• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1139253
審判番号 不服2003-17255  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-04 
確定日 2006-07-06 
事件の表示 特願2000-300461「紙ホルダー付装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月 9日出願公開、特開2002-103734〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は平成12年9月29日の出願であって、平成15年7月30日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月4日付けで本件審判請求がされるとともに、同年10月6日付けで明細書についての手続補正(特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成15年10月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「印刷及び/又はスキャナ機能を有する装置本体と、該装置本体に内蔵されて外部機器との間で電波によるデータの伝送を行う無線通信部と、該無線通信部の電波を前記外部機器との間で送受信するアンテナと、前記装置本体の給紙側及び排紙側の少なくとも一方に突出して設けられた紙ホルダーとを備えた紙ホルダー付装置において、前記装置本体と前記紙ホルダーとが接続手段により電気的に接続されており、前記アンテナは前記紙ホルダーに内臓されていることを特徴とする紙ホルダー付装置。」から
「印刷及び/又はスキャナ機能を有する装置本体と、該装置本体に内蔵されて外部機器との間で電波によるデータの伝送を行う無線通信部と、該無線通信部の電波を前記外部機器との間で送受信するアンテナと、前記装置本体の給紙側及び排紙側の少なくとも一方に突出して設けられた紙ホルダーとを備えた紙ホルダー付装置において、前記装置本体と前記紙ホルダーとが接続手段により電気的に接続されており、前記紙ホルダー内に前記紙ホルダーとは別製の平面タイプの前記アンテナを内蔵したことを特徴とする紙ホルダー付装置。」と補正された。
上記補正では、補正前の「前記アンテナは前記紙ホルダーに内臓されている」が、補正後は「前記紙ホルダー内に前記紙ホルダーとは別製の平面タイプの前記アンテナを内蔵した」となっている。

2.新規事項についての検討
上記補正後の請求項1に記載された「前記紙ホルダー内に前記紙ホルダーとは別製の平面タイプの前記アンテナを内蔵した」点が、願書に最初に添附した明細書又は図面に記載されているかどうか検討する。
「別製」は、特別に製作されたもの[【別製】特別に念を入れて作ること。特製。(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)、特別にこしらえること。また、そのもの。特別製。特製(三省堂 大辞林)]を意味し、上記補正後の請求項1では、アンテナを特別に製作、すなわち、紙ホルダーをアンテナと別に製作することの意味に用いられていると解される。
したがって、補正後の請求項1の記載によると、紙ホルダーと、平面タイプのアンテナがそれぞれ別々に製作され、製作された平面タイプのアンテナが、製作された紙ホルダーに内蔵されていると解さざるを得ない。
上記「前記紙ホルダー内に前記紙ホルダーとは別製の平面タイプの前記アンテナを内蔵した」と同一の記載は、願書に最初に添附した明細書にはなく、請求人は、上記補正の根拠として「この実施の形態では、アンテナ3として平面タイプのものを採用し、該アンテナ3を給紙ホルダー4に内蔵している(図2参照)。そして、給紙ホルダー4に内蔵された平面タイプのアンテナ3」(段落【0016】)の記載を挙げている。しかしながら、上記段落【0016】には、紙ホルダー内に平面タイプのアンテナを内蔵した点は記載されているが、アンテナとは別に製作された紙ホルダーに内蔵されている点は記載されていない。
又、第2図には、給紙ホルダー内にアンテナを内蔵した例を示す説明的斜視図が記載されてはいるが、上記第2図からもアンテナとは別に製作された紙ホルダーに内蔵されている点が記載されていると認めることができない。
他に、願書に最初に添附した明細書及び図面には上記の点に関する記載はない。
一方、補正後の請求項1に係る発明の記載では、紙ホルダー内に内蔵した平面タイプのアンテナは、紙ホルダーとは別製(別に製作されたもの)である。
そうすると、補正後の請求項1に記載のものは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲外のものを含むものであるから、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件の判断(その1)
本件補正前後の請求項1の記載を比較すると、補正前の「アンテナ」に「紙ホルダーとは別製の平面タイプ」との限定を付しているから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものと認める。
補正後の請求項1の「紙ホルダー内に前記紙ホルダーとは別製の平面タイプの前記アンテナを内蔵した」という記載が、請求人が補正の根拠として挙げた段落【0016】の記載に基づくもの、すなわち、紙ホルダーの製造過程において、別に製作されたアンテナを内蔵させてとの趣旨であるとすれば、その内容を的確に表現したものとはいえず、明確でない。
上記記載はその意味内容が不明であるから、補正後の【請求項1】の記載は明確でなく特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たさない。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、特許法第17条の2第5項で読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に違反しているから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.独立特許要件の判断(その2)
(1)補正発明
本件補正後の請求項1には、3.独立特許要件の判断(その1)で述べたとおりの記載不備があるから、「前記紙ホルダー内に前記紙ホルダーとは別製の平面タイプの前記アンテナを内蔵した」は、「前記紙ホルダー内に別製の平面タイプの前記アンテナを内蔵した」の誤記、すなわち、紙ホルダーの製造過程において、別に製作されたアンテナを内蔵させてとの趣旨であるとして、本件補正後の請求項1に係る発明を次のように認定した。
「印刷及び/又はスキャナ機能を有する装置本体と、該装置本体に内蔵されて外部機器との間で電波によるデータの伝送を行う無線通信部と、該無線通信部の電波を前記外部機器との間で送受信するアンテナと、前記装置本体の給紙側及び排紙側の少なくとも一方に突出して設けられた紙ホルダーとを備えた紙ホルダー付装置において、前記装置本体と前記紙ホルダーとが接続手段により電気的に接続されており、前記紙ホルダー内に別製の平面タイプの前記アンテナを内蔵したことを特徴とする紙ホルダー付装置。」(以下、「補正発明」という。)

