターの出力信号を処理して本来のディジタルサウンドフレームに復調させた後、本願発明は「デインターリーブさせる」のに対して、引用発明1は、そのような構成を有しない点。
[相違点2]
マイクロプロセッサーが、本願発明では「付加サウンドデータが受信されない場合、使用者の付加音声の選択を無視する」のに対して、引用発明1では、「音声情報がない場合に音声プログラムのあるモードを所定の優先順位に従って選択する」点。
[相違点3]
本願発明は、マイクロプロセッサーが「第1ディジタルサウンドフレームの付加サウンドが受信される場合、表示信号を出力」し、「表示信号によって、使用者により選択されたモードを表示する表示部」を有するのに対して、引用発明1は、そのような構成を有しない点。

(3)判断
[相違点1]について
音声復調信号をデインターリーブすることは、衛星放送受信装置のディジタル音声処理手段において周知(特開平4-176293号公報、特開平4-287590号公報、特開平5-153016号公報参照)であることからみて、引用発明1のディジタルサウンド処理部において、ディジタルサウンドフレームに復調させた後、デインターリーブさせるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
[相違点2]について
本願発明において、「使用者の付加音声の選択を無視する」とは、本願明細書(特に段落0012、0022、0028および図6)の記載からみて、使用者が付加音声を選択して場合に、メインサウンドを選択する、すなわち、「使用者が付加音声を選択しても、付加音声を選択しない」ことと認められる。
一方、上記(コ)ないし(タ)の記載から認定される引用例2記載の発明(以下、「引用発明2」)は、衛星放送受信装置に関し、使用者が独立音声(本願発明の「付加音声」に相当)かテレビ音声(本願「メインサウンド」に相当)かを選択できる手段において、使用者が予め、「独立音声放送無信号時に同一チャンネルのテレビ音声放送に自動的に切り換わることを希望する(Aとする)」選択をした際に、独立音声放送が無信号である場合は、独立音声を選択しても、テレビ音声を選択し、独立音声を選択しないことが認められる。
したがって、引用発明1において、マイクロプロセッサーが、「音声情報がない場合に音声プログラムのあるモードを所定の優先順位に従って選択する」構成に代え、「付加サウンドデータが受信されない場合、使用者の付加音声の選択を無視する」ようにすることは、引用発明1および2がいずれも衛星放送受信装置に関する共通の技術分野に属することからみて、当業者が容易に想到し得たことである。
[相違点3]について
引用発明2において、(シ)から、放送中の音声モード,選択した音声モードの情報等を映像信号に重畳させて、画面上に表示することが認められる。したがって、引用発明1において、マイクロプロセッサーが「第1ディジタルサウンドフレームの付加サウンドが受信される場合、表示信号を出力」し、「表示信号によって、使用者により選択されたモードを表示する表示部」を有する如く構成することは、引用発明1および2がいずれも衛星放送受信装置に関する共通の技術分野に属することからみて、当業者が容易に想到し得たことである。

また、相違点1ないし3を総合しても格別の作用をなすとは認められない。本願発明の効果も、引用例1,2および周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-13 
結審通知日 2006-01-17 
審決日 2006-01-30 
出願番号 特願平6-62340
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
P 1 8・ 561- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 清水 正一
西谷 憲人
発明の名称 衛星放送受信装置における付加サウンド受信判別装置及び方法  
代理人 西山 雅也  
代理人 下道 晶久  
代理人 鶴田 準一  
代理人 樋口 外治  
代理人 石田 敬  

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