ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61B |
---|---|
管理番号 | 1140101 |
審判番号 | 不服2003-23335 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-02-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-01 |
確定日 | 2006-07-12 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第179240号「中央処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月13日出願公開、特開平 8- 38435〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許出願 平成 6年 7月29日 拒絶理由通知 平成15年 2月 3日付け 手続補正 平成15年 4月 8日付け 拒絶理由通知《最後》 平成15年 6月19日付け 手続補正 平成15年 8月22日付け 補正の却下の決定 平成15年10月27日付け (平成15年8月22日付けの手続補正を 却下) 拒絶査定 平成15年10月27日付け (平成15年6月19日付け拒絶理由通知 《最後》で示した理由に基づき拒絶査定 ) 審判請求 平成15年12月 1日 手続補正 平成15年12月26日付け 2.平成15年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年12月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正内容 本件補正は、次の補正事項を含むものである。 補正前の平成15年4月8日付けの手続補正書に、請求項1において「……前記計測データと前記識別情報とに基いて前記診断検査装置を選択する選択手段……」と記載していたのを、「……前記計測データの種類と前記識別情報に含まれる診断可能情報とに基づいて、前記複数の診断検査装置の中から前記計測データを診断可能な診断検査装置を選択する選択手段……」と補正する。 (2)補正の適否の検討 前記請求項1での補正を検討すると、用語「診断可能情報」は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載されておらず、請求人が補正の根拠と主張[平成15年8月22日付け手続補正書(補正の却下されている)と同日付けで提出した意見書中で主張]する本願明細書段落0034の記載「【0034】すなわち、心電、心拍、血圧等の検査診断を行うことができる個人開業医、病院、試験センタ等のリストが予め記憶部206に記憶されており、これらの中から計測データの送信先を選択し、選択した個人開業医、病院、試験センタ等の識別情報を付加した形で送信される。……」を参照しても、識別情報が診断可能情報を含むことについて記載がなく、識別情報が診断可能情報を含むことが自明な事項でもないから、この補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 (3)むすび よって、この補正は平成6年改正前の特許法第17条の2第2項で準用する特許法第17条第2項の規定(新規事項の追加禁止)に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明 平成15年8月22日付けの手続補正は、原審査で既に却下されており、平成15年12月26日付けの手続補正も、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成15年4月8日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1の記載は、次のものである。 「【請求項1】端末装置と、複数の診断検査装置とに通信回線を介して接続された中央処理装置であって、 前記端末装置から計測データを受信する計測データ受信手段と、 前記複数の診断検査装置の識別情報を記憶する記憶手段と、 前記計測データと前記識別情報とに基づいて前記診断検査装置を選択する選択手段と、 前記選択手段で選択した診断検査装置に前記計測データを送信する計測データ送信手段とを備えることを特徴とする中央処理装置。」 4.引用刊行物 原査定の拒絶理由で示された刊行物は次のものである。 刊行物1:特開平4-371135号公報 刊行物1には、 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、一般に、医学診断システムに関し、特に、生理的データを収集し、監視し、次いでこのデータを医学的評価のために遠隔地点へ転送する電気システムに関する。……」、 「【0004】【発明が解決しようとする課題】幸いなことに、世界の大部分は、遠隔地域間にデータ及び情報を伝送するために商用的に利用可能な巨大かつ広範な電気通信回路網の業務を提供されている。実際、この現存する回路網は、電話、ファクシミリ機械、及び中央処理ユニット(以下、CPUと呼ぶ)を含む各種型式の装置によって呼出し可能である。本発明は、患者から適正な医者へ、心電計履歴のような生理的データを伝送するためにこの回路網の融通性、信頼性、及び便利性を有効に使用できること及び使用すべきであることを認識している。……」、 「【0007】本発明によれば、そのデータ処理システムは中央処理ユニット(以下、CPUと呼ぶ)を含み、このCPUは適当な電話線路を経由して複数の送信装置の少なくとも1つと接続可能である。このCPU自体は、複数の受信局と接続可能であり、かつ特定の送信装置からの到来信号を選択した受信局へ送信することができる。したがって、特定の患者からの生理的データは、この送信装置から直接に電話線路を経由して、またこのCPUを通して選択した受信局に伝送される。」、 「【0010】本発明に対して意図しているように、監視装置12は、ハーネス18を通して患者16に接続される。特に、ハーネス18は、電極20aおよび20bのような、複数の電極20を含み、これらの電極は、筋肉活動によって起こされる身体の互いに異なる部分間の瞬時電位差を検出する目的のために患者16の身体表面に接続可能である。ここにおけるように、監視される筋肉が心臓である特殊な場合には、ハーネス18及び電極20は、関連技術において周知のように、心電図(ECG)を発生するために有効な型式のものである。