ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B42D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B42D |
---|---|
管理番号 | 1140298 |
審判番号 | 不服2003-24789 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-24 |
確定日 | 2006-07-20 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第 43300号「分解性樹脂成形物」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月29日出願公開、特開平 7-228074〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成6年2月18日の出願であって、平成15年11月19日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月24日付けで本件審判請求がされるとともに、平成16年1月15日付けで明細書についての手続補正(平成6年改正前特許法第17条の2第1項5号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2.平成16年1月15日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年1月15日付の手続補正を却下する。 [理由] 1 補正内容 本件補正は、特許請求の範囲を、 本件補正前の「【請求項1】カレンダーの紙部を固定する留め具において、該留め具を分解性樹脂を用いて成形すると共に、該分解性樹脂が、微生物生産のポリエステル、澱粉、ポリアミノ酸又はポリビニルアルコール等の生分解性プラスチックとポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を混合した崩壊性プラスチック、又は光分解性樹脂、又は光崩壊性樹脂のいずれかであることを特徴とする樹脂成形物。」から、 「【請求項1】カレンダ-の紙部を固定する留め具において、該留め具を光分解性樹脂又は光崩壊性樹脂を用いて射出射出または異形押し出し成形したことを特徴とする樹脂成形物。 【請求項2】光分解性樹脂又は光崩壊性樹脂が、エチレンと一酸化炭素との共重合体からなることを特徴とする上記の請求項1に記載する樹脂成形物。」に補正するものである。 2 補正目的違反 上記補正は、請求項の数が1であったものを、2に増加する補正であって、発明特定事項の直列的付加及びn項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更のいずれの場合にも該当しないから、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項1〜4号に規定された特許請求の範囲の減縮、特許請求の範囲の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明の何れをも目的としない補正事項を含んでいる。 そうすると、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反している。 3 独立特許要件欠如 本件補正前後の請求項1を比較すると、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「分解性樹脂が、微生物生産のポリエステル、澱粉、ポリアミノ酸又はポリビニルアルコール等の生分解性プラスチックとポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を混合した崩壊性プラスチック、又は光分解性樹脂、又は光崩壊性樹脂のいずれか」について、「光分解性樹脂、又は光崩壊性樹脂のいずれか」との限定、同じく「成形」について「射出射出または異形押し出し成形」との限定を付加する補正事項を含むものであって、平成6年改正前特許法第17条の2第3項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)補正発明 補正後の請求項1には「射出射出」と記載されているが、技術常識及び発明の詳細な説明の記載からみて「射出成形」の誤記と認め、補正後の請求項1に係る発明を下記のように認定する。 「カレンダ-の紙部を固定する留め具において、該留め具を光分解性樹脂又は光崩壊性樹脂を用いて射出成形または異形押し出し成形したことを特徴とする樹脂成形物。」(以下、「本願補正発明」という。) (2)刊行物 本願出願前に頒布された実願昭58-116218号(実開昭60-24579号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、「本考案は壁掛けカレンダ...をつり下げるのに用いる保持具に関するものである。上記保持具として、図面に示すように表裏一対の帯状挟持板1・2の上縁相互を連接し、各板1・2の下縁に内向き係止縁3・4を形成した横断面略逆U字形の硬質合成樹脂製挟持部材5が一般に使用されている。この保持具は押出成形で製造して...カレンダを確実に保持し」(第1頁14行〜第2頁2行)、「綴じた紙Pの上端を保持具本体5の一端から表裏挟持板1・2の間に挿入するもので、紙Pは対向している内向き係止縁3・4により弾性で堅く挟持される。」(第4頁11〜15行)との記載が認められ、これらの記載によれば、刊行物1には「綴じた紙の上端を挟持するカレンダー保持具であって、押出成形で製造した硬質合成樹脂製挟持部材。」の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (3)補正発明と刊行物1発明との一致点及び相違点の認定 そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較すると、刊行物1発明の「綴じた紙の上端を挟持するカレンダー保持具」は、本願補正発明の「カレンダ-の紙部を固定する留め具」に相当し、刊行物1発明の「押出成形」が、その第3図等に記載された挟持部材の形状からみて、本願補正発明の「異形押し出し成形」に相当すること、刊行物1発明の「硬質合成樹脂製挟持部材」が、樹脂成形物であることが明らかであるから、両者は、 「カレンダ-の紙部を固定する留め具において、該留め具を樹脂を用いて異形押し出し成形した樹脂成形物。