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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない H04M 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない H04M |
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管理番号 | 1140323 |
審判番号 | 訂正2005-39046 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-01-25 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2005-03-16 |
確定日 | 2006-07-12 |
事件の表示 | 特許第3442750号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第3442750号の発明は、平成3年7月15日に出願した特願平3-172921号の一部を平成13年5月28日に新たな特許出願としたものであって、平成15年6月20日にその特許権の設定登録がなされ、特許異議の申立てがなされ、平成16年4月27日付けで取消理由が通知され、平成16年7月12日に訂正請求がなされたものの平成16年10月27日付けで本件の請求項1ないし5に係る発明の特許を取り消すとの異議の決定がなされ、この決定に対して、平成16年12月17日に決定取消を求める訴え(平成17(行ケ)10357号(平成16(行ケ)550号))が東京高等裁判所になされるとともに、平成17年3月16日に本件訂正審判の請求がなされ、平成17年4月15日付けで訂正拒絶理由の通知がなされ、平成17年5月20日付けで意見書が提出されたものである。 第2.請求の要旨・訂正の内容 本件審判の請求の要旨は、特許第3442750号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正事項の内容は以下のとおりのものである。 1.訂正の内容 (1)特許請求の範囲の請求項1について 訂正事項a 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における「入力されたメロディを複数記憶する記憶手段」を、「固定メロディと前記入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数記憶する記憶手段」と訂正する。 訂正事項b 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における「送信側識別番号と任意に選択されたメロディとを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブル」を、「送信側識別番号と前記固定メロディ及び前記入力されたメロディから任意に選択されたメロディとを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブル」と訂正する。 訂正事項c 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における「前記メロディ入力手段により入力されたメロディを前記記憶手段に記憶する際に、該メロディを再生させる」を、「前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生し、前記対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がされることなくメロディの選択に移る」と訂正する。 (2)特許請求の範囲の請求項5について 訂正事項d 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (3)発明の詳細な説明について 訂正事項e 本件特許明細書の段落番号【0007】の記載について、 「一方、自動発呼による電話連絡に関しては、送信側において送信時に連絡先を登録しなければならず、また送信側からの自動発呼は、遠距離間で自動発呼する場合に連絡のための電話料金が高騰するという問題があった。 そこで、請求項1に係わる発明は、外部から任意のメロディを入力するためのメロディ入力手段と、固定メロディと前記入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数記憶する記憶手段と、送信側識別番号と前記固定メロディ及び前記入力されたメロディから任意に選択されたメロディとを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブルと、受信した送信側識別情報に対応するメロディを前記記憶手段から読み出して再生する再生手段とを備え、前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生し、 前記対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がされることなくメロディの選択に移り、そのメロディによって、結果的にどこからの送信であるのかを明確に通知できる通信装置を提供することを目的としている。」と訂正する。 訂正事項f 本件特許明細書の段落番号【0008】の記載について、 「また、請求項2に係わる発明は、メロディを形成する複数の音を1音づつ入力してメロディを登録しておき、送信側識別情報と登録メロディとを対応づけて記憶させておき、着信側においてその登録されたメロディにより発信元を識別することを目的としている。 