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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01K
管理番号 1145627
審判番号 不服2004-17768  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-27 
確定日 2006-10-16 
事件の表示 平成 6年特許願第197850号「温度等の測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月16日出願公開、特開平 8- 43213〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成6年7月29日の出願であって、平成16年7月26日付け(発送日;同月28日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月24日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月24日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲、
「【請求項1】 検出対象となる物理量の変化に応じて抵抗値または容量が可変するセンサ素子と、
このセンサ素子に対して基準となる抵抗値または容量を備えた複数の基準素子と、
前記センサ素子および前記基準素子を択一的に切り換えて回路を構成可能な発振回路と、
前記センサ素子に切り換えられたときの前記発振回路の第1の発振周波数、および前記第1の発振周波数に基づき前記基準素子のいずれかに切り換えられたときの前記発振回路の第2の発振周波数に基づき前記物理量を算出する信号処理装置とを有し、
複数の前記基準素子には、実質的に異なり、しかも相互に連続している測定範囲が割り当てられ、前記信号処理装置には前記基準素子の各々が受け持つ測定範囲の発振周波数が予め求められて記憶されており、
前記信号処理装置は、前記第1の発振周波数が、前記基準素子のうちのどれに割り当てられた範囲に含まれるものであるかを判別し、該当する前記基準素子による前記第2の発振周波数を求めることを特徴とする測定装置。
【請求項2】 請求項1において、前記物理量は、温度、湿度または圧力である測定装置。
【請求項3】 検出対象となる物理量の変化に応じて抵抗値または容量が可変するセンサ素子と、このセンサ素子に対して基準となる抵抗値または容量を備えた複数の基準素子と、前記センサ素子および前記基準素子を択一的に切り換えて回路を構成可能な発振回路とを有し、さらに、
複数の前記基準素子には、実質的に異なり、しかも相互に連続している測定範囲が割り当てられ、前記基準素子の各々が受け持つ測定範囲の発振周波数が予め求められて記憶された信号処理装置を有する測定装置による測定方法であって、
前記センサ素子に切り換えられたときの前記発振回路の第1の発振周波数を求めるステップと、
得られた前記第1の発振周波数が、前記基準素子のいずれかに割り当てられた範囲に含まれるかを判断するステップと、
前記割り当てられた範囲に含まれる前記基準素子に切り換えられたときの前記発振回路の第2の発振周波数を求めるステップと、
前記第1および第2の発振周波数に基づき前記物理量を算出するステップとを有する測定方法。
【請求項4】 請求項3において、前記物理量は、温度、湿度または圧力である測定
方法。」
を、
「【請求項1】 検出対象となる物理量の変化に応じて抵抗値または容量が可変するセンサ素子と、
このセンサ素子に対して基準となる抵抗値または容量を備えた複数の基準素子と、
前記センサ素子および前記基準素子を択一的に切り換えて回路を構成可能な発振回路と、
前記センサ素子に切り換えられたときの前記発振回路の第1の発振周波数、および前記第1の発振周波数に基づき前記基準素子のいずれかに切り換えられたときの前記発振回路の第2の発振周波数に基づき前記物理量を算出する信号処理装置とを有し、
複数の前記基準素子には、実質的に異なり、しかも相互にオーバーラップする部分ができるように連続している測定範囲が割り当てられ、前記信号処理装置には前記基準素子の各々が受け持つ測定範囲の発振周波数が予め求められて記憶されており、
前記信号処理装置は、前記第1の発振周波数が、前記基準素子のうちのどれに割り当てられた範囲に含まれるものであるかを判別し、該当する前記基準素子による前記第2の発振周波数を求めることを特徴とする測定装置。
