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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1142838 |
審判番号 | 不服2004-5717 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-22 |
確定日 | 2006-08-31 |
事件の表示 | 特願2000-278058「光通信モジュールとその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月27日出願公開、特開2002- 90560〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年9月13日の出願であって、平成16年2月13日付で拒絶査定がなされ、これに対し同年3月22日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年4月21日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。 2.平成16年4月21日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年4月21日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、補正前の請求項1を、下記のように補正することを含むものである。 「【請求項1】 光信号を通信する光通信モジュールにおいて、 光信号を発信する発光素子と該光信号の透過及び反射を行うフィルタとの間において、前記光信号が伝送される第1光導波路と、 前記フィルタと光ファイバとの間において、前記光信号が伝送される第2光導波路とを備え、 前記第1光導波路と前記第2光導波路を共に直線導波路とし、 前記第1光導波路と前記第2光導波路を、前記第1光導波路から入射された光信号が前記フィルタにより反射して前記第2導波路に入射される角度にそれぞれ配置し、かつ当該光信号の前記フィルタにおける反射点の近くの位置に、それぞれの光導波路の先端の一方を配置し、 前記光ファイバを設置するためのV溝を、前記フィルタの反対側に位置する前記第2光導波路のもう一方の先端の延長線上に配置し、 前記第1光導波路及び前記第2導波路と前記V溝とを、同一の光導波路基板上に形成し、 前記光導波路基板のチップを、ウェハの結晶の軸方向に対して斜めに形成すると共に、前記光ファイバを設置するためのV溝を、前記光導波路基板に異方性エッチングにより断面V字状に形成し、 前記V溝を、前記光導波路基板の中心線に対して斜めに形成することを特徴とする光通信モジュール。」 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、導波路について、「光信号を発信する発光素子と該光信号の透過及び反射を行うフィルタとの間において、前記光信号が伝送される第1光導波路と、前記フィルタと光ファイバとの間において、前記光信号が伝送される第2光導波路とを備え」との限定、同じく、V溝について、「光導波路基板のチップを、ウェハの結晶の軸方向に対して斜めに形成すると共に、前記光ファイバを設置するためのV溝を、前記光導波路基板に異方性エッチングにより断面V字状に形成し」との限定をそれぞれ行うものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について検討する。 (2)引用刊行物記載の発明 原査定において引用された後藤明生、外7名、“1.3/1.55μm-WDM型PLCモジュールの開発”、 2000年電子情報通信学会総合大会講演論文集 エレクトロニクス1 (2000年3月7日発行) p.312, C-3-132(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。 (ア)「光アクセス網の実現に向けて、我々は従来より石英導波路(PLC)を用いた低コスト、高機能な光送受信モジュールの開発を行ってきた。[1][2] 今回、新たにITU-T勧告G.983.1に準拠した1.3/1.55μmWDM型PLCモジュールの開発を行ったので報告する。」(2行〜5行) (イ)「図1にPLCモジュールの構成図を、図2に外観写真を示す。 PLCモジュール内にはPLC、LD素子、PD素子、モニタ用PD素子、プリアンプが実装され、モジュールサイズは26×10×3mmである。」(7行〜9行) (ウ)「PLCはモジュールの小型化、光及び電気のクロストークを抑えるためにV字の導波路パターンを採用しPLC端面にWDMフィルタを貼り付ける構成とした。」(10行〜12行) (エ)「光ファイバはSi基板に異方性エッチングにより作製したV溝に無調整で実装する。」(17行〜18行) (オ)「LD素子からの1.3μm送信光はPLC端のWDMフィルタにより全反射して折り返した後、V溝に実装した光ファイバに結合する。1.5μm受信光は光ファイバから導波路に入射後、WDMフィルタを透過して受光径80μmのPIN-PDに結合し、プリアンプに入力される。」(19行〜22行) また、図1からは、以下の事項が見て取れる。 (カ)導波路パターンはLD素子からWDMフィルタまで伸びる直線状の石英導波路とWDMフィルタから光ファイバまで伸びる直線状の石英導波路によりV字に構成されていること。 (キ)WDMフィルタから光ファイバまで伸びる直線状の石英導波路の先端に直線状の光ファイバが位置していること。 (ク)同じSi基板上に導波路、及び光ファイバを設置するV溝が形成されていること。 (3)対比 本願補正発明と引用刊行物に記載された発明(以下、「引用発明」という。)を対比する。 (a)引用発明の「LD素子からWDMフィルタまで伸びる直線の石英導波路」、「WDMフィルタから光ファイバまで伸びる直線の石英導波路」、「V溝」、「光送受信モジュール」が、それぞれ本願発明の「第1光導波路」、「第2光導波路」、「V溝」、「光通信モジュール」に相当する。 (b)引用刊行物の図1において、直線の石英導波路の先端に光ファイバ及びV溝が位置していることは見て取れるが(上記2.(2)(キ))、厳密な意味で石英導波路の延長線上に光ファイバ及びV溝が位置しているかは明確ではない。