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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B25B
管理番号 1139046
審判番号 不服2003-18592  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-24 
確定日 2006-06-29 
事件の表示 平成 9年特許願第152508号「シャーボルトの仮締め機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月 6日出願公開、特開平11- 872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成9年6月10日の特許出願であって、平成13年1月31日に手続補正書が提出され、平成15年5月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成15年7月18日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成15年8月21日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成15年9月24日に本件審判の請求がされ、平成15年10月3日に明細書を補正対象とする手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理 由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、その請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
1-1 補正前の請求項1
「スピンドルに仮締めトルクが付加された時に、トルク検知装置の伝達部材を圧縮ばねに抗して前記スピンドルの軸方向に移動させ、該移動動作により電源回路を遮断して、アウタスリーブの回転駆動を自動停止させるシャーボルトの仮締め機であって、
前記圧縮ばねは、前記伝達部材と、前記スピンドルの軸方向に移動可能に配置したトルク調整プレートとの間に介在させる一方、当該仮締め機のハウジングに、トルク調整ダイヤルをハウジングの後端に外部から回転操作可能に設け、該トルク調整ダイヤルと前記トルク調整プレートとの間に、該トルク調整ダイヤルを回転させると、前記トルク調整プレートを前記軸方向に移動させる動作変換手段を設けたことを特徴とするシャーボルトの仮締め機。」

1-2 補正後の請求項1
「スピンドルに仮締めトルクが付加された時に、トルク検知装置の伝達部材を圧縮ばねに抗して前記スピンドルの軸方向に移動させ、該移動動作により電源回路を遮断して、アウタスリーブの回転駆動を自動停止させるシャーボルトの仮締め機であって、
前記圧縮ばねは、前記伝達部材と、前記スピンドルの軸方向に移動可能に配置したトルク調整プレートとの間に介在させる一方、当該仮締め機のハウジングの後端に一体に設けた軸部の外周側に円環形状を有するトルク調整ダイヤルを外部から回転操作可能に設け、該トルク調整ダイヤルと前記トルク調整プレートとの間に動作変換手段を介在させて、該トルク調整ダイヤルの回転操作により前記トルク調整プレートを前記スピンドルの軸方向に移動させて前記圧縮ばねの付勢力を変化させる構成としたことを特徴とするシャーボルトの仮締め機。」

2.補正の適否
上記請求項1についての補正は、トルク調整ダイヤルに関して仮締め機のハウジングの後端に「一体に設けた軸部の外周側に円環形状を有する」との限定事項、及びトルク調整ダイヤルの回転操作により「圧縮ばねの付勢力を変化させる構成とした」との限定事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

2-1 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正がされた明細書及び図面の記載からみて、前記1-2に示す補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「シャーボルトの仮締め機」であると認める。

2-2 刊行物記載の発明及び事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-31645号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び特開昭56-102485号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下のとおり記載されている。

