ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F |
---|---|
管理番号 | 1143802 |
審判番号 | 不服2004-5376 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2006-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-17 |
確定日 | 2006-09-13 |
事件の表示 | 特願2002-520801「固体型エレクトロクロミック防眩ミラー」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月24日国際公開、WO03/34139〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成13年10月10日に特許出願したものであって、平成16年2月5日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年3月17日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされ、その後、いわゆる前置審査において平成16年5月19日付で拒絶理由通知がなされ、平成16年7月21日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成16年7月21日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のものである。 「【請求項1】透明な基板ガラスの背面に、透明導電膜と、酸化又は還元反応により発色する発色膜と電解質膜とを含むエレクトロクロミック層と、電極兼反射膜とが順次積層されて成る固体型エレクトロクロミック防眩ミラーであつて、 上記エレクトロクロミック層及び電極兼反射膜は、その背面側から、背面及び側面も含めて全体的に、耐水性及び耐湿性を有する樹脂をベースとして形成されたフィラー入り樹脂の樹脂皮膜により被覆され封止及び保護され、 少なくとも前記基板ガラスから前記フィラー入り樹脂被膜に至るミラーの外周面が、シリル基含有ポリマーにてシールされており、 前記シリル基含有ポリマーは、前記フィラー入り樹脂の背面の一部を、前記エレクトロクロミック層及び電極兼反射膜の端部を覆うようにシールすることを特徴とする固体型エレクトロクロミック防眩ミラー。」(以下、「本願発明」という。) 3.刊行物の記載事項 当審における平成16年5月19日付拒絶理由に引用した特開2000-2895号公報(以下、「刊行物1」という。)には、下記の記載事項が認められる。 「【請求項1】透明な基板硝子の背面に、透明導電膜と、酸化又は還元反応により発色する発色膜と電解質膜とを含むエレクトロクロミック層と、電極兼反射膜とが順次積層されて成る全固体型エレクトロクロミック防眩ミラーにおいて、 上記エレクトロクロミック層及び電極兼反射膜は、その背面側から、背面及び側面も含めて全体的に、イオンの行き来を阻止するイオン遮断性、防水性、防湿性及び耐傷性を有する樹脂皮膜により被覆され保護及び封止されて成り、封止硝子を不要とする構成であることを特徴とする全固体型エレクトロクロミック防眩ミラーの封止構造。 ・・・ 【0037】このように防水、防湿及びイオン遮断性の観点から、本発明で利用する樹脂皮膜22の材料をあげると、Al、膜、エレクトロクロミック層膜及び透明導電膜と密着性のすぐれた変性エポキシ系、変性アクリル系、変性ウレタン系の樹脂、若しくはフッ素系の熱硬化性樹脂、シリコーンゴム、又はシリコーン系塗料が使用され、しかも封止硝子の有する保護的な機能及び上記イオン遮断性をも兼ね備えたものである必要がある。 ・・・ 【0038】この樹脂皮膜の、皮膜強度、防水性、防透湿性をさらに上げるために、成分中に金属酸化物、セラミック粉又は硝子粉を含ませてもよい。そして、樹脂皮膜は、フローコート、吹付塗装、印刷又はスピンコート等の方法により、50〜100μmの厚膜として形成する。 ・・・ 【0052】(3)上記樹脂皮膜は、大きな機械的強度及び耐傷性を有するとともに、特に、封止硝子同様に防水性、防湿性、イオン遮断性を有する樹脂材料で形成されるので、エレクトロクロミック層中の着色及び消色反応に必要なプロトンH+とOH-イオンの外部への溶出を防止し、外部からのイオンの侵入を防止し、エレクトロクロミック層の着色消色反応が正常に機能するようにしている。」 4.対比 本願発明と刊行物1記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを対比する。 