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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1144151
審判番号 不服2003-10279  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-05 
確定日 2006-09-21 
事件の表示 平成9年特許願第159439号「半導体パッケージ実装用多層プリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月12日出願公開、特開平11-8475〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】手続の経緯
本願は、平成9年6月17日に出願されたもので、原審において通知された拒絶理由に対して、請求人(出願人)は平成14年7月1日付けで意見書の提出とともに手続補正をしたが、上記拒絶理由によって拒絶査定を受けたので、これを不服として平成15年6月5日付けで本件審判請求をするとともに、同日付けで特許法(平成14年改正前の特許法であって、以下についても同様である)第17条の2第1項第3号に規定する手続補正(前置補正)をしたものである。

【第2】平成15年6月5日付け手続補正の却下について
【補正却下の決定の結論】
平成15年6月5日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という)を却下する。
【補正却下の決定の理由】
1.本件手続補正の趣旨
本件手続補正では、請求項1の発明が次のように補正された。
(1)本件手続補正前の請求項1の発明(下線は当審で加入)
「【請求項1】 半導体パッケージを実装する実装面の実装領域において前記半導体パッケージの実装端子の位置に対応した所定位置に面格子型に配列された複数の実装ランドと、前記複数の実装ランドが存在する位置の直下に導電ペーストによるビアと、前記ビアの直下に前記ビアと電気的に接続された回路パターンと、前記回路パターンの下層の任意の位置に前記回路パターンと電気的に接続されたビアが形成され、そのビアの数は前記実装ランドの数よりも少ない構成であって、かつ前記実装領域内にはめっきスルーホールが存在しないことを特徴とする半導体パッケージ実装用多層プリント配線板。」
(2)本件手続補正後の請求項1の発明
「【請求項1】 半導体パッケージを実装する実装領域に配列された複数の実装ランドと、前記実装ランドの直下に導電性ペーストによるビアを備え、前記実装ランドは、実装ランドの内、内側のものから他の部分へと配線する際に、直下の導電性ペーストによるビアを介して任意の層(必要な箇所にビアを形成した絶縁層)の回路パターンと電気的に接続され、かつ前記実装領域内には実装ランド以外の回路パターンおよびめっきスルーホールが存在してないことを特徴とする半導体パッケージ実装用多層プリント配線板。」 (以下、「本願補正発明」という)

2.手続補正の目的について
上記1.のとおり、補正前の「前記実装領域内にはめっきスルーホールが存在しないこと」という記載に代えて、「前記実装領域内には実装ランド以外の回路パターンおよびめっきスルーホールが存在してないこと」としているところからみて、本件手続補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解される。
しかし、本件手続補正は、上記の減縮にとどまらず、本件手続補正前の請求項1の発明から、上記の下線部の構成を削除することも含むものであり、このような削除によって、発明の対象である「半導体パッケージ実装用多層プリント配線板」の概念が拡張されることになるのは明らかである。
そうすると、本件手続補正を全体としてみると、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえず、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定を満たすものとはいえない。

3.独立特許要件の有無
次に、仮に請求項1に関する補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとした場合に、上記の本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例及びその記載事項の概要
原査定の拒絶理由において、本願の出願前に頒布された刊行物として引用された、特開平9-107165号公報(以下、「第1引用例」という)には、「BGA部品実装用基板」に関して、次のア、イの記載がある。
ア 「【0008】
【発明の実施の形態】この発明の実施例を図1に・・・示す。この発明の配線基板2には、BGA部品1の全てのボール1aを位置決めして接続・固定するヴィアホール7が形成される。図1Aの第1層〜第3層(4,5,6)の各平面図を図1B,C,Dに示してある。第1層4の全てのヴィアホール7の周縁にリング状電極(パターン)8が形成され、その外側のリング状電極8から配線パターン7-1,7-5等が第1層の周縁迄延長される。第2層5の外側から2番目のヴィアホール7の周縁にリング状電極8が形成され、それらの電極より配線パターンQ2,Q4等が第2層5の周縁迄延長される。また第3層6の中心のヴィアホール7-3の周縁にリング状電極8が形成され、それより配線パターンQ3が導出される。
【0009】これら層間のリング状電極8及び配線パターンは高密度のBGA部品を実装するために必要なものである。また部品実装面2aのリング状電極8はボール1aのヴィアホール7との電気的な接続と固定とをより確実に行うために有効なものである。」(第2頁第2欄第18〜37行)
イ 「【0010】
【発明の効果】この発明では、BGA部品のボール1aをヴィアホール7に接続・固定するので、従来のように、ヴィアホール間にボール接続用の電極3-1,3-2,・・・を形成する必要が無いので、それだけボール間隔の狭い超高密度のBGA部品を実装することができる。
【0011】またBGA部品を実装する際、各ボール1aを対応するヴィアホール7の凹みに係合させることによって容易に精度よく位置決めすることができるので、BGA部品のボールの位置ずれ不良を防止できる。」(第2頁第2欄第38〜48行)