(1)刊行物1
ア.段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は主として建築・土木工事等のボルト接合に使用するボルト・ナット締付機に関するものである。」
イ.段落【0014】
「トルク検知制御機構(5)は、回転軸(51)に該軸の回転とは無関係に回転自由に嵌まり先端に傘歯車(65)を形成した筒状の回転体(6)と、回転体(6)に対向して回転軸(51)に固定されたトルク設定円板(7)と、回転体(6)とトルク設定円板(7)を連繋する捩りバネ(8)と、回転軸(51)に大なる負荷が作用して捩りバネ(8)が撓んで回転軸(51)と回転体(6)に位相のずれが生じた時、この位相のずれを検出する位相検出手段(9)とで構成される。」
ウ.段落【0019】
「ソケット(3)に設定以上の負荷が作用したとき、回転体(6)は回転軸(51)を空回りして回転体(6)と回転軸(51)の位相がずれる。上記回転体(6)と回転軸(51)の位相のずれを検出する位相検出手段(9)は、回転軸(51)上に該軸と一体回転可能且つ軸方向にスライド可能に配備されたスリーブ(90)と、該スリーブの軸方向の移動によって作動するレバー(95)と、該レバーの動きによって、モータ(4)への通電を遮断するスイッチ回路(13)とで構成される。」
エ.段落【0026】〜【0029】
「トリガー(12)をON操作してモータ(4)を起動する。モータ(4)の回転力は、平歯車列(41)、傘歯車(60)、傘歯車(65)を経由して回転体(6)に伝達される。回転体(6)の回転は捩りバネ(8)を介してトルク設定円板(7)に伝達される。トルク設定円板(7)は、クランプネジ(72)によって回転軸(51)に固定されており、回転軸(51)は減速機構(2)の太陽歯車軸(23)と一体に形成されているため、減速機構(2)が作動して、反力受け(31)を減速回転させ隣接する適当な突起物に当って停止すると同時に、ソケット(3)を減速回転させ、ボルト・ナットを締付ける。
ボルト・ナットを所定の設定トルクまで締め付けると、捩りバネ(8)には該バネに設定している捻りトルクよりも大なる負荷が掛かって、捩りバネ(8)は撓みを生じ、該バネ(8)とトルク設定円板(7)との間、即ち、捩りバネ(8)と回転軸(51)との間に位相角度のずれが生じる。
回転軸(51)と一体に回転するスリーブ(90)と回転体(6)との間にも位相角のずれが生じ、スリーブ(90)の谷部(94)が回転体(6)の突起(64)に対応して、スリーブ(90)はバネ(98)に付勢されて谷部(94)の深さ分だけ回転体(6)側にスライドする。
傘歯車(60)の貫通孔(53)に収容され、上端がスリーブ(90)に当接して回転体(6)側に付勢されているレバー(95)がスリーブ(90)の動きに追従して揺動し、レバー(95)下端がマイクロスイッチをOFFにし、モータ(4)への通電回路を遮断する。これによって設定トルクでのボルト・ナット締付けが完了する。」
オ.段落【0031】
「実施例の締付機は、使用中に捩りバネ(8)が必要締付け伝達トルクにて撓みを開始する様に、予め、トルク設定円板(7)を回転軸(51)上で回転させて、捩りバネ(8)を所望のトルクで撓ませておくことが出来、この予めの捩りバネの撓み量を調整することにより、締付けトルクを任意に調節できる。」
カ.段落【0032】〜【0033】
「図6は、先端に剪断用チップを具えたシャーボルト(100)を締付ける、シャーレンチ型ボルト・ナット締付機に本発明を実施したものである。公知の如く、シャーレンチ型締付機は、シャーボルトの先端チップ(101)に嵌まるインナーソケット(32)と該ボルトに螺合したナット(102)に嵌まるアウターソケット(3)を同心に配備し、両ソケットを歯車減速機構(22)の2つの出力軸(24)(27)に接続している。
前記ナットランナー型のボルト・ナット締付けの反力受け(31)の役割をインナーソケット(32)が果たし、ナットの締付け反力をボルトチップ(101)に作用させ、剪断用溝(103)からチップを切断するものである。最終的にボルトチップを剪断するのであるが、ネジ締めの手順としては、一旦総てのボルト・ナットを仮締めしてから、順次本締め、即ち、チップを剪断するまで締め付ける。本発明のシャーレンチ型の締付機は、モータ(4)と減速機構(2)との間の回転伝達系統に前記同様のトルク検知制御機構(5)を内蔵しており、シャーボルトを一定のトルクで能率的に仮締めできる。」

以上の記載及び図面の記載より、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認める。(以下、「刊行物1記載の発明」という。)
「回転軸51に仮締めトルクが付加された時に、トルク検知制御機構のスリーブ90を前記回転軸51の軸方向に移動させ、該移動動作によりモータ4への通電を遮断して、アウタ-ソケット3の回転駆動を自動停止させるシャーボルトの仮締め機であって、
締め付けトルクを任意に調節できるシャーボルトの仮締め機。」

