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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1145556
審判番号 不服2004-24414  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-29 
確定日 2006-10-18 
事件の表示 平成 6年特許願第107004号「真正であることを判定するための備えを有するドキュメントおよび真正であることを判定するための備えを有するデータ記載ドキュメントを得る方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 1月 6日出願公開、特開平 7- 1874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成6年5月20日の出願(米国出願に基づく優先権主張 1993年5月24日(以下「優先日」という。))であって、平成16年8月26日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年11月29日付けで本件審判請求がされるとともに、同年12月28日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年12月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
平成16年12月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)における補正対象項目は特許請求の範囲のみであるが、本件補正前後の特許請求の範囲を比較すると、【請求項11】において引用する請求項を「請求項2」から「請求項9」に変更しているだけであり、他の補正はされていない。
そして、補正前において請求項2を引用していることが、請求項11の解釈を困難にしている理解しなければならない理由はないから、補正前の記載が誤記であると断定することはできない。
そうである以上、本件補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明の何れかを目的とするものと認めることはできない。
すなわち、本件補正は平成6年改正前特許法17条の2第3項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおりであるから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから(却下しなくても同じであるが)、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年8月9日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「a)印字された可視テキストを有するシートと、
b)このシートに貼着された透明なラベルと、
c)前記シートの前記可視テキストを走査してそこから得たデータの一部をその透明なラベルの上に不可視インキで印字されたテキストと
を備えた、真正であることを判定するための備えを有するドキュメント。」
ただし、「前記シートの前記可視テキストを走査してそこから得たデータの一部をその透明なラベルの上に不可視インキで印字された」については、物の発明の構成となりうるかについては多大な疑念があり、そのことについては後記5.及び9.で採り上げる。

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-52069号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア〜キの記載が図示とともにある。
ア.「認証カードとしての利用IDカード8は,紙の基材8a,紙の印刷層8bを有し,印刷層8bに透明バーコード82が印刷されている。この透明バーコード82が認証コードとして使用される。紙を基材としており,安価に製造でき,透明不可視マークを用いることがセキュリティを有する。」(1頁【要約】の【構成】欄)
イ.「図1に本発明の認証システムの実施例のシステム構成を示す。この認証システムは,本発明の実施例としての利用IDカード8を用いる,認証コード登録装置1,登録内容記憶装置2,認証コード抹消装置3,認証装置4,および,第1〜第3の端末装置5〜7を有する。この認証システムをホテルの管理システムに適用した例について述べる。この場合,利用IDカード8は,ホテルの電子鍵およびホテル内のクレジットカードとして利用できる。認証コード登録装置1および認証コード抹消装置3はホテルのフロントに配設されて利用IDカード8の発行と抹消を行う。認証装置4は第1の端末装置5〜第3の端末装置7の管理制御を行う。たとえば,第1の端末装置5はあるホテル内のある部屋の入退出管理装置として使用される。第2の端末装置6はホテル内の商店における利用精算装置として使用され,第3の端末装置7はホテル内のレストランにおける利用精算装置に使用される。すなわち,第2の端末装置6および第3の端末装置7は,本発明の認証カードの利用IDカード8をホテルの電子鍵として使用する他,ホテル内のクレジットカードとして利用するときの利用管理装置として使用される。」(段落【0008】)
ウ.「図2(A)に上記認証システムで使用する利用IDカード8の平面図,図2(B)に図2(A)の線Y-Yにおける断面図を示す。1利用IDカード8は,基材8aが紙で製造されており,この紙の基材8aの上に印刷層8bが被着され,この印刷層8bの一部に透明バーコード82の層8cが付着されている。さらに,後述するように,最終的には,保護層としての透明のラミネート処理層8dが被覆される。透明バーコードマーク領域81内に透明バーコード82が塗布されている。透明バーコード82は 人間の眼では見えない紫外線インクで複数本のバーコードとして描かれており,後述する透明バーコードリーダによってその透明バーコードが読み取られる。利用IDカード8の印刷層8bには,ホテル部屋番号83,挿入方向指示マーク84,ホテルの写真を絵にした部分88,ホテル名89が予め印刷されている。印刷層8bにはその利用者が利用者氏名85をサインする。また,印刷層8bには,利用IDカード8発行のとき滞在開始日86が印刷され,利用終了のとき滞在終了日87が印刷される。」(段落【0009】)
エ.「フロントの係員はサインが転記された利用IDカード8を透明バーコードリーダ21に装荷し,キィボード22を操作して透明バーコードリーダ21から透明バーコード82を読み取らせる。CPU11は透明バーコードリーダI/F回路13を介して透明バーコード82を読み取り,・・・CPU11はその透明バーコード82に対応するコードをHDD18に登録する。このHDD18に登録されたコードが下記に述べる認証の他,その利用者のホテル利用管理に使用される。・・・フロントの係員は利用IDカード8を透明バーコードリーダ21から取り出し,カードへの日付印刷用プリンタ23にかけ,キィボード22を操作して,利用IDカード8に必要事項の印刷を行わせる。この印刷としては,その時決定した部屋番号83,滞在開始日86がある。・・・カードへの日付印刷用プリンタ23での印刷が完了すると,フロントの係員は利用IDカード8をラミネート処理装置24にかけ,滞在終了日87部分を除き,利用IDカード8にラミネート処理を行い,印刷部および透明バーコード82の保護対策を講じる。」(段落【0014】)
オ.「利用者は利用IDカード8をホテルの部屋への入退出用電子鍵として利用することができる。またこの利用IDカード8をホテル内のレストラン,商店などでのクレジットカードと同様に利用することもできる。この場合,レストラン,商店などに,透明バーコードリーダ21と同様の透明バーコードリーダが配設されており,利用状況とその利用額が上記コードにしたがってHDD18に記憶されていく。」(段落【0016】)
カ.「以上の実施例では,透明バーコードマーク領域81に予め透明バーコード82が印刷されているものを用いる例を示したが,利用IDカード8を発行する都度,透明バーコード82を,たとえば,透明不可視マーク用の顔料を用いて熱転写して印刷することもできる。」(段落【0019】)
キ.「本発明の認証カードおよび認証システムは上記例に限定されず,比較的短期間にある程度のセキュリティを要する認証カードとして利用するその他の種々の用途に利用できる。たとえば,上記ホテルに類似した利用形態としては,複数の貸別荘群が集合させた保養地のそれぞれの貸別荘の電子鍵とその保養地内のレストラン,商店などの利用カードとして使用することができる。あるいは他の例としては,本発明の認証カードを会社の従業員の食事利用券の認証カードとして用いることができる。」(段落【0021】)