更に、請求項3記載の発明は、請求項1の発明において、前記対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応するメロディを選択させることを特徴とする通信装置を提供することを目的としている。また更に、請求項4記載の発明は、メロディの再生後に、入力されたメロディを消去させる手段を備え、不要となったメロディを消去するほか、誤って入力された者を修正する機能を備えた通信装置を提供することを目的としている。」と訂正する。 訂正事項g 本件特許明細書の段落番号【0009】の記載について、 「【課題を解決するための手段】 請求項1に係わる発明は、上記目的を達成するために、外部から任意のメロディを入力するためのメロディ入力手段と、固定メロディと前記入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数記憶する記憶手段と、送信側識別番号と前記固定メロディ及び前記入力されたメロディから任意に選択されたメロディとを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブルと、受信した送信側識別情報に対応するメロディを前記記憶手段から読み出して再生する再生手段とを備え、前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生し、前記対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がされることなくメロディの選択に移ることを特徴とする。」と訂正する。 訂正事項h 本件特許明細書の段落番号【0011】の記載について、「また、請求項3記載の発明は、上記目的を達成するために、請求項1記載の発明において、前記対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応するメロディを選択させることを特徴とする。 更に、請求項4記載の発明は、上記目的を達成するために、メロディの再生後に、入力されたメロディを消去させる手段を備えたことを特徴とする。」と訂正する。 訂正事項i 本件特許明細書の段落番号【0012】の記載について、 「【作用】 上記構成を有する請求項1記載の発明においては、外部から任意のメロディを入力するためのメロディ入力手段と、固定メロディと前記入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数記憶する記憶手段と、送信側識別番号と前記固定メロディ及び前記入力されたメロディから任意に選択されたメロディとを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブルと、受信した送信側識別情報に対応するメロディを前記記憶手段から読み出して再生する再生手段とを備えており、前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生し、前記対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がされることなくメロディの選択に移ることができ、送信側識別情報に対応する呼出音を再生できる。」と訂正する。 訂正事項j 本件特許明細書の段落番号【0014】の記載について、 「請求項1で述べたように、入力されたメロディを登録する際に、そのメロディを再生手段により再生させ、メロディ自体を予め確認し得る。そして、請求項3の発明においては、前記対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応するメロディを選択させ得る。また、上記構成を有する請求項4記載の発明においては、メロディの再生後に、入力されたメロディを消去させる手段を備えている。誤ったメロディは消去され、又は登録の要領で修正できる。」と訂正する。 訂正事項k 本件特許明細書の段落番号【0034】の記載について、 「【発明の効果】 以上説明したように、請求項1記載の発明に係る通信装置によれば、外部から任意のメロディを入力するためのメロディ入力手段と、固定メロディと前記入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数記憶する記憶手段と、送信側識別番号と前記固定メロディ及び前記入力されたメロディから任意に選択されたメロディとを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブルと、受信した送信側識別情報に対応するメロディを前記記憶手段から読み出して再生する再生手段とを備え、前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生し、前記対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がされることなくメロディの選択に移ることができ、呼出音に基づく着信通知から、どこからの送信であるのかを明確に通知でき、送り主を判別できる。」と訂正する。 訂正事項l 本件特許明細書の段落番号【0036】の記載について、 「また、請求項3記載の発明に係る通信装置によれば、対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応するメロディを選択できる。 更に、請求項4記載の発明に係る通信装置によれば、メロディの再生後に、入力されたメロディを消去させる手段を備え、誤って入力されたメロディの修正ができる。」と訂正する。 訂正事項m 本件特許明細書の【符号の説明】の記載について、 「【符号の説明】 11 CPU(判定手段) 12 ROM 13 RAM 14 スキャナ 15 プロッタ 16 DCR(符号復号化装置) 17 モデム(変復調装置) 18 NCU(網制御装置) 19 オペレーションパネル 20 メロディ/音声入力手段 21 メロディ/音声再生手段 22 連絡先入力手段」と訂正する 第3.