また、同じく原査定の拒絶理由で引用された、特開平4-342192号公報(以下、「第2引用例」という)、特開平7-115280号公報(以下、「第3引用例」という)、特開平7-249868号公報(以下、「第4引用例」という)のいずれにも、「導電性ペーストによるビア」といえる層間接続構造を開示する記載がある。

(2)発明の対比
本願補正発明の構成事項と上記第1引用例の記載事項とを対比すると、第1引用例記載の「BGA部品」、「リング状電極」は、それぞれ、本願補正発明でいう「半導体パッケージ」、「実装ランド」に相当する。
したがって、第1引用例記載の「部品実装面」は、本願補正発明の「半導体パッケージを実装する実装領域」に相当し、同様に「BGA部品実装用基板」は、「半導体パッケージ実装用多層プリント配線板」に相当するものといえる。
また、第1引用例記載の「ヴィアホール」と、本願補正発明の「ビア」とは、いずれも層間接続構造である点では共通している。
更に、第1引用例の「外側から2番目のヴィアホール7の・・・電極より配線パターン・・・が第2層5の周縁迄延長される。また第3層6の中心のヴィアホール・・・より配線パターンQ3が導出される。」という記載は、「実装ランドの内、内側のものから他の部分へと配線する際に、直下の」層間接続構造を介して「任意の層」の「回路パターンと電気的に接続」される構成を表現したものと解しうる。

以上の対比から、第1引用例記載の発明と本願補正発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
<一致点> 「半導体パッケージを実装する実装領域に配列された複数の実装ランドと、前記実装ランドの直下に層間接続構造を備え、前記実装ランドは、実装ランドの内、内側のものから他の部分へと配線する際に、直下の層間接続構造を介して任意の層の回路パターンと電気的に接続される半導体パッケージ実装用多層プリント配線板」である点
<相違点1> 層間接続構造が、本願補正発明では「導電性ペーストによるビア」であるのに対して、第1引用例記載の発明では、「(導電性ペーストが充填されない)ヴィアホール」である点
<相違点2> 本願補正発明では「実装領域内には実装ランド以外の回路パターンおよびめっきスルーホールが存在してない」のに対して、第1引用例記載の発明では、実装領域内に回路パターン(「配線パターン」)が存在し、また、「リング状電極(実装ランド)」の中央部に「ヴィアホール」が位置するところから、「実装ランド以外のめっきスルーホールが存在してない」とはいえない点

(3)当審の判断(相違点の検討)
<相違点1>について
層間接続構造を、「導電性ペーストによるビア」とすることは、上記の第2〜4引用例に記載があるように、当該技術分野においては周知慣用の手段であって、第1引用例記載の「ヴィアホール」に代わるものとして、上記周知慣用の手段を採用することは、当業者にとって格別困難とはいえない。
<相違点2>について
先ず、上記相違点1の検討で指摘したように、第1引用例記載の「ヴィアホール」に代えて「導電性ペーストによるビア」を採用した場合には、実装領域内に「めっきスルーホール」が存在しないものとなることは明らかである。
次に、「回路パターン」についてみると、多層プリント配線板の部品実装部以外を絶縁層で覆うこと(即ち、実装領域内に「実装ランド以外の回路パターン」が存在しない状態とすること)も、やはり当該技術分野における周知慣用の手段であって(特開平5-275836号公報、特開平3-240293号公報参照)、このような周知慣用手段を第1引用例記載の発明に採用することは、当業者にとって格別困難とはいえない。

そして、上記相違点1及び2に係る構成を併せ備える本願補正発明の作用効果について検討しても、上記第1引用例の記載事項や上記周知慣用の手段から予測しがたいといえるものが認められない。

4.手続補正の要件欠如に伴う手続補正の却下
以上の2.及び3.の検討から明らかなように、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものとはいえないし、また、請求項1に関する補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本願補正発明は、上記の第1引用例記載の発明や周知慣用の手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明については特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定、又は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反することになり、特許法第159条第1項において一部読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

