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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1140686 |
審判番号 | 不服2005-12119 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-27 |
確定日 | 2006-07-24 |
事件の表示 | 特願2001-206885「車両に搭載する防水カメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年3月27日出願公開、特開2002-90603〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年(2000年)7月10日に出願された特願2000-208869号の特許出願を基礎とする特許法第41条に基づく国内優先権を主張して平成13年(2001年)7月6日に特許出願された特願2001-206885号であって、原審において平成17年2月21日付の拒絶理由を通知したところ、平成17年4月26日付の意見書とともに明細書を補正する同日付の手続補正書が提出され、前記拒絶理由により平成17年5月24日付で拒絶査定がなされ、前記拒絶査定を不服として、平成17年6月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに明細書を補正する同日付の手続補正書が提出され、その後、原審においてなされた前置審査の結果としての前置報告の内容に関して審判請求人の意見を求めるために、当審が審判請求人に審尋をしたところ、平成18年4月26日に審判請求人から回答書が提出されたものである。 第2 平成17年6月27日付の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成17年6月27日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成17年6月27日付の手続補正(以下、この補正を「本件補正」という。)は、平成17年4月26日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲についての 「【請求項1】広角レンズ群と、 前記広角レンズ群の1枚目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズにより前面開口を封止したカメラケースと、 前記カメラケース内に固定されるとともに、内部に前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズが固定された鏡筒部とを有し、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラ。 【請求項2】広角レンズ群と、 カメラケースと、 前記カメラケースの前方部において一体で形成され、前記広角レンズ群の1枚目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズにより前面開口を封止するとともに、内部に前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズが固定された鏡筒部とを有し、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラ。 【請求項3】広角レンズ群と、 前面に開口を形成したカメラケースと、 前記カメラケースの前面開口を封止するように前記カメラケースに取り付けられ、前記広角レンズ群の1枚目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズにより前面開口を封止するとともに、内部に前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズが固定された鏡筒部とを有し、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラ。 【請求項4】請求項3に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記カメラケースを前ケースと後ケースに分割し、前記後ケースと前記鏡筒部に前記光軸方向にお互いに当接するボスを形成し、前記前ケースと前記鏡筒部の間にゴムを配置して前記後ケースと前記鏡筒部の各ボスを当接した状態で前記前ケースと前記後ケースを固定する車両に搭載する防水カメラ。 【請求項5】請求項3に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記カメラケースを前ケースと後ケースに分割し、前記後ケースと前記鏡筒部に前記光軸方向にお互いに当接するボスを形成し、前記前ケースと前記1枚目のレンズの間にゴムを配置して前記後ケースと前記鏡筒部の各ボスを当接した状態で前記前ケースと前記後ケースを固定する車両に搭載する防水カメラ。 【請求項6】請求項3に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記カメラケースと前記1枚目のレンズの間にゴムを配置して前記カメラケースと前記鏡筒部をネジ止めする車両に搭載する防水カメラ。 