(2)刊行物2
ア.第1頁右欄4〜7行
「本発明は、スクリュードライバー等のようにスリップ機構を有しスプリングの張力によりトルクを調整する電動工具のトルク調整機構に関するものである。」
イ.第2頁左上欄2〜4行
「本発明の目的は上記欠点を解消し、トルク調整の操作が容易で操作性を向上できるトルク調整機構を提供することにある。」
ウ.第2頁右上欄9行〜右下欄16行
「14はケースで駆動源1を内蔵するケース側にねじ結合されケース14の内側にはノックピンからなる係止片6が突設されている。5は被駆動側ラチェット部材で、外周に係止片6と係合する複数個の軸方向の溝18を有し端面に傾斜爪3aと噛み合う傾斜爪5aが形成されスピンドル10に設けられた長穴19にピン11を嵌入しスピンドル10に対し軸方向に所定距離摺動可能で回転方向には拘束されて取り付けられている。スピンドル10の先端側には、スピンドル10にねじ嵌合され外周部に平行2面の平面20を有するナット9と、ナット9の弛み止め及び被駆動側ラチェット部材5との間にスピンドル外周に嵌装されたスプリング7のスプリング受けとして軸方向に移動可能にブッシュ8が設けられている。尚、スプリング7は被駆動側ラチェット部材5を駆動側ラチェット部材3に近接する方向に付勢されている。
15はアジャストケースで端面部にナット9に形成された平面20、20と対向する形状部21を有し、ケース14にねじ嵌合し固定されたケース13に回動自在に支承され、スプリング12を介しスピンドル10の先端側へ押圧され取り付けられている。アジャストケース15はスプリング12を圧縮して第5図のよう後退させ形状部21をナット9の平面20、20に嵌合でき、この状態でアジャストケース15を回動することによりナット9を回動させることができるようになっている。また、スピンドル10はばね4を介し先端側へ押圧されており、ドライバをスピンドル10から外した状態では被駆動側ラチェット部材5の溝18は係止片6と係合し傾斜爪5a、3a間は、離隔されている。
第4図はスピンドル10先端にドライバ16を挿入し、ビス頭22に押し付けビス締付時を示し、スピンドル10全体が押され、被駆動側ラチェット部材5の溝18は係止片6から外れ回転可能の状態であり傾斜爪5aは傾斜爪3aと噛み合い、駆動側ラチェット部材3の回転がドライバ16に伝わりビス締めが行われる。そして、調整されたトルクになると傾斜爪3a、5aがスプリング7を押圧しながら外れ締付けが終る。
トルク調整は、第5図に示すように、アジャストケース15を、スプリング12を圧縮し後退させ、形状部21をナット9の平面20、20に嵌合させた後、アジャストケース15を回動することによりナット9をスピンドル10の軸方向に移動させスプリング7の押圧力、即ち、スピンドル10のトルクを調整することができる。」

以上のとおりであるので、刊行物2には、次の発明が記載されているものと認める。(以下、「刊行物2記載の事項」という。)
「スピンドル10に所定トルクが付加された時に、被駆動側ラチェット部材5をスプリング7に抗して前記スピンドル10の軸方向に移動させ、該移動動作により、スピンドル10の回転を自動停止させる被駆動側ラチェット部材5であって、
前記スプリング7は、被駆動側ラチェット部材5と、スピンドル10の軸方向に移動可能に配置したブッシュ8との間に介在させる一方、アジャストケース15を外部から回転操作可能に設け、該アジャストケース15と前記ブッシュ8との間にナット9を介在させて、該アジャストケースの回転操作により前記ブッシュ8を前記スピンドルの軸方向に移動させて前記スプリング7の付勢力を変化させる」こと

2-3.対比
本件補正発明と刊行物1記載の発明とを対比するに、後者の「回転軸51」は前者の「スピンドル」に相当し、後者の「トルク検知制御機構」は前者の「トルク検知装置」に相当し、後者の「スリーブ90」は前者の「伝達部材」に相当し、後者の「モータ4への通電を遮断」は前者の「電源回路を遮断」に相当し、後者の「アウタ-ソケット3」は前者の「アウタスリーブ」に相当する。
また、前者の「圧縮ばねは、伝達部材と、スピンドルの軸方向に移動可能に配置したトルク調整プレートとの間に介在させる一方、仮締め機のハウジングの後端に一体に設けた軸部の外周側に円環形状を有するトルク調整ダイヤルを外部から回転操作可能に設け、該トルク調整ダイヤルと前記トルク調整プレートとの間に動作変換手段を介在させて、該トルク調整ダイヤルの回転操作により前記トルク調整プレートを前記スピンドルの軸方向に移動させて前記圧縮ばねの付勢力を変化させる構成」は、伝達部材が軸方向に移動する仮締めトルクの値を圧縮ばねの付勢力を変化させることで調整する構成であり、すなわち、仮締めトルクを任意に調整するものであるから、後者の「締め付けトルクを任意に調節できる」と、締め付けトルクを任意に調節できるという限りで共通している。