【請求項2】 請求項1において、前記物理量は、温度、湿度または圧力である測定装置。
【請求項3】 検出対象となる物理量の変化に応じて抵抗値または容量が可変するセンサ素子と、このセンサ素子に対して基準となる抵抗値または容量を備えた複数の基準素子と、前記センサ素子および前記基準素子を択一的に切り換えて回路を構成可能な発振回路とを有し、さらに、
複数の前記基準素子には、実質的に異なり、しかも相互にオーバーラップする部分ができるように連続している測定範囲が割り当てられ、前記基準素子の各々が受け持つ測定範囲の発振周波数が予め求められて記憶された信号処理装置を有する測定装置による測定方法であって、
前記センサ素子に切り換えられたときの前記発振回路の第1の発振周波数を求めるステップと、
得られた前記第1の発振周波数が、前記基準素子のいずれかに割り当てられた範囲に含まれるかを判断するステップと、
前記割り当てられた範囲に含まれる前記基準素子に切り換えられたときの前記発振回路の第2の発振周波数を求めるステップと、
前記第1および第2の発振周波数に基づき前記物理量を算出するステップとを有する測定方法。
【請求項4】 請求項3において、前記物理量は、温度、湿度または圧力である測定方法。」
と補正する内容を含むものである。
なお、アンダーラインは、補正個所を示すために付したものである。

(2)補正の目的の適合性
上記補正は、補正前の請求項1及び3の発明の構成に欠くことができない事項である「測定範囲」について「オーバーラップする部分ができるように」との限定を付加したものと認められる。
したがって、上記手続補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第3項第2号の規定に該当するものである。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(3-1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-167827号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「時定数回路を構成する抵抗を基準抵抗と感温抵抗とに切替可能に構成した発振部と、この発振部の前記2種類の抵抗を切替えてそれぞれの発振周波数を所定サンプリング時間毎に比較し、温度に対応したデジタルデータを出力する比較手段と、このデジタルデータの各値に対応した温度データが読出される温度データ変換手段と、この温度データ変換手段よりの温度データを表示する温度表示部とからなる電子温度計において、前記基準抵抗の抵抗値を測定温度範囲に応じて切替える基準抵抗切替手段と、前記サンプリング時間を温度範囲に応じて切替えるサンプリング時間切替手段と、前記比較手段よりの出力を受け、測定温度範囲に対応する温度データを出力する複数の温度データ変換手段と、これらの温度データ変換手段の一つを選択する温度データ変換手段切替手段と、前記温度データ変換手段出力に応答し、温度範囲の切替えを判別し、前記基準抵抗切換手段、サンプリング時間切替手段及び温度データ変換手段切替手段の切替動作を制御する切替制御手段を備えたことを特微とする電子温度計。」(1頁「特許請求の範囲」)
1b.「従来の電子温度計、例えば電子体温計には、基準抵抗と感温抵抗を切替可能に構成した発振器の基準抵抗と感温抵抗の切替えによる各発振周波数を所定サンプリング時間毎に比較手段で比較し、この比較手段より出力されるデジタルデータをROM等で構成される温度データ変換手段に入力し、そのデジタルデータを温度データに変換し、これを表示器で表示するようにしたものがある。」(2頁左上欄1行〜8行)
1c.「電子体温計は、時として他の温度計と共用できることが要請される場合があるが、0.01℃程度の分解能を確保して、さらに検温範囲を35〜42℃から拡大し、例えば-5℃から79℃まで拡大するとなると、温度データ変換手段を構成するメモリの容量を極端に大きくする必要があり、また比較手段を構成するカウンタのビット数が大となり、A/D変換のためのサンプリング時間が長くなるという欠点があり、そのため従来の電子体温計の分解能を確保した上で、検温範囲を拡大することは困難であった。この発明は、上記に鑑み、検温範囲を広く取り、しかも必要とする温度範囲については高分解能の表示がなし得る、その上必要とする記憶容量はさほど増加させる必要のない経済的な電子温度計を提供することを目的としている。」(2頁右上欄2行〜17行)