【請求項7】前面に開口が形成された防水用のカメラケースと、 前記カメラケースの内部に固設されるとともに、前面に開口が形成され、かつこの開口に連通したレンズ収容スペースが形成された鏡筒と、 前記鏡筒のレンズ収容スペースに配設され、かつ複数のレンズから成るレンズ群とを備え、 前記レンズ収容スペースに配設されたレンズ群の1番目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズを前記鏡筒の開口に位置させて当該1番目のレンズの周辺部と前記鏡筒の開口の周縁とを封止し、前記レンズ群の1番目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラ。 【請求項8】請求項7に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記1番目のレンズは、このレンズの径方向に交差し、かつこのレンズの前記光軸方向断面が段状に変化する第1の段部を形成した円周面を有し、 前記鏡筒は、その開口を形成する内壁円周面に、前記光軸方向断面が段状に変化する第2の段部を有し、 前記第1及び第2の段部の相互間にシーリング用部材を介挿させた車両に搭載する防水カメラ。 【請求項9】請求項8に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記鏡筒は、この鏡筒の先端部の外周面に、前記光軸方向断面が段状に変化する第3の段部を有し、 前記カメラケースは、このカメラケースの開口を形成する内壁円周面に、前記光軸方向断面が段状に変化する第4の段部を有し、 前記第3及び第4の段部の相互間にシーリング用部材を介挿させた車両に搭載する防水カメラ。 【請求項10】請求項7から9のいずれか1つに記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記鏡筒は樹脂材料で形成され、 前記鏡筒の周縁に形成した突起を前記1番目のレンズの前面側周辺部に被せるように熱溶着によりかしめた車両に搭載する防水カメラ。 【請求項11】請求項10に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記レンズ群は広角撮像の視野角を有する車両に搭載する防水カメラ。」 の記載を、 「【請求項1】広角レンズ群と、 前記広角レンズ群の1枚目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズにより前面開口を封止したカメラケースと、 前記カメラケース内に固定されるとともに、内部に前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズが固定された鏡筒部とを有し、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラであって、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズによる前記カメラケースの前記前面開口の封止に際し、前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差と、前記カメラケースの所定の位置に配置された前記段差と噛み合うよう構成された部材とを接着させてなされる車両に搭載する防水カメラ。 【請求項2】広角レンズ群と、 カメラケースと、 前記カメラケースの前方部において一体で形成され、前記広角レンズ群の1枚目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズにより前面開口を封止するとともに、内部に前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズが固定された鏡筒部とを有し、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラであって、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズによる前記前面開口の封止に際し、前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差と、前記カメラケースの所定の位置に配置された前記段差と噛み合うよう構成された部材とを接着させてなされる車両に搭載する防水カメラ。 【請求項3】広角レンズ群と、 前面に開口を形成したカメラケースと、 前記カメラケースの前面開口を封止するように前記カメラケースに取り付けられ、前記広角レンズ群の1枚目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズにより前面開口を封止するとともに、内部に前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズが固定された鏡筒部とを有し、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラであって、 前記広角レンズ群の1枚目のレンズによる前記前面開口の封止に際し、前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差と、前記鏡筒の所定の位置に配置された前記段差と噛み合うよう構成された部材とを接着させてなされる車両に搭載する防水カメラ。 【請求項4】請求項3に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記カメラケースを前ケースと後ケースに分割し、前記後ケースと前記鏡筒部に前記光軸方向にお互いに当接するボスを形成し、前記前ケースと前記鏡筒部の間にゴムを配置して前記後ケースと前記鏡筒部の各ボスを当接した状態で前記前ケースと前記後ケースを固定する車両に搭載する防水カメラ。 