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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1144362
審判番号 不服2004-3143  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-02-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-18 
確定日 2006-09-28 
事件の表示 特願2001-231288「利得等化器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月14日出願公開、特開2003- 46169〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年7月31日の出願であって、平成16年1月14日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月18日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年3月18日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月18日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月18日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のように補正することを含むものである。
「【請求項1】光波長多重通信の光伝送路に用いられ、入力信号パワーに応じて利得を調整することにより出力信号パワーを一定化するとともに当該利得に対応して利得傾斜が変化する利得傾斜特性を有する光増幅中継器に対して、この光増幅中継器の入力側に挿入される利得等化器であって、
前記入力信号パワーの利得傾斜を検出する利得傾斜検出手段と、
この利得傾斜検出手段で検出された利得傾斜及び前記光増幅中継器の利得傾斜特性に基づき前記出力信号パワーの利得傾斜が平坦化するように前記入力信号パワーを減衰させる入力信号パワー減衰手段とを備え、
前記利得傾斜検出手段は、
前記光伝送路から光の一部を導く第一及び第二の光カプラと、前記第一の光カプラから導かれた光の中から第一の波長の光を抽出する第一の波長選択素子と、前記第二の光カプラから導かれた光の中から前記第一の波長と異なる第二の波長の光を抽出する第二の波長選択素子と、前記第一の波長選択素子で抽出された第一の波長の光を電気信号に変換する第一の受光素子と、前記第二の波長選択素子で抽出された第二の波長の光を電気信号に変換する第二の受光素子とを備え、
前記入力信号パワー減衰手段は、
前記第一及び第二の受光素子で変換された電気信号のパワー差からなる利得傾斜及び前記光増幅中継器の利得傾斜特性に基づき前記出力信号パワーの利得傾斜が平坦化するように前記入力信号パワーの減衰量を決定する制御回路と、この制御回路で決定された減衰量で前記入力信号パワーを減衰する可変光減衰器とを備えた、
利得等化器。」

上記補正は、補正前の請求項1の「利得等化器」が、「光増幅中継器に対して」用いられていることを限定しようとするものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)刊行物記載の発明
原審の拒絶理由に引用文献2として引用した特開2000-349715号公報(以下、「刊行物1」という。)には、下記の事項が記載されている。
「【請求項1】波長多重伝送方式に用いられる光増幅器の出力波長のパワーレベルをモニタする手段と、各波長のレベル差が最小となるように、光増幅用希土類添加物ファイバの入力側に挿入している可変減衰器の量を制御する手段と、前記可変減衰器の調節により光増幅器の波長の利得性により利得差を解消する手段とを有する光増幅器において、波長の出力レベルをモニタする手段が、光分岐器と光帯域制限器と光信号を電気信号に変換する受光素子とからなる分岐ブランチを2ブランチ以上有して選択的に波長による利得差を制御することを特徴とする光増幅器。
・・・
【0008】
【課題を解決するための手段】希土類添加ファイバは励起率が高いときは長波長側の利得が小さく、波長に対する利得傾斜が負になり、励起率が低いときは短波長側の利得が小さく、波長に対する利得傾斜が正になる。この傾向によって、光増幅用希土類添加ファイバの励起率の制御を励起光の光源の出力レベルの制御と、光増幅用希土類添加ファイバの入力レベルを制御することにより波長による増幅利得の差を解消しようとするものである。
・・・
