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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1142088
審判番号 不服2003-11188  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-18 
確定日 2006-08-14 
事件の表示 平成 9年特許願第153748号「テレフォンバンキングシステム及び取引方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月 6日出願公開、特開平11- 3382〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年6月11日の出願であって、平成13年12月27日付で拒絶理由が通知され、これに対して、平成14年3月12日付で意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成15年1月17日付で最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、同年3月20日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、当該手続補正書による手続補正は同年5月27日付の補正却下の決定により却下されるとともに、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.平成15年6月18日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年6月18日付の手続補正を却下する。
[理由]
(2.1)本件補正の内容
本件補正により、平成14年3月12日付の手続補正書における特許請求の範囲の
「【請求項1】通信回線を用いて銀行取引を行うためのテレフォンバンキングシステムであって、
前記テレフォンバンキングシステムの利用者から受信した取引依頼内容を合成音声情報に変換する音声変換手段と、
前記合成音声情報を前記利用者に送信する音声送信手段と、
前記利用者から受信した取引実行可否情報を検出する取引実行可否情報検出手段と、
を備えたテレフォンバンキングシステム。
【請求項2】通信回線を用いて銀行取引を行うためのテレフォンバンキングシステムであって、
前記テレフォンバンキングシステムの利用者から受信した取引依頼内容を記録する依頼内容記録手段と、
前記依頼内容記録手段に記録された取引依頼内容に関する情報を合成音声情報に変換する音声変換手段と、
前記合成音声情報を前記利用者に送信する音声送信手段と、
前記利用者から受信した取引実行可否情報を検出する取引実行可否情報検出手段と、
を備えたテレフォンバンキングシステム。
【請求項3】前記取引実行可否情報が取引実行可能の意思表示であると前記取引実行可否情報検出手段が検出すると、前記依頼内容記録手段に記録された取引依頼内容に関する情報を利用者意思確認済情報として更新する意思確認更新手段を有することを特徴とする請求項2記載のテレフォンバンキングシステム。
【請求項4】前記取引実行可否情報が取引実行不可の意思表示であると前記取引実行可否情報検出手段が検出すると、前記利用者から取引依頼を受信したオペレータに通信回線を切り換える回線切換手段を有することを特徴とする請求項1乃至3記載のテレフォンバンキングシステム。
【請求項5】前記取引実行可否情報検出手段において前記合成音声情報の送信から所定の時間が経過した後に前記取引実行可否情報が検出されない場合、前記利用者から取引依頼を受信したオペレータに通信回線を切り換える回線切換手段を有することを特徴とする請求項1乃至4記載のテレフォンバンキングシステム。
【請求項6】前記取引実行可否情報検出手段は、前記利用者が電話機で予め定められた操作を行うことにより前記利用者が取引実行可能又は取引実行不可の意思表示をしたと判定することを特徴とする請求項1乃至5記載のテレフォンバンキングシステム。
【請求項7】通信回線を用いたテレフォンバンキングシステムにより銀行取引を行うための取引方法であって、
コンピュータが、利用者から受信した取引依頼内容を合成音声情報に変換する音声変換ステップと、
コンピュータが、前記合成音声情報を前記利用者に送信する音声送信ステップと、
コンピュータが、前記利用者から受信した取引実行可否情報を検出する取引実行可否情報検出ステップと、
からなる取引方法。
【請求項8】通信回線を用いたテレフォンバンキングシステムにより銀行取引を行うための取引方法であって、
コンピュータが、利用者から受信した取引依頼内容を依頼内容記録手段に記録する依頼内容記録ステップと、
コンピュータが、前記依頼内容記録手段に記録された取引依頼内容に関する情報を合成音声情報に変換する音声変換ステップと、
コンピュータが、前記合成音声情報を前記利用者に送信する音声送信ステップと、
コンピュータが、前記利用者から受信した取引実行可否情報を検出する取引実行可否情報検出ステップと、
からなる取引方法。
【請求項9】前記取引実行可否情報検出ステップで前記取引実行可否情報が取引実行可能の意思表示であると検出されると、
コンピュータが、前記依頼内容記録手段に記録された取引依頼内容に関する情報を利用者意思確認済情報として更新する意思確認更新ステップを有することを特徴とする請求項8記載の取引方法。
【請求項10】前記取引実行可否情報検出ステップで前記取引実行可否情報が取引実行不可の意思表示であると検出されると、
コンピュータが、前記利用者から取引依頼を受信したオペレータに通信回線を切り換える回線切換ステップを有することを特徴とする請求項7乃至9記載の取引方法。
【請求項11】前記取引実行可否情報検出ステップで前記合成音声情報の送信から所定の時間が経過した後に前記取引実行可否情報が検出されない場合、
コンピュータが、前記利用者から取引依頼を受信したオペレータに通信回線を切り換える回線切換ステップを有することを特徴とする請求項7乃至9記載の取引方法。
【請求項12】前記取引実行可否情報検出ステップにおいて、前記利用者が電話機で予め定められた操作を行うことにより前記利用者が取引実行可能又は取引実行不可の意思表示をしたと判定することを特徴とする請求項7乃至11記載の取引方法。」は、
本件補正後の特許請求の範囲の、
「【請求項1】電話回線を用いて銀行取引を行うためのテレフォンバンキングシステムであって、
前記テレフォンバンキングシステムの利用者から電話回線を通じて受信した取引依頼内容を聴取したオペレータが端末装置から入力した前記取引依頼内容において確認が必要な依頼情報を合成音声情報に変換する音声変換手段と、
前記利用者が操作する利用者端末に前記合成音声情報を送信する音声送信手段と、
前記利用者から受信した、前記合成音声情報の送信から規定時間内に発信された前記利用者端末において選択されたボタンを特定する信号から、前記ボタンと関連付けられた取引実行可否情報を検出する取引実行可否情報検出手段と、
を備えたテレフォンバンキングシステム。
【請求項2】電話回線を用いて銀行取引を行うためのテレフォンバンキングシステムであって、
前記テレフォンバンキングシステムの利用者から電話回線を通じて受信した取引依頼内容を聴取したオペレータが端末装置から入力した前記取引依頼内容において確認が必要な依頼情報を記録する依頼内容記録手段と、
前記依頼内容記録手段に記録された前記依頼情報を合成音声情報に変換する音声変換手段と、
前記利用者が操作する利用者端末に前記合成音声情報を送信する音声送信手段と、
前記利用者から受信した、前記合成音声情報の送信から規定時間内に発信された前記利用者端末において選択されたボタンを特定する信号から、前記ボタンと関連付けられた取引実行可否情報を検出する取引実行可否情報検出手段と、
を備えたテレフォンバンキングシステム。」
に補正された。