【請求項5】請求項3に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記カメラケースを前ケースと後ケースに分割し、前記後ケースと前記鏡筒部に前記光軸方向にお互いに当接するボスを形成し、前記前ケースと前記1枚目のレンズの間にゴムを配置して前記後ケースと前記鏡筒部の各ボスを当接した状態で前記前ケースと前記後ケースを固定する車両に搭載する防水カメラ。 【請求項6】請求項3に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記カメラケースと前記1枚目のレンズの間にゴムを配置して前記カメラケースと前記鏡筒部をネジ止めする車両に搭載する防水カメラ。 【請求項7】前面に開口が形成された防水用のカメラケースと、 前記カメラケースの内部に固設されるとともに、前面に開口が形成され、かつこの開口に連通したレンズ収容スペースが形成された鏡筒と、 前記鏡筒のレンズ収容スペースに配設され、かつ複数のレンズから成るレンズ群とを備え、 前記レンズ収容スペースに配設されたレンズ群の1番目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズを前記鏡筒の開口に位置させて当該1番目のレンズの周辺部と前記鏡筒の開口の周縁とを封止し、前記レンズ群の1番目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラであって、 前記1番目のレンズの周辺部と前記鏡筒の開口の周縁との封止に際し、前記1番目のレンズの円周面に設けられた、このレンズの径方向に交差し、かつ前記光軸方向断面が段状に変化する第1の段部と、前記鏡筒の開口を形成する内壁円周面に設けられた、前記光軸方向断面が段状に変化する第2の段部との相互間に介挿されたシーリング用部材を介してなされる車両に搭載する防水カメラ。 【請求項8】請求項7に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記鏡筒は、この鏡筒の先端部の外周面に、前記光軸方向断面が段状に変化する第3の段部を有し、 前記カメラケースは、このカメラケースの開口を形成する内壁円周面に、前記光軸方向断面が段状に変化する第4の段部を有し、 前記第3及び第4の段部の相互間にシーリング用部材を介挿させた車両に搭載する防水カメラ。 【請求項9】請求項7又は8に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記鏡筒は樹脂材料で形成され、 前記鏡筒の周縁に形成した突起を前記1番目のレンズの前面側周辺部に被せるように熱溶着によりかしめた車両に搭載する防水カメラ。 【請求項10】請求項9に記載の車両に搭載する防水カメラにおいて、 前記レンズ群は広角撮像の視野角を有する車両に搭載する防水カメラ。」 と補正することを含むものである。 2.本件補正における新規事項の追加についての検討 本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に適合するか否か、すなわち、同法第17条の2第1項の規定によりなされた明細書についての補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正であるか否かについて、以下に検討する。 (1)本件補正後の請求項1について 本件補正の請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載の「車両に搭載する防水カメラ」を限定するために、「前記広角レンズ群の1枚目のレンズによる前記カメラケースの前記前面開口の封止に際し、前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差と、前記カメラケースの所定の位置に配置された前記段差と噛み合うよう構成された部材とを接着させてなされる」の発明特定事項を付加したものである。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書又は図面に、前記発明特定事項のうちの「前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差」が記載されていたことは認められるが、「前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差と接着されるところの、前記カメラケースの所定の位置に配置された前記段差と噛み合うよう構成された部材」が記載されていたことについては、認めることができず、また、前記「部材」を窺わせるような記載も見当たらない。 そして、前記「部材」が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていた技術事項からみて自明のものであるということもできない。 