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、拡張・変更の存否について 1.特許請求の範囲の請求項1について (1)訂正事項aについて 訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の請求項1に記載された「入力されたメロディを複数記憶する記憶手段」について、「固定メロディ」を「複数記憶」することを付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。 (2)訂正事項bについて 訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の請求項1に記載された「送信側識別番号と任意に選択されたメロディとを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブル」について、「固定メロディ」についても「送信側識別番号」と「1対1に対応付けて複数記憶可能」とすることを付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。 (3)訂正事項cについて 訂正事項cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記メロディ入力手段により入力されたメロディを前記記憶手段に記憶する際に、該メロディを再生させる」ことについて、「前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生し」と限定し、「前記対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がされることなくメロディの選択に移る」ことを付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。 2.特許請求の範囲の請求項5について 訂正事項dについて 訂正事項dは、特許請求の範囲の請求項5を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。 3.発明の詳細な説明、図面の簡単な説明について (1)訂正事項eないしlについて 特許請求の範囲と発明の詳細な説明が整合するように、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載に合わせたものであると認められるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。 (2)訂正事項mについて 訂正事項mは、符号の説明の「21」、「22」について、発明の詳細な説明及び図1に整合させたものであり、誤記の訂正を目的としたものである。 3.まとめ したがって、上記訂正は、平成6年法改正前特許法第126条第1項ただし書き第1号ないし第3号の規定及び同条第2項の規定に適合する。 第4.独立特許要件について 上記訂正は、平成6年法改正前特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 1.訂正発明について 訂正明細書の特許請求の記載は次のとおりである。 「【請求項1】外部から任意のメロディを入力するためのメロディ入力手段と、 固定メロディと前記入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数記憶する記憶手段と、 送信側識別番号と前記固定メロディ及び前記入力されたメロディから任意に選択されたメロディとを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブルと、 受信した送信側識別情報に対応するメロディを前記記憶手段から読み出して再生する再生手段とを備え、 前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生し、 前記対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がされることなくメロディの選択に移ることを特徴とする通信装置。 【請求項2】前記メロディ入力手段は、メロディを形成する複数の音を1音づつ入力するものであることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。 【請求項3】前記対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応するメロディを選択させることを特徴とする請求項1又は2記載の通信装置。 【請求項4】メロディの再生後に、入力されたメロディを消去させる手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3記載の通信装置。」 2.刊行物に記載された発明 (1)特開平2-26440号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 a)[産業上の利用分野]本発明は、電話機に着呼があったとき着呼を通知する複数の呼出音から一つを選択する呼出音選択方式に関する。」(1頁右下欄2行ないし5行)、 b)「本発明の目的は、発呼元である相手番号を受信したとき予め設定した複数の呼出音の一つを選択して発生することにより、上記欠点を解決した呼出音選択方式を提供することにある。」