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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1140291
審判番号 不服2003-22024  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-13 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 特願2000-347617「ディスク駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年6月22日出願公開、特開2001-167495〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成6年4月18日に出願した特願平6-78763号の一部を平成12年11月15日に新たな特許出願としたものであって、平成14年11月11日付け及び平成15年7月9日付けで手続補正がなされた。その後、本願は、平成15年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成15年11月13日付けで拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同日に手続補正がされたものである。

第2 平成15年11月13日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年11月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の
(a)「スピンドルモータが固定された可動部材が近づくことによりスピンドルモータと円板状の記録媒体とが結合するようにしたディスク駆動装置において、
前記記録媒体に対し平行な仮想平面に垂直な仮想直線のまわりを回動する回動部材と、
該回動部材に形成され、前記可動部材と係合して前記回動部材の回動により前記可動部材を前記仮想平面に垂直な方向に移動させる傾斜部と、
前記回動部材の前記仮想直線方向の移動を規制する部材と、
前記スピンドルモータが前記記録媒体に結合する前記回動部材の所定の回動位置を検出する位置検出器とを有し、
該位置検出器が前記回動部材の所定の回動位置を検出したのをCPUにより確認して、前記スピンドルモータの回転を開始させるように構成したことを特徴とするディスク駆動装置。」を、

(b)「スピンドルモータが固定された可動部材が近づくことによりスピンドルモータと円板状の記録媒体とが結合するようにしたディスク駆動装置において、
前記記録媒体に対し平行な仮想平面に垂直な仮想直線のまわりを回動する回動部材と、
該回動部材に形成され、前記可動部材と係合して前記回動部材の回動により前記可動部材を前記仮想直線方向に移動させる傾斜部と、
前記回動部材の前記仮想直線方向における前記記録媒体に近づく方向の移動と前記記録媒体から遠ざかる方向の移動とを規制する部材と、
前記回動部材の外周面に配置された前記回動部材を回動させるための扇形のギヤと、
前記スピンドルモータが前記記録媒体に結合する前記回動部材の所定の回動位置を検出する位置検出器とを有し、
該位置検出器が前記回動部材の所定の回動位置を検出したのをCPUにより確認して、
前記スピンドルモータの回転を開始させるように構成したことを特徴とするディスク駆動装置。」と補正するものである(なお、下線は当審で付した。)。

本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「傾斜部」の「移動させる」「方向」について、「前記仮想平面に垂直な方向に」を「前記仮想直線方向に」(なお、「前記仮想直線」とは請求項1中の「前記仮想平面に垂直な仮想直線」を指している。)と補正し、「規制する部材」について、「前記仮想直線方向の移動」を「前記仮想直線方向における前記記録媒体に近づく方向の移動と前記記録媒体から遠ざかる方向の移動」との限定を付加するものである。さらに、発明を特定する事項である「回動部材」について、「前記回動部材の外周面に配置された前記回動部材を回動させるための扇形のギヤ」との限定を付加しようとするものである。
ところで、本件補正の、「前記回動部材の外周面に配置された前記回動部材を回動させるための扇形のギヤ」、特に「扇形のギヤ」の構成であるが、この「扇形のギヤ」は、発明の詳細な説明中に記載されていない。請求人が根拠とする当初明細書の段落20及び、図4(本発明に係る記録媒体駆動装置の第1実施例)の回動部材の外周面を検討しても、「扇形のギヤ」は、記載されていない。
また、段落20の「回動リング19の一部でかつ前記遮光板22固定位置と直径線上の反対側に扇状のラック27が固定されている。そして、本体1上に設けられ昇降モータのシャフト(図示していない)に直結されたウォームギヤ28が、ラック27と噛み合っている。」との記載を参照すれば、ウォームギヤ28と噛み合う部材は、回転運動を直線運動に変えるのに用いられる「扇状のラック」と記載されている。「ウォームギヤ」に「ギヤ」が噛み合うようには記載されていないのであるから、「扇状のラック」が「扇形のギヤ」を意味するとは解されない。
よって、「前記回動部材の外周面に配置された前記回動部材を回動させるための扇形のギヤ」は、当初明細書等に記載した事項の範囲内であるということはできない。
したがって、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第2項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2.
仮に、「扇形のギヤ」とは「扇状のラック27」を意味すると解して、本件補正が、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとしたとき、補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特公昭62-49660号公報(以下、「引用例」という。)には、ディスク駆動装置に於ける移動機構について、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「1 その軸方向に摺動自在な支持筒体と、
前記支持筒体が軸方向に摺動するように案内するために前記支持筒体の外側又は内側に配設された案内筒体と、
回転自在に配設された駆動筒体と、
前記駆動筒体と前記支持筒体との間に配され、前記駆動筒体の回転駆動力を直線駆動力に変換して前記支持筒体に伝達する伝達機構と、
前記駆動筒体を駆動する駆動装置と、
から成るデイスク装置に於ける移動機構。
2 前記支持筒体はデイスク回転モータを支持して上下動するものである特許請求の範囲第1項記載の移動機構。
3 前記伝達機構は前記駆動筒体の筒壁に設けられた傾斜溝と、前記支持筒体に固着され且つ前記傾斜溝に遊嵌されているピンとからなるものである特許請求の範囲第1項又は第2項記載の移動機構。」(第1欄第2行〜同第19行、「特許請求の範囲」)