ところで、前記「部材」を、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていた文言である「シーリング用部材」又は「ゴム」又は「ゴムパッキン」又は「Oリング」に置き換えて、「前記カメラケースの所定の位置に配置された前記段差と噛み合うよう構成された部材」を、「前記カメラケースの所定の位置に配置された前記段差と噛み合うよう構成されたシーリング用部材(ゴム、ゴムパッキン、Oリング)」の意味であると仮定したとしても、「前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差と接着されるところの、前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差と噛み合うよう構成されたシーリング用部材(ゴム、ゴムパッキン、Oリング)」が、もとより願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていた事項であると、認めることができない。 以上のことから、本件補正の請求項1についての補正における「前記広角レンズ群の1枚目のレンズによる前記カメラケースの前記前面開口の封止に際し、前記広角レンズ群の1枚目のレンズの外周面に設けられた段差と、前記カメラケースの所定の位置に配置された前記段差と噛み合うよう構成された部材とを接着させてなされる」という技術事項は、もとより願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていなかった技術事項である。 (2)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合していないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 上記「第2」欄に前述した理由により、平成17年6月27日付の手続補正が却下されたことにより、当審が審理すべき本願発明は、平成17年4月26日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に記載された事項により特定されるものであるところ、特にその請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(上記「第2」の「1.補正の内容」欄を参照)。 「広角レンズ群と、前記広角レンズ群の1枚目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズにより前面開口を封止したカメラケースと、前記カメラケース内に固定されるとともに、内部に前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズが固定された鏡筒部とを有し、前記広角レンズ群の1枚目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記カメラケースより突出する車両に搭載する防水カメラ。」(以下、これを「本願発明1」という。) 2.引用刊行物 (1)原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願前に頒布された特開平7-285379号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「車両後方確認装置」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は例えば大型バス,大型トラックなどの大型車両の後方確認の際、後方だけではなく側方および下方の状態確認を行うことができる車両後方確認装置に関する。」 「【0010】図1は本発明に係る車両後方確認装置の一実施例を示すブロック図、図2(A),(B)は図1の車両後方確認装置を搭載した車両を示す概略側面図,概略平面図である。図1および図2(A),(B)に示すように、車両後方確認装置はCCDカメラ10を有し、このCCDカメラ10は車両2の最後部であるバンパー2aの上方に設置され、光学系11および撮像装置12から構成されている。 【0011】光学系11は、車両2の最後部接線X方向に対し180度までの視野角を有し、且つ歪曲収差が0.5%であり、図3に示すように各種凹レンズと凸レンズとの組み合わせたもので、例えば魚眼レンズから構成されている。 【0012】撮像装置12は2次元CCD13と信号処理回路14とからなり、2次元CCD13は光学系11を通して得られた光信号を電気信号に変換する。また、信号処理回路14は2次元CCD13から得られた電気信号を逐次読み出す処理を行うものである。 【0013】表示装置15は、車両2内に設置され、信号処理回路14から逐次読み出された電気信号を画像情報として表示し、例えば小型CRTや液晶ディスプレイなどから構成される。」 「【0015】車両2の最後部に取り付けられたバンパー2aの上方であって、同じ最後部にCCDカメラ10が設置され、このCCDカメラ10の光学系11は車両2の最後部の接線X方向に対し180度までの視野角を有しているため、車両2の後方と同時に、後部接線Xより後方に位置する全角度の光信号が得られる。」 「【0017】このように本実施例によれば、光学系11は車両2の最後部の接線X方向に対し180度までの視野角を有し、車両2の後方と同時に、後部接線Xより後方に位置する全角度の光信号が得られるため、後方確認の際、後方だけではなく側方および下方の状態確認を即座に行うことができる。」 「【0019】【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る車両後方確認装置によれば、車両の最後部の接線方向に対し180度までの視野角を有する光学系を通して得られた光信号を撮像装置により電気信号に変換した後、この撮像装置から得られた電気信号を表示装置により画像情報として表示することにより、後方確認の際、後方だけではなく側方および下方の状態確認を即座に行うことができるとともに、首ふりのための駆動手段が不要となり、且つ1台の装置で済むので、構造を簡素化することができる。 