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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200480150 審決 特許
無効200580065 審決 特許
無効200335503 審決 特許
無効2008800209 審決 特許
無効200135368 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A23G
審判 一部無効 1項2号公然実施  A23G
管理番号 1144251
審判番号 無効2006-80038  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-06-03 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-03-03 
確定日 2006-09-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第3733568号発明「きび団子及びその製造方法と製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3733568号の請求項1及び3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由
1.手続の経緯

本件特許3733568号の請求項1及び3に係る発明(以下、各請求項に係る発明を、「本件特許発明1乃び3」という。)は、平成14年11月7日に特願2002-323440号として出願され、平成17年10月28日に特許権設定の登録がなされたところ、これに対して、株式会社染谷商店より平成18年3月3日付けで本件無効審判の請求がなされた。
これに対して、同年5月22日付けで被請求人福永勝より答弁書が提出され、同年7月12日に、当審は、特許庁審判廷において口頭審理を行ったところ、同年7月18日付けで被請求人より上申書が提出されたものである。
2.本件特許発明

本件特許発明1乃び3は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃び3に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】きび粉と餅粉とが練り上げられたきび団子を、間隔を開けて串に刺し串団子状に形成し、各きび団子の間に、串の表面を薄く覆ってきび団子相互をつなぐ連結部を設け、食する前に串ごと茄でるようにしたことを特徴とするきび団子。
【請求項3】串に刺した略棒状のきび餅を成形ロールとロールホルダーとの間に送り込んで間隔を開けて串に刺した串団子状に成形する製造装置であって、成形ロールの外周面及びロールホルダーの内周面に、各団子を成形する団子形成溝部と、串の表面を薄く覆って団子相互の間をつなぐ連結部を成形する連結部形成突部とを形成したことを特徴とするきび団子の製造装置。」

3.請求人の主張

請求人は、「第3733568号の請求項1乃び3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1乃至22号証を提示し、その理由として、
(1)本件特許発明1は、甲第3乃至8号証、甲11乃至12号証及び甲18乃至20号証によれば、本件出願前に公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものである、或いは、本件出願前に公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである、
(2) 本件特許発明3は、甲第9乃至10号証に記載された発明及び甲第3号証や甲第7号証による公用事実に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである、旨主張している。

甲第1号証:特許第3733568号特許公報
甲第2号証:特許第3733568号特許原簿
甲第3号証の1:登録第732882号意匠公報
甲第3号証の2:登録第732882号意匠閉鎖原簿
甲第4号証:渋沢著「浅草っ子」造形社発行(発行日昭和55年7月20日)表紙、前書、目次、第50頁乃至第53頁
甲第5号証:台東区立下町風俗資料館、資料文書番号5303068695、第3頁及び第4頁
甲第6号証:新村出編「広辞苑」岩波書店、第2663頁「もろこし」「もろこしだんご」の説明
甲第7号証:「るるぶ02〜03東京下町を歩こう」JTB発行(発行日2002年7月1日)第2頁、第6頁、第8頁
甲第8号証:「東京のおいしい和菓子」平凡社発行(発行日1998年2月24日)第68頁
甲第9号証:特開2001-204369号公報
甲第10号証:特開平2-207780号公報
甲第11号証:請求人と被請求人の間で締結された平成14年4月27日付け売買契約書
甲第12号証:請求人と被請求人の間で交わされた平成14年10月25日付け覚え書き
甲第13号証:被請求人による平成17年12月7日付け警告書
甲第14号証:請求人による平成17年12月20日付け回答書
甲第15号証:被請求人による平成17年12月22日付け再警告書
甲第16号証:請求人による平成17年12月28日付け回答書
甲第17号証:被請求人による平成18年2月21日付け再警告書
甲第18号証:吉備子屋のきびだんごの包装用紙
甲第19号証:吉備子屋のきびだんごの包装用紙
甲第20号証:福井県池田町のきびだんごの調理法
甲第21号証:特開平10-217188号公報
甲第22号証:特開2000-245349号公報

4.被請求人の主張

一方、被請求人は、請求人の提出した証拠方法によっては、本件特許を無効にすることができないと主張し、証拠方法として、以下の乙第1乃至5号証及び資料1乃至9を提示している。