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点]留め具を異形押し出し成形する樹脂として、本願補正発明は、光分解性樹脂又は光崩壊性樹脂を用いているのに対し、刊行物1発明ではかかる樹脂の限定がない点。 (4)相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断 廃棄物処理や環境保護の問題を解決するために、樹脂成形物を光分解性樹脂又は光崩壊性樹脂を用いて成形することは従来から周知の技術(特開平4-153227号公報、特公昭50-39705号公報、特開平5-112360号公報、特開平4-366149号公報参照)であって、カレンダー留め具においても、上記樹脂を用いて成形し、廃棄物処理問題を解決し、環境保護に役立つものとしようとすることは当業者が容易に想到しえたことである。 そして、上記従来周知の技術を採用した本願補正発明の作用効果も、刊行物1発明及び上記周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。すなわち、本件補正は平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 以上述べたとおり、本件補正は平成6年改正前特許法第17条の2第3項及び同条第4項で読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反している。 したがって、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本件審判請求についての当審の判断 1 本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年9月5日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定されるとおりのものであり、「第2[理由]」において「本件補正前の【請求項1】」として記載したものである。 2 引用刊行物の記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された実願平05-045203号(実開平07-15355号のCD-ROM参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、次の記載がある。 ア.「本考案は...『複数枚のカレンダーシート(2)(2)を積層した状態で、これらの上辺近傍部を、壁等への取付部を具備する吊下げ具(1)により綴じ合わせ状態に係止する形式の吊下げ式カレンダー』」(【0006】) イ.「『カレンダーシート(2)は、その上辺近傍部に複数の透孔(23)(23)が所定間隔をあけて配設され...吊下げ具(1)は、前記複数の透孔(23)(23)に挿通する係合杆(3)(3)が突設された横長の基板(1a)と、これら係合杆(3)(3)の先端部に装着されるストッパー(4)とからなる構成とした』」(【0007】) ウ.「この実施例では、上記の基板(1a)及びストッパー(4)を、共に、生分解性の合成樹脂を射出成形することにより製作している。」(【0015】) 3 先願明細書記載の発明の認定 上記摘示の記載及び図示を含む先願明細書の全記載によれば、先願明細書には次の発明が記載されていると認めることができる。 「複数枚のカレンダーシート(2)(2)を積層した状態で、これらの上辺近傍部を、綴じ合わせ状態に係止する吊下げ具(1)において、吊下げ具(1)は、横長の基板(1a)と、ストッパー(4)とからなり、共に、生分解性の合成樹脂を射出成形することにより製作する。」 (以下「先願明細書に記載された発明」という。) 4 対比 本願発明と先願明細書に記載された発明とを対比すると、先願明細書に記載された発明の「カレンダーシート(2)(2)を積層した状態で、これらの上辺近傍部を、綴じ合わせ状態に係止する」と、本願発明の「カレンダーの紙部を固定する」は同義であり、先願明細書に記載された発明の「吊下げ具(1)」はカレンダーの紙部を固定するから、本願発明の「留め具」に相当し、先願明細書に記載された発明の「射出成形」及び「生分解性の合成樹脂」は、それぞれ、本願発明の「成形」及び「分解性樹脂」の1つであるから、両者は、「カレンダーの紙部を固定する留め具において、該留め具を分解性樹脂を用いて成形する」点で一致し、以下の点で一応相違している。 [相違点]分解性樹脂が、本願発明では、微生物生産のポリエステル、澱粉、ポリアミノ酸又はポリビニルアルコール等の生分解性プラスチックとポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を混合した崩壊性プラスチック、又は光分解性樹脂、又は光崩壊性樹脂のいずれかであるのに対し、先願明細書に記載された発明では、生分解性の合成樹脂である点。 5 当審の判断 (1)相違点について 本願出願当時、生分解性の合成樹脂として、微生物生産のポリエステル、澱粉、ポリアミノ酸又はポリビニルアルコール等の生分解性プラスチックとポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を混合した崩壊性プラスチックは極普通のもの(特開平4-62023号公報、特開平5-42786号公報参照)であり、生分解性の合成樹脂を、微生物生産のポリエステル、澱粉、ポリアミノ酸又はポリビニルアルコール等の生分解性プラスチックとポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を混合した崩壊性プラスチックと限定した点は、当業者にとって自明な限定にすぎず、限定したことによって発明の目的、効果に格別の差異も生じない。 以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。 第4.むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-22 |
結審通知日 | 2006-05-23 |
審決日 | 2006-06-06 |
出願番号 | 特願平6-43300 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B42D)
P 1 8・ 56- Z (B42D) P 1 8・ 161- Z (B42D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 聡子 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
長島 和子 藤井 靖子 |
発明の名称 | 分解性樹脂成形物 |
代理人 | 金山 聡 |