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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効200335250 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1145346 |
審判番号 | 不服2004-11960 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-10 |
確定日 | 2006-10-13 |
事件の表示 | 平成10年特許願第193362号「磁気抵抗効果素子及び薄膜磁気ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月28日出願公開、特開2000- 30223〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年7月8日に特許出願されたものであって、平成13年10月9日付けで手続補正がなされ、その後最初の拒絶理由通知に応答して平成16年4月5日付けで手続補正がなされたが、平成16年4月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年6月10日に拒絶査定不服審判が請求された。 その後当審において、平成18年5月30日付けで最後の拒絶理由が通知され、それに応答して平成18年7月28日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年7月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年7月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正の概略 本件補正により、特許請求の範囲は、 補正前(平成16年4月5日付け手続補正書参照)の 「【請求項1】 感磁部と、磁区制御膜とを含む磁気抵抗効果素子であって、 前記感磁部は、感磁膜を含み、前記感磁膜は外部から印加される磁界に応答する膜であって、膜厚が10nm以下であり、 前記磁区制御膜は、センス電流の流れる方向を縦方向としたとき、前記感磁膜に対して縦方向バイアス磁界を印加する膜であり、 前記感磁膜は、前記縦方向の両端が中央部よりも低い凹部となっており、前記凹部は、前記中央部の表面を基準にした深さが、5nm以上であり、 前記磁区制御膜は、前記凹部のそれぞれに配置されている 磁気抵抗効果素子。 【請求項2】 請求項1に記載された磁気抵抗効果素子であって、 前記感磁膜の残留磁化Br1(Gauss)と、その膜厚THx(μm)との積で与えられる磁気膜厚をx(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の膜厚THy(μm)とその残留磁化Br2(Gauss)との積によって与えられる磁気膜厚をy(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の磁気膜厚をα(Gauss・μm)としたとき、前記磁気膜厚xを横軸にとり、前記磁気膜厚yを縦軸にとったグラフ上で見て、前記磁気膜厚yは、次式、 y≧-2x+α を満たす範囲にあり、 前記磁気膜厚αは、前記感磁膜の磁気膜厚xを横軸にとり、縦方向バイアス磁界を縦軸にとったグラフ上でみて、前記感磁膜の磁気膜厚x=ゼロにおいてバルクハウゼンノイズを抑止できなくなる限界値である最小磁界をHminとしたとき、最小磁界Hminよりも大きな縦方向バイアスを与える値に選定されている 磁気抵抗効果素子。 【請求項3】 請求項2に記載された磁気抵抗効果素子であって、前記磁気膜厚 α(Gauss・μm)は、450(Gauss・μm)である磁気抵抗効果素子。 【請求項4】 請求項2に記載された磁気抵抗効果素子であって、前記磁気膜厚α(Gauss・μm)は、630(Gauss・μm)である磁気抵抗効果素子。 【請求項5】 感磁部と、磁区制御膜とを含む磁気抵抗効果素子であって、 前記感磁部は、感磁膜を含み、前記感磁膜は外部から印加される磁界に応答する膜であって、膜厚が10nm以下であり、 前記磁区制御膜は、センス電流の流れる方向を縦方向としたとき、前記感磁膜に対して縦方向バイアス磁界を印加する膜であり、 前記感磁膜の残留磁化Br1(Gauss)と、その膜厚THx(μm)との積で与えられる磁気膜厚をx(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の膜厚THy(μm)とその残留磁化Br2(Gauss)との積によって与えられる磁気膜厚をy(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の磁気膜厚をα(Gauss・μm)としたとき、前記磁気膜厚xを横軸にとり、前記磁気膜厚yを縦軸にとったグラフ上で見て、前記磁気膜厚yは、次式、 y≧-2x+α を満たす範囲にあり、 前記磁気膜厚αは、前記感磁膜の磁気膜厚xを横軸にとり、縦方向バイアス磁界を縦軸にとったグラフ上でみて、前記感磁膜の磁気膜厚x=ゼロにおいてバルクハウゼンノイズを抑止できなくなる限界値である最小磁界をHminとしたとき、最小磁界Hminよりも大きな縦方向バイアスを与える値に選定されている 磁気抵抗効果素子。 