(2頁右上欄1行ないし4行)、 c)「[課題を解決するための手段]本発明の呼出音選択方式は、着呼により呼出信号を受信したとき電話機が発生する呼出音を、それぞれ相違する音色の呼出音を発生する呼出音信号器の一つを予め選択して発生させる呼出音選択方式において、受信した発呼者電話番号を判別する相手番号判別部と、登録電話番号ごとに発生する信号音の一つの呼出音信号器を予め設定したものを記憶する番号対応呼出音選択信号記憶部と、着呼により呼出信号を受信したとき、前記相手番号判別部から取出した発呼者電話番号を登録電話番号とし前記番号対応呼出音選択信号記憶部から索引した呼出音信号器を選択駆動する呼出音信号選択部とを前記電話機が有する。」(2頁右上欄5行ないし18行)、 d)「第1図において、電話機は相手番号判別部1、表示器2、番号対応呼出音選択信号記憶部3、ダイヤルボタン4、番号呼出対応付部5、呼出音設定ボタン6、呼出音選択ボタン7、呼出音信号選択部8、呼出音信号部9、および呼出音発生器10を有し、また呼出音信号部9は呼出音信号器(1)91、呼出音信号器(2)92、〜呼出音信号器(N)9Nを有する。相手番号判別部1は着信呼が発呼者番号を転信するときこの発呼者番号を相手番号として判別する。表示器2は相手番号判別部1が判別した発呼者番号を番号表示する。番号対応呼出音選択信号記憶部3は特定の発呼者番号に対し番号ごとに呼出音の種別を予め指定して記憶し、番号を入力したとき対応する呼出音を選択する選択信号を出力する。ダイヤルボタン4が扱者により手動操作されたとき番号呼出音対応付部5はダイヤル符号として操作ボタン情報を受信し、呼出音設定ボタン6の扱者操作により、受信したダイヤル符号と、呼出音信号選択部8から取出した選択中の呼出音信号器情報とを番号対応呼出音選択信号記憶部3に転送して記憶させる。呼出音選択ボタン7は呼出音信号選択部8に手動操作により呼出音信号器の一つを選択する選択情報を与える。呼出音信号部9は呼出音選択部8からの指示により呼出音信号器(1)91〜(N)9Nの駆動選択をうける。呼出音発生器10は各呼出音信号器(1)91〜(N)9Nの出力を接続して駆動された信号器の信号音を受信し鳴動音を発生させる」(2頁左下欄7行ないし右下欄15行)、 e)「第3図の呼出音選択指定手順では、まず呼出音信号選択部8は扱者の操作による呼出音選択ボタン7の操作情報を受信(S1)するので、所定の第1の呼出音信号器(179)を駆動(S2)し、呼出音発生器10から呼出音を発生させる。次に呼出音選択ボタン7の操作情報を受信(S3)したとき、呼出音選択部8は所定の次の順序の呼出音信号器(2)92を駆動(S4)して呼出音発生器10から信号器(2)の呼出音を発生させる。扱者は希望する呼出音が発生するまで選択ボタンの操作を繰返し、所望の呼出音の聴取でダイヤルボタンにより、発生中の信号音を指定するダイヤル番号を操作する。従って、番号呼出音対応付部5はダイヤルボタン4から操作情報を受信するので、この情報を蓄積(S5)する。次いで、現状の取消がない(S6)場合、番号呼出音対応付部は呼出音設定ボタン6の操作情報を受信(S7)したとき、手順S5で受信したダイヤル番号情報と呼出音信号選択部8が選択中の呼出音信号器選択情報とを番号対応呼出音選択信号記憶部3へ転送して記録(S8)させ、登録の手順は終了する。」(3頁右上欄1行ないし左下欄1行)。 これらの記載及びこの技術分野の技術常識を考慮すれば、引用刊行物1には、 「それぞれ相違する音色からなる複数の呼出音を生成することができる呼出音信号器91〜9Nと、希望する呼出音を選択した後、ダイヤル番号を指定することにより、相手ダイヤル番号と任意に選択された呼出音とを1対1に対応付けて複数記憶可能な番号対応呼出音選択信号記憶部3と、受信した相手ダイヤル番号に対応する呼出音を前記呼出音信号器91〜9Nから出力して再生する呼出音発生器10とを備えた電話機における呼出音選択方式。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。 (2)特開平2-126289号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 a)[産業上の利用分野]この発明は、電話機における保留音や呼出音に好適なメロディ音の作曲など、簡易なメロディの作曲に用いられる作曲装置に関する。」(1頁右下欄6行ないし9行)、 b)「そこで、この発明は、このような電話機の保留音や呼出音などに用いることができる簡易なメロディの作曲ができる作曲装置の提供を目的とする。」(2頁右上欄10行ないし12行)、 c)「そして、キーボード入力によって作曲制御手段から、楽音の周波数を制御する周波数制御信号、楽音の持続時間を制御する時間制御信号、または、楽音のレベルを制御するレベル制御信号が得られるので、任意の楽音信号を形成することができ、所望の楽音を組み合わせて任意のメロディを作曲することができ、そのメロディを記憶手段に書き込み、それを読み出すことによって、作曲されたメロディを再生し、保留音や呼出音などとして用いることができる。」(2頁右下欄14行ないし3頁左上欄3行)、 d)「次に、第3図は、作曲のための楽音形成フローを示す。ステップS1では第2図に示す電話機本体42のスイッチ38を操作して通常のダイヤル入力モードAから保留音の作曲モードBへの切換えが行われる。 次に、ステップS2では、キースイッチ361またはキースイッチ363を押下すると、その選択的な押下およびその押下時間に応じたレベルの周波数制御信号FCがCPU34から出力され、キースイッチ361、363の選択及びその押下時間に対応した分周比NがDIV48に設定されて任意の周波数fMのクロックパルスCLKが得られる。このクロックパルスCLKに応じて楽音データMaがROM50から読み出される。この楽音データMaは、DAC52により、第4図に示す周波数fMを持つ連続した交流アナログ信号である楽音信号MAに変換される。 