図1に示されるように、ハーネス18は、線路22を経由し監視装置12に電気的に接続される。したがって、患者16の心筋の収縮によって発生される瞬時電気信号は、電極20によって検出され、かつハーネス18を経由して、かつ線路20を通して、監視装置12へ転送される。」、 「【0011】監視装置12と送信装置14との間の動作接続は、光学的に達成される。……」、 「【0015】……。また、図2は、送信装置14が、その動作する特定のモードを表示しかつ制御するために送信装置14の他の電気的構成要素に電気的に接続された表示装置及びキーボード60を有することを、示す。例えば、表示装置及びキーボード60上のキー(図に示されていない)は、監視装置12から送信装置14を通して電話伝送線路30への通信を開始するのに使用される。……」、 「【0016】装置10の動作、図3を参照することによって、おそらく最も良く判るであろう。個々の患者(例えば、患者16,16′,及び16″)は、各々がそれぞれの監視装置12,12′,及び12″を備えており、これは、それぞれの信号32を検出しかつ記憶するために、患者16,16′,及び16″に適正に取り付けられる。……、実際は、各患者16、ほとんどの場合、それぞれの個人的使用に利用可能な専用の送信装置14を有しているであろう。」、 「【0017】……。したがって、CPU62は、どの特定の送信装置14からの伝送をも選択受信局64a,64b,又は64cに通じることができる。」、 「【0019】【発明の効果】したがって、装置10及びこれに接続可能のデータ処理システムで以て、患者16からの生理的データを表示する信号32は、これらのデータを医者が適正に評価することができる選択した受信局64へ、通信路に沿って直接的に通信される。……。さらに考えれば、このことは、患者からデータ処理システムへの実時間データ伝送を可能とする。」、 が記載されている。 4.刊行物1記載の発明 刊行物1において、 ア)段落【0007】、【0010】、【0011】に、患者の生理状態を計測する計測装置と結合されており、患者からの生理的データを送信することができる送信装置が記載されている。 イ)段落【0017】,【0019】に、患者からの生理的データを医者が適正に評価することができる複数の受信局が、記載されている。 ウ)段落【0004】,【0007】に、送信装置と複数の受信局とに商用電気通信回路網を介して接続された「中央処理ユニット(CPU)」が記載されている。 エ)段落【0007】に「このCPU自体は、複数の受信局と接続可能であり、かつ特定の送信装置からの到来信号を選択した受信局へ送信することができる。したがって、特定の患者からの生理的データは、この送信装置から直接に電話線路を経由して、またこのCPUを通して選択した受信局に伝送される。」ことが記載されており、この記載は、図3での部材番号表記を用いて具体的に述べると、特定の送信装置14からの到来信号であれば、CPUは例えば受信局64aを選択し、特定の送信装置14’からの到来信号であれば、CPUは例えば受信局64bを選択し、したがって、特定の患者16に係る送信装置14からの生理的データは、このCPUを通して選択した受信局64aに伝送され、また特定の患者16’に係る送信装置14’からの生理的データは、このCPUを通して選択した受信局64bに伝送され、という意味と解することができる。よって、中央処理装置(CPU)に、どの特定の送信装置ないしどの特定の患者からの生理的データであるかということと、各特定の受信局は、どの特定の送信装置ないしどの特定の患者からの生理的データが送信されるようにと予め取り決めされた各特定の受信局であるか、という情報に基いて受信局を選択できるようにする選択手段を設けることが記載されているものと認められる(予め取り決めされていなければ、患者16のデータは、受信局64aに送信すればよいのか、64bに送信すればよいのか、選択できない)。 このことは、段落【0019】に「【発明の効果】したがって、装置10及びこれに接続可能のデータ処理システムで以て、患者16からの生理的データを表示する信号32は、これらのデータを医者が適正に評価することができる選択した受信局64へ、通信路に沿って直接的に通信される。……」と記載されていることからも明らかである。 要するに、段落【0007】には、生理的データと各受信局に係る情報に基づいて、どの送信装置から、ないし、どの患者からの生理的データであれば、どの受信局を選択するかについての予めの取り決めを用いて、受信局を選択する選択手段を中央処理装置に設けることが実質上記載されていると認められる。 オ)また、中央処理装置に送信装置からの生理的データを受信する生理的データ受信手段を設けること、及び、中央処理装置に選択手段で選択した受信局生理的データを送信する送信手段を設けることは、刊行物1に明示記載がなくても当然に必要な事項である。 以上ア)、イ)、ウ)、エ)、オ)から、刊行物1には、 患者の生理状態を計測する計測装置と結合されており、患者からの生理的データを送信することができる送信装置と、患者からの生理的データを医者が適正に評価することができる複数の受信局とに商用通信回線を介して接続された中央処理ユニットであって、 送信装置からの生理的データを受信する生理的データ受信手段と、 生理的データと各受信局に係る情報に基づいて、どの受信局を選択するかについての予めの取り決めを用いて、受信局を選択する選択手段と、 選択手段で選択した受信局に生理的データを送信する生理的データ送信手段とを備えること、 を特徴とする中央処理装置、 の発明が記載されている。 5.対比・検討 先ず、本願請求項1に記載の「診断検査装置」について検討すると、本願明細書の段落【0022】で「診断検査装置300は個人開業医、病院、試験センターに相当する」と記載し、図1でも、診断検査装置が専門担当医A,B,C,Dから構成されている旨記載しており、「個人開業医、病院、試験センタ」又は「専門担当医」といった人物や病院施設は、診断検査装置自体ではないにも拘わらず、診断検査装置であると呼称していることが明らかである。実際、本願明細書及び図面には、通信回線を介して接続される診断検査装置として、診断検査する「装置自体」を採用した実施例は皆無である。 したがって本願請求項1に記載の「診断検査装置」は、本願明細書の記載を参酌して「個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等」であると読み替えて、本願請求項1に係る発明を解釈するのが相当である。 