乙第1号証:2000年7月4日付け「山陽新聞」の記事
乙第2号証:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」 「吉備団子」の項
乙第3号証:フリー百科事典「ウィキベディア(Wikipedia)」 「求肥」の項
乙第4号証:1985年2月22日付け「サンケイ新聞」の記事
乙第5号証:2000年1月1日付け「読売新聞」の記事
資料1‐(1):(財)食品分析開発センターSUNATECへの問合せ
資料1‐(2):(財)食品分析開発センターSUNATECからの回答
資料2‐(1):(財)日本食品分析センターからの回答(1)
資料2‐(2):(財)日本食品分析センターへの追加問い合わせ
資料2‐(3):(財)日本食品分析センターからの回答(2)
資料3‐(1):ビジョンバイオ(株)への問い合わせ
資料3‐(2):ビジョンバイオ(株)からの回答
資料3‐(3):ビジョンバイオ(株)のホームページ掲載記事
資料3‐(4):ビジョンバイオ(株)のホームページ掲載記事
資料3‐(5):2002年12月2日付け「西日本新聞」の記事
資料4:サンショー紙工代表者葛西勝による包装紙の納入日証明書
資料5:被請求人の営業許可書
資料6:被請求人の賃貸契約書写し
資料7:井上文具店代表者井上健一による包装紙の納入時期証明書
資料8:吉備子屋きびだんごの包装紙
資料9:吉備子屋きびだんごの包装紙