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の光増幅器の第1の実施の形態のブロック図である。この光増幅器は、入力ポート1と、光増幅用希土類添加ファイバ2と、光増幅用希土類添加ファイバ2を励起するための励起光を合成する励起光合波器3と、励起光源7と、励起光源を制御する励起光源制御回路13と、増幅された光出力を分岐する光分岐器50と、該光分岐器50から分岐された光出力をさらに分岐する光分岐器51、および52と、分岐された信号光から任意特定の光を選択するファイバグレーティングおよび同等の機能を有する光帯域制限器9および9’と、該光帯域制限器9および9’を通過した特定の光を受光素子6および6’により光-電気変換する信号分岐ブランチ151、および152と、両信号分岐ブランチの受光素子6、6’間の情報を比較する比較回路8と、可変光減衰器11と、比較回路8の情報より可変光減衰器11の減衰量を制御するための可変光減衰器制御器10と、励起光源7の出力を制御する励起光源制御回路13と、光出力ポート4からなる。また、励起光源制御回路13と、可変光減衰器制御器10のいずれか一方或いは両者には発振を防止するための字定数が設定されている。
【0012】上記構成により比較回路8のレベル差情報で、可変光減衰器11を可変光減衰器制御器10によって比較器8が示す利得傾斜方向と反対の利得傾斜方向にするように減衰を制御することにより、利得等価機能を有する光増幅器が実現できる。次に、図1の構成例の動作について、図9〜12を参照して説明する。
【0013】一般に光増幅器は、励起光源出力レベルが固定されると入力ポート1に入力された光の入力レベルによって図9に示すように、波長の利得依存性が変動し、入力レベルが低下するに従って次第に短波長に利得のピーク波長が推移する。
【0014】光増幅器の入力ポート1に入力された光入力信号は、励起光源7により励起されている光増幅用希土類添加ファイバ2によって、図10(1)に示すように増幅される。
【0015】この光出力を光分岐器5で分岐され、図10(2)に示すような任意の選択波長のみ通過するファイバグレーティング光帯域制限器9、9’を通過し、光-電気変換する受光素子6に入力される。
【0016】受光素子6に入力される光信号は、光帯域制限器9によって、図11(1)a,bに示す2波長のみ抽出され、図11(2)a,bに示すような光レベルとなる。この受光素子6に入力された光のレベル差を比較回路器8で比較し、図12(1)のa,b各波長の光レベル差に対して、図12(2)のような反対の利得傾斜方向になるように可変光減衰器制御器10によって可変光減衰器11を制御することにより、図12(3)に示すように利得平坦化された光を出力する。
【0017】また、ある1つの受光素子6に入力された光レベルを基に、励起光源制御回路13で出力レベルが一定となるように制御することで利得平坦化させて、出力一定制御を行うことができる。
【0018】
【実施例】本発明の第1の実施例は、図1に示すように光分岐器5iと、光帯域制限器9と、受光素子6とからなる信号分岐ブランチ151、152の2つを、伝送路に挿入された光分岐器50により分岐された分岐路に直列配置された2つの光分岐器51、52のそれぞれを分岐器として比較対象波長毎に光分岐器51、光帯域制限器9、受光素子6からなる信号分岐ブランチ151、および光分岐器52、光帯域制限器9’、受光素子6’からなる信号分岐ブランチ152を接続して1組としている第1の信号分岐ブランチ構成を有し、受光素子6と6’とを比較して可変光減衰器制御10によって入力光を制御し、受光素子6の出力により光り増幅用希土類添加ファイバ2の励起光合波器の励起レベルを制御する構成を有する光増幅器である。
【0019】本発明の第2の実施例は、図2に示すように実施例1の光分岐器50の代わりに光分岐器5の機能を複数並列に含む並列分岐器12を有し、該並列分岐器12の各分岐路に並列分岐器を光分岐器51と52とみなす2つの前記信号分岐ブランチ(151,152)からなる組を伝送路に並列に接続された第2の信号分岐ブランチ構成としたものである。
【0020】本発明の第3の実施例は、図3に示すように、2つの信号分岐ブランチの組が、それらの各光分岐器51と52が50と同一動作を代行することにより伝送路から分岐接続されている第3の信号分岐ブランチ構成を有する光増幅器である。」

同じく、引用文献1として引用した特開2001-168426号公報(以下、「刊行物2」という。)には、下記の事項が記載されている。
「【0028】第1の実施例
【0029】図2は本発明の第1の実施例におけるブロック利得等化器を使用した光伝送システムの要部を表わしたものである。この光伝送システムで図18と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。本実施例のブロック利得等化器201は複数の光ファイバ伝送路1011、1012、……101Nを経た光信号の周波数特性を平坦化するためのものである。本実施例では説明の都合上、ブロック利得等化器201が光伝送システムを構成する伝送路の末端に配置されているが、光ファイバ伝送路1011、1012、……101Nの間に必要に応じて適宜挿入されることになる。