次に、ステップS3では、キーボード36のキースイッチ367またはキースイッチ369を押下し、キースイッチ367、369の選択およびその押下時間に応じてGATE56に持続時間TMを表す信号通過時間が設定され、第4図に示すように、楽音信号MAの持続時間TMが設定される。 次に、ステップS4では、キーボード36のキースイッチ364またはキースイッチ366の押下によって、キースイッチ364、366の選択およびその押下時間に応じて第4図に示すように、楽音信号MAの振幅レベルVMが設定される。この振幅レベルVMによって音量レベルが設定されることになる。 次に、ステップS5では、楽音のテストモードであり、キースイッチ371を操作すると、周波数fM、時間TMおよび振幅レベルVMが設定された楽音信号MAが音声として再生される。次に、ステップS6では、楽音信号MAによって再生される楽音が操作者の希望したものか否かを判断し、希望したものでないときには、ステップS2に戻り、再度、ステップS3〜S6を経て楽音を形成する。そして、ステップS6で希望の楽音が得られたと判断した場合には、ステップS7に移行し、キースイッチ372を押下してRAM60にその楽音を表す楽音信号データMaを記憶させ、ステップS8に移行する。 このような、ステップS1〜S8を経てメロディの要素である1つの楽音が形成され、これらのステップS1〜S8を繰り返すことによって、同一または異なる楽音を連ねてメロディとして形成され、楽音の積み重ねで1つのメロディをRAM60に記憶させることができる。希望のメロディが形成された場合には、ステップS9に移行し、スイッチ38を操作して通常のダイヤル入力モードAに移行させる。 そして、スイッチ40を操作すれば、記憶させたメロディがRAM60から読み出され、スピーカ44または送受器46から音響として再生することができる。」(4頁右上欄17行ないし5頁左上欄14行)。 これらの記載及びこの技術分野の技術常識を考慮すれば、引用刊行物2には、 「キーボード入力によって作曲制御手段から、楽音の周波数を制御する周波数制御信号、楽音の持続時間を制御する時間制御信号、及び楽音のレベルを制御するレベル制御信号を得て、メロディの要素である1つの楽音を形成し、所望の楽音を組み合わせて任意のメロディを作曲し、そのメロディを記憶手段に書き込み、それを読み出すことによって、作曲されたメロディを再生し、呼出音として用いる電話機において、入力されたメロディを前記記憶手段に記憶する際に、該メロディを構成する楽音を再生し、再生される楽音が操作者の希望したものか否か判断し、希望したものでないときには再度、楽音を形成し、希望の楽音が得られたと判断した場合には、その楽音を表す楽音信号データを前記記憶手段に記憶させるようにした電話機」の発明が開示されているものと認められる。 (3)特開平1-188148号公報「以下、「引用刊行物3」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 a)「[産業上の利用分野]本発明は、発信者番号を通知する機能を持った交換機に接続される電話機に関し、特に発信者番号に対応した呼出し音を発生することのできる呼出し音可変型電話機に関する。」(1頁左下欄16行ないし右上欄2行)、 b)「本発明は、上記課題を解決し、呼出し音により発信者を識別することができる呼出し音可変型電話機を提供することを目的とする。」(1頁右下欄17行ないし2頁左上欄1行)、 c)「第1図において、本実施例による呼出し音可変型電話機は、電話番号等の表示を行う表示装置31と、呼出し音等のパターン登録を行なうためのキーパッド32と、複数の呼出し音を発生可能な呼出し音発生回路33と、電話番号と呼出し音の対応関係を登録する蓄積回路35と、電話回線の着信等の制御を行う回線制御装置36と、上記各部の制御を行う中央制御装置34とから構成される。 次に、本実施例の動作について第2図及び第3図を参照して説明する。 先ず、電話番号と呼出し音の対応関係等の登録は、第2図に示すように、ステップ11でキー押下を待ち、使用者がキーパッド32の中から登録用キーを押下すると、中央制御装置34が表示装置31を用いて相手番号の入力をステップ12で要求する。次に、ステップ13で中央制御装置34が再びキーパッド32を監視し、入力が終了するとステップ14で表示装置31を用いて呼出し音の選択を要求する。ここで使用者がキーパッド32を用いて呼出し音のパターンを登録すると、ステップ15で入力済を確認した後、ステップ16で表示装置31と呼出し音発生回路33を用いて使用者に確認をうながし、使用者が確認すると、ステップ18で蓄積回路35に相手番号と呼出し音との対応が記憶される。」(2頁右上欄1行ないし左下欄8行)。 これらの記載及びこの技術分野の技術常識を考慮すれば、引用刊行物3には、「対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応する呼出し音を選択させると共に、電話番号と呼出し音パターンを登録した後、表示装置31と呼出し音発生回路33を用いて使用者に確認をうながし、使用者が確認すると、ステップ18で蓄積回路35に相手番号と呼出し音との対応が記憶される。」発明が開示されているものと認められる。 (4)特開昭64-46361号公報(以下、「引用刊行物4」という。)には図面とともに以下の記載がある。 a)「電話回線上に出現する呼出し信号を検出してこの電話回線上に応答を返す自動応答手段と、この自動応答後に電話回線上に出現することのあるダイヤル番号を検出し、これが登録中の複数の暗証ダイヤル番号の一つと一致するか否かを照合する暗証ダイヤル検出・照合手段と、照合一致の場合この一致した暗証ダイヤル番号ごとに決められている特定の音色の着信通知音を発生する着信通知音発生手段とを備えたことを特徴とする選択的着信通知機能を備えた電話機。」