次に、本願請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明の「生理的データ」、「患者の生理状態を計測する計測装置と結合されており、患者からの生理的データを送信することができる送信装置」、「患者からの生理的データを医者が適正に評価することができる複数の受信局とに商用通信回線を介して接続」、「中央処理装置(CPU)」、「受信局に生理的データを送信」が、それぞれ本願請求項1に係る発明の「計測データ」、「端末装置」、「複数の個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等とに通信回線を介して接続」、「中央処理装置」、「個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等に前記計測データを送信」に相当する。 そして、本願請求項1に係る発明で、「複数の個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等の識別情報」というのは、専門担当医Aと専門担当医Bは、違うから、両者を識別できるようにした情報のことで、例えばコード番号といったもののことと認められ、本願請求項1に係る発明で、計測データと、識別情報に基いて送信すべき個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等を選択するというのは、どの計測データであれば、どの個人開業医、試験センタまたは専門担当医等を選択するかという予めの取り決めを用いて、送信宛先である個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等を選択する、ということと認められる(そのような予めの取り決めがなければ、選択ができない)。 そして、本願請求項1に係る発明での、識別情報と、刊行物1記載の発明での受信局の情報(受信局64aであったり、受信局64bであったりとい情報)とは、両者ともに、送信宛先の情報という点で共通し、本願請求項1での、送信すべき個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医と、刊行物1に記載の受信局は、両者ともに、送信宛先であるということにおいて、共通するから、 両者は、 端末装置と、複数の個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等とに通信回線を介して接続された中央処理装置であって、 前記端末装置から計測データを受信する計測データ受信手段と、 計測データと送信宛先の情報とに基いて送信宛先を選択する選択手段と、 前記選択手段で選択した個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等に前記計測データを送信する計測データ送信手段とを備えることを特徴とする中央処理装置、 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本願請求項1に係る発明は、中央処理装置が、複数の個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等の識別情報を記憶するものであるのに、刊行物1記載の発明は、中央処理装置が送信宛先の情報を記憶することについて記載がなく、また記憶する送信宛先が、複数の個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等の識別情報で与えられているものであることについても記載がない点。 相違点2 本願請求項1に係る発明は、計測データと複数の個人開業医、病院、試験センタまたは担当医等の識別情報とに基いて、個人開業医、病院、試験センタまたは専門担当医等を選択する選択手段であるのに対し、刊行物1記載の発明は、生理的データ(「計測データ」に相当)と受信局の情報とに基いて、受信局を選択する選択手段である点。 前記相違点1について検討すると、 刊行物1記載の発明は、前記したとおり、CPUは、生理的データと各受信局に係る情報に基づいて、どの受信局を選択するかについての予めの取り決めを用いて、受信局を選択するものであるが、そのために、それら選択のための予めの取り決めを、テーブルないし対照表として、CPUに記憶するようにすることは、当業者が普通に採用する設計的事項と認められ、それらテーブルないし対照表自体が、受信局の情報を記憶したものということができ、その際、受信局について識別情報(例えばコード番号化がそれに該当し、コード番号「64a」の受信局とか、コード番号「64b」の受信局とかの識別情報)を与えて記憶することも当然のことと認められる。 そして、刊行物1の受信局は、患者からの生理的データを医者が適正に評価することができる受信局のことであり、ある受信局を選択するということは、その受信局に係る医師や病院を決定するということに外ならないから、刊行物1記載の発明において、受信局の識別情報を記憶することに代えて、医師や病院等の識別情報を記憶することは当業者が容易に採用できたものである。 前記相違点2について検討すると、 刊行物1の受信局は、患者からの生理的データを医者が適正に評価することができる受信局のことであり、ある受信局を選択するということは、その受信局に係る医師や病院を決定するということに外ならないから、刊行物1記載の発明において、生理的データと受信局の情報(例えばコード番号化された受信局の識別情報)とに基いて受信局を選択する選択手段に代えて、生理的データと複数の医師や病院の識別情報とに基いて、医師や病院を選択する選択手段を採用することは、当業者が容易に想到できたものである。 6.むすび したがって、本願請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明および従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-24 |
結審通知日 | 2006-05-09 |
審決日 | 2006-05-22 |
出願番号 | 特願平6-179240 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小田倉 直人 |
特許庁審判長 |
高橋 泰史 |
特許庁審判官 |
菊井 広行 櫻井 仁 |
発明の名称 | 中央処理装置 |