3.引用例記載の発明の認定
引用例記載のIDカード8は、【図2】又は【図10】に図示されるような構造のものであり、基材8aに種々の可視印刷がされるとともに、認証コードとして使用される透明不可視マーク(透明バーコード)が印刷され、ラミネート処理が行われたものである。
すなわち、引用例にはIDカードとして次のような発明が記載されていると認めることができる。
「可視印刷及び認証コードとして使用される透明バーコード印刷が施された紙の基材をラミネート処理したIDカード。」(以下「引用発明」という。)

4.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の実施例に当たる「電子鍵」では、可視印刷として「ホテル部屋番号」が印刷されており、他の例に当たる「会社の従業員の食事利用券」であっても従業員を特定するテキスト情報が印刷されていると解するべきであるから、「印字された可視テキストを有する」点において本願発明と引用発明に相違はない。
引用発明の「紙の基材」は本願発明の「シート」に相当し、引用発明ではラミネート処理されており、ラミネート層が透明なことは自明であるから、ラミネート層と本願発明の「シートに貼着された透明なラベル」にも相違はない。
本願発明の「不可視インキで印字されたテキスト」については、【請求項1】を引用する【請求項2】をさらに引用する【請求項3】に「不可視インキで印字されたテキストが符号化されている」とあるから、符号化されたものであってもよく、引用発明の「透明バーコード」と異ならない。
さらに、引用発明の「透明バーコード」は「認証コードとして使用される」のであるから、それを印刷した「IDカード」は、「真正であることを判定するための備えを有するドキュメント」であるといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「a)印字された可視テキストを有するシートと、
b)このシートに貼着された透明なラベルと、
c)不可視インキで印字されたテキストと
を備えた、真正であることを判定するための備えを有するドキュメント。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉「不可視インキで印字されたテキスト」につき、本願発明では「前記シートの前記可視テキストを走査してそこから得たデータの一部」であるのに対し、引用発明では可視テキストとの関連性は明確でない点。
〈相違点2〉本願発明では、「不可視インキで印字されたテキスト」が「透明なラベルの上に印字された」ものであるが、引用発明では紙の基材(シート)に印刷されたものである点。

5.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用発明のIDカードは、実施例によれば、電子鍵として機能するとともに、クレジットカードと同様に利用できるのだから、透明バーコードはIDカード所有者を特定できる情報でなければならない。他方、ホテルの電子鍵を例にとれば、IDカード所有者は宿泊者であり部屋番号によって特定される。別の例である「会社の従業員の食事利用券の認証カード」であれば、従業員を特定する情報が透明バーコードに含まれていると解さなければならない。
そして、本願発明の「不可視インキで印字されたテキスト」は符号化してあってもよいのだから、「可視テキスト」そのものやそのものの一部と完全に一致する必要はなく、結局のところ、「可視テキスト」(又はその一部)と一対一に対応しておればよい。
そうである以上、相違点1に係る構成のうち、「可視テキスト」と「不可視インキで印字されたテキスト」に対応関係があるとの限度では、本願発明と引用発明に実質的な相違はないというべきである。そればかりか、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-4873号(実開昭60-117182号)のマイクロフィルムに「基材上に同一内容を示す2種類の個有情報が少なくとも設けられていると共に、該個有情報の一方は、赤外線の照射によって励起されて赤外波長領域において発光スペクトル分布を有する赤外発光けい光材料から成り、該個有情報の他方は、人間が読取り可能な着色材から成ることを特徴とする券類。」(1頁5〜11行)と、同じく引用された実願昭62-182641号(実開平1-86571号)のマイクロフィルムに「カード本体と、このカード本体の表面に目視可能な状態に形成された識別情報等の固有データを示す第1の読取符号と、この第1の読取符号と同一の固有データを示す目視不可能なインクによって形成された第2の読取符号とを具備したことを特徴とするカード。」(1頁5〜10行)とそれぞれ記載があるとおり、認証のための不可視情報を可視情報と同一情報とすることは周知である。
もちろん、認証のための不可視情報を可視情報と同一情報とすることが周知であるからといって、引用発明の実施例に当たる電子鍵の場合には、宿泊者が変わる毎に、同一部屋番号に対する透明バーコードを変更しなければならないから、不可視情報を可視情報と同一情報としてよいわけではないが、「会社の従業員の食事利用券の認証カード」(記載キ)であれば、電子鍵のように変更する必要はないだけでなく、透明バーコードが引用例記載のカードにおいてのみ有用であると解すべき理由もないから、上記周知技術を採用することは設計事項というべきである。
残余の構成である「前記シートの前記可視テキストを走査してそこから得たデータ」について検討すると、本願発明は「ドキュメント」自体の発明であって「ドキュメントの製造方法」の発明ではないことに留意しなければならない。そして、「ドキュメント」自体の発明である以上、不可視インキで印字すべきテキストを決定するに当たっては、可視テキストのデータの一部に対応付けなければならないものの、「可視テキストを走査してそこから得たデータの一部」を用いる必要はないし、製造された物品たるドキュメントにおける「不可視インキで印字されたテキスト」が、可視テキストを走査してそこから得たデータであるかどうかを区別する術はない。
より具体的にいうと、引用例の記載カには「利用IDカード8を発行する都度,透明バーコード82を,たとえば,透明不可視マーク用の顔料を用いて熱転写して印刷することもできる。」とあり、透明バーコードの印刷時点では透明バーコードと部屋番号の対応関係は定まっておらず、その後透明バーコードと部屋番号の対応関係を設定するものと解されるが、透明バーコードの印刷に先立ち、部屋番号を読み取り、それに対応する透明バーコードを決定し印刷したものと、IDカードとしての構成においては区別できない。
以上のとおり、「前記シートの前記可視テキストを走査してそこから得たデータ」を「ドキュメント」の構成と見ることはできないから、結局のところ、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(2)相違点2について
相違点2に係る本願発明の構成は「不可視インキで印字されたテキスト」が「透明なラベルの上に印字された」ことであるが、「透明なラベルの上に印字」が透明なラベルの露出面のみを意味するのかどうかは請求項1の記載のみからは明らかでない。発明の詳細な説明には、「印字された部分が摩滅させられないように、ラベルの符号化されたメッセージ36が不可視インキで印字されている側に接着剤を塗布するのが好ましい。」(段落【0010】)及び「別の実施例においては、ドキュメント10が貼り合わせた層で製作され、最後の層が透明である場合には、符号化したメッセージをその層に印字することができる。そのメッセージ36は貼り合わせた層の内面に印字するのが好ましい。」(段落【0011】)との各記載があるから、これら記載を参酌すれば、「不可視インキで印字されたテキスト」が印字される面は、透明なラベルの露出面に限らず、シートと対向する面であってもよいと解さなければならない。
そうすると、相違点2とは結局のところ、不可視インキで印字されるべきテキストの印字対象が透明なラベルであるのかシートであるのかの相違につき、製造されたドキュメントとしては、シート,不可視インキで印字されたテキスト,透明なラベルの順になる点では相違しない。
そして、積層される2部材の対向面のどちらに印字するかは設計事項というべきであるから、相違点2に係る本願発明の構成を採用することも設計事項というべきである。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明(及び周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

6.先願明細書の記載事項
原査定の拒絶の理由は、優先日前に出願され優先日後に出願公開された特願平4-291808号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、これらを併せて「先願明細書」という。)に記載の発明と本願発明が同一発明であるとの理由を含んでいる。
先願明細書には、以下のク〜シの記載が図示とともにある。
ク.「本発明は、赤外線読取り装置にて機械読取り可能なバーコードパターンや秘密情報パターン等赤外線吸収パターンを備え、例えば、パスポート等の身分証明書等に貼着されてその情報の改ざんや変造を有効に防止できるラベル材に関するものである。」(段落【0001】)
ケ.「改ざんや変造がなされた場合、目視にてこの事実を見破ることはほとんど困難な問題点があった。」(段落【0004】)
コ.「本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、パスポート等の身分証明書等に貼着されてその情報の改ざんや変造を有効に防止できるラベル材を提供することにある。」(段落【0005】)
サ.「顔写真やサイン欄を目視にて確認すると共に赤外線吸収パターンを機械読取りすることにより情報の改ざんや変造の事実を確実に発見できる利点を有している。」(段落【0008】)
シ.「ラベル材における透明シート」(段落【0009】)

7.先願明細書記載の発明の認定
先願明細書は、発明の名称を「ラベル材」とするものであるが、先願明細書にはそのラベル材を貼着した身分証明書等も記載されている。貼着前後の身分証明書等を区別するため、以下では貼着前のものを身分証明書といい、貼着後のものをIDカードと便宜上いうことにする。先願明細書記載のIDカードは次のようなものである。
「赤外線読取り装置にて機械読取り可能なバーコードパターンや秘密情報パターン等赤外線吸収パターンを備え、例えば、パスポート等の身分証明書に貼着されてその情報の改ざんや変造を有効に防止できる透明なラベル材を貼着したIDカード。」(以下「先願発明」という。)

8.本願発明と先願発明との一致点及び相違点の認定
先願発明の「身分証明書」に可視テキストが印字されていることは明らかであるから、「身分証明書」は本願発明の「印字された可視テキストを有するシート」に相当する。
先願発明の「ラベル材」及び「機械読取り可能なバーコードパターンや秘密情報パターン等赤外線吸収パターン」は、本願発明の「ラベル」及び「透明なラベルの上に不可視インキで印字されたテキスト」にそれぞれ相当する。
引用発明のラベル材は機械読取り可能なバーコードパターンや秘密情報パターン等赤外線吸収パターンを備えているのだから、引用発明は「真正であることを判定するための備えを有するドキュメント」であるといえる。
したがって、本願発明と先願発明とは、
「a)印字された可視テキストを有するシートと、
b)このシートに貼着された透明なラベルと、
c)透明なラベルの上に不可視インキで印字されたテキストと
を備えた、真正であることを判定するための備えを有するドキュメント。」である点で一致し、次の点で一応相違する。
〈一応の相違点〉
「不可視インキで印字されたテキスト」につき、本願発明は「前記シートの前記可視テキストを走査してそこから得たデータの一部」と限定しているのに対し、先願発明には同限定がない点。

9.特許法29条の2該当性の判断
先願明細書の記載ケにあるとおり、先願発明は情報の改ざんや変造の事実を目視にて見破ることを目的とするものであり、記載サのとおり、「顔写真やサイン欄を目視にて確認すると共に赤外線吸収パターンを機械読取りすることにより情報の改ざんや変造の事実を確実に発見できる利点を有している」ものである。
ところで、情報の改ざんや変造の事実を目視により確実に発見するためには、機械読取りした赤外線吸収パターンが、読み取り対象となったIDカード固有の真正な情報であることを確認する必要があり、目視で確認したサインと一致することが確認できれば、IDカード固有の真正な情報であることを確認できることが明らかである。
そればかりか、5.(1)で述べたように、認証のための不可視情報を可視情報と同一情報とすることは周知であり、先願発明が、「機械読取り可能なバーコードパターンや秘密情報パターン等赤外線吸収パターン」をサイン等身分証明書に印刷された可視テキストの一部とすることを排除していると解すべき理由はない。
さらに、5.(1)で述べたように、「前記シートの前記可視テキストを走査してそこから得たデータ」に関しては、ドキュメントの構成と解することはできない。
そうである以上、先願発明の「機械読取り可能なバーコードパターンや秘密情報パターン等赤外線吸収パターン」(不可視インキで印字されたテキスト)は、身分証明書に印刷された可視テキストの一部であるものを包含するというべきであるから、一応の相違点としてあげたことは実質的な相違点には当たらない。
すなわち、本願発明と先願発明とは実質的に同一発明である。
また、本願発明の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、本願出願の時において、本願出願人が先願の出願人と同一でもないことは明らかであるから、本願発明は特許法29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-25 
結審通知日 2006-05-26 
審決日 2006-06-08 
出願番号 特願平6-107004
審決分類 P 1 8・ 16- Z (B42D)
P 1 8・ 121- Z (B42D)
P 1 8・ 57- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 國田 正久
藤井 靖子
発明の名称 真正であることを判定するための備えを有するドキュメントおよび真正であることを判定するための備えを有するデータ記載ドキュメントを得る方法  
代理人 橘谷 英俊  
代理人 玉真 正美  
代理人 佐藤 一雄  

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