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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G04G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G04G
管理番号 1144620
審判番号 不服2004-4168  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-09-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-02 
確定日 2006-10-06 
事件の表示 平成 6年特許願第 52836号「時計合わせ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月 5日出願公開、特開平 7-234289〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成6年2月24日の出願であって、平成16年1月26日付け(発送日;同年2月2日)で、補正の却下の決定及び拒絶査定がなされ、これに対して、同年3月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、原審においてなされた上記平成16年1月26日付け補正の却下の決定前の特許請求の範囲(平成14年12月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲)
「【請求項1】 時刻を計測する主時計手段と、この主時計手段にて計測されている時刻情報を送信する送信手段とを備えたマスターユニットと、
上記送信手段にて送信される時刻情報を受信する受信手段と、上記主時計手段とは独立して時刻を計測する副時計手段と、上記受信手段にて受信された時刻情報に基づいて上記副時計手段にて計測されている時刻を修正する時刻修正手段とを備えたサブユニットと、を具備し、
上記マスターユニットは、上記受信手段が受信可能な複数の送信パターンを記憶する送信パターンメモリを備え、同複数の送信パターンにより上記時刻情報を送信可能であるとともに、同送信パターンメモリに記憶された全ての送信パターンを順番に送信することを特徴とする時計合わせ装置。
【請求項2】 上記請求項1に記載の時計合わせ装置において、
上記送信手段は、上記時刻情報を送信する送信パターンを選択可能であることを特徴とする時計合わせ装置。」
を、
「【請求項1】 時刻を計測する主時計手段と、この主時計手段にて計測されている単一の時刻情報を送信する送信手段とを備えたマスターユニットと、
上記送信手段にて送信される時刻情報を受信する受信手段と、上記主時計手段とは独立して時刻を計測する副時計手段と、上記受信手段にて受信された時刻情報に基づいて上記副時計手段にて計測されている時刻を修正する時刻修正手段とを備えたサブユニットと、を具備し、
上記マスターユニットは、複数とされ、
上記マスターユニットは、複数の異なる送信パターンを記憶する送信パターンメモリを備え、同複数の送信パターンにより上記時刻情報を送信可能であるとともに、同送信パターンメモリに記憶された全ての送信パターンで同じ上記単一の時刻情報を順番に、上記複数のサブユニットに対して送信し、 上記複数のサブユニットのそれぞれの受信手段は、それぞれ異なる上記送信パターンを受信可能であるとともに同受信可能な送信パターンにより送信される上記同じ単一の時刻情報を受信し、
上記複数のサブユニットのそれぞれの時刻修正手段は、上記受信手段にて受信された上記同じ単一の時刻情報に基づいて上記副時計手段にて計測されている時刻を同じ時刻に修正することを特徴とする時計合わせ装置。
【請求項2】 上記請求項1に記載の時計合わせ装置において、
上記送信手段は、上記時刻情報を送信する送信パターンを選択可能であることを特徴とする時計合わせ装置。」
と補正する内容を含むものである。
なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために付したものである。

(2)補正の目的の適否
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1発明の構成に欠くことができない事項である「サブユニット」について、「複数」との限定を付加するとともに、「それぞれの受信手段は、それぞれ異なる上記送信パターンを受信可能であるとともに同受信可能な送信パターンにより送信される上記同じ単一の時刻情報を受信し」との限定を付加するものである。したがって、上記手続補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第3項第2号の規定に該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。