(1頁5行ないし14行)、 b)「ダイヤル番号検出・照合部3は、照合一致の場合この一致した暗証ダイヤル番号に対応付けられている3個のメロディIC41〜43の一つを選択して起動する」(2頁左下欄12行ないし15行)、 c)「3個のメロディIC41〜43には、異なるメロディの着信通知音をディジタル形式で記憶しているROMと、このROMからディジタル信号を呼出してアナログ信号に変換するA/D変換回路が内蔵されている。選択されたメロディICで再生されたアナログ形式の着信通知音は増幅器44を経てスピーカ45に供給され、この電話機の利用者に着信の発生を通知する。」(2頁左下欄下から2行ないし右下欄6行)、 d)「更に、メロディICからなる異なるメロディの着信通知信号を発生させる構成を例示したが、異なる周波数や断続周期でブザーを鳴動させるなど他の適宜な構成によって異なる音色の着信通知音を発生させてもよい。」(3頁右下欄7行ないし11行) e)「本発明の電話機は複数の暗証ダイヤル番号とこれらに固有の音色の着信通知音を利用する構成であるから、利用者は応答に先立って着信通知音の音色から発呼者を識別ないし推定できたり・・・利便性が大幅に向上するという効果がある。」(3頁右下欄13行ないし19行)。 3.訂正明細書の請求項1に記載された発明(以下、「訂正発明1」という。)について [対比] 訂正発明1と引用発明とを対比すると、 a)引用発明は、「相手ダイヤル番号と任意に選択された呼出音とを1対1に対応付けて複数記憶可能な番号対応呼出音選択信号記憶部3」を備え、この「相手ダイヤル番号」は、「送信側識別番号」といえるから、両者は、相手ダイヤル番号と対応付けられる音が「メロディ」である点を除き、「送信側識別番号と任意に選択された音とを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブル」を備える点で一致する。 b)引用発明は、「受信した相手ダイヤル番号に対応する呼出音を前記呼出音信号器91〜9Nから出力して再生する呼出音発生器10」を備え、「相手ダイヤル番号」、及び「呼出音発生器」は、「送信側識別情報」、及び「再生手段」といえるから、両者は、送信側識別情報に対応する音が「メロディ」であり、該メロディが「記憶手段」から読み出される点を除き、「受信した送信側識別情報に対応する音を再生する再生手段」を備える点で一致する。 c)引用発明は、呼出音を選択する電話機の発明であるから、両者は「通信装置」である点で一致する。 したがって、両者は、以下の点で一致ないし相違する。 [一致点] 送信側識別番号と任意に選択された音とを1対1に対応付けて複数記憶可能な対応テーブルと、受信した送信側識別情報に対応する音を再生する再生手段とを備えた通信装置。 [相違点] a)訂正発明1は、「外部から任意のメロディを入力するためのメロディ入力手段」と、「固定メロディと前記入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数記憶する記憶手段」を備え、対応テーブルで送信側識別情報と対応付けられ、再生手段で再生される音が「メロディ」であり、前記メロディを「前記記憶手段から読み出して再生する」のに対して、引用発明はそのようなものではない点。 b)訂正発明1は、「前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生」するのに対して、引用発明はそのようなものではない点。 c)訂正発明1は、「対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がなされることなくメロディの選択に移る」のに対して、引用発明は、希望する呼出音を選択した後、ダイヤル番号を指定している点。 [判断] ア)相違点a)について 引用刊行物2には、「キーボード入力によって作曲制御手段から、楽音の周波数を制御する周波数制御信号、楽音の持続時間を制御する時間制御信号、及び楽音のレベルを制御するレベル制御信号を得て、メロディの要素である1つの楽音を形成し、所望の楽音を組み合わせて任意のメロディを作曲し、そのメロディを記憶手段に書き込み、それを読み出すことによって、作曲されたメロディを再生し、呼出音として用いる電話機において、入力されたメロディを前記記憶手段に記憶する際に、該メロディを構成する楽音を再生し、再生される楽音が操作者の希望したものか否か判断し、希望したものでないときには再度、楽音を形成し、希望の楽音が得られたと判断した場合には、その楽音を表す楽音信号データを前記記憶手段に記憶させるようにした電話機」の発明が開示され、通信装置である電話機の技術分野において、外部から任意のメロディを入力する入力手段と、入力されたメロディを記憶する記憶手段とを設けて、呼出音を生成することは公知の技術であると認められること、引用刊行物4には、電話機において、固定メロディを複数記憶する記憶手段を備え、ダイヤル番号に応じて異なる着信音を生成する技術が開示されていること、また、送信側識別番号に対応してメロディ音を異ならせる際に、「固定メロディと入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数とする」ことは適宜実施し得る設計的事項にすぎないと考えられること、加えて、 引用刊行物4に「更に、メロディICからなる異なるメロディの着信通知信号を発生させる構成を例示したが、異なる周波数や断続周期でブザーを鳴動させるなど他の適宜な構成によって異なる音色の着信通知音を発生させてもよい。」