「上述の如き問題を解決するために、クランパーを回転自在に支持せずに、その軸方向に移動可能に配し、何んらかの手段でターンテーブルをクランパーに接近させるように直線的に移動させ、ターンテーブルとクランパーとの結合を達成させた後に、ターンテーブルを元の位置に戻す方式を採用することが考えられる。」(第2欄第20行〜第3欄第2行)

「第1図に示す如く、デイスク1を回転するためのターンテーブル2及びクランパー3を外部から手で直接に操作することが不可能な構成になつている。ターンテーブル2を回転駆動するデイスク回転モータ4は、支持筒体5に固着され、支持筒体5と共にその軸方向に変位自在である。6は案内筒体であつて、支持筒体5の外側に固定配置されている。この案内筒体6には軸方向に直線状に伸びた溝7が設けられ、支持筒体5に固着されたピン9が溝7に遊嵌されている。従つて、支持筒体5は溝7で回り止めされ、且つこれにガイドされてその軸方向にのみ摺動自在である。11は駆動筒体であつて、支持筒体5の内側に配置され、且つ案内筒体6に回転自在に支持されている。この駆動筒体11には傾斜溝12が設けられ、この傾斜溝12に支持筒体5の内側に突出したピン14が挿入されている。従つて、駆動筒体11を回すと、傾斜溝12とピン14との係合により、支持筒体5を回転させる方向の成分と支持筒体5を軸方向に移動させる方向の成分とを有する力が支持筒体5に与えられる。しかし、支持筒体5の回転は案内筒体6の溝7で阻止されているので、その軸方向にのみ変位する。
駆動筒体11の上端鍔部の外周面にはギヤ部16が設けられ、ここにギヤ17が噛合している。ギヤ17はこれに同軸配置された駆動回転体18の軸部19に回転自在に挿入されている。また第2図から明らかなように回転体18に植設されたピン20がギヤ17に設けられた長穴21に挿入されている。回転体18は回転軸22に固着され、回転軸22は減速ギヤ装置23を介して正逆転可能な直流モータ24に結合されている。従つてモータ24の駆動により、駆動筒体11が回転する。」(第3欄第37行〜第4欄第27行)

「また駆動筒体11の上方向への移動を制限し、且つホトカプラー等を装着するためにカバー29が設けられている。
クランパー3とターンテーブル2との結合を容易に達成するために、クランパー3の凹部30に永久磁石31が固着され、且つターンテーブル2が磁性体で形成されている。従つて、ターンテーブル2をクランパー3に接近すると、両者は磁気的に結合される。停止状態に於いては、クランパー3が第1図に示す如くターンテーブル2から離れた位置にあり且つ一対の係止部材32,33によつて第1の位置に係止されているが、プレイモードとするためにターンテーブル2と共にクランパー3を第8図に示す第2の位置まで押し下げると、係止部材32,33による係止が解除される。しかる後、ターンテーブル2を引き上げると、クランパー3はターンテーブル2に追従して第9図に示す第3の位置に至る。この第3の位置ではクランパー3は装置本体の固定部に無関係となり、ターンテーブル2のみに追従して回転する。」(第4欄第33行〜第5欄第9行)