【第3】本願の発明について
1.本願の発明
平成15年6月5日付けの本件手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成14年7月1日付け手続補正に係る明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
半導体パッケージを実装する実装面の実装領域において前記半導体パッケージの実装端子の位置に対応した所定位置に面格子型に配列された複数の実装ランドと、前記複数の実装ランドが存在する位置の直下に導電ペーストによるビアと、前記ビアの直下に前記ビアと電気的に接続された回路パターンと、前記回路パターンの下層の任意の位置に前記回路パターンと電気的に接続されたビアが形成され、そのビアの数は前記実装ランドの数よりも少ない構成であって、かつ前記実装領域内にはめっきスルーホールが存在しないことを特徴とする半導体パッケージ実装用多層プリント配線板。
(以下、「本願発明」という)

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記【第2】の3.(1)に記載したとおりである。

3.発明の対比
本願発明でいう「面格子型に配列された複数の実装ランド」に相当するものは、第1引用例にも開示があるし、層間接続構造と配線パターンとの基本的な関連構成については、第1引用例記載の発明と本願発明との間に相違がないので、これらの二つの発明の一致点及び相違点を、次のとおりに認定する。
<一致点> 「半導体パッケージを実装する実装面の実装領域において前記半導体パッケージの実装端子の位置に対応した所定位置に面格子型に配列された複数の実装ランドと、前記複数の実装ランドが存在する位置の直下に層間接続構造と、前記層間接続構造の直下に前記層間接続構造と電気的に接続された回路パターンが形成された半導体パッケージ実装用多層プリント配線板」である点
<相違点A> 層間接続構造が、本願発明では「導電性ペーストによるビア」であるのに対して、第1引用例記載の発明では、「(導電性ペーストが充填されない)ヴィアホール」である点
<相違点B> 本願発明では、「回路パターンの下層の任意の位置」に層間接続構造(ビア)が形成され、「そのビアの数は前記実装ランドの数よりも少ない構成」とされるのに対して、第1引用例記載の発明では、回路パターン下層の「任意の位置」に層間接続構造を形成することについて言及がなく、また、ヴィアホールの数は上下いずれの層でも同じになる点
<相違点C> 本願発明では、「実装領域内にはめっきスルーホールが存在しない」のに対して、引用例記載の発明では、「リング状電極(実装ランド)」の中央部に「ヴィアホール」が位置するところから、「めっきスルーホールが存在してない」とはいえない点

4.当審の判断(相違点の検討)
<相違点A>について
上記の相違点Aは、上記【第2】で検討した相違点1と同じものであって、上述のように、第1引用例に記載された導電性ペーストが充填されていない「ヴィアホール」に代えて、周知慣用の「導電性ペーストによるビア」を採用することは、当業者にとって格別困難とはいえない。
<相違点B>について
層間の接続構造については、上述の相違点1に関して指摘した第4引用例(特開平7-249868号公報)の図1に示される、任意の特定層のみを貫通するブラインドバイアホール(ブラインドビア)やインナーバイアホール(インナービア)を形成する場合と、同じく図3に示される、上記のブラインドビアやインナービアに加えて、全層を貫通するスルーホールを形成する場合があり、これらは必要に応じて適宜選択的に使用されたり、併用されるものである。そして、インナービアとする場合は「回路パターンの下層の任意の位置」に形成できるとともに、その数は「実装ランドの数よりも少ない構成」とすることができることは、当該技術分野における周知の事項といえる(特開昭64-32662号公報、特開平1-248589号公報参照)。
そうすると、第1引用例記載のヴィアホール(全層を貫通するスルーホール)に代えて、あるいは上記ヴィアホールとともに、ブラインドビアやインナービア(本願発明でいうビア)を採用して、これを「回路パターンの下層の任意の位置」に、また、「実装ランドの数よりも少ない構成」となるように形成することは、当業者が容易に想到し得る設計事項といえる。
<相違点C>について
上述のように、第1引用例記載の「ヴィアホール」に代えて、周知慣用の「導電性ペーストによるビア」を採用することは、当業者にとって格別困難とはいえないし、またこれを採用した場合には、実装領域内に「めっきスルーホール」が存在しないことになる。
したがって、第1引用例記載の発明において、上記相違点Cに関して本願発明と同様の構成とすることに、格別の困難性は認められない。

そして、上記相違点A,B,Cに係る構成を併せ備える本願発明の作用効果について検討しても、上記第1引用例及び第4引用例の記載事項や上記周知慣用の手段から予測しがたいといえるものが認められない。
したがって、本願発明は、上記の各引用例に記載された発明及び上記周知慣用の手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

5.むすび
以上のとおり、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-20 
結審通知日 2006-07-25 
審決日 2006-08-07 
出願番号 特願平9-159439
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 隆司  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 永安 真
平瀬 知明
発明の名称 半導体パッケージ実装用多層プリント配線板  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  

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