【0030】図1は本実施例におけるブロック利得等化器の構成を表わしたものである。この図1で図19と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。本実施例のブロック利得等化器201は、光ファイバ伝送路101Nを伝送されてきた光信号111を分岐する光カプラ112を備えている。光カプラ112によって分岐された一方の光信号113は、エルビウムドープファイバ202によって光信号のまま増幅される。エルビウムドープファイバ202の出力側には、後方励起方式で光信号を増幅するための励起光を注入するためのWDM(wavelength division multiplex:波長分割多重方式)カプラ203が配置されている。このWDMカプラ203には、半導体レーザ204から励起光205が注入されるようになっている。この半導体レーザ204は、利得制御回路207から供給される利得制御信号208によってそのパワーを制御されるようになっている。利得制御回路207は、フォトダイオード121から出力される電気信号122を入力して、監視用の信号119に予め組み込まれた利得の傾斜を補正するための傾斜補正データを読み取り、利得を平坦化するような制御を行うようになっている。
【0031】このようなブロック利得等化器201では、光カプラ112によって分岐された一方の光信号117がバンドパスフィルタ(BPF)118に入力され、波長λSVの監視用の信号119が選択される。この監視用の信号119は、図1(a)に示すようにブロック利得等化器201に入力される各種の波長の光信号のうちの予め定められた1種類の波長の信号である。同図(b)は、監視用の信号119のみがバンドパスフィルタ118を通過した状態を表わしている。選択された監視用の信号119はフォトダイオード121に入力されて、光電変換され電気信号122になり、利得制御回路207に入力され、前記した傾斜補正データの読み取りが行われることになる。
【0032】図3は、本実施例で使用されるエルビウムドープファイバの各波長に対する相対利得を表わしたものである。この図で例示的に示した各特性曲線211〜215はそれらの符号の数値が小さいほど励起パワーが小さく、大きいほど励起パワーが大きい。このブロック利得等化器の使用される光ファイバ伝送路101の各光信号の使用される波長の帯域をλ1からλ2までとすると、それらの帯域における波長の増加に対する利得傾斜は、大まかに表現すると、それらの特性曲線211〜215上の波長λ1の点とλ2の点を結んだ一点鎖線で示す線分221〜225の傾きとなる。
【0033】図4は、エルビウムドープファイバの励起パワーと利得傾斜の関係を表わしたものである。図3に示した例では図4で実線で示すように励起パワーが大きくなるほど利得傾斜は負の値から正の値に増加していく。すなわち図1に示すブロック利得等化器201のエルビウムドープファイバ202を後方励起方式で光増幅するときに、半導体レーザ204から送出される励起光205のパワーを各特性曲線211〜215で示すいずれかに選択することによって、利得傾斜量を制御し、WDMカプラ203から光アイソレータ231を経て出力される光信号111(図1(c))の利得を平坦化することができる。
【0034】もちろん、図3に示した特性曲線でも伝送路に使用する波長帯域を異なったものにすると、その範囲における利得傾斜は異なったものとなる。すなわち、使用する波長の帯域を調整したり、励起光の波長を変更する等の手法を採用することで、図4で一点鎖線で示したような励起パワーが小さいほど利得傾斜の大きな特性を得ることも可能である。
【0035】図5は、利得傾斜量の制御を行うためのROMテーブルの要部を表わしたものである。図1に示したバンドパスフィルタ118から取り出された波長λSVの監視用の信号119から利得の傾斜を補正するための傾斜補正データSを取り出すと、図示しないCPU(中央処理装置)はこの傾斜補正データSをアドレス情報としてROMテーブル241から対応する励起パワーPと増加利得Aを示すデータをそれぞれ読み出すようになっている。たとえば傾斜補正データがS1であれば、これを補正する利得傾斜P1と増加利得A1が読み出される。