【請求項6】 請求項5に記載された磁気抵抗効果素子であって、前記磁気膜厚α(Gauss・μm)は、450(Gauss・μm)である磁気抵抗効果素子。 【請求項7】 請求項5に記載された磁気抵抗効果素子であって、前記磁気膜厚α(Gauss・μm)は、630(Gauss・μm)である磁気抵抗効果素子。 【請求項8】 請求項1乃至7の何れかに記載された磁気抵抗効果素子であって、前記感磁膜は、磁気異方性磁気抵抗効果膜を含む磁気抵抗効果素子。 【請求項9】 請求項1乃至7の何れかに記載された磁気抵抗効果素子であって、前記感磁部は、スピンバルブ膜構造を有し、前記感磁膜は、前記スピンバルブ膜構造に含まれるフリー層である磁気抵抗効果素子。 【請求項10】 スライダと、磁気抵抗効果素子とを含む薄膜磁気ヘッドであって、前記スライダは、前記磁気抵抗効果素子を支持しており、前記磁気抵抗効果素子は、請求項1乃至9の何れかに記載されたものでなる薄膜磁気ヘッド。 【請求項11】 感磁部と、磁区制御膜とを含む磁気抵抗効果素子において、前記磁区制御膜から前記感磁部に加わる縦方向バイアス磁界を調整する方法であって、 前記感磁部は、感磁膜を含み、前記感磁膜は外部から印加される磁界に応答する膜であり、 前記磁区制御膜は、センス電流の流れる方向を縦方向としたとき、前記感磁膜に対して縦方向バイアス磁界を印加する膜であり、 前記感磁膜の残留磁化Br1(Gauss)と、その膜厚THx(μm)との積で与えられる磁気膜厚をx(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の膜厚THy(μm)とその残留磁化Br2(Gauss)との積によって与えられる磁気膜厚をy(Gauss・μm)としたとき、前記感磁膜の磁気膜厚xが小さくなり、その縦方向バイアス磁界が低下したとき、前記磁区制御膜の磁気膜厚yを増大させ、前記磁区制御膜に発生する縦方向バイアス磁界を増大させ、これにより、前記感磁膜の磁気膜厚xの低下に伴う縦方向バイアス磁界の低下を補う 方法。 【請求項12】 請求項11に記載された方法であって、 前記磁区制御膜の磁気膜厚をα(Gauss・μm)としたとき、前記磁気膜厚xを横軸にとり、前記磁気膜厚yを縦軸にとったグラフ上で見て、前記磁気膜厚yを、次式、 y≧-2x+α を満たす範囲に設定し、 その際、前記磁気膜厚αは、前記感磁膜の磁気膜厚xを横軸にとり、縦方向バイアス磁界を縦軸にとったグラフ上でみて、前記感磁膜の磁気膜厚x=ゼロにおいてバルクハウゼンノイズを抑止できなくなる限界値である最小磁界をHminとしたとき、最小磁界Hminよりも大きな縦方向バイアスを与える値に選定する 方法。」から、 補正後の 「【請求項1】 感磁部と、磁区制御膜とを含む磁気抵抗効果素子であって、 前記感磁部は、感磁膜を含み、前記感磁膜は外部から印加される磁界に応答する膜であって、膜厚が10nm〜20nmであり、 前記磁区制御膜は、センス電流の流れる方向を縦方向としたとき、前記感磁膜に対して縦方向バイアス磁界を印加する膜であり、 前記感磁膜は、前記縦方向の両端が中央部よりも低い凹部となっており、前記凹部は、前記中央部の表面を基準にした深さが、5nm以上であり、 前記磁区制御膜は、前記凹部のそれぞれに配置されている 磁気抵抗効果素子。 【請求項2】 請求項1に記載された磁気抵抗効果素子であって、 前記感磁膜の残留磁化Br1(Gauss)と、その膜厚THx(μm)との積で与えられる磁気膜厚をx(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の膜厚THy(μm)とその残留磁化Br2(Gauss)との積によって与えられる磁気膜厚をy(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の磁気膜厚をα(Gauss・μm)としたとき、前記磁気膜厚xを横軸にとり、前記磁気膜厚yを縦軸にとったグラフ上で見て、前記磁気膜厚yは、次式、 y≧-2x+α を満たす範囲にあり、 前記磁気膜厚αは、前記感磁膜の磁気膜厚xを横軸にとり、縦方向バイアス磁界を縦軸にとったグラフ上でみて、前記感磁膜の磁気膜厚x=ゼロにおいてバルクハウゼンノイズを抑止できなくなる限界値である最小磁界をHminとしたとき、最小磁界Hminよりも大きな縦方向バイアスを与える値に選定されている 磁気抵抗効果素子。 【請求項3】 請求項2に記載された磁気抵抗効果素子であって、前記磁気膜厚 α(Gauss・μm)は、450(Gauss・μm)である磁気抵抗効果素子。 【請求項4】 請求項2に記載された磁気抵抗効果素子であって、前記磁気膜厚α(Gauss・μm)は、630(Gauss・μm)である磁気抵抗効果素子。 