したがって、本件補正発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「スピンドルに仮締めトルクが付加された時に、トルク検知装置の伝達部材を前記スピンドルの軸方向に移動させ、該移動動作により電源回路を遮断して、アウタスリーブの回転駆動を自動停止させるシャーボルトの仮締め機であって、
締め付けトルクを任意に調節できるシャーボルトの仮締め機。」である点。
<相違点1>
前者では、締め付けトルクを任意に調節できる機構として、圧縮ばねを、伝達部材と、スピンドルの軸方向に移動可能に配置したトルク調整プレートとの間に介在させる一方、トルク調整ダイヤルと前記トルク調整プレートとの間に動作変換手段を介在させて、該トルク調整ダイヤルの回転操作により前記トルク調整プレートを前記スピンドルの軸方向に移動させて前記圧縮ばねの付勢力を変化させる構成とし、伝達部材を圧縮ばねに抗してスピンドルの軸方向に移動させることによりトルク検知を行うものであるのに対して、後者では、締め付けトルクを任意に調節できるとしているもののどのような機構であるのか不明であり、軸方向に移動することにより所定トルクであることを知らせる伝達部材を有するものの圧縮ばねに抗して移動するものでない点。
<相違点2>
前者では、トルク調整ダイヤルが円環形状を有しているのに対して、後者では、トルク調整ダイヤルを有していない点。
<相違点3>
前者では、仮締め機のハウジングの後端に一体に設けた軸部の外周側にトルク調整ダイヤルを外部から回転操作可能に設けているのに対して、後者では、トルク調整ダイヤルを有していない点。

2-4.判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
刊行物2記載の「スプリング7」、「ブッシュ8」、「ナット9」は、本件補正発明の「圧縮ばね」、「トルク調整プレート」、「動作変換手段」に相当し、刊行物2記載の「被駆動側ラチェット部材5」は、所定トルクが付加された時に軸方向に移動する軸方向移動部材という限りで、本件補正発明の「伝達部材」と共通する。また、刊行物2記載の「アジャストケース15」は、回転することによりトルク調整が行われるものであるから、「トルク調整部材」ともいい得るものであり、さらに、刊行物2記載の被駆動側ラチェット部材5は、所定トルクに達すると移動することで所定トルクに達したことを知らせるものであるから、トルク調整機構が「トルク検知装置」を有していることは明らかである。そうすると、刊行物2記載の事項は、「スピンドルに所定トルクが付加された時に、トルク検知装置の軸方向移動部材を圧縮ばねに抗して前記スピンドルの軸方向に移動させ、該移動動作により、スピンドルの回転を自動停止させる軸方向移動部材であって、
前記圧縮ばねは、伝達部材と、スピンドルの軸方向に移動可能に配置したトルク調整プレートとの間に介在させる一方、トルク調整部材を外部から回転操作可能に設け、該トルク調整部材と前記トルク調整プレートとの間に動作変換手段を介在させて、該トルク調整部材の回転操作により前記トルク調整プレートを前記スピンドルの軸方向に移動させて前記スプリング7の付勢力を変化させる」ことと言い換えることができる。
そうすると、刊行物1記載の発明の所定トルクが付加された時に軸方向に移動する伝達部材として、同じく所定トルクが付加された時に軸方向に移動する軸方向移動部材である刊行物2記載の事項を適用し、本件補正発明の上記相違点1に係る事項とすることは当業者が容易に想到しうるものである。
<相違点2について>
「調整部材」として、円環形状を有するダイヤルを用いることは例示するまでもなく周知である。
そして、刊行物1記載の発明に、当該周知の事項を適用し、本件補正発明の上記相違点2に係る事項とすることは当業者が容易に想到しうるものである。
<相違点3について>
「トルク調整部材」をハウジングの後端に設けることは、周知(例えば、特開昭63-74576号公報参照。)であり、どの位置にどのような形態で設けるかは、操作のしやすさやコンパクト化等を考慮し、当業者が適宜決定する設計的事項である。
そうすると、刊行物1記載の発明に、当該周知の事項を適用し、本件補正発明の上記相違点3に係る事項とすることは当業者が容易に想到しうるものである。

そして、本件補正発明の作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び周知の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものでない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第4項で準用する同法126条第3項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成15年7月18日付け手続補正書の特許請求範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認められる(前記第2の1-1に示す補正前の請求項1を参照。)。

2.刊行物記載の発明及び事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物記載の発明及び事項は前記第2の2-2(1)乃至(2)に示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明からトルク調整ダイヤルに関して仮締め機のハウジングの後端に「一体に設けた軸部の外周側に円環形状を有する」との限定事項、及びトルク調整ダイヤルの回転操作により「圧縮ばねの付勢力を変化させる構成とした」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 2-4」に記載したとおり、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-25 
結審通知日 2006-05-02 
審決日 2006-05-15 
出願番号 特願平9-152508
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B25B)
P 1 8・ 575- Z (B25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 所村 美和和田 雄二二階堂 恭弘  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 佐々木 正章
鈴木 孝幸
発明の名称 シャーボルトの仮締め機  
代理人 福田 鉄男  
代理人 岡田 英彦  
代理人 犬飼 達彦  

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