【0036】ここで増加利得Aとは、利得傾斜を異ならせるために励起パワーを変えたときに生じる利得の増加量をいう。図1に示したブロック利得等化器201はバンドパスフィルタ118によって選択された波長λSVの監視用の信号119の信号レベルによって信号の減衰量を判別するが、エルビウムドープファイバ202による光信号の増幅率が波長に対する等化処理によって増加したとき、これを必要に応じて減衰させるために増加利得Aを読み出すことにしている。この場合の減衰は、各波長に対して平坦な特性を有する減衰器を使用して行えばよい。減衰器を積極的に使用する実施例は図10で第4の実施例として説明する。
・・・
【0049】第4の実施例
【0050】図10は、本発明の第4の実施例におけるブロック利得等化器の構成を表わしたものである。この図10で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。本実施例のブロック利得等化器401は、第1の実施例でも言及した利得傾斜のための制御による付加的な利得の超過分を補正するようにしている。このために、後方励起方式で励起光を注入するWDMカプラ203とその下流側に配置された光アイソレータ231の間に、フラットな波長特性の可変減衰器402を配置すると共に、出力側の光ファイバ116の手前に、光信号の出力レベルを判別するための光カプラ403を配置している。
【0051】本実施例のフォトダイオード121から出力される電気信号122は第1の利得制御回路404に入力される。ここから出力される利得制御信号405が半導体レーザ204に入力され、先の実施例と同様に後方励起方式で利得傾斜の補正が行われる。一方、光カプラ403によって分岐された光信号407は、第2の利得制御回路408に入力される。この光信号407は周波数に対する利得の補正が行われた後なので利得自体は平坦化しているが、エルビウムドープファイバ202を使用して増幅されている。そこで第2の利得制御回路408は減衰率制御信号409を可変減衰器402に供給してその減衰率を設定する。
【0052】したがって、この第4の実施例のブロック利得等化器401では、その出力側から入力側とまったく同一レベルの信号を出力することができる。したがって、図2に示した光ファイバ伝送路1011、1012、……101Nのどの位置にこのブロック利得等化器401を挿入しても、利得自体に変更が生じることはない。
【0053】もちろん、本実施例のブロック利得等化器401はエルビウムドープファイバ202を備えているので、図2に示した光中継器1011、1012、……101N-1のいずれかの代用として使用することができる。この場合には、ブロック利得等化器401の出力側の信号レベルが入力側の信号レベルを所定のレベルだけ増幅していることが必要である。この場合には可変減衰器402の減衰率を調整すればよい。
【0054】第5の実施例
【0055】図11は、本発明の第5の実施例におけるブロック利得等化器の構成を表わしたものである。この図11で図1および図10と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。本実施例のブロック利得等化器451は、先の第4の実施例と構成的には類似しているが、必要な利得傾斜の設定をブロック利得等化器451自体で行えるようになっている。このため、フォトダイオード121から出力される単純な信号レベルを表わした電気信号122Aは第1の利得制御回路404Aに入力されて可変減衰器402の制御が行われる。また、光カプラ403から分岐して得られた光信号407は、第2の利得制御回路408Aに入力される。第2の利得制御回路408Aは利得制御信号461を半導体レーザ204に供給してその利得傾斜を制御すると共に、第1の実施例の第5図で説明したROMテーブル241の増加利得Aに相当する増加利得データ462を第1の利得制御回路404Aに入力するようになっている。
【0056】すなわち、この第5の実施例では、第2の利得制御回路408Aがブロック利得等化器451から出力されようとする光信号の損失傾斜を判別して、エルビウムドープファイバ202を使用して利得を平坦化するための利得傾斜に対応する励起パワーを求める。そして、後方励起方式でその励起パワーに相当する傾斜補正データ(図5参照)を利得制御信号461として半導体レーザ204に供給することになる。このとき、その傾斜補正データに対応する増加利得(図5参照)が増加利得データ462として第1の利得制御回路404Aに入力される。第1の利得制御回路404Aは、波長λSVの監視用の信号119の単純な信号レベルを表わした電気信号122Aを用いて伝送路における信号のロスを判別すると共に、エルビウムドープファイバ202による各波長共通の増幅分を増加利得データ462により判別し、両者が相殺されてブロック利得等化器451から出力される信号レベルが予め定めた値となるような減衰率を決定する。そしてこれを減衰率制御信号464として可変減衰器402に供給することになる。
