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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1139076 |
審判番号 | 不服2002-13724 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-22 |
確定日 | 2006-06-30 |
事件の表示 | 平成8年特許願第299000号「積層光造形法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年5月26日出願公開、特開平10-138349号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成8年11月11日の特許出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項で特定される次のとおりのものである。 「所望立体形状に対応する領域の光硬化性樹脂を光照射により硬化させることにより所望立体形状を有する立体物を造形する光造形法であって、所望立体形状を任意厚さの断面層に区分し、各断面層における所望立体形状の輪郭部分のみに対応する領域の光硬化性樹脂を硬化させて輪郭硬化層を順次形成し積層する際に、輪郭硬化層の一層もしくは複数層おきに、断面層の全部分に対応する領域の光硬化性樹脂を硬化させて平板硬化層を一層もしくは複数層形成し積層させることを特徴とする積層光造形法。」 2.引用刊行物 これに対して、原審における拒絶査定の理由となった平成13年12月26日付けの拒絶理由通知書で引用文献3として引用された特開平7-100937号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (1) 「造形希望形状を複数の層にスライスする断面群のデータに基づいて、光硬化性液の液面の前記断面群のうちの一断面に相当する領域内を光照射する工程と、前記光照射工程で形成される断面硬化層の表面を未硬化状態の光硬化性液でコートする工程とを、前記光照射工程で扱う断面を隣接する断面に切換えながら繰返すことで断面硬化層が積層一体化されて全体として造形希望形状を呈する三次元物体を造形する光硬化造形法において、 前記断面群の輪郭部分は全層について光照射し、輪郭内部領域は複数層ごとに一回光照射するように、輪郭内部領域に対する光照射工程を所定層について省略することを特徴とする内部応力を低減する光硬化造形法。」(特許請求の範囲請求項1) (2) 「本発明は、光硬化性液を用いて所望形状を呈する三次元物体を造形する光硬化造形法に関する。」(段落【0001】) (3) 「光硬化造形法では、造形希望形状を複数の層にスライスする断面群のデータを利用する。最初にまず光硬化性液の液面のうち、最下断面に相当する領域内を光照射する。すると液表面に、最下断面に相当する平面形状を備えるとともに所定の厚みを有する断面硬化層が形成される。次にこの断面硬化層の表面を未硬化状態の光硬化性液でコートする。この工程は断面硬化層を液中に沈降させたり、あるいは断面硬化層のうえに未硬化状態の光硬化性液を追加することで実行される。その後再度液表面を光照射する。このとき扱う断面を隣接する断面、この場合下から2番目の断面に切換える。この結果下から2番目の断面に相当する平面形状を有するとともに所定の厚みを有する断面硬化層が形成され、それと同時に先に形成されている最下断面に相当する断面硬化層に積層一体化される。以後コート工程と光照射工程を繰返す。光照射工程が繰返されるたびに、扱う断面を隣接する断面に切換えてゆく。この結果、断面硬化層が積層一体化されて全体として造形希望形状を呈する三次元物体が造形される。」(段落【0002】) (4) 「本発明の方法は、・・・(中略)・・・従来の光硬化造形法を改良したものであり、前記断面群の輪郭部分は全層について光照射し、輪郭内部領域は複数層ごとに一回光照射するように、輪郭内部領域に対する光照射工程を所定層について省略することを特徴とする。ここで所定層とは前記複数層のうち光照射される一層以外の層である。」(段落【0005】) (5) 「さて本実施例では図3のステップS22とS24で、内部領域には隔層ごとに照射して隔層ごとに照射を省略するようにしているが、ステップS22を3の倍数か否かで判別するようにすると、第3、第6、第9層で内部領域が光照射され、それ以外の層では内部領域での光照射を省略することもできる。一般的には複数層ごとに1回光照射すればよい。」