引用発明における「イオンの行き来を阻止するイオン遮断性、防水性、防湿性及び耐傷性を有する樹脂皮膜」は、変性エポキシ系、変性アクリル系、変性ウレタン系の樹脂、若しくはフッ素系の熱硬化性樹脂等の材料成分中に、金属酸化物、セラミック粉又は硝子粉を含ませたものであるから、本願発明の「耐水性及び耐湿性を有する樹脂をベースとして形成されたフィラー入り樹脂の樹脂皮膜」に相当する。 よって、両者は、 「透明な基板ガラスの背面に、透明導電膜と、酸化又は還元反応により発色する発色膜と電解質膜とを含むエレクトロクロミック層と、電極兼反射膜とが順次積層されて成る固体型エレクトロクロミック防眩ミラーであつて、 上記エレクトロクロミック層及び電極兼反射膜は、その背面側から、背面及び側面も含めて全体的に、耐水性及び耐湿性を有する樹脂をベースとして形成されたフィラー入り樹脂の樹脂皮膜により被覆され封止及び保護されている固体型エレクトロクロミック防眩ミラー」である点で一致し、下記の点で相違する。 相違点: 本願発明は、「少なくとも前記基板ガラスから前記フィラー入り樹脂被膜に至るミラーの外周面が、シリル基含有ポリマーにてシールされており、前記シリル基含有ポリマーは、前記フィラー入り樹脂の背面の一部を、前記エレクトロクロミック層及び電極兼反射膜の端部を覆うようにシールする」のに対して、引用発明は、このような構成を有しない点。 5.判断 上記相違点に付き検討する。 エレクトロクロミック素子を用いる車両用の防眩ミラーにおいて、防水性を高めるために、少なくとも基板ガラスから封止樹脂に至るミラーの外周面を、背面の一部を含めて、ブチルテープ(本願発明の「ポリマー」に相当。)等でシールすることは、本願明細書のFig.4及びFig.5に従来技術として記載されているように周知である。(これについて更に必要であれば、特開平8-184859号公報及び特開平8-104175号公報を参照されたい。) また、シリル基含有ポリマーからなるシール剤組成物が低透湿性であり、湿気、水分等を嫌う電子部品のシール剤に使用することは、前記拒絶理由に引用した刊行物2:特開2001-303024号公報及び刊行物3:特開2000-328042号公報等に示されているように周知である。 してみると、引用発明において、さらに防水性を高めるために、背面の一部を含めて、ミラーの外周面にシールを施すことは当業者が適宜なし得る設計変更であり、その際、低透湿性で、防湿、防水効果に優れた、上記刊行物2及び3に示された従来周知のシリル基含有ポリマーからなるシール剤を採用することは当業者が容易に想到し得たものである。 また、シールをどの程度施すかは、要求される防水性やコストに応じて適宜決定すべき事項であるから、本願発明が「エレクトロクロミック層及び電極兼反射膜の端部を覆うようにシールする」と規定した点は、設計事項にすぎない。 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記従来周知の事項から予測し得る程度のものである。 なお、審判請求人は、平成16年7月21日付意見書において、 「本願発明では、本願の図1、2に開示されているように、シリル基含有ポリマーが、フィラー入り樹脂の背面の一部を、エレクトロクロミック層及び電極兼反射膜の端部を覆うようにシールしています。このように構成すれば、エレクトロクロミック層の背面において、電極兼反射膜に覆われていない部分からの水分放出を効果的に抑えることができます。そのため、本願発明によれば、エレクトロクロミック層中の水分変化を最小にすることができます。また、必要な部分に限定してシリル基含有ポリマーを設けることにより、フィラー入り樹脂の背面の全体を覆う場合と比べ、コストを低減することができます。」 と主張しているが、この点は、本願明細書には何ら記載されていない効果であり、採用できない。また、仮にこのような効果があるとしても、上記従来のシール剤の特性及びシール剤を施す範囲から予測し得る程度のことであり、格別のものではない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-05 |
結審通知日 | 2006-07-11 |
審決日 | 2006-07-24 |
出願番号 | 特願2002-520801(P2002-520801) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植田 高盛、早川 貴之、佐藤 宙子 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
吉田 禎治 向後 晋一 |
発明の名称 | 固体型エレクトロクロミック防眩ミラー |
代理人 | 藤村 康夫 |