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-127841号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「記録装置」に関して、以下の記載が図示とともにある。
イ.【請求項4】 画像信号に基づいて記録ヘッドのドット形成素子を駆動しながら記録媒体上にドットパターンを形成していく記憶手段と、前記記録媒体を記録動作に合わせて搬送する搬送機構と、無線を利用してホスト装置より送られてくる信号あるいはホスト装置へ送る信号の通信を行う無線通信手段とを有する記録装置において、装置の外装より突出した紙ガイド部材により、前記無線通信用の空中線を構成したことを特徴とする記録装置。
ロ.【0009】本発明は、アンテナ専用の部材を設けることなく無線通信によりホスト装置との間でデータをやり取りでき、装置の省スペース化を達成できる記録装置を提供することを目的とする。
ハ.【0029】アンテナの性能を上げるためには付近の障害物がないことが望ましい。このため記録装置の上部に設置されるガイド用の金属バー、例えば図4に示すように、連続紙のガイドとして用いるセパレータ3011、あるいは排紙された記録用紙をスタックするためのスタックバー3012など、記録装置のいわゆる外装の外部に設けられた金属性のガイドバーをアンテナとして利用してもよい。
上記「画像信号に基づいて記録ヘッドのドット形成素子を駆動しながら記録媒体上にドットパターンを形成していく」(前記イ.)の記載から、刊行物1に記載された記録装置は印刷機能を有する装置であることが明白であり、
刊行物1の「空中線」は、「アンテナ」に相当する[空中線 アンテナのこと。(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)参照]から、
上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「印刷機能を有する装置と、無線を利用してホスト装置より送られてくる信号あるいはホスト装置へ送る信号の通信を行う無線通信手段とを有する記録装置において、アンテナ専用の部材を設けることなく、記録装置の上部に設置されるガイド用の金属バー、例えば、連続紙のガイドとして用いるセパレータ3011、あるいは排紙された記録用紙をスタックするためのスタックバー3012などにより、無線通信用のアンテナを構成した記録装置。」