(段落【0017】) 3.対比 ・判断 上記2.の(1)ないし(5)に記載の事項を総合すると、上記刊行物には、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。 「造形希望形状を複数の層にスライスする断面群のデータに基づいて、光硬化性液の液面の上記断面群のうちの一断面に相当する領域内を光照射する光照射工程と、上記光照射工程で形成される断面硬化層の表面を未硬化状態の光硬化性液でコートする工程とを、上記光照射工程で扱う断面を隣接する断面に切換えながら繰返すことで断面硬化層を積層一体化し、全体として光硬化性液を用いて造形希望形状を呈する三次元物体を造形する光硬化造形法であって、上記断面群の輪郭部分は全層について光照射し、輪郭内部領域は複数層ごとに光照射するようにして、上記複数層ごとに上記光照射を省略し、上記光照射により輪郭部分である最下段層に相当する平面形状を備えるとともに所定の厚みを有する断面硬化層を形成し、次いで、輪郭内部領域の複数層ごとの一断面に相当する領域内の光照射により該断面に相当する平面形状を有するとともに所定の厚みを有する断面硬化層を形成する光硬化造形法。」 そこで、本願発明と刊行物発明とを対比する。 (a)各文言の意味、機能又は構成等からみて、後者の「光硬化性液」は前者の「光硬化性樹脂」に相当し、以下順に、「三次元物体」は「立体物」に、「積層一体化」は「積層」に、「光硬化造形法」は「積層光造形法」にそれぞれ相当する。 (b)後者の「光硬化造形法」は、「造形希望形状を呈する三次元物体を造形」するものであるから、後者の「造形希望形状」は、前者の「所望立体形状」に相当する。 (c)後者の「光硬化造形法」が、「造形希望形状を複数の層にスライスする断面群のデータに基づいて、光硬化性液の液面の上記断面群のうちの一断面に相当する領域内を光照射する光照射工程と、上記光照射工程で形成される断面硬化層の表面を未硬化状態の光硬化性液でコートする工程とを、上記光照射工程で扱う隣接する断面に切換えながら繰返すことで断面硬化層を積層一体化」するものであって、「上記断面群の輪郭部分は全層について光照射し、輪郭内部領域は複数層ごとに光照射するようにして、上記複数層ごとに上記光照射を省略し、上記光硬化性液の液面の領域への光照射により輪郭部分である最下段層に相当する平面形状を備えるとともに所定の厚みを有する断面硬化層を形成」するものであるということは、後者は、前者の「所望立体形状を任意厚さの断面層に区分し、各断面層における所望立体形状の輪郭部分」に「対応する領域の光硬化性樹脂を硬化させて輪郭硬化層を順次形成」する工程を備えるとともに、前者の「輪郭硬化層の複数層」「おきに、断面層の全部分に対応する領域の光硬化性樹脂を硬化させて平板硬化層」を「複数層」「積層させる」工程を備えてなるものといえる。 (d)後者は「上記複数層ごとに上記光照射を省略」するものであるから、前者の「各断面層における所望立体形状の輪郭部分」に「対応する領域」のうち「各断面層における所望立体形状の輪郭部分のみに対応する領域」の光硬化性樹脂を硬化させる工程を備えてなるものといえる。 上記(a)ないし(d)から、両者は、 「所望立体形状に対応する領域の光硬化性樹脂を光照射により硬化させることにより所望立体形状を有する立体物を造形する光造形法であって、所望立体形状を任意厚さの断面層に区分し、各断面層における所望立体形状の輪郭部分のみに対応する領域の光硬化性樹脂を硬化させて輪郭硬化層を順次形成し積層する際に、輪郭硬化層の一層もしくは複数層おきに、断面層の全部分に対応する領域の光硬化性樹脂を硬化させて平板硬化層を一層もしくは複数層形成し積層させる積層光造形法。」で一致しており、両者に相違はない。 したがって、本願発明は、刊行物発明といえる。 4.当審の判断 したがって、本願発明は、特許法第29条第1項3号に規定する発明に該当し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-01 |
結審通知日 | 2006-05-02 |
審決日 | 2006-05-15 |
出願番号 | 特願平8-299000 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(B29C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 浩 |
特許庁審判長 |
増山 剛 |
特許庁審判官 |
澤村 茂実 野村 康秀 |
発明の名称 | 積層光造形法 |
代理人 | 岡崎 謙秀 |