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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする A47L
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする A47L
管理番号 1140325
審判番号 不服2003-19640  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-07 
確定日 2006-08-07 
事件の表示 平成 6年特許願第244619号「自走式掃除機」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月26日出願公開、特開平 8- 80277号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年9月12日の出願(特願平6-244619号)であって、平成14年11月8日付けの最初の拒絶理由通知に対して平成15年1月15日付けで手続補正書が提出され、次いで、平成15年3月3日付けの最後の拒絶理由通知に対して平成15年5月12日付けで手続補正書が提出されたところ、平成15年9月1日付けで該平成15年5月12日付けの手続補正書による補正について補正却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされたものである。

2.審判の対象となる明細書及び査定の理由
本件審判請求において、請求人は、上記補正却下の決定について不服を申し立てていないので、本件審判の対象は、拒絶査定時の明細書及び図面、すなわち、平成15年1月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面である。
そして、査定の理由、すなわち、平成15年3月3日付けの最後の拒絶理由通知に係る拒絶の理由は、平成15年1月15日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条第2項に規定する要件をみたしていないというものである。

3.本件補正
平成15年1月15日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1及び2は、次のように補正された。
「【請求項1】
床面の塵埃を吸引する吸引具を具えた車体部に、走行用の駆動輪と操舵輪とを配した自走式掃除機であって、
車体部に、
走行方向前方に配され床面の急激な下り段差を検知する検知手段と、
この検知手段の検知により、前記車体部を持ち上げ駆動輪を床面から浮上がらせると同時に車体部を制動する急停止手段とを設け、
かつこの急停止手段は、床面に当接して踏張り、前記車体部の慣性力により該車体部を持ち上げ駆動輪を浮き上がらせることを特徴とする自走式掃除機。
【請求項2】
前記急停止手段は、車体部に回動可能に枢支されかつ扇状をなすカム板からなり、該カム板は常時は前記検知手段に付設される突片により係合されるとともに前記突片との係合が解放されることにより回動して床面に当接するものであり、かつ床面に当接して踏張り前記車体部の慣性力により回動して下向きの半径長さが増すことによって車体部を持ち上げ駆動輪を浮き上がらせることを特徴とする請求項1記載の自走式掃除機。」

4.本件補正に対する拒絶理由
本件補正に対する、平成15年3月3日付けの最後の拒絶理由通知に係る拒絶の理由は、次のとおりである。
「請求項第1項の「床面に当接して踏張り、前記車体部の慣性力により車体部を持ち上げ駆動輪を該車体部を浮き上がらせる」及び請求項第2項「床面に当接して踏張り、前記車体部の慣性力により回動して下向きの半径長さが増すことによって車体部を持ち上げ駆動輪を該車体部を浮き上がらせる」と補正した点は、急停止手段を限定して特定するものである。ところで、願書に最初に添付した明細書又は図面には、「検知手段の検知により駆動輪を床面から浮上がらせて車体部を制動する急停止手段」は記載されているものの、上記補正の点が願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項から当業者が直接的且つ一義的に導き出せる事項であるとは認められない。」(なお、「駆動輪を該車体部を浮き上がらせる」は、「駆動輪を浮き上がらせる」の誤記と認める。)

5.審判請求人の主張
これに対して、審判請求人は、本件審判の請求の理由において、請求項1について、「【0027】に記載の内容から、カム面10Aに摩擦力を高める凹凸を形成しているため「床面Fと当接」することにより、「踏張り」車体部3を持上るのであり、駆動輪は浮上すると駆動力は消失するのでありますから、車体部の慣性力により車体部を持ち上げ駆動輪を該車体部を浮き上がらせることは、何ら特異な現象ではなく、それ以外にはあり得ず、又当初明細書にもその意の記載しかないのでありますから、・・・新規な事項はなく、当初明細書記載の範囲内と考えます。」と主張し、又請求項2について、「【0023】の「短径RS側が床面Fに向く側に位置するよう車体部3に組付けられている。従って、カム板10は常時においては床面Fとの間で間隙を有し、回動することによって下向きの半径長さRが増すことになる」との記載と合わせるとき、・・・当初明細書に記載の範囲内の事項と考えます。」と主張すると共に、請求項1及び2の前記補正は、新規事項ではなかったのであるから、特許法第17条第2項の規定に違反しているとする査定の理由はあたらない旨主張している。

6.当審の判断
以下、査定の理由の適否について検討する。
本願の発明の詳細な説明の【0023】段落には、「カム板10は・・・回動することによって下向きの半径長さRが増すことになる」と記載されており、又、同【0027】段落には、「前記係合の解放によって、カム板10はその重心位置が長軸RL側に位置するため、長軸RLが下向きに回動し、カム面10Aが床面Fに接地する。さらに車体部3の慣性力により該車体部3が若干の距離を前進する一方、カム板10は、そのカム面10Aに摩擦力を高める凹凸を形成しているため床面Fと当接することにより、踏張り車体部3を持上げ、従って駆動輪4が浮上がることとなる。」と記載されている。
これらの記載からすると、急停止手段であるカム板10は、床面Fと当接して踏張り、車体部3の慣性力により該車体部3を持上げ、従って駆動輪4を浮上がらせるものであること、又、カム板10は、回動することによって下向きの半径長さRが増すものであることは明らかであるから、請求項1の「床面に当接して踏張り、前記車体部の慣性力により車体部を持ち上げ駆動輪を浮き上がらせる」及び請求項2の「床面に当接して踏張り、前記車体部の慣性力により回動して下向きの半径長さが増すことによって車体部を持ち上げ駆動輪を浮き上がらせる」との構成は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであると認められる。

7.結論
したがって、平成15年1月15日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反しないので、本願は、査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
さらに、本願は、平成14年11月8日付けの最初の拒絶理由通知に係る拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-07-18 
出願番号 特願平6-244619
審決分類 P 1 8・ 121- WYB (A47L)
P 1 8・ 561- WYB (A47L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小谷 一郎  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 芦原 康裕
川本 真裕
発明の名称 自走式掃除機  
代理人 苗村 正  

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