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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1140238
審判番号 不服2004-1688  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-07-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-23 
確定日 2006-07-19 
事件の表示 特願2000-397000「複数人同時参加型通信システムの制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月12日出願公開、特開2002-199107〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成12年12月27日を出願日とする出願であって,平成15年12月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成16年1月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成16年2月5日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月5日付けの手続補正を却下する。
[理由]
平成16年2月5日付けの手続補正(以下,「本願手続補正」という。)は,特許法第17条の2第1項第3号に該当する補正であって,
出願当初の特許請求の範囲である
「【特許請求の範囲】
【請求項1】参加者が操作する複数の端末から発呼された呼の経路制御手段を有するトランク装置と,該トランク装置を制御する制御装置と,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する参加者選択装置と,複数の呼が相互に且つ同報的に通信することができる相互同報通信装置とを有する複数人同時参加型通信システムの制御方法であって,
前記トランク装置が,前記複数の端末から発呼された複数の呼を,前記参加者選択装置に呼接続する第1の段階と,
前記参加者選択装置が,前記複数の呼の中から,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する第2の段階と,
前記トランク装置が,参加が決定した前記複数の呼を,前記相互同報通信装置へ切り替える第3の段階と,
前記相互同報通信装置が,参加が決定した前記複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させる第4の段階と
を有することを特徴とする,複数人同時参加型通信システムの制御方法。
【請求項2】前記第2の段階について,前記参加者選択装置が,複数の呼の間で相互に且つ同報的にメッセージを交換させ,参加者に所望の通信サービスのグループを選択させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】前記第1の段階について,前記制御装置が,前記端末を操作する参加者を認証することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】前記第1の段階について,前記制御装置が,前記端末を操作する参加者毎に課金することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】前記第1の段階について,前記制御装置が,参加者毎に予め指定された接続回数又は接続料金を越える接続を拒絶するコールカウントチェックを行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】前記通信サービスのグループが,ゲームに参加するグループ又はテレビ会議に参加するグループであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】前記参加者選択装置は,参加者の個人情報及びゲーム結果履歴情報を記憶するデータベースを有し,
前記第2の段階について,前記データベースを用いて,参加者の個人情報及び/又はゲーム結果履歴情報によって参加すべきゲームが選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】参加者が操作する複数の端末から発呼された呼の経路制御手段を有するトランク装置と,該トランク装置を制御する制御装置と,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する参加者選択装置と,複数の呼が相互に且つ同報的に通信することができる相互同報通信装置とを有する複数人同時参加型通信システムであって,
前記トランク装置が,前記複数の端末から発呼された複数の呼を,前記参加者選択装置又は前記相互同報通信装置に呼接続する手段を有し,
前記参加者選択装置が,前記複数の呼の中から,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する手段を有し,
前記相互同報通信装置が,参加が決定した前記複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させる手段を有する
ことを特徴とする複数人同時参加型通信システム。」(以下,「補正前の特許請求の範囲」という。)を,
本願手続補正により,
「【特許請求の範囲】
【請求項1】参加者が操作する複数の端末から発呼された呼の経路制御手段を有するトランク装置と,該トランク装置を制御する制御装置と,特定のゲームサービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する参加者選択装置と,複数の呼が相互に且つ同報的に通信することができる相互同報通信装置とを有する複数人同時参加型通信システムの制御方法であって,
前記参加者選択装置は,参加者のゲーム結果履歴情報を記憶するデータベースを有しており,
前記トランク装置が,前記複数の端末から発呼された複数の呼を,前記参加者選択装置に呼接続する第1の段階と,
前記参加者選択装置が,前記データベースを用いて,前記参加者のゲーム結果履歴情報によって,前記複数の呼の中から前記特定のゲームサービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する第2の段階と,
前記トランク装置が,参加が決定した前記複数の呼を,前記相互同報通信装置へ切り替える第3の段階と,
前記相互同報通信装置が,参加が決定した前記複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させる第4の段階と
を有することを特徴とする,複数人同時参加型通信システムの制御方法。
【請求項2】前記第2の段階について,前記参加者選択装置が,複数の呼の間で相互に且つ同報的にメッセージを交換させ,参加者に所望のゲームサービスのグループを選択させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】前記第1の段階について,前記制御装置が,前記端末を操作する参加者を認証することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】前記第1の段階について,前記制御装置が,前記端末を操作する参加者毎に課金することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】前記第1の段階について,前記制御装置が,参加者毎に予め指定された接続回数又は接続料金を越える接続を拒絶するコールカウントチェックを行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。」(以下,「補正後の特許請求の範囲」という。)と,補正するものである。