5.当審の判断

5.1 請求人の主張する無効理由(1)について

本件特許発明1は、きび粉と餅粉とが練り上げられたきび団子を、間隔を開けて串に刺し串団子状に形成し、各きび団子の間に、串の表面を薄く覆ってきび団子相互をつなぐ連結部を設け、食する前に串ごと茄でるようにしたことを特徴とするきび団子であり、食する前に茹でるため極めて食べ易く、きび本来の食味を堪能することができ、連結部を設けているので茄でる際に串から抜け落ちることがないものである。
当事者間で成立について争いのない、請求人が提出した甲第3乃至4号証、甲第7乃至8号証及び甲第11号証を検討する。
甲第3号証の1は、被請求人に係る「きびだんご」の意匠公報であり、「きびだんご」の形状は、B-B’断面図などに示されるように、球形状の団子の4個を間隔を開けて串に刺し、各団子相互の間や串の先端を覆うように、団子と一体の団子の生地が串の廻りに設けられているものである。
甲第4号証の第52頁の第1行乃至第7行には、「もろこし団子」を湯気を立てた釜からすくい上げて黄粉をまぶして食していたことが記載されている。
甲第7号証は、本件出願前の平成14年7月1日発行の刊行物であり、表紙の右下及び第8頁右下には、球形状の団子4個が間隔を設けて串に刺され、団子の間が串よりも太く、きなこをまぶしたきびだんごの写真が掲載され、第8頁右下の説明文には、「浅草きびだんごあづま」は「1.ゆでたての団子を、その場できなこをまぶし、提供する・・・」と記載されている。
甲第8号証の第68頁の写真には、墨田区東向島の吉備子屋の「きびだんご」として、串に4個の団子が刺されており、団子と団子との間が串より太く、きなこがふられたきびだんごが掲載され、左上の説明文には、「きび粉と家伝のつなぎを合わせてよく練る。・・・」と記載されている。
甲第11号証は、本件出願前の平成14年4月27日付けの請求人と被請求人が締結した被請求人が製造した「きび団子」に関する売買契約書であり、平成14年4月27日以降、請求人が被請求人から「きび団子」を購入して販売していたことが見て取れる。
さて、請求人は、「きび団子を食する直前に茄でることは甲第4号証記載のとおり、古くから一般的に行なわれているものであり、本件特許発明1は、本件出願前の甲第3号証の1の登録意匠権の意匠に係る物品と同一のきび団子であり、また、本件特許発明1は、甲第7号証に記載されたきび団子であって、甲第11号証の売買契約書に示した条件において本件審判請求人が、被請求人から購入して本件出願前に販売していたものであり、更に、本件特許発明1は、甲第8号証に記載されたきび団子であって、本件出願前に、被請求人自身により、墨田区東向島の吉備子屋で販売されてものであるから、本件特許発明1は、本件出願前に公然実施された発明であるか、或いは、本件出願前に公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである」旨主張している。
これに対して、被請求人は、答弁書において、
「1)本発明者は、この本件特許発明1に係るきび団子を唯一の商品とした「吉備子屋」と称する店舗において、きび団子一筋に20数年間製造・販売した結果、浅草名物として今日に至っていることは、甲第8号証の他、乙第4乃至5号証によっても示されている。しかも、本件特許発明1に係る「吉備子屋」のきび団子は、和菓子の業界で登竜門と称され、おいしいと認められた和菓子のみが掲載されることで有名な雑誌(請求人が示す甲第8号証の「東京のおいしい和菓子」)に掲載されるまでに至った。本件発明者の手によって、子供のおやつであった浅草の昔ながらのきび団子が復活し、その後、本件特許発明1のきび団子に改良され、この改良されたきび団子がおいしい和菓子として甲第8号証に掲載されるに至った時点で、本件特許発明1のきび団子が浅草名物のきび団子として名実共に認められたということができる。(答弁書第6頁第2〜14行)
2)本件特許発明1の完成時当初、被請求人は製品の形状について意匠権を取得していたが、重要な「つなぎ」の材料については、「家伝のつなぎ」として秘密状態を保っていた。このことは、請求人が提出した甲第3,7,8,11号証の全てが明らかにしている。ちなみに、甲第7号証は、甲第11号証の契約により、請求人が本件特許発明1のきび団子を販売していた当時の記事であるが、「家伝のつなぎ」を明らかにしている記載はない。しかも、この甲第7号証は、本件特許発明1のきび団子が浅草で販売されていたことを示しているので、浅草名物として認知されていたことを示す証拠になっているといえる。味に関する最も重要な材料を秘密状態にしておくことは、当業界において、ごく一般的な選択であり、本件特許発明1においても、昔ながらの味を残して串ごと茄でることができる材料を、「家伝のつなぎ」として秘密状態にしており、本件特許発明1の出願前に、この「家伝のつなぎ」について明らかにした事実は一切ない。(答弁書第8頁第14〜28行)」旨主張している。
そこで検討すると、甲第3号証の1に係る「きびだんご」、被請求人の店舗「吉備子屋」において20数年間製造・販売された「きびだんご」及び請求人の店舗「浅草きびだんごあづま」で販売された「きび団子」は、何れも、間隔を開けて串に刺し串団子状に形成し、各きび団子の間に、串の表面を薄く覆ってきび団子相互をつなぐ連結部を設けたきび団子であり、甲第3乃至4号証、甲第7乃至8号証、甲第11号証及び乙第4号証並びに弁論の全趣旨によれば、甲第3号証の1に係る「きびだんご」、被請求人の店舗「吉備子屋」において20数年間製造・販売された「きびだんご」及び請求人の店舗「浅草きびだんごあづま」で販売された「きび団子」は、「きび粉と餅粉とが練り上げられたきび団子を、間隔を開けて串に刺し串団子状に形成し、各きび団子の間に、串の表面を薄く覆ってきび団子相互をつなぐ連結部を設け、食する前に串ごと茄でるようにしたきび団子」であるものと推認されるから、本件特許発明1の「きび団子」と同一である。
また、甲第3乃至4号証、甲第7乃至8号証、甲第11号証及び乙第4号証並びに弁論の全趣旨によれば、本件特許発明1のきび団子は、被請求人が製品の形状についての甲第3号証の1に係る意匠権を取得した昭和63年頃から「吉備子屋」と称する店舗において20数年間製造・販売されたこと、また、遅くとも平成14年7月には、請求人が被請求人から購入して請求人の店舗「浅草きびだんごあづま」で販売したことが推認されるから、本件特許発明1のきび団子は本件出願の出願日である平成14年11月7日以前に公然と販売されていたものである。
そして、特許法2条3項1号は,発明の「実施」について,「その物の生産,使用,譲渡等・・・をする行為」がこれに該当すると規定しているところ,被請求人が,昭和63年頃から、きび団子を20数年間製造・販売したこと、また、遅くとも平成14年7月に、請求人にきび団子の販売を委託したことは,同号にいう「譲渡」に該当するというべきであるから,本件特許発明1は,その出願日である平成14年11月7日より前に公然実施されていた発明であり、特許法第29条第1項2号に該当し特許を受けることができない。