「第2図に於いて52,53は第1及び第2のホトカプラーであり、駆動筒体11のフランジ部54のスリツト55を検出するために約310゜の間隔で配置されている。尚スリツト55の前縁(第2図の上側の縁)がターンテーブル2の第1の位置に対応し、スリツト55の後縁(第2図の下側の縁)がターンテーブル2の第2の位置に対応するようにスリツト55が設けられている。また第2のホトカプラー53はターンテーブル2の第3の位置を検出するように配置されている。
第12図は第2図に示したホトカプラー52とスリツト55との関係を示す一部切欠側面図である。この図から明らかなように、ホトカプラー52を構成する発光素子56はフランジ部54の一方の側に配置され、受光素子57は他方の側に配置されている。そして、矢印58で示す方向にフランジ部54が回転した場合、スリツト55の前縁P1がまずホトカプラー52を通過し、しかる後、後縁P2が通過する。その後、フランジ部54を矢印59で示す方向に逆転させると、まず後縁P2が通過し、次に前縁P1が通過する。」(第6欄第20行〜同第40行)

「ターンテーブル2が第1の位置に至ると、第14図Fに示す如く第1のホトカプラー52の受光素子からパルスが発生する。」(第8欄第8行〜同第11行)

「この実施例ではクランパー3が第10図の位置よりも少し下つた点が第2の位置(係止解除完了位置)に設定されているので、この位置でスリツト55の後縁P2が第1のホトカプラー52を通過し、ホトカプラー52の出力がt3時点で反転する。」(第8欄第19行〜同第24行)

「モータ24の逆転がt6時点まで行われると、スリツト55が第2のホトカプラー53によつて検出され、第14図Eに示す第3の位置検出出力が得られる。そして、これが逆転用フリツプフロツプ65のリセツト信号となり、t6時点でモータ24の逆転が停止する。また、第14図Eのパルスの前縁でローデイング保持用フリツプフロツプ62がリセツトされる。尚、支持筒体5を上昇させると、その下端のテーパ部がメタル28のテーパ面に押し付けられて上昇位置に正確に保持される。この際、モータ24の逆転付勢を解除しても、減速ギヤ装置23が設けられているので、駆動筒体11及び支持筒体5が降下することはない。
t6〜t7のプレイ期間で記録又は再生を行う場合には、第9図の状態でモータ4を駆動し、これによりデイスク1を回転させる。」(第9欄第11行〜同第27行)

「(f) ターンテーブル2の軸方向の移動位置をフランジ部54のスリツト55とホトカプラー52,53とで検出しているので、コンパクトな構成で簡単に検出することが可能になる。」(第11欄第2行〜同第5行)

「(i) ターンテーブル2が降下し、デイスク1をクランパー3の助けを借て保持した後に上昇する構成であるので、デイスク1をその支持枠体と共にケース(ジヤケツト)に収納したものをクランパー3の上に挿入し、しかる後ケースのみを抜き取つて支持枠体はクランパー3を囲むように装置内に残し、デイスク1のみをターンテーブル2とクランパー3とで挟持して第3の位置に移動させて回転させることが容易になる。」(第11欄第19行〜同27行)

第1図には、駆動筒体11の上端鍔部が案内筒体6とカバー29との間に配置されていることが図示されている。

以上の記載によれば、引用例には、ターンテーブルをその軸方向に直線的に移動させるディスク装置について、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。
「ターンテーブルをクランパーに接近させるように直線的に移動させ、前記ターンテーブルと前記クランパーとの結合を達成させた後に、前記ターンテーブルを元の位置に戻すディスク装置であって、
前記ターンテーブルを回転駆動するディスク回転モータを固着して、その軸方向に摺動自在な支持筒体と、
前記支持筒体の外側又は内側に配設され、軸方向に直線状に伸びた溝が設けられた案内筒体と、
上端鍔部の外周面にはギヤ部が設けられ、筒壁に傾斜溝が設けられた回転自在に配設された駆動筒体と、
前記駆動筒体を駆動する駆動装置と、
から成るディスク装置において、
前記ターンテーブルの第1の位置、第2の位置、第3の位置を検出するように、前記駆動筒体のフランジ部のスリットを検出するための第1及び第2のホトカプラーを有し、
前記第2のホトカプラーによって第3の位置検出出力が得られ、
プレイ期間で前記ディスク回転モータを回転するディスク装置。」