この手続補正によれば,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,以下(ア)〜(ウ)のように補正されたということができる。
(ア)補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されていた「通信サービス」を,補正後の特許請求の範囲の請求項1では,「ゲームサービス」と具体化している。
(イ)補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されていた「参加者選択装置」について,補正後の特許請求の範囲の請求項1では,「参加者のゲーム結果履歴情報を記憶するデータベースを有して」いる旨の構成を付加することにより,さらに具体化している。
(ウ)補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されていた「前記参加者選択装置が,前記複数の呼の中から前記特定のゲームサービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する」(第2の段階)ための条件について,特段の規定がなかったものを,補正後の特許請求の範囲の請求項1では,「前記データベースを用いて,前記参加者のゲーム結果履歴情報によって」いる旨の具体化をしている。

上記(イ)の点について検討する。
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下,「当初明細書」という。)には,「参加者のゲーム結果履歴情報を記憶するデータベース」に関して,【請求項7】に「前記参加者選択装置は,参加者の個人情報及びゲーム結果履歴情報を記憶するデータベースを有し,前記第2の段階について,前記データベースを用いて,参加者の個人情報及び/又はゲーム結果履歴情報によって参加すべきゲームが選択される」(以下,「記載事項1」という。),段落番号【0009】に「参加者選択装置は,参加者の個人情報及びゲーム結果履歴情報を記憶するデータベースを有し,第2の段階について,データベースを用いて,参加者の個人情報及び/又はゲーム結果履歴情報によって参加すべきゲームが選択される」(以下,「記載事項2」という。)と記載されているのみであり,また,ゲーム結果履歴情報に類似するものとして,「ゲーム履歴」との記載が,段落番号【0015】に「制御装置8は,データベース9を有する。データベース9は,端末を操作する参加者を認証するための認証情報と,課金情報と,コールカウントチェック情報と,当該参加者の過去のゲーム履歴情報とを含むものである。このように参加者の個人情報等を管理することにより,様々なサービスを提供することができる。」(以下,「記載事項3」という。)と記載されている。
上記記載事項1には,「参加者の個人情報及びゲーム結果履歴情報」と記載されているのであるから,「参加者の個人情報」の部分を削除し,「データベース」に「ゲーム結果履歴情報」のみが含まれている発明が記載されているということはできない。したがって,補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,補正前の特許請求の範囲の請求項7に係る発明ではないから,請求項を削除したということはできない。したがって,特許法17条の2第4項第1号の規定には該当しない。
また,上記記載事項2は,実質的に,請求項7の単なるコピーでしかなく,しかも,「データベース」に「ゲーム結果履歴情報」のみが含まれている場合については記載も示唆もされていないから,発明の詳細な説明中のこの記載の開示のみを根拠に,補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が,補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を当初明細書に開示の範囲内で限定したものであるとすることもできない。そして,上記記載事項3における「データベース」は,図番「9」を引用していることからも明らかなように,「参加者選択装置」の有しているデータベースではなく,制御装置が有しているのものであるから,この記載を根拠に,補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が,補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を当初明細書に開示の範囲内で限定したものであるとすることもできない。 したがって,以上の検討から明らかなように,「参加者選択装置」が「参加者のゲーム結果履歴情報を記憶するデータベースを有して」いる点は,当初明細書に記載も示唆もされていない事項であるから,特許法第17条の2第3項に規定にも実質的に違反するものである。

以上のとおりであるから,上記(ア)(ウ)について検討するまでもなく,本願手続補正は,上記(イ)の点において,特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年2月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,上記補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。
再掲すれば,以下のとおりである。
「参加者が操作する複数の端末から発呼された呼の経路制御手段を有するトランク装置と,該トランク装置を制御する制御装置と,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する参加者選択装置と,複数の呼が相互に且つ同報的に通信することができる相互同報通信装置とを有する複数人同時参加型通信システムの制御方法であって,
前記トランク装置が,前記複数の端末から発呼された複数の呼を,前記参加者選択装置に呼接続する第1の段階と,
前記参加者選択装置が,前記複数の呼の中から,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する第2の段階と,
前記トランク装置が,参加が決定した前記複数の呼を,前記相互同報通信装置へ切り替える第3の段階と,
前記相互同報通信装置が,参加が決定した前記複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させる第4の段階と
を有することを特徴とする,複数人同時参加型通信システムの制御方法。」