1d.「第1図は、この発明の一実施例を示す電子温度計の回路ブロック図である。この電子温度計は、発振部1、この発振部1よりの発振周波数を比較する比較部2、比較部2よりのデジタル信号に対応した温度データを出力する温度データ変換部3と、出力された温度データを表示する表示部4、サンプリング制御部5とから構成されている。発振部1は、サーミスタ(感温抵抗)11、基準抵抗12、切替スイッチ13、14及びコンデンサ15からなる時定数回路16と発振器17とからなり、さらにスイッチ14を切替えるためのフリップフロップ18、NOR回路19を備えている。また基準抵抗12は、3個の抵抗R1R2R3が切替スイッチ13により切替接続されるようになっている。」(2ページ右下欄4行〜19行)
1e.「サンプリング制御部5はサンプリング制御回路41、デコーダ17-1・17-2・17-3より温度範囲変更点信号Hl、L2・H2、L3等をサンプリング制御回路41に取込むアンド回路42a・42b・42c・42d、サンプリング時間を得るためのタイマ43及びサンプリング時間切替スイッチ44とから構成されている。サンプリング制御回路41からの信号SBnにより、3系列のうちの1つのバスバッファが選択され、またアンド回路42a……42dより取込まれる信号によりサンプリング制御回路41より、次の温度範囲に変更するための信号SAn、SBnが出力される。この実施例電子温度計では、低温領域、中温領域及び高温領域と3温度領域に分け、それぞれの温度領域で使用される基準抵抗、サンプリング及びデコーダを切替えるようにしている。第3図に感温抵抗の温度特性を示している。低温領域では抵抗が高くCR時定数も大となるため、発振周波数が低くなるが、表示分解能は低くてよいので、サンプリング時間T1は中程度に設定する。中温領域(例:体温測定領域)では、CR時定数は中程度であるが、表示分解能が高い(体温測定のかめ分解能を高くする)ため、サンプリング時間を大に設定する。さらに高温領域ではCR時定教も表示分解能も低いので、サンプリング時間を小に設定する。そして、各温度範囲でカウンタ20のカウント変化幅を400になるようにサンプル時間をそれぞれ設定すると、各温度領域におけるカウント分解能は低温領域-5.0〜35.0℃で〔35-(-5)〕/400=0.1℃/カウント、中温領域35.00〜39.00℃で(39.00-35.00)/400=0.01℃/カウント、高温領域39.0〜79.0℃で(79.0-39.0)/400=0.1℃/カウントとなる。・・・なお、デコーダ17-1、17-2、17-3の各記憶内容は、第2図(a)(b)(c)に示したものであること上記の通りであるが、第2図(a)に示すように、デコーダ17-1は入力が501になると信号“H1”を出力するようになっており、同様にデコーダ17-2は入力が501となるとやはり信号“H2”を出力し、それぞれ高温域への変更点に達したことをサンプリング制御部41に知らせる。またデコーダ17-2、17-3は入力が99となると、それぞれ信号“L2”“L3”を出力し、それぞれより低温域への変更点に達したことをサンプリング制御部41に知らせるようになっている。また、各基準抵抗R1、R2、R3は、それぞれの温度領域の中間値15.0℃、37.00℃、39.0℃の感温抵抗値に相当する値に設定される。」(3ページ左下欄14行〜4ページ右上欄11行)
1f.「動作が開始されると、先ず、イニシャライズ処理が行われる〔ステップST(以下STと略す)1〕。このイニシャライズ処理により、サンプリング制御回路41は低温領域用にセットされ、切替スイッチ14はR1に、切替スイッチ44はT1に、またバスバッファ36-1、38-1、デコーダ37-1が選択される。そして発振部1のスイッチ14が基準抵抗12(R1)側に投入された状態で、基準抵抗R1による発振部1よりの発振信号のカウントに入る(ST2)。すなわち発振部1は、基準抵抗12の抵抗値R1とコンデンサ15の静電容量Cで決まる時定数により、周波数f0で発振する。この周波数f0のパルス信号が発振器17より出力され、カウンタ20に入力される。カウンタ20が、その周波数f0のパルス信号の計数を開始する。同時に、クロック発振器23からの周波数fcのクロック信号の計数がカウンタ24で開始される。カウンタ20の計数値が所定値N0に達すると、そのオーバーフロー出力がアンド回路22を経てラッチ回路25に加えられ、カウンタ24の計数値がラッチ回路25にラッチされる。