【0020】また、車両後方の接線より後方の全角度が1つの表示装置の画面で確認することができるため、注意力が散漫になることがなく、安全運転に寄与することができる。」 さらに、添付の【図3】に図示されている「図1の光学系11の内部構造を示す部分断面図」には、車両後方確認装置10の光学系11を構成する1枚目のレンズが車両後方確認装置10の先端部前面に設けてある開口を封止していること、前記光学系11の1枚目のレンズが片面が凸で他面が凹であり中心部が周辺部より薄いレンズからなること、前記1枚目のレンズの凹側の光軸上の面が車両後方確認装置10の1枚目のレンズで封止されている開口周縁部より突出していること、光学系11を構成する2枚目以降のレンズが車両後方確認装置10の鏡筒に固定されていること、そして、車両後方確認装置10の光学系11が車両後方確認装置10の1枚目のレンズで封止されている開口周縁部の接線方向に対し180度までの視野角を有することの記載が認められる。 そうすると、上記引用刊行物1における前記摘記事項及び添付図面における記載からみて、引用刊行物1には、次の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。 「車両2の最後部に設置されその最後部接線X方向に対し180度までの視野角を有する魚眼レンズからなる光学系11と、この光学系11を通して得られた光信号を電気信号に変換する撮像装置12と、上記車両2内に設置され上記撮像装置12から得られた電気信号を画像情報として表示する表示装置15とを備えた車両後方確認装置におけるCCDカメラ10において、 CCDカメラ10の光学系11は、CCDカメラ10の先端部前面に設けてある開口を封止する1枚目のレンズと、CCDカメラ10の鏡筒に固定されている2枚目以降のレンズとから構成されており、 前記1枚目のレンズは片面が凸で他面が凹であり中心部が周辺部より薄いレンズからなるとともに、前記1枚目のレンズの凹側の光軸上の面がCCDカメラ10の前面開口周縁部より突出している車両後方確認装置におけるCCDカメラ」 (2)原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願前に頒布された特開平2-55310号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「レンズ枠」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。 「本発明は、被写体像を結像する結像レンズ系を有し、該結像レンズ系が接着固定されるレンズ枠に関する。」(1頁左欄14〜16行) 「一般に、上記内視鏡は例えば体腔内に挿入される細長の挿入部を有し、この挿入部先端部に観察窓が設けられている。観察窓の後方には複数のレンズからなる結像レンズ系が設けられており、被写体像を固体撮像素子等の像伝達手段に結像するようになっている。この結像レンズ系の固定方法は水密構造を必要とする場合、接着剤を用いて行なわれている。」(1頁右欄7〜14行) 「本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、レンズ系の接着が確実に行なわれるようにし、接着の信頼性向上と接着後の水密の確認を確実に行い得るレンズ枠を提供することを目的とする。」(2頁左上欄2〜5行) 「前記内視鏡2の先端部9及び先端アダプタ18は第1図に示すように構成されている。前記先端部9に装着された先端アダプタ18には、挿入部6の長手方向と平行にレンズ収納空間としての観察用透孔19と、挿入部6の長手方向に対して傾きを持つ照明用透孔21とが形成されている。前記観察用透孔19の前端には、対物レンズ系としての画角変更レンズ系22を構成する第1のレンズ23が接着固定され、その後方にはレンズ枠24に接着固定された第2,第3,第4のレンズ26,27,28が設けられている。このレンズ枠24は第3図に示すように略円柱状をしており、前部外周壁には前記観察用透孔19内周壁に設けられた雌ねじ部29と螺合する雄ねじ部31が形成されている。」(2頁左下欄12行〜同右下欄7行) 「先端アダプタ18に設けられた観察用透孔19内に第6,第7のレンズ34,35を接着固定する。そして、第5のレンズ33が観察用透孔19内に嵌入して、雌ねじ部29にレンズ枠24を螺入する。レンズ枠24には第2,第3,第4のレンズ26,27,28が接着固定さており、このレンズ枠24の後端面によって第5のレンズ33を押圧して固定する。その後に、第1のレンズ23を観察用透孔19内に接着固定する。この第1のレンズ23のレンズ枠24側の接着部は通気孔36と空間30とを経て流入する空気によって硬化が行なわれ、その後に水密の確認が行なわれる。通気孔36は水密の確認が行なわれた後に、例えば接着剤等を充填することにより全体の水密を確保することができる。」(4頁右下欄3〜18行) 3.対比及び一致点・相違点 本願発明1と前記引用発明とを対比すると、引用発明における「180度までの視野角を有する魚眼レンズからなる光学系11」、「光学系11を構成する1枚目のレンズ」及び「光学系11を構成する2枚目以降のレンズ」のそれぞれが、本願発明1の「広角レンズ群」、「前記広角レンズ群の1枚目のレンズ」及び「前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズ」のそれぞれに相当する。 