(1)引用文献
これに対し,原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-257189号公報(以下,「引用文献」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

a.「【0010】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明であるチャットサーバ10の原理図である。本発明のチャットサーバ10は,ユーザ間でのメッセージ交換サービスであるチャットを音声で提供する。
【0011】グループ管理手段11はユーザがチャットを行う項目をあらかじめグループに分けて管理する。例えばグループ1にはバイクの話題,グループ2には釣りの話題,・・・グループnにはスキーの話題などといったグループの管理を行う。
【0012】インタフェース制御手段12はグループにアクセスしてきたユーザとのインタフェース制御を行う。例えば,ユーザプロフィールやグループ一覧の送信,チャットの開始や終了に伴う回線の接続や切断などである。
【0013】チャット制御手段13は同じ一つのグループに対して,少なくとも二人のユーザがアクセスした場合には,ユーザ同士の音声のメッセージ交換であるチャット制御を行う。チャット制御とは,すなわち音声によるメッセージ交換制御のことである。例えば,二人のユーザがグループ1にアクセスした場合には,音声のメッセージ交換がなされて,互いにその話題に入ることができる。
【0014】音声合成手段14は同じ一つのグループに対して,複数のユーザがアクセスした場合には,各ユーザの音声を合成して合成音声を生成する。そして,この合成音声をチャット制御手段13に送信することで合成音声の交換が行われる。なお,チャットサーバ10の動作については図3,図4で後述する。
【0015】次に本発明であるチャットサーバ10を用いたチャットシステムについて説明する。図2はチャットシステムの概念図である。チャットシステムはチャットサーバ10と,ユーザ側の携帯電話機21やパソコン22等の各種端末20と,通信網30と,網インタフェース40と,からなる。
【0016】各ユーザが使用する端末20は,付属するインタフェース装置を用いて通信網30と接続し,チャットサーバ10はLANなどの網インタフェース40を介して通信網30と接続する。そして,チャットサーバ10を通じて,任意の場所にいる任意のユーザ間でチャットが行われる。」(第3頁第3欄第8行〜同欄第49行)

b.「【0017】次にチャットシステムの動作について説明する。なお,以降はユーザ側の端末20として,簡易型携帯電話機であるPHS21が使用されるものとする。図3はチャットシステムの動作手順を示すシーケンス図である。
〔S1〕ユーザは,基地局31とISDN網30aを介して,アクセスポイント41に発呼を行う。ここでアクセスポイント41は,ISDN網30aとLAN40aを結び,ユーザがこのチャットサービスを受けられるどうかの認証を行う。
〔S2〕アクセスポイント41で認証に成功すると,LAN40aを介してチャットサーバ10へ接続する。
〔S3〕チャットサーバ10は図1で説明したグループ管理手段11で管理しているグループの一覧表をユーザに通知する。また,ユーザが使用しているPHS21の表示モジュールにグループ一覧が表示される。
〔S4〕ユーザはチャットを行いたいグループを選択する。
〔S5〕チャットサーバ10は選択されたグループの状態を確認する。選択されたグループの中で現在チャットが行われていなければ,チャット待ち状態となり,その旨をユーザに通知する。チャット待ちの人がいたり,あるいはすでにチャットが行われていれば,ユーザはそのグループの話題に入りチャット開始となる。
【0018】次にチャットサーバ10の動作について説明する。図4はチャットサーバ10の動作手順を示すシーケンス図である。なお,ここでは1対1でチャットをする場合について説明する。
〔S10〕ユーザAがグループ1を選択してチャット待ちをしている。チャットサーバ10ではグループ1でユーザAがチャット待ちであることを内部テーブルに保存する。
〔S11〕ユーザBはグループ1を選択してチャット要求を行う。
〔S12〕チャットサーバ10は内部テーブルを参照して,ユーザAがチャット待ちにあることを知り,インタフェース制御手段12はこれをユーザBに通知する。
〔S13〕ユーザBはユーザAとチャット要求を行う旨をチャットサーバ10に通知する。
〔S14〕チャットサーバ10内のインタフェース制御手段12は,ユーザBからのチャット要求があることをユーザAに対して通知する。
〔S15〕ユーザAはユーザBとチャット要求を行う旨をチャットサーバ10に通知する。
〔S16〕チャット制御手段13は,ユーザAとユーザBとの音声メッセージを交換し,インタフェース制御手段12を通じてチャットが行われる。
【0019】以上説明したように本発明のチャットサーバ10は,チャット項目をグループに分けて管理し,同じ一つのグループにアクセスしてきたユーザの音声をチャット制御する構成とした。これにより,音声インタフェースでチャットをすることができ,普通の電話と同じ感覚で任意の場所で任意の人とのチャットを楽しむことが可能になる。」
(第3頁第3欄第50行〜第4頁第5欄第3行)