【請求項5】 感磁部と、磁区制御膜とを含む磁気抵抗効果素子であって、 前記感磁部は、感磁膜を含み、前記感磁膜は外部から印加される磁界に応答する膜であって、膜厚が10nm〜20nmであり、 前記磁区制御膜は、センス電流の流れる方向を縦方向としたとき、前記感磁膜に対して縦方向バイアス磁界を印加する膜であり、 前記感磁膜の残留磁化Br1(Gauss)と、その膜厚THx(μm)との積で与えられる磁気膜厚をx(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の膜厚THy(μm)とその残留磁化Br2(Gauss)との積によって与えられる磁気膜厚をy(Gauss・μm)とし、前記磁区制御膜の磁気膜厚をα(Gauss・μm)としたとき、前記磁気膜厚xを横軸にとり、前記磁気膜厚yを縦軸にとったグラフ上で見て、前記磁気膜厚yは、次式、 y≧-2x+α を満たす範囲にあり、 前記磁気膜厚αは、前記感磁膜の磁気膜厚xを横軸にとり、縦方向バイアス磁界を縦軸にとったグラフ上でみて、前記感磁膜の磁気膜厚x=ゼロにおいてバルクハウゼンノイズを抑止できなくなる限界値である最小磁界をHminとしたとき、最小磁界Hminよりも大きな縦方向バイアスを与える値に選定されている 磁気抵抗効果素子。 【請求項6】 請求項5に記載された磁気抵抗効果素子であって、前記磁気膜厚α(Gauss・μm)は、450(Gauss・μm)である磁気抵抗効果素子。 【請求項7】 請求項5に記載された磁気抵抗効果素子であって、前記磁気膜厚α(Gauss・μm)は、630(Gauss・μm)である磁気抵抗効果素子。 【請求項8】 請求項1乃至7の何れかに記載された磁気抵抗効果素子であって、前記感磁膜は、磁気異方性磁気抵抗効果膜を含む磁気抵抗効果素子。 【請求項9】 請求項1乃至7の何れかに記載された磁気抵抗効果素子であって、前記感磁部は、スピンバルブ膜構造を有し、前記感磁膜は、前記スピンバルブ膜構造に含まれるフリー層である磁気抵抗効果素子。 【請求項10】 スライダと、磁気抵抗効果素子とを含む薄膜磁気ヘッドであって、前記スライダは、前記磁気抵抗効果素子を支持しており、前記磁気抵抗効果素子は、請求項1乃至9の何れかに記載されたものでなる薄膜磁気ヘッド。」 と補正された。 上記補正前後の構成を対比すると、本件補正は、少なくとも、請求項1及び請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「感磁膜」の「膜厚」に関し、「膜厚が10nm以下であり」との構成を、「膜厚が10nm〜20nmであり」との構成に変更するものであり、減縮に相当しないことが明らかである。 そして、本件補正は、最後の拒絶の理由通知に応答してなされたものであるから、特許法第17条の2第1項第3号の『拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。』になされた補正に相当し、そのような補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定する事項を目的にするものに限られている。 そうであるから、前記減縮に相当しない補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当しないことが明らかであり、また、同条同項の他の各号の規定(請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明)を満たさないことも明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号の規定を満たしていないため同条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成18年7月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜12に係る発明は、平成16年4月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 感磁部と、磁区制御膜とを含む磁気抵抗効果素子であって、 前記感磁部は、感磁膜を含み、前記感磁膜は外部から印加される磁界に応答する膜であって、膜厚が10nm以下であり、 前記磁区制御膜は、センス電流の流れる方向を縦方向としたとき、前記感磁膜に対して縦方向バイアス磁界を印加する膜であり、 前記感磁膜は、前記縦方向の両端が中央部よりも低い凹部となっており、前記凹部は、前記中央部の表面を基準にした深さが、5nm以上であり、 前記磁区制御膜は、前記凹部のそれぞれに配置されている 磁気抵抗効果素子。」 (1)当審の最後の拒絶理由 当審の最後の拒絶理由の理由1として次のように指摘されている。 『 << 最後の拒絶理由>> 理由1.平成16年4月5日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 平成16年4月5日付手続補正によって、請求項1(及び請求項1を直接乃至間接的に引用する請求項2〜4,10)そして請求項5(及び請求項5を直接乃至間接的に引用する請求項6〜10)において「感磁膜は外部から印加される磁界に応答する膜であって、膜厚が10nm以下であり、」との構成が規定された。 しかしながら、感磁膜の「膜厚を10nm以下」とする点に関しては、その構成を前提とした発明が当初明細書等に記載されていたとは認められないし、自明であるとも認められない。 ところで、この点に関し、出願人は、平成16年4月5日付けの意見書(2.補正の根拠(1))において、次のように主張している。 『(1)請求項1,5において、「膜厚が10nm以下であり」と補正する点 当初明細書段落0013「MR素子の高密度化に対応するためには、感磁膜の膜厚を薄くする必要がある。...感磁膜の膜厚を、現在の20〜25nmから10nm以下の膜厚に低下させることが要求される。」