(3)対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、
刊行物1記載の発明においては装置本体という用語を用いていないが、刊行物1記載の発明において記録装置のアンテナとして利用される紙ホルダー以外の部分が装置本体といえることは明らかであり、装置本体に外部機器との間で電波によるデータの伝送を行う無線通信部が内蔵されていることも明らかである。
刊行物1記載の発明の「ホスト装置」、「セパレータ3011」、「スタックバー3012」、「ガイド用の金属バー」および「上部に設置された」は、それぞれ、
補正発明の「外部機器」、「給紙側に設けられた紙ホルダー」、「排紙側に設けられた紙ホルダー」、「紙ホルダー」および「突出して設けられた」に相当し、
刊行物1記載の発明の「装置」は、紙ホルダーであるガイド用の金属バーを備えているから、紙ホルダー付装置といえ、
刊行物1記載の発明の「ガイド用の金属バー」と、補正発明の「紙ホルダー」は、共に「アンテナとして利用する」点で共通するから、両者は、
「印刷及び/又はスキャナ機能を有する装置本体と、該装置本体に内蔵されて外部機器との間で電波によるデータの伝送を行う無線通信部と、該無線通信部の電波を前記外部機器との間で送受信するアンテナと、前記装置本体の給紙側及び排紙側の少なくとも一方に突出して設けられた紙ホルダーとを備えた紙ホルダー付装置において、アンテナとして利用される紙ホルダー付装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]装置本体と紙ホルダーとが、補正発明は、接続手段により電気的に接続されているのに対し、刊行物1記載の発明は、両者の電気的接続について記載がない点。
[相違点2]補正発明は、紙ホルダー内に別製の平面タイプのアンテナが内蔵されてなるのに対し、刊行物1記載の発明は、金属性の紙ホルダー自体がアンテナである点

(4)判断
i.上記相違点1について検討する。
装置本体とアンテナとを接続手段により電気的に接続することは従来から周知である(実願平3-55046号(実開平5-9011号)のCD-ROM(段落【0005】参照。)。刊行物1に明記されていなくとも、紙ホルダーをアンテナとして兼用する刊行物1記載の発明においても、紙ホルダは、装置本体の電気基板と電気的に接続されている事が自明であり、両者の電気的接続にあたり上記従来周知の技術を採用し、接続手段を用いることは当業者にとって想到容易である。
ii.上記相違点2について検討する。
電波によるデータの電送を行う無線通信部とアンテナを備えた装置において、別製の平面タイプのアンテナを他機能を有する部材に内蔵させることが従来から周知(特開平11-8893号公報(「頭部に装着するためのバンド部と、このバンド部に所定の間隔で複数内蔵された平面アンテナ」段落【0009】、「フレキシブル基板13には...表面に、四角形の導体(銅板)で構成される平面アンテナ4a,4b,4cが張りつけられる構成とし」段落【0017】)、特開平9-36640号公報(「アンテナ素子40は、樹脂等の絶縁体材質を用いたバンド部に、金属板...により形成される。したがって、型抜きや...などの安易な方法で、各種の形状の平面アンテナをバンド部に内蔵...製造できる。」段落【0036】)参照。)であり、平面タイプのアンテナは、容易に入手できる(特表平9-512158号公報「アンテナコイルの特別な利点は、それがたとえばマイラー(デュポン社の商標)製平帯導体のような自由市場で入手可能な導体帯を設けられている保持体帯から製造できることである。」第3頁)から、紙ホルダーをアンテナとして兼用するにあたり、刊行物1記載の発明の紙ホルダー自体をアンテナとすることに代えて、紙ホルダーに別製の平面タイプのアンテナを内蔵させることは、当業者が容易に想到できたものである。
そして、相違点1、2にかかる構成を採用した補正発明の作用効果も、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、特許法第17条の2第5項で読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に違反しているから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年10月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成15年4月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「印刷及び/又はスキャナ機能を有する装置本体と、該装置本体に内蔵されて外部機器との間で電波によるデータの伝送を行う無線通信部と、該無線通信部の電波を前記外部機器との間で送受信するアンテナと、前記装置本体の給紙側及び排紙側の少なくとも一方に突出して設けられた紙ホルダーとを備えた紙ホルダー付装置において、前記装置本体と前記紙ホルダーとが接続手段により電気的に接続されており、前記アンテナは前記紙ホルダーに内蔵されていることを特徴とする紙ホルダー付装置。」
なお、請求項1には「内臓」と記載されているが、内蔵の誤記と認め、本願の請求項1に係る発明を上記のように認定した。

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記第2 補正の却下の決定4.独立特許要件の判断(その2)(2)刊行物で記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2補正却下の決定(1)補正発明で認定した補正発明から、「アンテナ」の限定事項である「紙ホルダーとは別製の平面タイプ」との構成を除いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項を全て含み、さらに、他の事項を付加したものに相当する補正発明が、前記第2 補正の却下の決定で記載したとおり、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-08 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-05-23 
出願番号 特願2000-300461(P2000-300461)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 徹弥畑井 順一桐畑 幸▲廣▼  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤井 靖子
長島 和子
発明の名称 紙ホルダー付装置  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 藤綱 英吉  
代理人 須澤 修  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