(3-1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である実願平3-54051号(実開平4-138296号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 内部に時計が設けられた本体機器と、該本体機器を遠隔操作するための命令信号を送信するリモートコントロール装置とを備え、該リモートコントロール装置には時計が組み込まれた電気機器において、前記リモートコントロール装置からは前記本体機器側の前記時計の時刻を前記リモートコントロール装置側の前記時計の時刻に一致させるための時刻修正信号が送信されることを特徴とする電気機器。」(2ページ)
1b.「【0014】
一方、リモートコントロール装置30には、装置内部に設けられた時計(図示せず)の時刻等を表示するための表示部31と、ビデオデッキ20の操作、例えば、テープの再生・録画・早送り・巻戻し等の操作を行なうための複数の操作ボタン32a,32a…が配列された操作部32と、操作ボタン32a,32a…の押圧操作により命令信号Sを送信する送信部33とを備えている。
【0015】
また、リモートコントロール装置30は、図2に示すように、制御部34と、この制御部34に制御される時刻制御部35とを備え、操作ボタン32aを押圧すると、制御部34からは命令信号Sが送信回路部36に出力され、時刻制御部35からは時刻修正信号Hが送信回路部36に出力され、この送信回路部36に入力された命令信号Sと時刻修正信号Hとは送信部33から赤外線等により出力される。
【0016】
命令信号Sの内容は、図3に示すように、ビデオデッキ20を立ち上げるためのリーダーコードS1、送信された信号がビデオデッキ20に対応した機種の信号であるか等の判別コードS2、S3、ビデオデッキ20のコマンド操作のためのデータコードS4等のコードを有し、時刻修正信号Hの時刻修正コードH1をその後に続けて送信される。
【0017】
他方、ビデオデッキ20は、送信部33から送信された命令信号Sと時刻修正信号Hとを受信部23が受信し、受信部23が受信した命令信号S及び時刻修正信号Hの各コードS1,S2,S3,S4,H1は受信回路部25、デコーダ26を介してコントロール回路27に入力され、このコントロール回路27によりコードS1,S2,S3,S4が解読処理されてコマンドが実行され、時刻修正コードH1は時刻制御部28により処理されてビデオデッキ20に設けられた時計の時刻が修正される。
【0018】
上記の構成において、本体機器であるビデオデッキ20のコマンドを遠隔操作する場合には、リモートコントロール装置30の所望の操作イッチ32aを押圧すると、リモートコントロール装置30の制御部34から送信回路部36へ押圧された操作スイッチ32aに対応した命令信号Sが出力されると同時に、時刻制御部35へ出力命令信号が出力される。
【0019】
すると、時刻制御部35から送信回路部36へ時刻修正信号Hが出力され、この送信回路部36に入力された命令信号Sと時刻修正信号Hとが赤外線等により送信部33からビデオデッキ20の受信部23に向けて送信される。
【0020】
さらに、受信部23に受信された命令信号Sと時刻修正信号Hとは、受信回路部25、デコーダ26を介してコントロール回路27に入力され、このコントロール回路27により命令信号Sが解読処理されてビデオデッキ20のコマンドが実行され、ビデオデッキ20側の時計の時刻が狂っていた際には、この時刻が時刻制御部28によりリモートコントロール装置30の時計の時刻に修正される。」(5ページ〜6ページ)
1c.「【0022】
ところで、上記実施例では、電気機器としてビデオデッキ及びそのリモートコントロール装置に適用したものを開示したが、例えば、CDプレーヤ等の各種音響装置等のように、本体機器とこの本体機器を遠隔操作するためのリモートコントロール装置とを備え、且つこの本体機器とリモートコントロール装置の双方に時計が組み込まれた電気機器であれば、上記実施例に限定されるものではないことは勿論である。」(7ページ)
1d.「【0024】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案の電気機器にあっては、リモートコントロール装置からは本体機器側の時計の時刻を前記リモートコントロール装置側の時計の時刻に一致させるための時刻修正信号が送信されることにより、時刻の狂いやすい本体機器に設けられた時計の時刻を容易に修正することができる。」(7ページ)

(3-2)対比・判断
引用刊行物には、上記(3-1)の「1a.」乃至「1d.」の記載から、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「内部に時計が設けられるとともに受信部及び時刻制御部を有する本体機器と、時計が組み込まれるとともに前記本体機器を遠隔操作するための命令信号を送信する送信部を有するリモートコントロール装置とを備えた電気機器において、前記リモートコントロール装置から前記本体機器側の前記時計の時刻を前記リモートコントロール装置側の前記時計の時刻に一致させるための時刻修正信号が送信され、本体機器の時刻制御部により時計の時刻が修正されることを特徴とする電気機器。」
本願発明(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。
・後者の「本体機器」、「リモートコントロール装置」、「受信部」、「送信部」は、それぞれ、前者の「サブユニット」、「マスターユニット」、「受信手段」、「送信手段」に相当し、また、後者の、本体機器の内部に設けられた「時計」、リモートコントロール装置に組み込まれた「時計」は、それぞれ、前者の「副時計手段」、「主時計手段」に相当する。
・後者の「電気機器」は、前者の「マスタユニット」、「サブユニット」と相当関係にある「リモートコントロール装置」、「本体機器」を備えたものであり、リモートコントロール装置から前記本体機器側の前記時計の時刻を前記リモートコントロール装置側の前記時計の時刻に一致させるための時刻修正信号が送信されて、両者の時刻合わせが行われるものであるから、前者の「時刻合わせ装置」に相当する。
・後者の、リモートコントロール装置から送信される「時刻修正信号」は、リモートコントロール装置に組み込まれた時計の時刻と相応するものと解されるから、前者の「主時計手段にて計測されている単一の時刻情報」に相当する。
・後者の、リモートコントロール装置から前記本体機器側の前記時計の時刻を前記リモートコントロール装置側の前記時計の時刻に一致させるための時刻修正信号を受けて、本体機器の時計の時刻を修正する「時刻制御部」は、上記相当関係も勘案すれば、前者の、受信手段にて受信された時刻情報に基づいて副時計手段にて計測されている時刻を同じ時刻に修正するサブユニットの「時刻修正手段」に相当する。
したがって、両者は、
「時刻を計測する主時計手段と、この主時計手段にて計測されている単一の時刻情報を送信する送信手段とを備えたマスターユニットと、上記送信手段にて送信される時刻情報を受信する受信手段と、上記主時計手段とは独立して時刻を計測する副時計手段と、上記受信手段にて受信された時刻情報に基づいて上記副時計手段にて計測されている時刻を修正する時刻修正手段とを備えたサブユニットと、を具備し、
上記サブユニットの受信手段は、送信される上記同じ単一の時刻情報を受信し、上記サブユニットの時刻修正手段は、上記受信手段にて受信された上記同じ単一の時刻情報に基づいて上記副時計手段にて計測されている時刻を同じ時刻に修正することを特徴とする時計合わせ装置。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
前者が、それぞれ異なる送信パターンを受信可能であるサブユニットを複数設け、マスターユニットは、複数の異なる送信パターンを記憶する送信パターンメモリを備え、送信パターンメモリに記憶された全ての送信パターンで、順番に、上記複数のサブユニットに、同じ上記単一の時刻情報を送信して、複数のサブユニットの時刻をマスターユニットに合わせているのに対し、後者には、この点の記載がない点。