被請求人は、平成18年7月12日付け口頭審理陳述要領書において、「本件特許発明1のきび団子が出願前に販売されていても、「つなぎ」の材料は「公然に知られ得る状態」にはなく、「不特定多数人が認識できる状態に置かれている」ともいえないので本件特許発明1が、公然実施された発明であるとはいえない。」旨主張している。
これに対して、請求人は、甲第19号証を提出して、吉備子屋のきびだんごが、本件出願前に「きび粉ともち粉」が原材料であることを表示して販売された旨主張しているが、被請求人の提出した参考資料7乃至9及び弁論の全趣旨から、甲第19号証によっては、吉備子屋のきびだんごが、本件出願前に「きび粉ともち粉」が原材料であることを表示して販売されたものとは推認できない。
しかしながら、そもそも、本件特許発明1のきび団子の販売に際し、その主原料である「きび粉、もち粉」などは、食品衛生法やJASの品質表示基準により表示が法的に義務付けられているものであるから、法的には「つなぎ」の材料は「公然に知られ得る状態」にあったものというべきであるところ、被請求人の主張は採用できない。
被請求人は、平成18年7月18日付け上申書において、「JAS法に基づく品質表示の指導は、平成14年4月頃から盛んになってきた。被請求人は、その当時、資料9の包装紙が大量に残っていたことや、品質表示をすると、秘伝のつなぎの成分が餅粉であることがわかってしまうことに悩んだ末、特許により、これまでの研究を保護しようとしてと本件出願を試みたものである。」とも主張するが、例え、被請求人が、法律に違背して、本件出願前には本件特許発明1のきび団子を包装用紙に原材料表示することなく販売していたとしても、この判断は左右されない。

また、和菓子の串団子等においても、もち粉を単独で又は混合して用いて団子を製造することは周知慣用のものであり、和菓子職人であれば、この団子を食することにより、その食感及び味などによってもち粉が用いられているであろうことは直ちに推測できるものと考えられるから、その意味でも、本件特許発明1のきび団子が「きび粉ともち粉」が原材料であることは、「公然に知られ得る状態」にあったものというべきである。
この点について、被請求人は、平成18年7月18日付け上申書において、「食材の一部に餅粉が使用されていると想像できたとしてしても、きび粉と餅粉とを合わせただけのきび団子であるとは、決して判断することはできないと反論する。つまり、浅草で評判になるほど美味しいきび団子を製造するには、きび粉と餅粉とを1対4の割合で混ぜ合わせ、半生状態のものを串ごと茹でたときに、美味しく食することができるのである。この美味しさは、同じ材料を使用している前記甲20号証の家庭の味とも混合率が異なっているので、味が違うことは明らかであり、これまでのきび団子になかった味であることは間違いない。(第5頁第2〜11行)」旨主張しているが、食材の一部に餅粉が使用されていると想像できるのであれば、「つなぎ」の材料は「公然に知られ得る状態」にあるものと解されるから、被請求人の主張は採用できない。
また、本件特許発明1は、きび粉と餅粉との配合割合や、それ以外の成分の添加について特定するものではないから、被請求人の主張は特許請求の範囲に基づく主張とはいえない。

なお、被請求人が答弁書において、「乙2号証によると、『吉備団子は、黍の粉と餅米の粉を混ぜて求肥を作り、これを整形して小さく平な円形に仕上げている。最近の製品は黍の割合がかなり低く、使用していない商品もある。』と記載されている。」(答弁書第3頁下から4行〜最終行)と述べるように、岡山の吉備団子ではあるが、きび団子の材料としてもち粉を使用することは周知のことであるから、本件特許発明1のつなぎの材料が不明であったとしても、もち粉をつなぎとして使用することは周知技術の適用にすぎないところ、本件特許発明1は、本件出願前に公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということもできる。

5.2 請求人の主張する無効理由(2)について

本件特許発明3は、串に刺した略棒状のきび餅を成形ロールとロールホルダーとの間に送り込んで間隔を開けて串に刺した串団子状に成形する製造装置であって、成形ロールの外周面及びロールホルダーの内周面に、各団子を成形する団子形成溝部と、串の表面を薄く覆って団子相互の間をつなぐ連結部を成形する連結部形成突部とを形成したきび団子の製造装置であって、串に刺したきび団子ときび団子相互をつなぐ連結部とを同時に成形することができるものである。
これに対して、甲第9号証には、成形用ローラー8の外周位置に成形用ローラー8と対向させた成形用台7を有し、成形用台7の内周に設けられた4本の溝27と成形用ローラー8の外周に設けられた4本の溝28とにより4個の球形状の団子を串刺し状態に形成する団子製造装置が、甲第10号証には、串団子を製造するに際し、内側に成形溝1aを有する成形台1と、外周に成形溝2aを有する成形ロール2とにより串団子を形成する串団子製造装置が記載されている。
甲第9乃至10号証に記載のとおり、「串に刺した略棒状の団子生地を成形ロールとロールホルダーとの間に送り込んで間隔を開けて串に刺した串団子状に成形する団子の製造装置」は周知のものである。(以下、「周知技術」という。)
本件特許発明3と、甲第9乃至10号証に記載された周知技術を対比すると、両者は、「串に刺した略棒状の団子生地を成形ロールとロールホルダーとの間に送り込んで間隔を開けて串に刺した串団子状に成形する団子の製造装置」である点で一致しており、前者が、きび餅を使用したきび団子と特定し、団子成形ロールの外周面及びロールホルダーの内周面に、各団子を成形する団子形成溝部と、串の表面を薄く覆って団子相互の間をつなぐ連結部を成形する連結部形成突部とを形成しているのに対して、後者はそうでない点で相違している。
そこで、上記相違点について検討する。
「きび餅を使用し、各きび団子の間に、串の表面を薄く覆ってきび団子相互をつなぐ連結部を設けたきび団子」は、5.1で論じたように、本件出願前に公然実施された周知のものである。
ここで、前記周知技術の製造装置により前記周知のきび団子を製造しようとすることは当業者が容易に想到し得るところであり、その際に、団子の製造装置において、団子の成型用の型の形状は、製造される団子の形状をなぞる形にすることは当業者が通常行うことであるから、公知の「各きび団子の間に、串の表面を薄く覆ってきび団子相互をつなぐ連結部を設けたきび団子」を製造するために、その形状に合わせて成形ロールの外周面及びロールホルダーの内周面に、各団子を成形する団子形成溝部と、串の表面を薄く覆って団子相互の間をつなぐ連結部を成形する連結部形成突部とを形成することは当業者が容易になし得るところである。