また、カウンタ20のオーバーフロー出力は、遅延回路21より微小時間遅れてフリップフロップ18のセット入力端に加えられ、フリップフロップ18がリセットされ、その反転出力がNOR回路19を経てスイッチ14に加えられ、スイッチ14をサーミスタ11側に投入するとともに、オア回路30を経てカウンタ20、24をクリアする。そして、今度はサーミスタ11の抵抗Rxによる発振部1よりの発振信号のカウントに入る(ST3)。すなわち発振部1は、サーミスタ11の抵抗値Rxとコンデンサ15(当審注;「23」は誤記と認められるので読み替えた。)の静電容量Cで決まる時定数により発振し、周波数fxのパルス信号が発振器17より出力され、カウンタ20に入力される。そして以後、カウンタ20は周波数fxのパルス信号を計数する。一方、カウンタ24には、再度クロック発振器23より、周波数fcのクロック信号が入力され、計数される。そして、カウンタ24の計数値がラッチ回路25に保持される計数値に等しくなると、比較回路26が両者の一致点で停止する。この時のカウンタ20の計数値をNxとすると、・・・Nxより温度Tが求められる。また、比較回路29でカウンタ20の計数値Nxとそれまでのラッチ回路28に保持される計数値を比較し(ST4)、今回の計数値が大なる場合はその比較回路29の出力が論理“1”となり、アンド回路31を介してその信号が数値更新制御回路32に加えられ、この数値更新制御回路32は遅延回路27よりの信号を受けるタイミングにNOR回路34、OR回路35を経てラッチ回路28に信号を加え、カウンタ20の計数値Nxをラッチ回路28にラッチさせる(ST5)。カウンタ20の計数値がラッチ回路28に保持される数値より小さい場合は、ST5をスキップする。いずれにしても、ラッチ回路28に保持された計数値(100〜500の範囲で温度に対応する値)は、バスバッファ36-1を通じてデコーダ37-1に加えられ、デコーダ37-1はその入力デジタル値に対応した温度データを読出し(ST6)、バスバッファ38-1を通じて表示部4に加える。そしてサンプリング制御回路41では信号Hn(H1)が有か否か判定する(ST7)。入力された計数値が500以下の場合は、デコーダ27-1から信号“H1”が出力されないので、この判定はNOとなり、次に続いて信号Lnが有か否か判定する(ST8)が、この判定はNOであり、従って表示器4では表示器40に温度データを表示する。そしてタイマ43がタイムアップする(サンプリング時間T1の経過)と、タイマ48の出力がNOR回路19を介してスイッチ14に加えられ、再び基準抵抗R1側に倒し、次のサンプリングタイムの動作に移る。・・・やがて、温度が35℃を越える状態になり、ラッチ回路28にラッチされるデジタル値が501になると、これにより、デコーダ37-1からは信号“H1”が導出され、この信号“H1”は温度範囲の変更点に達したことを示すものであり、ST7における“Hn”信号かの判定がYESとなり、タイマ43のサンプリング時間をTn+1すなわちT2に基準抵抗12の抵抗値をRn+1すなわちR2に切替え(ST10)、さらにバスバッファ36-2、38-2及びデコーダ37-2を接続する(ST11)。また、サンプリング制御回路41よりOR回路35を経てラッチ回路28をリセットする(ST14)。以上の処理により、以後の測定はサンプリング時間がT2、基準準抵抗値がR2、デコーダが37-2でそれぞれ実行される。この間の分解能は0、01℃割るとなる。すなわち、この範囲では高分解能の体温測定ができることになる。もっとも、ここでセンサ〔サーミスタ11〕を身体から離す等して検出温度が35℃よりも降下すると、ラッチ回路28に保持されるカウント値が99以下となるため、デコーダ37-2から“L2”信号が出力され、この信号がアンド回路42cを介してサンプリング制御回路41に取込まれ、サンプリング制御回路41は信号“L2”の存在によりタイマ43のサンプリング時間をTn-1すなわちT1に、基準抵抗12の抵値をRn-1すなわちR1に戻し(ST12)、さらにバスバッファ36-1、38-1及びデコーダ37-1を選択し(ST13)、やはりラッチ回路28をリセットする。他方、35℃〜39℃の温度範囲からさらに温度が上昇し、ラッチ回路28に保持されるカウント値が500を越えると、信号“H2”が出力され、アンド回路42bを通してサンプリング制御回路41に取込まれ、この信号“H2”を受けてサンプリング制御回路41は基準抵抗をR3に、サンプリング時間をT3に、さらにバスバッファ36-3、38-3、デコーダ37-3を選択する。これにより分解能は再び0.1℃刻みとなる。また温度範囲39℃〜79℃測定中に39℃以下となり、ラッチ回路28に保持されるカウント値が99以下になると、デコーダ37-3より信号“L3”が出力され、サンプリング制御回路41では温度範囲が35℃〜39℃への基準抵抗、サンプリング時間及びデコーダ等の切替えが行われる。」(4ページ右上欄17行〜6ページ左上欄7行)