【0057】この結果、第5の実施例のブロック利得等化器451では端局等から損失傾斜についてのデータを得ることなく、自律的に利得を平坦化することができ、しかも損失傾斜がどのようなものであっても出力側の信号レベルが変動することはない。
【0058】第6の実施例
【0059】図12は、本発明の第6の実施例におけるブロック利得等化器の構成を表わしたものである。この図12で図1および図11と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。本実施例のブロック利得等化器501は、可変減衰器402が光カプラ112とエルビウムドープファイバ202の間に移動した点を除けば、図11に示した第5の実施例と同一である。ただし、可変減衰器402がエルビウムドープファイバ202よりも上流側に配置されたために、制御のための信号やデータは微妙に異なってくる。そこで、第1の利得制御回路404Aを第1の利得制御回路404Bに、また第2の利得制御回路408Aを第2の利得制御回路408Bに変更すると共に、減衰率制御信号464を減衰率制御信号464Aに、また利得制御信号461を利得制御信号461Aに変更している。増加利得データ462Aについても同様である。」

(3)対比
本願補正発明と刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比すると、両者は、
「光波長多重通信の光伝送路に用いられ、入力信号パワーに応じて利得を調整することにより出力信号パワーを一定化するとともに当該利得に対応して利得傾斜が変化する利得傾斜特性を有する光増幅中継器に対して挿入される利得等化器であって、
前記入力信号パワーの利得傾斜を検出する利得傾斜検出手段と、
この利得傾斜検出手段で検出された利得傾斜に基づき前記出力信号パワーの利得傾斜が平坦化するように前記入力信号パワーを減衰させる入力信号パワー減衰手段とを備え、
前記利得傾斜検出手段は、
前記光伝送路から光の一部を導く第一及び第二の光カプラと、前記第一の光カプラから導かれた光の中から第一の波長の光を抽出する第一の波長選択素子と、前記第二の光カプラから導かれた光の中から前記第一の波長と異なる第二の波長の光を抽出する第二の波長選択素子と、前記第一の波長選択素子で抽出された第一の波長の光を電気信号に変換する第一の受光素子と、前記第二の波長選択素子で抽出された第二の波長の光を電気信号に変換する第二の受光素子とを備え、
前記入力信号パワー減衰手段は、
前記第一及び第二の受光素子で変換された電気信号のパワー差からなる利得傾斜に基づき前記出力信号パワーの利得傾斜が平坦化するように前記入力信号パワーの減衰量を決定する制御回路と、この制御回路で決定された減衰量で前記入力信号パワーを減衰する可変光減衰器とを備えた、
利得等化器」である点で一致し、下記の点で相違する。

相違点1:
本願補正発明は、利得等化器が「この光増幅中継器の入力側に挿入」されるものであるのに対して、引用発明1は、利得等化器を構成する入力信号パワー減衰手段は光増幅中継器の入力側に挿入されるものの、利得等化器を構成する利得傾斜検出手段は光増幅中継器の出力側に挿入されるものであって、利得等化器全体が光増幅中継器の入力側に挿入されるとはいえない点。

相違点2:
本願補正発明の入力信号パワー減衰手段は、利得傾斜検出手段で検出された利得傾斜「及び前記光増幅中継器の利得傾斜特性」に基づき前記出力信号パワーの利得傾斜が平坦化するように前記入力信号パワーを減衰させるのに対して、引用発明1は、上記構成を有するものでない点。

(4)判断
上記相違点1,2につき検討する。
刊行物2には、本願補正発明と同様の技術分野に属する利得等価器が記載されており、第1の実施例を前提とした第5の実施例をさらに変形した第6の実施例として、光増幅器(エルビウムドープファイバ202,WDMカプラ203,半導体レーザ204)の上流側に可変減衰器402を挿入し、さらに上流側に光カプラ112を挿入したものが記載されている。
また、刊行物2の第6の実施例の利得制御回路404Bは、第4の実施例の利得制御回路404と同様に利得傾斜補正をするものであるが、該利得制御回路404Bは、第1の実施例を前提とするものであって、該第1の実施例には、「利得制御回路207は、フォトダイオード121から出力される電気信号122を入力して、監視用の信号119に予め組み込まれた利得の傾斜を補正するための傾斜補正データを読み取り、利得を平坦化するような制御を行うようになっている。」(【0030】)と記載されていることから、刊行物2の利得制御回路404Bは、第1の実施例と同様に、傾斜補正データを読み取り、利得を平坦化するものと見ることができる。
さらに、刊行物2の各実施例を見ると、フィードフォワード制御すること(例えば、図1参照)及びフィードバック制御すること(例えば、図11参照)が適宜採用し得る手段であることが分かる。