そして、引用刊行物1には、引用発明の車両後方確認装置におけるCCDカメラ10が防水性能を有するカメラであることの明示の記載はないが、引用発明の車両後方確認装置におけるCCDカメラ10は、車両2の最後部に取り付けられたバンパー2aの上方の車両2の最後部に設置されるものであることから、引用発明の前記車両後方確認装置におけるCCDカメラ10が車両の車体外部に設置されることにより絶えず風雨に曝される環境下にあるカメラであることを考慮すると、引用発明の車両後方確認装置におけるCCDカメラ10も、本願発明1である「車両に搭載する防水カメラ」に求められる防水面の基本的性能を共通して具備していると考えるのは自然なことであるから、引用発明の車両後方確認装置におけるCCDカメラ10は、本願発明1の「車両に搭載する防水カメラ」と同じように「防水性能を有する車両後方確認装置におけるCCDカメラ」であるといえる。 また、引用刊行物1の【図1】に図示された車両後方確認装置の一実施例を示すブロック図の記載からみて、引用発明の車両後方確認装置におけるCCDカメラ10は、2次元CCD13及び信号処理回路14からなる撮像装置12を覆うカメラケースを有しているといえる。しかし、引用発明の「光学系11を構成する1枚目のレンズによりCCDカメラ10の先端部前面に設けてある開口が封止される開口部材」が、前記カメラケースであるか若しくは鏡筒部であるかについて、引用刊行物1には明示の記載がないが、引用刊行物1の【図1】及び【図3】の記載からみて、引用発明も、1枚目のレンズを支持している部材の前面に設けられている開口が1枚目のレンズで封止されていることが明らかであるから、引用発明及び本願発明の双方は、共に「1枚目のレンズで前面開口を封止される部材」を有しているといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明とは、「広角レンズ群と、前記広角レンズ群の1枚目の、片面が凸でもう一方の面が凹で中心部が周辺部より薄く構成されたレンズにより前面開口を封止される部材と、内部に前記広角レンズ群の2枚目以降のレンズが固定された鏡筒部とを有し、前記広角レンズ群の1枚目のレンズの前記凹側の面が光軸上において前記前面開口を封止される部材より突出する車両に搭載する防水カメラ」である点で、両者の構成が一致し、次の点で構成が相違する。 相違点1:1枚目のレンズで前面開口を封止される部材が、本願発明1では、カメラケースであるのに対し、引用発明では、カメラケースであるか否か明確でない点。 相違点2:本願発明1では、鏡筒部がカメラケース内に固定されるのに対し、引用発明では、鏡筒部の支持手段が不明である点。 4.相違点についての判断 (1)相違点1について 引用刊行物2に、「結像レンズ系(本願発明1の「広角レンズ群」に相当する。以下同じ。)の第1のレンズ23(「1枚目のレンズ」に相当。)を先端アダプタ18(「カメラケース」に相当。)の前面に設けられた開口である観察用透孔19の前端に接着固定し、結像レンズ系の第2のレンズ以降のレンズ26、27、28を接着固定した略円柱状のレンズ枠24(「鏡筒部」に相当。)を、前記先端アダプタ18のレンズ収納空間としての観察用透孔19の内周壁に螺合固定した内視鏡」が記載されていて、カメラケースの前面に開口を設けてその開口を1枚目のレンズで前面開口を封止するようにする技術は、本件特許出願前の公知の技術である。 そうしてみると、引用刊行物2に記載された技術を引用発明に適用することにより、本願発明1の前記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が困難性を伴うことなく容易になし得ることである。 (2)相違点2について 引用刊行物2に、結像レンズ系の第2のレンズ以降のレンズ26、27、28を接着固定した略円柱状のレンズ枠24を、先端アダプタ18のレンズ収納空間としての観察用透孔19の内周壁に螺合固定することが記載されているように、鏡筒部をカメラケース内に固定するようにする技術は、本件特許出願前に公知の技術である。 そうしてみると、引用刊行物2に記載された技術を引用発明に適用することにより、本願発明1の前記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が困難性を伴うことなく容易になし得ることである。 そして、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明及び引用刊行物2に記載された技術から予測できる範囲内のものであって、格別顕著のものということができない。 (3)まとめ したがって、本願発明1は、上記引用発明及び引用刊行物2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明1は、上記引用発明及び引用刊行物2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-30 |
結審通知日 | 2006-05-30 |
審決日 | 2006-06-12 |
出願番号 | 特願2001-206885(P2001-206885) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 561- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森 竜介 |
特許庁審判長 |
佐藤 昭喜 |
特許庁審判官 |
青木 和夫 末政 清滋 |
発明の名称 | 車両に搭載する防水カメラ |
代理人 | 二瓶 正敬 |