(3-2)対比・判断
上記(3-1)の「1e.」及び「1f.」の記載から、以下のことが読みとれる。
・「1e.」の記載から、低温領域(-5.0〜35.0℃)、中温領域(35.00〜39.00℃)、高温領域(39.0〜79.0℃)の3温度領域に分け、それぞれの温度領域で使用され、それぞれの温度領域の中間値の感温抵抗値に相当する値に抵抗値が設定される(即ち、各温度領域においてサーミスタの基準抵抗となる)3個の基準抵抗R1、R2、R3を切替えて、コンデンサ15と時定数回路を構成するようにしており、また、各温度領域は相互に連続しているといえること。
・「1f.」の記載から、以下のことが読みとれる。
・・サーミスタ11の抵抗値Rxとコンデンサ23の静電容量Cで決まる周波数fxのカウント値Nxについて、各温度範囲の計数値に該当するものであるか否かが、低温領域から高温領域にかけて順次判定されること。
・・低温領域では、基準抵抗としてR1が選択され、基準抵抗値R1とコンデンサ15の静電容量Cで決まる周波数をf0とすると、周波数f0のパルス信号を所定カウント値N0計数するのに要する時間(N0/f0)の間に上記周波数fxのパルス信号を計数した値がカウント値Nxであるから、Nx=(N0/f0)・fxとの関係を満たし、Nxとfxとは所定の比例関係にあること。
・・上記の比例関係から、低温領域のカウント値Nxの範囲(100〜500)に対応する周波数fxの範囲[100・(N0/f0)〜500・(N0/f0)]が決まり、また、このカウント値Nxの範囲が、デコーダに記憶されていること。
・・中又は高温領域においては、基準抵抗としてR2、又はR3が選択されるとともに、周波数fxとカウント値Nxとは、低温領域と同様に所定の比例関係を有し、また、中、高温領域に対応する周波数fxの範囲についても、低温領域と同様、それぞれ所定の範囲が決まり、それぞれのカウント値Nxの範囲がデコーダに記憶されていること。また、各温度領域の周波数範囲は、温度領域が相互に連続していることから、連続するものとなっていること。
・・温度Tは、各温度領域のカウント値Nxから求められるものであり、各温度領域のカウント値Nxは、上記周波数fxと基準抵抗R1、R2、R3(とコンデンサ15の静電容量C)で決まる周波数f0、f1、f2とにより決まるから、基準抵抗R1、R2、R3で決まる周波数f0、f1、f2と、上記周波数fxに基づいて、温度Tが求められると、言えること。なお、基準抵抗とサーミスタとを選択的に接続してCR発振を行い、発振周波数の周波数比から温度を求めることは、従来周知の事項でもある(例えば、特開昭63-11824号公報参照。)。

したがって、引用刊行物には、(3-1)の「1a.」乃至「1f.」の記載から、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「温度Tに応じて抵抗値Rxが変化するサーミスタ11と、
低、中、高の各温度領域において、サーミスタ11の基準抵抗となる3個の基準抵抗R1、R2、R3と、
時定数回路を構成する抵抗を、基準抵抗R1、R2、R3と感温抵抗11とに切替可能に構成した発振部1とを有し、
サーミスタ11の抵抗値Rxで決まる周波数fxと各温度領域において所定の比例関係を有するカウント値Nxを、デコーダに記憶された範囲と比較して、低、中、高のどの温度領域に該当するかを順次判定し、該当する温度領域に対応して、相互に連続する各温度領域に対応する基準抵抗R1、R2、R3の何れかを選択するとともに、基準抵抗R1、R2、R3で決まる周波数f0、f1、f2と、上記周波数fxに基づいて、温度Tを求めるようにした電子温度計。」

本願補正発明(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。
・後者の「温度Tに応じて抵抗値Rxが変化するサーミスタ11」は、前者の「検出対象となる物理量の変化に応じて抵抗値が可変するセンサ素子」に相当する。
・後者の「低、中、高の各温度領域においてサーミスタ11の基準抵抗となる3個の基準抵抗R1、R2、R3」は、前者の「センサ素子に対して基準となる抵抗値または容量を備えた複数の基準素子」に相当する。
