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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1144357 |
審判番号 | 不服2003-24814 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-01-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-24 |
確定日 | 2006-09-28 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第150311号「3-5族化合物半導体用電極の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月10日出願公開、特開平 9- 8356〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年6月16日の出願であって、平成15年11月21日付で拒絶査定がなされ、これに対し同年12月24日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年12月25日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。 2.平成15年12月25日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年12月25日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、補正前の請求項1を、下記のように補正することを含むものである。 「【請求項1】 一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される3-5族化合物半導体に用いる電極の製造方法において、該3-5族化合物半導体をドライエッチングした後、不活性ガス雰囲気中600℃以上の温度で熱処理し、次に電極を形成する工程を有することを特徴とする3-5族化合物半導体用電極の製造方法。」 (2)当審の判断 上記補正の請求項1の記載中、「ドライエッチングした後、不活性ガス雰囲気中600℃以上の温度で熱処理し」の記載について検討する。 上記記載について、本件補正前の平成15年9月5日付手続補正において補正された請求項1には「ドライエッチングし、次に不活性ガス雰囲気中600℃以上で熱処理し」と記載されており、「ドライエッチングし、次に・・・」の記載から、ドライエッチングに続く直近の処理として熱処理が位置づけられているが、本件補正において「ドライエッチングした後、・・・」と補正されたため、必ずしもドライエッチングに続く次の処理として熱処理が位置づけられているとはいえず、その間に他の処理も含み得る記載となっているので、この点に関する発明の構成を実質的に拡張するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 また、本件補正は、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明にも該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成15年12月25日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年9月5日付手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。 「 【請求項1】 一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される3-5族化合物半導体に用いる電極の製造方法において、該3-5族化合物半導体をドライエッチングし、次に不活性ガス雰囲気中600℃以上で熱処理し、次に電極を形成する工程を有することを特徴とする3-5族化合物半導体用電極の製造方法。」(以下、「本願発明」という。) (2)引用刊行物記載の発明 原査定において引用された出願前公知の刊行物である特開平5-190900号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 基板上に少なくとも1種類のIII族元素を含む窒化物系半導体からなるn型層とi型層またはp型層を具備してなる発光層を形成する工程、該発光層の所要の部位をドライエッチングする工程、ドライエッチング後に該発光層を熱処理する工程、および該発光層の所要の部位に少なくとも2つ以上の電極を形成する工程を含むことを特徴とする半導体発光装置の製造方法。 【請求項2】 真空中において、あらかじめ加熱した窒素を含有するガス状化合物と、少なくとも1種のIII族元素金属または該元素を含む金属塩の蒸気を基板面に供給して反応させることにより、基板上に結晶成長させることを特徴とする請求項1記載の窒化物系半導体薄膜の製造方法。 【請求項3】 ドライエッチングの方法としてイオンミリング、反応性イオンエッチング、集束イオンビームエッチング、ECRエッチング、ビームアシストエッチングを用いることを特徴とする請求項1記載の半導体発光装置の製造方法。 【請求項4】 ドライエッチング後に発光層を熱処理する雰囲気としてアンモニア、三弗化窒素、ジメチルアンモニウム、ジメチルヒドラジン等の窒化化合物、アルゴン、窒素等の不活性ガスを用いることを特徴とする請求項1記載の半導体発光装置の製造方法。」 (イ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は,特にディスプレー、光通信、OA機器の光源として最適な可視領域における発光ダイオードおよびレーザーダイオード等に用いることができる薄膜発光装置の製造方法に関するものである。」 (ウ)「【0012】本発明における窒化物半導体薄膜とは,例えばGaN、InN、AlNの他にGa1ーx Alx N、Ga1-x Inx N、Ga1-x Bx NなどのGaNを主体とした混晶化合物半導体薄膜のことである。さらに、窒化物系半導体薄膜を作製するときに不純物をドーピングして、キャリア密度制御、i型、p型あるいはn型制御を行うこともできる。i型、p型の半導体薄膜を作製するためにドーピングする不純物の例としてはMg、Zn、Be、Cd、Hg、Li、Ca、Sr等があり、n型半導体薄膜を作製するためにドーピングする不純物としてはSi、Ge、Sn、S,Se、Te等がある。これらのドーパントの種類とドーピング量を変えることによって窒化物系半導体のキャリアの種類の制御やキャリア密度を変えることが可能となる。本発明では、基板上にi型あるいはp型の窒化物系半導体を成膜した上にn型の窒化物系半導体を成膜して発光層を形成した構造、あるいは基板上にn型の窒化物系半導体を成膜した上にi型あるいはp型の窒化物系半導体を成膜して発光層を形成した構造をとるが、このようなpn接合、MIS構造だけではなく、窒化物系半導体を組み合わせた、シングルヘテロ構造、ダブルヘテロ構造、量子井戸構造、超格子構造としてもよい。これらの積層構造の膜厚は、素子作製工程で使用するレジストの厚さに限界があるために、なるべく薄くすることが必要であり3μm以下とするのがよいが、好ましくは2μm以下とするのがよく、さらに好ましくは1μm以下とするのがよい。」 (エ)「【0013】本発明におけるドライエッチングの方法としては、イオンミリング、反応性イオンエッチング、集束イオンビームエッチング、ビームアシストエッチング、ECR(Electron Cycloctron Resonance)エッチングを用いることができる。ドライエッチング法として、イオンミリングではAr、窒素(N2 )等の不活性ガスを、集束イオンビームエッチングではB、Al、Si、Ga、Ge、In、Au等を金属イオン源として用いることができる。ビームアシストエッチングではXeF2 、Cl2 等のガス雰囲気中で電子線あるいはAr、N2 等のビームを照射してエッチングを行う。反応性イオンエッチング、ECRエッチングではCF4 、CCl4 、CCL2 F2 、CClF3 、SF6 、PCl3 、SiCl4 等のガスを用いる。また、集束イオンビームエッチングを用いた場合にはレジストを用いなくても、薄膜表面に直接エッチングを行うことができ、素子作製工程を簡略化することができる。これらのドライエッチング法を窒化物系半導体のエッチング方法として用いることができる理由としては、上記したように、素子の総膜厚を3μm以下で良質な単結晶薄膜を作製することができるからである。もし窒化物系半導体の膜厚が厚い場合にはレジストの厚みも厚くする必要がある。たとえば窒化物系半導体の膜厚が10μmであるとき、レジストの厚みは10μm以上とする必要があり、レジスト塗布時に非常に困難を有することになる。実際に、窒化物系半導体薄膜を用いて発光素子(LED)やレーザーダイオードを作製する場合においては、これらのドライエッチング法が必要となる。」 (オ)「【0014】本発明においては、発光特性を向上させるためにドライエッチング後に熱処理することが必要である。この熱処理を行うことによりドライエッチングにより受けた膜質の劣化を回復することができ、界面抵抗を下げて低電圧で発光に必要な電流を得ることができる。熱処理を行う装置としては管状炉、ランプアニ-ル炉等の雰囲気を制御できる炉であればよい。雰囲気としてはアンモニア、三弗化窒素、ジメチルアンモニウム、ジメチルヒドラジン等を単独であるいはAr,N2 等の不活性ガスとの混合物として用いることができる。熱処理する温度は窒化物半導体の成膜温度以下であればよく、熱処理時間と同様に使用するガスの種類によって適宜変えることができる。例えばアンモニアでは300〜700℃、三弗化窒素では300〜500℃、不活性ガスを用いた場合には300〜700℃で熱処理を行う。」 (カ)「【0015】本発明における電極の形成方法としては、MBE法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタ法等がある。電極としては、Al、In等の金属が好ましいが、Al、In等を混合した合金、またITO、SnO2 、ZnO、ZnS、GaN等の透明導電膜を用いてもよい。さらに、電極形成後にAr、N2 、He等の不活性ガス流中で熱処理することも好ましい。これにより電極と窒素物系半導体との界面抵抗を下げることが可能になり、良好なダイオ-ド特性とする事ができる。」 (キ)「【0032】 【実施例3】MBE法により,GaN薄膜を成膜し、RIE(反応性イオンエッチング)装置を用いて素子作製を行った例について説明する。装置としては,実施例1と同様の装置を用いて,GaN薄膜を作製した。蒸発用ルツボ2にはGa金属を入れ,1050℃に加熱した。ガスとしてはアンモニアを使用し,ガス導入管8を通してガスセル7に5cc/minの速度で基板表面に供給した。 