(2.2)補正の適否
本件補正は、拒絶査定に対する審判請求時の補正であるから、特許法第17条の2第1項第3号に掲げる場合の補正に該当し、本件補正による特許請求の範囲についてする補正は、同条第4項の規定により同項第1号から第4号に掲げる事項を目的とするものに限られる。
そこで、本件補正が特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれを目的とするものであるかを以下に検討する。
請求人が審判請求書の「(2)補正の根拠の明示」に示すように、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1を補正したものであり、請求項1についてする補正は、補正事項として、本件補正前の「前記テレフォンバンキングシステムの利用者から受信した取引依頼内容を合成音声情報に変換する音声変換手段」を、本件補正後の「前記テレフォンバンキングシステムの利用者から電話回線を通じて受信した取引依頼内容を聴取したオペレータが端末装置から入力した前記取引依頼内容において確認が必要な依頼情報を合成音声情報に変換する音声変換手段」とする補正を含むものである。
本件補正前の「前記テレフォンバンキングシステムの利用者から受信した取引依頼内容を合成音声情報に変換する音声変換手段」における「利用者から受信した取引依頼内容」は、平成14年3月12日付の意見書において「利用者の話した音声を合成音声情報に変換する」ものであると請求人も述べているように、明細書の記載全体からみて、「利用者の話した音声」であると解するのが相当であるから、本件補正前の「音声変換手段」は、「音声を合成音声に変換」するものである。
一方、本件補正後の「前記テレフォンバンキングシステムの利用者から電話回線を通じて受信した取引依頼内容を聴取したオペレータが端末装置から入力した前記取引依頼内容において確認が必要な依頼情報を合成音声情報に変換する音声変換手段」における「オペレータが端末装置から入力した前記取引依頼内容」は、端末からキーボード等を使用して入力された「デジタルデータ」であるから、本件補正後の「音声変換手段」は、「デジタルデータを合成音声に変換」するものである。
したがって、前記補正事項は、「音声変換手段」の処理内容を、本件補正前の「音声を合成音声に変換」するものから、本件補正後の「デジタルデータを合成音声に変換」するものへと実質的に変更しているから、前記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、同項第2号の特許請求の減縮、同項第3号の誤記の訂正、あるいは同項第4号の明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。