(2)対比
そこで、本願補正発明と引用例発明とを比較すると、
引用例発明の「ディスク回転モータ」は、本願補正発明の「スピンドルモータ」に相当する。
引用例発明の、ディスク回転モータが固着される「支持筒体」は、本願補正発明の、「スピンドルモータ」が固定された「可動部材」に相当する。
引用例発明の「ディスク」は、本願補正発明の「円板状の記録媒体」に相当し、引用例発明の「ディスク装置」は、本願補正発明の「ディスク駆動装置」に相当する。
引用例発明の「ディスク回転モータ」はターンテーブルを支持(引用例の第1,8,9図参照)して、「ディスク」に近づいて、クランパーの助けを借てディスクを保持する(上記イ参照)から、引用例発明の「ターンテーブルをクランパーに接近させるように直線的に移動させ、前記ターンテーブルと前記クランパーとの結合を達成させた後に、前記ターンテーブルを元の位置に戻すディスク装置」は、本願補正発明の「スピンドルモータが固定された可動部材が近づくことによりスピンドルモータと円板状の記録媒体とが結合するようにしたディスク駆動装置」に相当する。
引用例発明の「駆動筒体」は、上端鍔部の外周面のギヤ部が駆動装置により回転自在にされた部材であるから、本願補正発明の、記録媒体に対し平行な仮想平面に垂直な仮想直線のまわりを回動する「回動部材」に相当する。
引用例発明の「傾斜溝」は、駆動筒体に設けられた溝であり、この傾斜溝に支持筒体の内側に突出したピンが挿入されて、支持筒体を軸方向にのみ摺動する(上記ウ参照)から、本願補正発明の、回動部材に形成され、可動部材と係合して前記回動部材の回動により前記可動部材を前記仮想直線方向に移動させる「傾斜部」に相当する。
引用例発明の「駆動筒体」は、上方向の移動を制限する部材であるカバー(上記エ参照)と「駆動筒体」を支持する案内筒体との間に、その上端鍔部が配置され(上記サ参照)、上下に移動することが制限されており、「駆動筒体」の上下移動を制限するこれらのカバーと案内筒体の部材は、本願補正発明の、回動部材の仮想直線方向における記録媒体に近づく方向の移動と前記記録媒体から遠ざかる方向の移動とを「規制する部材」ということができる。
引用例発明の、「駆動筒体」の上端鍔部の外周面の「ギヤ部」は、「駆動筒体」を回動させるギヤであるから、本願補正発明の、回動部材の外周面に配置された前記回動部材を回動させるための「ギヤ」に相当する。
引用例発明の、ターンテーブルの第1の位置、第2の位置、第3の位置を検出するように「駆動筒体のフランジ部のスリットを検出するための第1及び第2のホトカプラー」の、「ホトカプラー」は発光素子と受光素子で構成され、「駆動筒体」のスリットの通過を検出しているから、「ホトカプラー」は、本願補正発明の、「位置検出器」に相当し、引用例発明の「ホトカプラー」は、「駆動筒体」の回動位置を検出しているから、本願補正発明の「位置検出器が回動部材の所定の回動位置を検出」する構成を備えている。
引用例発明の「第2のホトカプラーによって第3の位置検出出力が得られ」、「プレイ期間でディスク回転モータを回転する」ことは、第3の位置検出出力で、プレイ期間となること(上記ク及び引用例の第14図の「プレイ」参照)を示唆するもので、本願補正発明の、「位置検出器が回動部材の所定の回動位置を検出して」、「スピンドルモータの回転を開始させるように構成したこと」に相当する。

してみると、両者は、以下の一致点と相違点を有する。
〈一致点〉
「スピンドルモータが固定された可動部材が近づくことによりスピンドルモータと円板状の記録媒体とが結合するようにしたディスク駆動装置において、
前記記録媒体に対し平行な仮想平面に垂直な仮想直線のまわりを回動する回動部材と、
該回動部材に形成され、前記可動部材と係合して前記回動部材の回動により前記可動部材を前記仮想直線方向に移動させる傾斜部と、
前記回動部材の前記仮想直線方向における前記記録媒体に近づく方向の移動と前記記録媒体から遠ざかる方向の移動とを規制する部材と、
前記回動部材の外周面に配置された前記回動部材を回動させるためのギヤと、
前記スピンドルモータが前記記録媒体に結合する前記回動部材の所定の回動位置を検出する位置検出器とを有し、
該位置検出器が前記回動部材の所定の回動位置を検出して、
前記スピンドルモータの回転を開始させるように構成したディスク駆動装置。」