と記載され、当初明細書段落0069に「上述したMR素子において、感磁膜11の膜厚Txを10nmから25nmの範囲で変えた。」と記載されているから、上記補正は、当初明細書に明示的に記載された事項である。』 なるほど、段落【0013】と【0069】には、上記摘示された記載がある。 しかしながら、段落【0013】の記載は、10nm以下とすることが従来要求されていることが示されているにすぎず、本願発明として説明されている他の箇所(例えば、段落【0059】,【0073】など参照)では主として18nm(この数値は10nmよりもはるかに大きい数値であることに注意。)を感磁膜の膜厚として検討されているにすぎず、段落【0069】の記載もそれを中心とする10nm〜25nmの範囲で具体的例を検討しているだけである。10nmの一点については具体的例があるとしても、それよりも小さい10nm未満の場合についてまで、具体的に検討しているわけでもないし10nm未満を目標としているわけではない。むしろ、段落【0013】と【0069】の記載を併せ考えると、10nm〜20nm程度の範囲を目途としていると解するのが相当ではあっても、10nm以下の例えば6nmや5nm程度の場合を意図していると解することはできない。 よって、前記出願人の主張は失当であり、採用すべきではない。 なお、例えば、拒絶査定の理由に提示された特開平10-124823号公報(下記理由4,5の備考の刊行物1の摘示記載も参照)にも、感磁膜の縦方向の両端が中央部よりも低い凹部となっていて、その凹部に磁区制御膜が設けられた磁気抵抗効果素子が記載(図面など参照;図12の従来例も含む)され、そして段落【0031】〜【0033】、【0035】、【0069】、【0071】などに感磁性膜の膜厚と他の層の膜厚の数値が記載されているところ、感磁膜の膜厚として数nm程度も適宜採用されている認められ、各図面及びバイアス磁化付与層(磁区制御層に相当;感磁層の厚み方向を全てカバーする磁区制御層が設けられた図も示されていて、その場合に中央部の表面を基準とする凹部の深さは感磁層の膜厚以上となり、当然に5nm以上となると認められる)の膜厚を勘案すると、中央部の表面を基準とする凹部の深さが5nm以上となる場合も知られているものと認められるから、仮に「膜厚が10nm以下」の点が新規事項でないとしても、その点では新規性乃至進歩性を有しないことが明らかである点に留意されたい。 ところで、特許法第29条第2項の規定は、なにも同条第1項第3号の刊行物に記載された発明に基づく必要性はなく、同条第1項第1号の公然知られた(即ち公知)の発明に基づいて適用できるとされていて、請求人が主張するような引用文献(即ち文献公知;公然知られたとの公知とは別の概念)の提示は必ずしも必要ではないから、手続違背があるとの請求人の主張(請求理由の平成16年9月17日付け手続補正書の「第2.拒絶理由に対する反論 1.拒絶理由2について」の項を参照)は、失当であることが明白である。 理由2.〜理由5. 略 最後の拒絶理由通知とする理由 原審の最初の拒絶の理由に応答する補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知である。 なお、請求項11,12は、最初の拒絶の理由に応答して、新たに追加請求された発明(補正前に対応するカテゴリーの発明はない)であるから、これらの発明に対する拒絶の理由も全て最後の拒絶理由になることに留意されたい。 また、請求人が主張する手続違背が無いことは上記説明(理由1の記の最後の段落を参照)したとおりであり、また、最後の拒絶理由であるから、補正する場合には請求項の削除、限定的減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに限られ、構成の削除や構成を差し替えるなどによって発明を拡張、変更することはそれらの目的に合致しないことに留意されたい。』 (2)これに対し、平成18年7月28日付け意見書において、上記見解に対し、格別の反論はなされておらず、また、自明でもないと指摘された「10nm以下」を「10nm〜20nm」と変更しようとするものであるから、請求人は上記見解を是認したものという他ない。 そして、上記拒絶の理由1は妥当である。 (3)むすび したがって、本願の明細書についてした平成16年4月5日付け手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。それ故、他の拒絶理由、及び他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-17 |
結審通知日 | 2006-08-17 |
審決日 | 2006-08-29 |
出願番号 | 特願平10-193362 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
WZ
(G11B)
P 1 8・ 561- WZ (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 豊 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
山田 洋一 川上 美秀 |
発明の名称 | 磁気抵抗効果素子及び薄膜磁気ヘッド |
代理人 | 阿部 美次郎 |