【0033】基板6としては,オフ角が0.5度のサファイアR面を使用する。真空容器内の圧力は,成膜時において2×10-6Torrであった。まず,基板6を900℃で30分間加熱し,ついで750℃の温度に保持し成膜を行う。成膜はアンモニアを300℃の加熱したガスセル7から供給しながらGaのルツボのシャッターを開いて行い,1.5オングストローム/secの成膜速度で膜厚0.8μmのGaN薄膜を作製した。さらにMgをチャージして300℃に保たれた蒸発用ルツボ4のシャッターを開き、MgドープのGaN薄膜を1.5オングストローム/secの成膜速度で膜厚0.05μmの厚さで成膜して発光層を形成した。この薄膜のRHEEDパターンはストリーク状で平坦性、結晶性は良好であり、表面の抵抗を測定したところ、10MΩ以上の抵抗があり絶縁状態であった。 以上の様にして成膜した薄膜上にスピンコーターを用いて2500rpm、30secの条件でレジストを塗布し、90℃のクリーンオーブン中で30分間プレベークした。ベーク後、素子パターン形成用のマスクを用いてUV露光し、現像した。この膜をRIEを用いて高周波出力200W、CF4 流量25cc/minの条件で25分間エッチング行い素子パターン形成を行った。その後、アセトンを用いてレジストを除去した。次に、再度スピンコーターを用いて2500rpm、30secの条件でレジストを塗布し、90℃のクリーンオーブン中で30分間プレベークした。ベーク後、i層除去用のマスクを用いてUV露光し、現像した。この膜を 200W,CF4 25cc/minの条件で1分間エッチングを行い不必要なi層を除去した。その後、アセトンでレジストを除去した。ついで管状炉内に素子チップをセットして10cc/minのN2 流中500℃で30分間熱処理した。さらに、スピンコーターを用いて2500rpm、30secの条件でレジストを塗布し、90℃のクリーンオーブン中で30分間プレベークした。ベーク後、電極形成用のマスクを用いてUV露光し、現像した。この膜を真空蒸着機に装着し2×10ー6Torrの真空中でAl金属を0.2μmの厚さで真空蒸着した。その後、アセトンでリフトオフして電極を形成し、ついで、N2 流中で300℃で1時間の加熱処理を行ない、素子チップの構造を完成させた。」 (3)対比 本願発明と引用刊行物の主として実施例3に記載された発明(以下、「引用発明」という。)を対比する。 (a)引用刊行物の「GaN」が、本願発明の「一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される3-5族化合物半導体」に相当することは明らかである。 (b)引用刊行物の摘記(オ)には、ドライエッチング後の熱処理の「ガス雰囲気」として、「アンモニア、三弗化窒素、ジメチルアンモニウム、ジメチルヒドラジン等を単独であるいはAr,N2 等の不活性ガスとの混合物」が記載されているが、実施例3には、N2ガス(不活性ガス)単独の場合が記載されているから(摘記(キ))、引用刊行物の「ガス雰囲気」は、N2ガス(不活性ガス)単独の場合を含むものである。 したがって、両者は、 「一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される3-5族化合物半導体に用いる電極の製造方法において、該3-5族化合物半導体をドライエッチングし、次に不活性ガス雰囲気中で熱処理し、次に電極を形成する工程を有する3-5族化合物半導体用電極の製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本願発明が、「不活性ガス雰囲気中600℃以上で熱処理」するのに対し、引用発明は不活性ガス雰囲気中で500℃の温度で熱処理されている点。 (4)判断 上記相違点につき検討すると、引用刊行物においても、「熱処理する温度は窒化物半導体の成膜温度以下であればよく、熱処理時間と同様に使用するガスの種類によって適宜変えることができる。例えばアンモニアでは300〜700℃、三弗化窒素では300〜500℃、不活性ガスを用いた場合には300〜700℃で熱処理を行う。」(摘記(オ))の記載がある。 そして、ガスの種類を勘案して、熱処理温度を600℃以上とすることは、上記記載から、当業者が適宜選択し得る事項である。 しかも、本願発明によってもたされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。 なお、本件請求人は、本願発明の効果を説明するものとして、実験成績証明書を提出しているが、その試験に供された熱処理温度の数値範囲は引用刊行物にも開示されている範囲であり、その開示された数値範囲を含んだ効果を確認したものにすぎない。 (5)むすび したがって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-26 |
結審通知日 | 2006-08-01 |
審決日 | 2006-08-15 |
出願番号 | 特願平7-150311 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 57- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
井上 博之 吉田 禎治 |
発明の名称 | 3-5族化合物半導体用電極の製造方法 |
代理人 | 榎本 雅之 |
代理人 | 久保山 隆 |
代理人 | 中山 亨 |