(2.3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項柱書きの規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(3.1)本願発明
平成15年6月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年3月12日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】通信回線を用いて銀行取引を行うためのテレフォンバンキングシステムであって、
前記テレフォンバンキングシステムの利用者から受信した取引依頼内容を合成音声情報に変換する音声変換手段と、
前記合成音声情報を前記利用者に送信する音声送信手段と、
前記利用者から受信した取引実行可否情報を検出する取引実行可否情報検出手段と、
を備えたテレフォンバンキングシステム。」

(3.2)原査定の理由
原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「理由1.平成14年3月12日付の手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

請求項1 ―― 補正後の本請求項に記載されているのは、当初の各請求項にも詳細な説明や図面にも記載されていない、また当初の記載から自明でもないことである。補正された請求項では、依頼内容をオペレータが受けつけるという要素が欠落しており(削除され、代わりに「受信」する動作が挿入されている)、また、オペレータからの入力を「音声変換手段」が受けつけるという要素も欠落している(結果として、入力をではなく「受信」を直接受けつけるかのような記載となっている)。そのため、「前記テレフォンバンキングシステム…音声変換手段」の箇所は、「受信」に対する直接的で自動的な「変換」を「音声変換手段」が(あるいはなんらかの受信手段と「音声変換手段」とが)人的介入のない一連の動作として自律的に行っている、ととれてしまう。(前記のように、受け付けでなくあえて「受信」とされており、また「受信した…内容」の部分が直接「…変換する」にかかっている以上、文脈を自然に解釈するとそれ以外にはとれない。)
請求項2,7-12(略)
理由2,3(略)」

(3.3)当初明細書等の記載事項
本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、下記(a)乃至(c)の事項が記載されている。
(a) 「オペレータが利用者から受けた取引依頼の内容を合成音声情報に変換する音声変換手段」(特許請求の範囲の請求項1,第8段落,第20段落 等)
(b) 「受付データベース8は、オペレータが利用者から受けた取引依頼の内容をデジタル的なデータとして記録するためのものである。
(中略)
音声サーバ6は音声変換手段を有する。オペレータがオペレータ用PC4に入力し、受付データベース8に記録させた取引依頼の内容は、この音声変換手段によって電子的に合成音声に変換される。」(第25,26段落)
(c) 「オペレータは利用者に取引依頼内容を問診し、取引依頼が振込である場合には、振込先の銀行・支店名、口座番号、振込金額などをオペレータ用PC4に入力する。
(中略)
こうしてオペレータ用PC4に入力された情報は、オペレータの指令により、直ちに受付データベース8に記録される。
(中略)
受付データベース8に取引依頼内容が記録された後、オペレータは取引依頼内容を復唱するよう音声サーバ6に指令を出す。この指令を受けた音声サーバ6は、受付データベース8に記録された取引依頼内容に関する情報を読み込み、それを合成音声に変換し、取引を依頼した利用者に向けて発信する。」(第29,30段落)

(3.4)当審の判断
平成14年3月12日付の手続補正は、請求項1について、当初明細書等の「オペレータが利用者から受けた取引依頼の内容を合成音声情報に変換する音声変換手段」を「前記テレフォンバンキングシステムの利用者から受信した取引依頼内容を合成音声情報に変換する音声変換手段」とする補正を含むものである。
そして、上記(2.2)で検討したとおり、「利用者から受信した取引依頼内容を合成音声情報に変換する音声変換手段」は、「音声を合成音声に変換」するものである。
しかし、当初明細書等の上記記載(a)乃至(c)には、オペレータが利用者から受けた取引依頼の内容を合成音声情報に変換すること、具体的には、利用者からの取引依頼の内容をオペレータが受け付け、受け付けた取引依頼の内容をオペレータがPCに入力し、入力された取引依頼の内容をデータベースに記録し、記録された取引依頼の内容を合成音声に変換することが記載されているだけであり、上記記載(a)乃至(c)を含む当初明細書等の全体をみても、オペレータを介さずに、利用者から受信した取引依頼の内容である「音声を合成音声に変換」する音声変換手段は、当初明細書等には記載されていないし、当初明細書等に記載されている事項から自明であるともいえない。

(3.5)むすび
したがって、平成14年3月12日付の手続補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではなから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-22 
結審通知日 2006-06-23 
審決日 2006-07-05 
出願番号 特願平9-153748
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 55- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿波 進  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 久保田 健
高瀬 勤
発明の名称 テレフォンバンキングシステム及び取引方法  
代理人 土生 哲也  
代理人 鮫島 正洋  

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