c.「【0022】次に多対多でチャットを行う際について説明する。図5は多対多でチャットを行う際の概念図である。チャットサーバ10は同じ一つのグループに対して,複数のユーザがアクセスした場合に,音声合成手段14で各ユーザの音声を合成する。図では音声A,B,Cがチャットサーバ10内にある音声合成手段14で合成され,その合成音声Dがユーザに送信される様子を示している。」(第4頁第5欄第17〜24行)

d.「【0023】次にユーザ側端末20とチャットサーバ10間でのデータのやりとりについて説明する。ユーザはチャットに入るまではHTTP(Hyper Text Transfer Pro-tocol)によるデータのやりとりをインタフェース制御手段12を通じて行う。
【0024】まず,端末20からチャットサーバ10に対してグループの一覧表の取得要求を出す。すると,チャットサーバ10は用意されたグループを返す。そして,端末20からユーザが気にいったグループの情報を要求すると,チャットサーバ10はそのグループ内のユーザの情報を端末20に返す。
【0025】次にユーザ側端末20に表示されるプロフィールデータについて説明する。図6はプロフィールデータの表示例を示す図である。表示画面20a上にグループ20a-1と,プロフィールデータ20a-2と,が表示される。グループ20a-1には,グループ1のバイクの話題にアクセスしてきているユーザA〜Eが表示される。ここでユーザCを指示すると,ユーザCのプロフィールデータ20a-2が表示される。このようにして気に入ったユーザを選択し,実際のチャットに入ることができる。
【0026】以上説明したように本発明のチャットサーバ10は,チャット項目をグループに分けて管理し,同じ一つのグループにアクセスしてきたユーザに対してチャット制御を行う構成とした。これにより,音声によるチャットを実時間で提供でき,従来のコンピュータ上の文字だけのチャットに比べてコミュニケーションがとりやすく,サービスの向上が可能になる。
【0027】また,本発明のチャットサーバ10は,音声合成手段14で複数のユーザの音声から合成音声を生成する構成とした。これにより1対1だけでなく多対多のチャットサービスを提供することが可能になる。」(第4頁第5欄第25行〜同頁第6欄第17行)

上記摘記事項中の「ユーザ」はチャットに参加する者であるから参加者であり,同摘記事項b中のシーケンス〔S2〕〜〔S15〕,同摘記事項c,同摘記事項d中の段落番号【0023】〜【0026】,図3,4,6を参照すれば,チャットサーバは,特定のチャットのグループに同時に参加する複数の呼を決定してしており,同摘記事項a中の段落番号【0014】,同摘記事項b中のシーケンス〔S16〕,同摘記事項c,同摘記事項d中の段落番号【0027】,図1,3,4を参照すれば,複数の呼が相互に且つ同報的に通信しているから,引用文献には,
「参加者が操作する複数の端末から発呼された呼を受信し,特定のチャット通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定し,複数の呼が相互に且つ同報的に通信することができるチャットサーバを有する複数人同時参加型通信システムの制御方法であって,
前記チャットサーバが,前記複数の呼の中から,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する段階と,
前記チャットサーバが,参加が決定した前記複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させる段階と
を有する,複数人同時参加型通信システムの制御方法。」(以下,「引用発明」という。)が示されている。

(2)対比
そこで,本願発明と引用発明とを比較すると,引用発明中の「チャット」は通信サービスであり,本願発明中の「トランク装置」,「参加者選択装置」及び「相互同報通信装置」は全体として,複数人同時参加型通信処理装置ということができ,引用発明の「チャットサーバ」も複数人同時参加型通信処理装置ということができるから,
両者は
「参加者が操作する複数の端末から発呼された呼を受信し,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定し,複数の呼が相互に且つ同報的に通信することができる複数人同時参加型通信処理装置を有する複数人同時参加型通信システムの制御方法であって,
前記複数人同時参加型通信処理装置が,前記複数の呼の中から,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定する段階と,
前記複数人同時参加型通信処理装置が,参加が決定した前記複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させる段階と
を有することを特徴とする,複数人同時参加型通信システムの制御方法。」の点で一致し,以下の相違点1,2で相違している。