〈相違点〉
(ア)ギヤに関して、本願補正発明は、「扇形」と特定しているのに対して、引用例発明は、このように特定していない点。
(イ)本願補正発明では、「所定の回動位置を検出したのをCPUにより確認して」、スピンドルモータの回転を開始させると特定しているのに対して、引用例発明では、このような記載がない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
相違点(ア)
モータの駆動を伝達する手段として、ギヤの形状を種々に変更することは周知慣用技術である。したがって、引用例発明における駆動筒体が回転するとき、駆動筒体の上端筒部の外周面のギヤ部の形状を扇状とし、支持筒体が上下する範囲で形成されているギヤ部とすることは、格別の創意工夫を要することなく当業者が容易になし得ることである。

相違点(イ)
ディスク装置において、CPUが各種制御をすることは周知である。したがって、引用例発明において、ホトカプラーが駆動筒体の所定の回動位置検出した際に、CPUがこれを確認して、ディスク回転モータを開始させるように構成することは、格別の創意工夫を要することなく当業者が容易に想到し得ることである。

なお、請求人は、審判請求書の「(c)本願発明と引用文献との対比」において、「文献1(文献2(特公昭62-49660号公報)と同様)に開示のものは、筒状の部材(移動筒体)11のギヤ部16を形成した上端鍔部の下面と案内筒体6とが当接していることから、移動筒体11の軸方向下方の移動が規制されるようになってはいるものの、移動筒体11の軸方向上方の移動は規制されるようにはなっておりません。このことは、移動筒体11の上端とカバー29との間には隙間があり、かつ第9図に示すディスク1のクランプ状態において、爪状部材(ピン)14の上部と傾斜した溝(傾斜溝)12の上部との間、および支持筒体5の上端と案内筒体6との間に隙間があることからも明らかであります。」、「これに対し、本願発明では、『前記回動部材の前記仮想直線方向における前記記録媒体に近づく方向の移動と前記記録媒体から遠ざかる方向の移動とを規制する部材』を有しておりますので、上述しましたように、スピンドルモータの回転によるスピンドルモータの軸方向の振動を抑えることができ、記録媒体の不所望な面振れを確実に防止できるものであります。」と主張しているが、本願補正発明の「前記回動部材の前記仮想直線方向における前記記録媒体に近づく方向の移動と前記記録媒体から遠ざかる方向の移動とを規制する部材」は、回動部材の移動を規制するように回動部材を挟んだ構成とも、隙間がない構成であるとも記載されていない以上、上記主張は根拠のないもので認められない。
なお、図示されたものに隙間があったとしても、引用例発明には、上方への移動を規制し、下方の移動を規制する部材が記載されている以上、隙間をなくす程度のことは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
また、「本願発明では、例えば図4に示した実施例では、回動リング19を回動させるためのギヤとして、扇状のラック27を設けておりますので、ラック27を例えば位置検出器を構成するブロック体26や傾斜部20に干渉することなく容易に配置でき、上述しましたように、設計の自由度を高めることができると共に、組み立てを簡単にできるものであります。」とも主張しているが、扇状のラックを扇状のギヤと解したとしても、このような配置に関することは、本願の明細書に記載されていないことであり、記載されていない構成に基づく新たな作用効果の主張でもあって採用できない。

結局、前記各相違点は、格別なものではなく、また、前記各相違点を総合的に検討しても奏される効果は、引用例の記載から当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
したがって、平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する第53条第1項に規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成15年11月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1,2に係る発明は、平成14年7月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2の1.(a)」のとおりのものである。

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記「第2の2.(1)」に記載されたとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「第2の1.」で検討した本願補正発明から「仮想直線方向」を同じ意味の「仮想平面に垂直な方向」とし、「規制する部材」の「移動」の方向の「における前記記録媒体に近づく方向の移動と前記記録媒体から遠ざかる方向の移動と」の構成を省き、「回動部材の外周面に配置された前記回動部材を回動させるための扇形のギヤ」の構成を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の2.(3)」に記載したとおり、引用例の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-19 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-08 
出願番号 特願2000-347617(P2000-347617)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 571- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 相馬 多美子
江畠 博
発明の名称 ディスク駆動装置  
代理人 杉村 興作  

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