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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1144762
審判番号 不服2004-7337  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-12 
確定日 2006-10-04 
事件の表示 平成8年特許願第506022号「人間または動物の身体に対するハイドレーション組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成8年4月18日国際公開、WO96/11015、平成10年9月8日国内公表、特表平10-509133〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は平成7年(1995年)10月6日(パリ条約による優先権主張 1994年10月7日、オーストラリア)を国際出願日とする出願であって、平成16年5月12日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成16年5月12日付け手続補正書の却下

(1)[結論]
平成16年5月12日付け手続補正を却下する。

(2)[理由]
上記手続補正は、図面を新たに追加し、発明の詳細な説明に、相乗効果に関する試験の結果、文献及び図面の簡単な説明を追加するものである。
これら新たに追加された事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面(特許法第184条の6第2項の規定により、同法第36条第2項に規定する願書に添付した明細書とみなされる国際出願日における明細書の翻訳文又は図面)に記載した範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。
したがって、上記手続補正は特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明

上記のとおり、平成16年5月12日付け手続補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年11月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は下記のとおりである。

「以下のものの相乗作用による組み合わせをエッセンシャルに含むボディに対するハイドレーション(hydration)組成物:
(a)ハイドラスチス カナデンシス(宿根茎)(一般名:ヒドラスチス根)
(b)ニレ属フルヴァ(一般名:スリッパリー エルム)および
(c)サルサ属オルナータ(一般名:サルサパリラ)。」
(以下、本願発明という。)

4.原査定の理由

原査定の拒絶の理由は、本願明細書の記載において、請求項記載の組成を有する水和作用組成物のボディに対する効果が、定量的データ等で具体的に裏付けられていないから、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1〜16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないというものである。

5.当審の判断

特許法第36条第4項は「前項第3号の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をできる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。」と規定し、特許法施行規則第24条の2は、「特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定している。

本願発明は、ボディ内におけるハイドレーションを促進させるハイドレーション組成物を提供することを目的とし、「(a)〜(c)の相乗作用的組み合わせをエッセンシャルに含むボディに対するハイドレーション組成物を提供するものである。
(明細書2頁下3行〜3頁8行。以下、平成15年11月20日付け手続補正書により全文補正された明細書を本願明細書という。)

「ハイドレーション」について、本願明細書には以下の事項が記載されている。

ア.「本明細書において、“ハイドレーション(hydration)”とは、ボディ内における最適の水の管理の状態として定義される。」(2頁5〜7行)

イ.「水を飲みさえすればよいことを意味するものではなく、むしろ細胞レベルにおける水の活用または吸収を意味する。
ボディのハイドレーションに疑わしい点があれば、疲労が第1の、そして、ほぼ顕著な徴候の一つになる。他の徴候には、気の落ち込み、消化不良、老化した皮膚と一般の皮膚の問題とが組み合わされた皮膚問題、カンジダ疾病、便秘、注意緩慢および飲み水嫌悪または満たされない喉の乾きが含まれる。」 (2頁下10〜下4行)

ウ.ハイドレーション組成物の配合例(実施例1〜8、4頁〜8頁)

エ.「本発明のハイドレーション組成物は、小腸における最初の吸収のレベル、そして、引き続いての細胞吸収のレベルにおける水と水に含まれる栄養分の通りを増進し、容易にするものと考えられる。これが生ずるメカニズムは、しかと確かめられていないが、開口した水を通すポアが細胞膜に含まれているように思われる。好ましい組成物の性による特定は、性ホルモンに応答する男性と女性における水メタボリズムの既知の相違と相関関係がある。好ましい組成物の時間による特定は、メタボリズムの睡眠中と目を覚まして起きている間において、水マネージメントを最高に支援するためになされたものである。さらに、就寝時の組成物は、酸素を細胞へ運び、代謝老廃物をよりよく一掃し、細胞エネルギー生成を向上させる。」(9頁9〜18行)

オ.「薬理学においてなされる通常の手段で前記組成物のコンポーネンツのそれぞれの作用を分析することはできないもので、これは、前記コンポーネンツが共同して相互に作用し、作用するものであると信じられているからである。このように、一つのコンポーネントを除くと、それによって、前記組成物の効き目が劇的に変化されてしまう。」(9頁19〜23行)

カ.「前記組成物は、ゲータレード(Gatorade)(商標)またはスポーツプラス(Sports Plus)(商標)のような現存する“水和作用飲料”と、それらがハイドレーティング(hydrating)液体、栄養分または電解質を提供しないという点で、比較できないものである。前記組成物は、特定の部位(例えば、腎臓と消化管)で作用し、概ね水を一方の方向へ通すのみの利尿剤または膜浸透剤のような薬理的に活性の物質とは比較できない。むしろ、前記組成物は、ゼネラルの細胞レベルにおける向上した摂取、向上した排泄および良好になった分布により水のマネージメントを最適にしようとするプロダクトと比べなければならない。」(9頁24行〜10頁2行)

本願発明で用いられる(a)〜(c)の各成分は生薬として知られているものではあるが、単独でハイドレーション促進作用があることは知られておらず、本願発明はこれら3つの成分を併用することによってはじめてハイドレーションを促進するという効果が生ずるというものであると認められるが(上記オ)、かかる作用効果は(a)〜(c)の各成分の作用から予測できない効果である。
そうであれば、発明の詳細な説明において、(a)〜(c)の3つの成分を併用する理由を、公知技術に基づいて論理的な説明を記載するか、実際に投与した試験の結果を記載することによって示さない限り、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(いわゆる当業者)が、本願発明の技術上の意義を理解することはできないというべきである。
しかし、本願明細書には、組成物の配合例は記載されているが、本願発明の組成物による作用について、「発明によって得られる結果」の項に上記エ〜カの事項が記載されているにすぎず、本願発明のハイドレーション組成物のボディに対する効果を確認するための試験方法や試験結果については何ら記載されていないから、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本願発明の技術的意義を理解するために必要な事項が記載されているということはできない。

なお、請求人は、本願発明の組成物は嗜好品に属するものであって、特定の疾病の治療や予防をするものではない旨主張しているが、本願明細書には、本願発明の組成物が嗜好品であることは記載されておらず、本願発明の組成物は、単なる水の補給を意味するものではなく、適切なハイドレーションを促進することによって、気の落ち込み、消化不良、……、カンジダ疾病、便秘等の予防を目的とするものであるから(上記イ参照)、請求人の主張は本願明細書の記載事項に基づくものではなく、採用することはできない。

6.むすび

以上のとおりであるから、本件出願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-27 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-05-22 
出願番号 特願平8-506022
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 561- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 横尾 俊一
吉住 和之
発明の名称 人間または動物の身体に対するハイドレーション組成物  
代理人 秋元 輝雄  

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