しかしながら、光ファイバ及び光導波路の技術分野において、光導波路の延長線上に接続する光ファイバを配置することは、技術常識であり(必要であれば、特開平10-229370号公報、実願昭60-126838号(実開昭62-35308号)のマイクロフィルム(第5図)参照)、上記技術常識を参酌すると、引用発明は、本願補正発明の「光ファイバを設置するためのV溝を、前記フィルタの反対側に位置する前記第2光導波路のもう一方の先端の延長線上に配置」するとの技術的事項を有しているということができる。 (c)引用発明が上記(b)で示した技術的事項を有することから、本願補正発明の「前記V溝を、前記光導波路基板の中心線に対して斜めに形成する」との技術的事項も有することは明らかである。 したがって、両者は、 「光信号を通信する光通信モジュールにおいて、 光信号を発信する発光素子と該光信号の透過及び反射を行うフィルタとの間において、前記光信号が伝送される第1光導波路と、 前記フィルタと光ファイバとの間において、前記光信号が伝送される第2光導波路とを備え、 前記第1光導波路と前記第2光導波路を共に直線導波路とし、 前記第1光導波路と前記第2光導波路を、前記第1光導波路から入射された光信号が前記フィルタにより反射して前記第2導波路に入射される角度にそれぞれ配置し、かつ当該光信号の前記フィルタにおける反射点の近くの位置に、それぞれの光導波路の先端の一方を配置し、 前記光ファイバを設置するためのV溝を、前記フィルタの反対側に位置する前記第2光導波路のもう一方の先端の延長線上に配置し、 前記第1光導波路及び前記第2導波路と前記V溝とを、同一の光導波路基板上に形成し、 前記光ファイバを設置するためのV溝を、前記光導波路基板に異方性エッチングにより断面V字状に形成し、 前記V溝を、前記光導波路基板の中心線に対して斜めに形成する光通信モジュール。」 である点で一致し、次の点で一応相違する。 相違点: 本願補正発明が、「光導波路基板のチップを、ウェハの結晶の軸方向に対して斜めに形成する」のに対し、引用発明はウェハの結晶について言及していない点。 (4)判断 上記相違点につき検討すると、異方性エッチングによりV溝を形成する際に、ウェハの結晶の軸方向に沿ってV溝が形成されていくことは、技術常識である。そして、引用発明ではV溝を形成する際に異方性エッチングを用いており、V溝が光導波路基板の中心線に対して斜めに形成されていることから、必然的に光導波路基板のチップがウェハの結晶の軸方向に対して斜めに形成されていることとなる。 よって、この点で両者は相違しない。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年4月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年1月27日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、請求項1〜18に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。 「【請求項1】 光信号を通信する光通信モジュールにおいて、 前記光信号の透過及び反射を行うフィルタと光ファイバとの間における、前記光信号を通信する導波路を直線導波路とし、 光信号を通信する前記直線導波路である第1光導波路と第2光導波路を備え、 前記第1光導波路と前記第2光導波路を、前記第1光導波路から入射された光信号が前記フィルタにより反射して前記第2光導波路に伝送される角度にそれぞれを配置し、かつ当該光信号の前記フィルタにおける反射点の近くの位置に、それぞれの光導波路の先端の一方を配置し、 前記光ファイバを設置するためのV溝を、前記第2光導波路と真直ぐ同じ向きに、前記第2光導波路における前記フィルタの反対側の先端から配置し、 前記導波路と前記V溝とを、同一の導波路基板上に形成し、 前記V溝を、前記導波路基板の中心線に対して斜めに形成することを特徴とする光通信モジュール。」(以下、「本願発明」という。) (2)引用刊行物記載の発明 原査定において引用された後藤明生、外7名、“1.3/1.55μm-WDM型PLCモジュールの開発”、 2000年電子情報通信学会総合大会講演論文集 エレクトロニクス1 (2000年3月7日発行) p.312, C-3-132(以下、「引用刊行物」という。)には、上記2.(2)引用刊行物記載の発明において摘記した事項が記載されている。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、導波路について、「光信号を発信する発光素子と該光信号の透過及び反射を行うフィルタとの間において、前記光信号が伝送される第1光導波路と、前記フィルタと光ファイバとの間において、前記光信号が伝送される第2光導波路とを備え」との限定、同じく、V溝について、「光導波路基板のチップを、ウェハの結晶の軸方向に対して斜めに形成すると共に、前記光ファイバを設置するためのV溝を、前記光導波路基板に異方性エッチングにより断面V字状に形成し」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明にその構成要件の全てが含まれる本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、上記引用刊行物記載の発明と同一であるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用刊行物記載の発明と同一である。 なお、原査定の拒絶の理由は、特許法第29条第1項第3号に該当するというものではないが、審判請求人は、審判請求書において、本願発明と上記引用例とを対比し、容易性のみならず、同一性についても検討していることは明らかである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-29 |
結審通知日 | 2006-07-04 |
審決日 | 2006-07-20 |
出願番号 | 特願2000-278058(P2000-278058) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 日夏 貴史 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
井上 博之 吉野 三寛 |
発明の名称 | 光通信モジュールとその製造方法 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 工藤 雅司 |