(3頁右下欄7行ないし11行)の記載があり、異なる着信通知音を発生させるに際して、メロディとするか、それとも他の適宜な構成による音色とするかは選択的事項にすぎないことが示唆されていることから、引用発明において、引用刊行物2に開示された発明の技術、及び引用刊行物4に開示された技術を採用して「外部から任意のメロディを入力するためのメロディ入力手段」と、「固定メロディと前記入力手段により入力されたメロディとをそれぞれ複数記憶する記憶手段」を備え、対応テーブルで送信側識別情報と対応付けられ、再生手段で再生される音を「メロディ」とし、前記メロディを「前記記憶手段から読み出して再生する」ものとすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。 イ)相違点b)について 記憶の可否を、楽音毎に代えて、楽音の集合である1つのメロディの単位で判断することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないといえること、引用刊行物2には、記憶させたメロディをスイッチ40の操作により読み出して、音響として再生することが開示され、このスイッチ40を操作して記憶したメロディを再生した際に、希望したメロディでない場合に再入力を行うことは操作者における自然の操作といえること、そして、引用発明に引用刊行物2に記載された発明の技術等を適用することに格別の困難性はないことを考慮すると、引用発明において「メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生」するようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。 このことは、「複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら、該メロディをその記憶の可否のために再生」することが作曲装置における周知の技術(特開昭57-46294号公報、特開昭57-160088号公報、特開平1-179195号公報、実願昭62-147347号(実開昭64-51992号)のマイクロフィルム)であって、この周知の技術を引用発明に適用することを妨げる格別の理由がないことから、引用発明において「前記メロディ入力手段により複数の音からなる一つのメロディの入力が終了したら該メロディをその記憶可否のために再生」することは当業者であれば容易に想到し得るといえる。 ウ)相違点c)について 引用刊行物3には、対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応する呼出し音を選択させると共に、電話番号と呼出し音パターンを登録した後、呼出し音発生回路33を用いて使用者に確認をうながし、使用者が確認すると、ステップ18で蓄積回路35に相手番号と呼出し音との対応が記憶される発明が開示されているものと認められ、引用刊行物3の第2図のフローチャートでは、再生された呼出し音が所望のものでなかった場合(ステップ17でNO)、送信側識別番号の再指定がなされるフローとなっているが、呼出し音を選択する際に既に入力されている相手先番号の入力は不要であることを考慮すると、ステップ17でNOであったときにはステップ14の呼出し音の選択要求の戻ることがむしろ自然といえるから、引用発明において、引用刊行物3に記載された発明を適用し、「対応テーブルへの記憶の際には、前記送信側識別番号の指定とメロディの選択が終了したら、選択されたメロディを前記再生手段により再生させ、再生されたメロディが所望のメロディでなかった場合には、前記送信側識別番号の再指定がなされることなくメロディの選択に移る」ようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。 [まとめ] したがって、訂正発明1は引用刊行物1ないし4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.訂正明細書の請求項2に記載された発明(以下、「訂正発明2」という。)について [対比] 訂正発明2と引用発明とを対比すると、両者は上記相違点a)ないしc)に加えて下記d)の点で相違し、その余の点では一致する。 [相違点] d)訂正発明2は、「前記メロディ入力手段は、メロディを形成する複数の音を一音づつ入力するものである」の対して、引用発明には、そのようなメロディ入力手段を備えていない点。 [判断] 引用刊行物2には、前示した「キーボード入力によって作曲制御手段から、楽音の周波数を制御する周波数制御信号、楽音の持続時間を制御する時間制御信号、及び楽音のレベルを制御するレベル制御信号を得て、メロディの要素である1つの楽音を形成し、所望の楽音を組み合わせて任意のメロディを作曲し、そのメロディを記憶手段に書き込み、それを読み出すことによって、作曲されたメロディを再生し、呼出音として用いる電話機において、入力されたメロディを前記記憶手段に記憶する際に、該メロディを構成する楽音を再生し、再生される楽音が操作者の希望したものか否か判断し、希望したものでないときには再度、楽音を形成し、希望の楽音が得られたと判断した場合には、その楽音を表す楽音信号データを前記記憶手段に記憶させるようにした電話機」の発明が開示され、メロディを形成する複数の楽音を1音づつ入力することは公知の技術であると認められ、また、引用発明に引用刊行物2に記載された発明の技術の適用を阻害する格別の理由もないことから、引用発明において「前記メロディ入力手段は、メロディを形成する複数の音を1音づつ入力するもの」とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。 [まとめ] したがって、訂正発明2は引用刊行物1ないし4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.訂正明細書の請求項3に記載された発明(以下、「訂正発明3」という。)について [対比] 訂正発明3と引用発明とを対比すると、両者は上記相違点a)〜d)に加えて下記e)の点で相違し、その余の点では一致する。 [相違点] e)訂正発明3は、「対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応するメロディを選択させる」のに対して、引用発明は、希望する呼出音を選択した後、ダイヤル番号を指定している点、すなわち、送信側識別番号(ダイヤル番号)とメロディ(呼出音)の選択、指定の順番が逆に構成されている点。 [判断] そこで、検討するに、識別番号(ダイヤル番号)とメロディ(呼出音)とを対応付けて記憶するために、識別番号(ダイヤル番号)を指定した後、メロディ(呼出音)を選択するか、メロディ(呼出音)を選択した後、識別番号(ダイヤル番号)を指定するかは、いわゆる二者択一の関係であるから、引用発明において「対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応するメロディを選択させる」ことは当業者が適宜なし得る程度のことである。 このことは、引用刊行物3に「対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応する呼出し音選択させる・・・」発明が開示され、そしてこの発明の適用を妨げる格別の阻害理由もないことから、引用発明において「前記対応テーブルへの記憶の際には、送信側識別番号を指定させた後、対応するメロディを選択させる」ことは当業者が適宜なし得ることであるといえる。 [まとめ] したがって、訂正発明3は引用刊行物1ないし4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6.訂正明細書の請求項4に記載された発明(以下、「訂正発明4」という。)について [1]対比 訂正発明4と引用発明とを対比すると、両者は上記相違点a)〜e)に加えて下記の点で相違し、その余の点では一致する。 [相違点] f)訂正発明4は、「メロディの再生後に、入力されたメロディを消去させる手段を備え」ているのに対して、引用発明はそのような手段を備えていない点。 [判断] そこで、検討すると、 引用刊行物2には、「キーボード入力によって作曲制御手段から、楽音の周波数を制御する周波数制御信号、楽音の持続時間を制御する時間制御信号、及び楽音のレベルを制御するレベル制御信号を得て、メロディの要素である1つの楽音を形成し、所望の楽音を組み合わせて任意のメロディを作曲し、そのメロディを記憶手段に書き込み、それを読み出すことによって、作曲されたメロディを再生し、呼出音として用いる電話機において、入力されたメロディを前記記憶手段に記憶する際に、該メロディを構成する楽音を再生し、再生される楽音が操作者の希望したものか否か判断し、希望したものでないときには再度、楽音を形成し、希望の楽音が得られたと判断した場合には、その楽音を表す楽音信号データを前記記憶手段に記憶させるようにした電話機」の発明が開示され、通信装置の技術分野において、メロディを形成する複数の音を1音づつ入力し、楽音を再生した後に、希望したものでないときには、再度入力し直し、すなわち、入力した楽音を消去して、新たな楽音を入力することは公知の技術と認められ、そして、入力された楽音毎に再生、消去するか、楽音が集まった一つのメロディで再生、消去するかは、当業者が適宜選択しうる事項にすぎないといえるから、引用発明において「メロディの再生後に、入力されたメロディを消去させる手段を備え」るようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。 このことは、引用刊行物3に「・・・電話番号と呼出し音パターンを登録した後、表示装置31と呼出し音発生回路33を用いて使用者に確認をうながし、使用者が確認すると、ステップ18で蓄積回路35に相手番号と呼出し音との対応が記憶され、確認の結果、好ましくない場合には、電話番号の入力から再び行う」ようにした発明が開示され、使用者が確認するために、呼出し音発生回路33を用いて呼出し音パターンを再生し、希望するものでない場合には、再び呼出し音パターンを選択し、再び呼出し音パターンを選択することにより、前回の呼出し音パターンを消去することが示唆されているから、引用刊行物3に開示ないし示唆された発明を考慮すれば、引用発明において「メロディの再生後に、入力されたメロディを消去させる手段を備え」るようにすることは当業者が容易に想到し得ることであることからもいえる。 [まとめ] したがって、訂正発明4は引用刊行物1ないし4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 第5.むすび 以上のとおりであるから、訂正発明1ないし4は、引用発明1ないし4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件審判の請求は、平成6年法改正前の特許法第126条第3項の規定に違反するものであるので、本件訂正は認められない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-03 |
結審通知日 | 2005-06-07 |
審決日 | 2005-06-21 |
出願番号 | 特願2001-158904(P2001-158904) |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Z
(H04M)
P 1 41・ 121- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
佐藤 秀一 |
特許庁審判官 |
長島 孝志 衣鳩 文彦 |
登録日 | 2003-06-20 |
登録番号 | 特許第3442750号(P3442750) |
発明の名称 | 通信装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |