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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1140308 |
審判番号 | 不服2004-2215 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-01-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-05 |
確定日 | 2006-07-20 |
事件の表示 | 平成11年特許願第184388号「光ファイバの簡易テープ化方法および光ファイバの布線方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月19日出願公開、特開2001- 13330〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年6月29日の出願であって、平成15年12月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月5日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年3月8日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。 2.平成16年3月8日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年3月8日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のように補正することを含むものである。 「【請求項1】 複数の光ファイバ素線を部分的に所要の長さにわたって並列させ、この並列部に、ヤング率(23℃)10kg/mm2〜300kg/mm2の光硬化型樹脂を、厚さ(d+2)μm〜(d+30)μm(但し、dは光ファイバ素線の外径)のテープ状に塗布した後、光を照射して一体に硬化させることを特徴とする光ファイバの簡易テープ化方法。」 上記補正は、補正前の請求項1の光硬化型樹脂のヤング率をさらに具体的に限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。 (2)刊行物記載の発明 原審の拒絶理由に引用したこの出願前公知の刊行物1:特開平10-339818号公報には、下記の事項が記載されている。 「【0011】本発明の光配線部品を製造するにあたり、まず、8個の光ファイバボビン12から引き出した8本の光ファイバ11を同一平面上に平行に密接して整列し、固定治具13で固定する。次にファイバ列他端を固定治具14で固定する(図1b)。・・・ 【0012】このとき、・・・この状態の固定治具付きファイバの光ファイバ部を一対の熱圧着性フィルム15、16で配列面垂直方向から挟み込むことによって8本のファイバが自動的に同一平面上に配置整列される(図1a)。 ・・・ 【0015】次に、熱圧着性フィルムを加熱圧着し、ファイバ部分を固定する。この後、固定治具を取り外し、ファイバ列端部の被覆除去を行い、端面劈開によりファイバ余長処理を行うと共にファイバ端面処理を行い部品が完成する。 ・・・ 【0038】 【発明の効果】上述したように本発明の光配線部品とその製造方法によれば、従来の光配線部品が有していた課題を解決し、接続作業に於ける省力化、接続作業時間の短縮が図れ、光ボードの量産化、低コスト化が実現されると共に、配線部分の占有スペースが低減され光部品の高密度実装、装置の小型化が実現される。・・・」 また、【図1a】には、複数の単芯光ファイバ11を部分的に所要の長さにわたって並列させ、この並列部が熱圧着性フィルム15,16に挟持固定され、前記複数の単芯光ファイバ11が一体的にテープ化されていることが見て取れる。 (3)対比 本願補正発明と刊行物1記載の発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。 引用発明の「8本の光ファイバ11」は、本願補正発明の「複数の光ファイバ素線」に相当し、また、引用発明の「熱圧着性フィルム」が樹脂からなり、加熱圧着により融着一体化していることは明らかである。 よって、両者は、 「複数の光ファイバ素線を部分的に所要の長さにわたって並列させ、この並列部に、樹脂を一体的に形成する光ファイバの簡易テープ化方法」である点で一致し、下記の点で相違する。 相違点: 本願補正発明は、ヤング率(23℃)10kg/mm2〜300kg/mm2の光硬化型樹脂を、厚さ(d+2)μm〜(d+30)μm(但し、dは光ファイバ素線の外径)のテープ状に塗布した後、光を照射して一体に硬化させるのに対して、引用発明は、熱圧着フィルムを用いており、またヤング率や厚さが不明である点。 (4)判断 上記相違点につき検討する。 複数の光ファイバ素線を一体的に形成するのに、光硬化型樹脂を用いることは、原査定の拒絶理由に引用した刊行物2:特開平11-72668号公報、刊行物3:特開昭62-205304号公報及び刊行物4:特開平9-178983号公報に記載されているように周知の技術であるから、熱圧着性フィルムに代えて「光硬化型樹脂をテープ状に塗布した後、光を照射して一体に硬化」することは当業者が容易になし得る程度のことである。 また、光ファイバのテープ被覆層の光硬化型樹脂のヤング率を25℃で2,000〜20,000kg/cm2(20kg/mm2〜200kg/mm2)とすることが、上記刊行物3の3頁右下欄8〜9行に記載されていることからみて、本願補正発明における光硬化型樹脂のヤング率を上記のように規定することは、当業者が適宜設計し得る程度のことである。 さらに、光硬化型樹脂の厚さを上記相違点のように規定(厚さ(d+2)μm〜(d+30)μm)している点については、その厚さは光ファイバ素線の外径よりやや厚い程度というにすぎず、そのようにすることは、配線時等に要求される強度や作業性に応じて適宜設計し得る事項にすぎない。 そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から予測し得る程度のものであり、格別とはいえない。 よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年3月8日付の手続補正は上記のとおり却下され、平成15年12月5日付の手続補正は平成15年12月25日付で補正却下の決定がなされているので、本願の請求項に係る発明は、平成15年9月16日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数の光ファイバ素線を部分的に所要の長さにわたって並列させ、この並列部に光硬化型樹脂をテープ状に塗布した後、光を照射して一体に硬化させる光ファイバの簡易テープ化方法であって、前記光硬化型樹脂の塗布厚を(d+2)μm〜(d+30)μm(但し、dは光ファイバ素線の外径)としたことを特徴とする光ファイバの簡易テープ化方法。」(以下、「本願発明」という。) (2)引用例記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用した、この出願前公知の刊行物1:特開平10-339818号公報には、上記2.(2)刊行物記載の発明で摘記した事項が記載されている。 (3)対比・判断 本願補正発明と比べると、本願発明は、実質上、光硬化型樹脂の「ヤング率を(23℃)10kg/mm2〜300kg/mm2」と規定した点を欠くものである。 よって、本願発明は、上記2.(3)対比、(4)判断における、ヤング率に関する記載を除き、本願補正発明に対するとほぼ同様の理由により、当業者が容易に発明し得たものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-26 |
結審通知日 | 2006-05-02 |
審決日 | 2006-06-02 |
出願番号 | 特願平11-184388 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柏崎 康司、吉田 英一 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
鈴木 俊光 稲積 義登 |
発明の名称 | 光ファイバの簡易テープ化方法および光ファイバの布線方法 |
代理人 | 須山 佐一 |
代理人 | 須山 佐一 |