そして、刊行物1のものは、2波長のみ抽出された光レベルにより利得傾斜を行うものであるが、また、「【0017】また、ある1つの受光素子6に入力された光レベルを基に、励起光源制御回路13で出力レベルが一定となるように制御することで利得平坦化させて、出力一定制御を行うことができる。」とも記載されているように、2波長または1つの波長の光レベルが、利得制御のために適宜選択しうる事項であることも記載されている。
してみると、刊行物2には、可変減衰器402の上流側に光カプラ112を挿入し、該光カプラ112により得た信号により可変減衰器402の減衰率を決定することが記載されているのであるから、刊行物1の利得等化器の光分波器51,52を光増幅中継器の入力側に挿入し、光増幅中継器の利得傾斜特性に基づき利得傾斜を平坦化することにより、上記相違点1,2を含む本願補正発明の技術的事項とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明および刊行物2に記載された発明から予測し得る程度のものであり、格別とはいえない。

よって、本願補正発明は、引用発明および刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年3月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年11月13日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項にあると認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「光波長多重通信の光伝送路において、入力信号パワーに応じて利得を調整することにより出力信号パワーを一定化するとともに当該利得に対応して利得傾斜が変化する利得傾斜特性を有する光増幅中継器の入力側に挿入される利得等化器であって、
前記入力信号パワーの利得傾斜を検出する利得傾斜検出手段と、
この利得傾斜検出手段で検出された利得傾斜及び前記光増幅中継器の利得傾斜特性に基づき前記出力信号パワーの利得傾斜が平坦化するように前記入力信号パワーを減衰させる入力信号パワー減衰手段とを備え、
前記利得傾斜検出手段は、
前記光伝送路から光の一部を導く第一及び第二の光カプラと、前記第一の光カプラから導かれた光の中から第一の波長の光を抽出する第一の波長選択素子と、前記第二の光カプラから導かれた光の中から前記第一の波長と異なる第二の波長の光を抽出する第二の波長選択素子と、前記第一の波長選択素子で抽出された第一の波長の光を電気信号に変換する第一の受光素子と、前記第二の波長選択素子で抽出された第二の波長の光を電気信号に変換する第二の受光素子とを備え、
前記入力信号パワー減衰手段は、
前記第一及び第二の受光素子で変換された電気信号のパワー差からなる利得傾斜及び前記光増幅中継器の利得傾斜特性に基づき前記出力信号パワーの利得傾斜が平坦化するように前記入力信号パワーの減衰量を決定する制御回路と、この制御回路で決定された減衰量で前記入力信号パワーを減衰する可変光減衰器とを備えた、
利得等化器。」(以下、「本願発明」という。)

(2)刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1:特開2000-349715号公報及び刊行物2:特開2001-168426号公報には、上記2.(2)刊行物記載の発明に摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明と比べ、「利得等化器」に関する上記2.(1)の限定を欠くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明および刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものである。

(4)むすび
したがって、本願発明は、引用発明および刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-27 
結審通知日 2006-08-01 
審決日 2006-08-15 
出願番号 特願2001-231288(P2001-231288)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
P 1 8・ 575- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 輝和古田 敦浩  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 井上 博之
吉野 三寛
発明の名称 利得等化器  
代理人 高橋 勇  

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