したがって、本件特許発明3は、甲第9乃至10号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである

(付記)訂正案について

被請求人は、訂正可能な期間経過後ではあるが、平成18年7月12日付け口頭審理陳述要領書において、【請求項1】を「【請求項1】きび粉と餅粉とが練り上げられたきび団子を、製造装置により間隔を開けて串に刺し串団子状に形成し、各きび団子の間に、串の表面を薄く覆ってきび団子相互をつなぐ連結部を設け、食する前に半生状態で串ごと茄でるようにしたことを特徴とするきび団子。」と訂正しようとする訂正案を、平成18年7月18日付け上申書において、【請求項3】を「【請求項3】串に刺した略棒状のきび餅を成形ロールとロールホルダーとの間に送り込んで間隔を開けて串に刺した串団子状に成形する製造装置であって、セラミック製の成形ロールの外周面及びロールホルダーの内周面に、各団子を成形する団子形成溝部と、串の表面を薄く覆って団子相互の間をつなぐ連結部を成形する連結部形成突部とを形成したことを特徴とするきび団子の製造装置。」と訂正しようとする訂正案を提示しているので念のため検討する。
【請求項1】に関する訂正案は、本件特許発明1において、きび団子が製造装置により形成され、半生状態で串ごと茹でるものと訂正しようとするものであるが、「製造装置により形成」する点については、被請求人の店舗「吉備子屋」において20数年間製造・販売された「きびだんご」及び審判請求人の店舗「浅草きびだんごあづま」で販売された「きび団子」が製造装置により形成されたことは、「きび団子」を一見すれば直ちに理解できることであるし、「半生状態で茹でる」点については、乙第4号証に「ビー玉ほどの大きさにした半生ゆでのものを店に運び、ゆでる。」と記載されているから、これらの点は相違点とはいえないし、そうでないとしても、当業者が適宜なし得ることである。
次に、【請求項3】に関する訂正案は、本件発明3において、成形ロールをセラミック製の成形ロールと訂正しようとするものであるが、食品製造装置分野において、食品加工材料としてセラミックスを使用することは周知のこと(必要ならば、錆の生じないセラミック製のカッターを使用すること(甲第21号証)、成形品の取出しやすいセラミック製の成型型を使用すること(甲第22号証)、生地につき難いセラミックめん棒を使用すること(特開2000-50824号公報)、食品との接触面に剥離剤としてセラミックを塗布すること(特開平5-68525号公報)参照。)であるから、成形ロールをセラミック製とすることは周知技術の適用にすぎず、それにより当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。

6.むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る発明の特許は、本件出願の出願日前に公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるので、同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきものであり、本件請求項3に係る発明の特許は、本件出願の出願日前に頒布された甲第9乃至10号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、同法第123条第1項2号に該当し無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-27 
結審通知日 2006-07-31 
審決日 2006-08-14 
出願番号 特願2002-323440(P2002-323440)
審決分類 P 1 123・ 121- Z (A23G)
P 1 123・ 112- Z (A23G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小石 真弓  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
鈴木 恵理子
登録日 2005-10-28 
登録番号 特許第3733568号(P3733568)
発明の名称 きび団子及びその製造方法と製造装置  
代理人 水野 清  
代理人 北村 仁  
代理人 中村 政美  

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