そこで、上記相違点について検討する。
特定の機器から基準となる時刻を各機器に送信し、内部時計を有する複数の機器の時刻合わせを行うことは従来周知(例えば、特開昭57-86923号公報、特開平1-169392号公報、特開平4-233492号公報、特開平5-219574号公報参照)である。そして、このような時刻合わせのための送信を順次行わせることも、例えば、上記特開平1-169392号公報の3ページ左下欄6行〜12行に「ファクシミリ装置1がファクシミリ装置2l〜2n(当審注;「2i」は「2n」の誤記と認められるので読み替えた。)側のそれぞれに発呼し、同様にNSS信号を使用して、時刻情報IFTを送信するようにすることもできる。また、時刻情報IFTの伝送は、NSS信号に限らず他の手順信号を使用して行なってもよいことは言うまでもない。」と記載され、また、上記特開平5-219574号公報の段落【0025】に「なお、上述実施例においては、同時制御モード時には予め設定された同時制御コードで同時制御を指示するようにしたが、この同時制御コードが赤外線信号のフォーマットで用意されていない場合には、用意された全ての制御コードで繰り返し時刻設定データを出力するようにしても良い。即ち、例えば上述実施例のシステム構成の場合には、図2に示す時刻設定データの内の制御コードを、コード1とした時刻設定データを出力した後、続いて制御コードをコード2とした時刻設定データを出力し、最後に制御コードをコード3とした時刻設定データを出力する。このようにして、全ての制御コードで時刻設定データを出力させることで、結果として同時制御コードを出力した場合と同様な全ての被制御機器に対する同時時刻修正が行える。なお、このとき厳密には3台の被制御機器に対応した時刻設定データが供給されるタイミングが異なるが、1回のリモートコントロール信号が出力されるのに要する時間は例えば数十m秒程度であり、この程度の設定時刻の差は無視できる範囲である。」と記載されていること等からみて、周知のことと認められる。
また、複数の機器に適合した送信パターン予め記憶しておき、それらの送信パターンをを順次送信して各機器の制御を行うことも従来周知(例えば、特開平1-103096号公報、特開平1-254095号公報参照。)である。
したがって、上記相違点に係る時刻合わせ手法及び送信制御手法が上記のように従来周知であることを勘案すれば、引用発明に上記周知事項を適用して本願補正発明とすることは、容易に想到しうるところと認められる。
そして、本願補正発明による効果も、引用刊行物の記載及び上記周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年3月2日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成13年2月22日付け及び同14年12月2日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記の「2.(1)」の補正前の特許請求範囲に記載されたとおりのものである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及びその記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願の請求項1に係る発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、発明の構成に欠くことができない事項についての上記限定を省いたものである。
そうすると、請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3-2)」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が、上記のように特許を受けることができないものであるから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-03 
結審通知日 2006-08-09 
審決日 2006-08-22 
出願番号 特願平6-52836
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G04G)
P 1 8・ 121- Z (G04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五閑 統一郎白石 光男榮永 雅夫  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 後藤 時男
下中 義之
発明の名称 時計合わせ装置  
代理人 横井 俊之  

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