[相違点1]
本願発明では,複数人同時参加型通信処理装置を「トランク装置」,「制御装置」,「参加者選択装置」及び「相互同報通信装置」に分割しており,各々は,「参加者選択装置」は複数の呼の中から,特定の通信サービスのグループに同時に参加する複数の呼を決定するものであり,「相互同報通信装置」は参加が決定した前記複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させるものであり,「トランク装置」は経路制御手段を有し,参加が決定した前記複数の呼を,前記相互同報通信装置へ切り替えるものであり,「制御装置」はトランク装置を制御するものである。これに対して,引用発明の複数人同時参加型通信処理装置である「チャットサーバ」は,その様に分割されていない。

[相違点2]
本願発明の「トランク装置」は「前記複数の端末から発呼された複数の呼を,前記参加者選択装置に呼接続する第1の段階」と「参加が決定した前記複数の呼を,前記相互同報通信装置へ切り替える第3の段階」を実行しているのに対し,引用発明では前記第1及び第3の各段階の実行がされていない。

(4)判断
そこで,上記相違点について検討する。

[相違点1]について
引用文献の図1には,複数人同時参加型通信処理装置である「チャットサーバ」の原理図が開示されており,このチャットサーバの中には,「チャット制御手段13」及び「音声合成手段14」が示され,上記摘記事項a中の段落番号【0014】の記載から明らかなように,これらにより,参加が決定した複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させる旨記載されている。また「グループ管理手段11」も示されており,同摘記事項aの段落番号【0011】及び同摘記事項bの〔S3〕〜〔S5〕によれば,このグループ管理手段と,引用文献に明記されていないもののチャットサーバのいずれかの機能とにより,特定の通信サービス(チャット)のグループに同時に参加する複数の呼を決定している手段であることも明らかである。してみると,参加が決定した複数の呼の間で相互に且つ同報的に通信させる手段と,特定の通信サービス(チャット)のグループに同時に参加する複数の呼を決定する手段は,その機能が明らかに異なり,それらの手段を装置として分割すべきであることを,この引用文献の前記記載事項は,強く示唆しているということができる。一方,複数人同時参加型通信処理装置である,チャットと実質的には同様のシステムである電話会議システムなどにおいても,相互同報通信機能を担う装置を本体から分離することは,例えば特開2000-78299号公報の「多地点音声配信装置」,特開2000-92218号公報に示される「ミキサ」,特開平11-103351号公報,特開平10-243110号公報及び特開平10-51556号公報に示される「会議トランク」などに示されるように,周知技術である。
したがって,処理の分散化という一般的に周知な課題に沿って,複数人同時参加型通信処理装置を「参加者選択装置」と「相互同報通信装置」に分割する程度のことは,当業者であれば,格別な創意工夫を要するものとはいえず,また,この分割に際して,これらの装置間の調整が必要なこと,一方で呼に対してのインターフェイスが必要なことが自明であることを考え合わせると,経路制御手段を有する「トランク装置」及びそれを制御する「制御手段」が必要になることもほとんど自明的に導き出せることから,引用発明の複数人同時参加型通信処理装置を「トランク装置」,「制御装置」,「参加者選択装置」及び「相互同報通信装置」に分割し,本願発明のように機能分散させる程度のことは容易になし得ることである。

[相違点2]について
経路制御手段を有する「トランク装置」を採用することにより,「前記複数の端末から発呼された複数の呼を,前記参加者選択装置に呼接続する第1の段階」と「参加が決定した前記複数の呼を,前記相互同報通信装置へ切り替える第3の段階」の段階が必要なことは,ほぼ自動的に導かれる事項でしかないから,単なる設計的事項にすぎない。

(4)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして,本願の請求項1に係る発明について特許を受けることができないものである以上,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-27 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-05-25 
出願番号 特願2000-397000(P2000-397000)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 572- Z (H04M)
P 1 8・ 561- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 小林 紀和
畑中 博幸
発明の名称 複数人同時参加型通信システムの制御方法  
代理人 山本 恵一  

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