・後者の「時定数回路を構成する抵抗を、基準抵抗R1、R2、R3と感温抵抗11とに切替可能に構成した発振部1」は、前者の「センサ素子および基準素子を択一的に切り換えて回路を構成可能な発振回路」に相当する。
・後者の「サーミスタ11の抵抗値Rxで決まる周波数fxと各温度領域において所定の比例関係を有するカウント値Nxを、デコーダに記憶された範囲と比較して、低、中、高のどの温度領域に該当するかを順次判定し、該当する温度領域に対応して、相互に連続する各温度領域に対応する基準抵抗R1、R2、R3の何れかを選択するとともに、基準抵抗R1、R2、R3で決まる周波数f0、f1、f2と、上記周波数fxに基づいて、温度Tを求めるようにした電子温度計」と、前者の「センサ素子に切り換えられたときの前記発振回路の第1の発振周波数、および前記第1の発振周波数に基づき前記基準素子のいずれかに切り換えられたときの前記発振回路の第2の発振周波数に基づき前記物理量を算出する信号処理装置とを有し、複数の前記基準素子には、実質的に異なり、しかも相互にオーバーラップする部分ができるように連続している測定範囲が割り当てられ、前記信号処理装置には前記基準素子の各々が受け持つ測定範囲の発振周波数が予め求められて記憶されており、前記信号処理装置は、前記第1の発振周波数が、前記基準素子のうちのどれに割り当てられた範囲に含まれるものであるかを判別し、該当する前記基準素子による前記第2の発振周波数を求めることを特徴とする測定装置」とは、後者も、温度Tを求めるための処理装置を備えているものと解されるから、上記相当関係も勘案すれば、ともに、「センサ素子に切り換えられたときの前記発振回路の第1の発振周波数、および、前記第1の発振周波数と所定の対応関係にある値に基づいて前記基準素子のいずれかに切り換えられたときの前記発振回路の第2の発振周波数、に基づき前記物理量を算出する処理装置とを有し、複数の前記基準素子には、実質的に異なり、しかも相互に連続している測定範囲が割り当てられ、前記処理装置には前記基準素子の各々が受け持つ測定範囲の発振周波数と所定の対応関係にある値が、予め求められて記憶されており、前記処理装置は、前記第1の発振周波数と所定の対応関係にある値が、前記複数の基準素子のうちのどの基準素子の測定範囲に該当するものであるかを判別し、該当する前記基準素子による前記第2の発振周波数を求めることを特徴とする測定装置。」である点で、共通する。
したがって、両者は、
「検出対象となる物理量の変化に応じて抵抗値が可変するセンサ素子と、
このセンサ素子に対して基準となる抵抗値を備えた複数の基準素子と、
前記センサ素子および前記基準素子を択一的に切り換えて回路を構成可能な発振回路と、
センサ素子に切り換えられたときの前記発振回路の第1の発振周波数、および、前記第1の発振周波数と所定の対応関係にある値に基づいて前記基準素子のいずれかに切り換えられたときの前記発振回路の第2の発振周波数、に基づき前記物理量を算出する処理装置とを有し、複数の前記基準素子には、実質的に異なり、しかも相互に連続している測定範囲が割り当てられ、前記処理装置には前記基準素子による各々が受け持つ測定範囲の発振周波数と所定の対応関係にある値が予め求められて記憶されており、前記処理装置は、前記第1の発振周波数と所定の対応関係にある値が、前記複数の基準素子のうちのどの基準素子の測定範囲に該当するものであるかを判別し、該当する前記基準素子による前記第2の発振周波数を求めることを特徴とする測定装置。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
前者が、第1の発振周波数に基づき、基準素子を切り換えを判定しているのに対し、後者は、サーミスタ11の抵抗値Rxで決まる周波数fxと各温度範囲について所定の比例関係を有するカウント値Nxに基づき、低、中、高のどの温度領域に該当するかを順次判定している点。
[相違点2]
前者が、相互にオーバーラップする部分ができるように連続している測定範囲を有するのに対し、後者には、オーバーラップについての記載がない点。

上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
上記したように、引用刊行物にも、基準抵抗R1、R2、R3の何れかを選択するための低、中、高の各温度領域の各カウント値Nxの範囲と対応する、弁別すべき各温度領域の周波数fxの範囲が存在し、それらは連続することが示されている。
そうすると、各温度領域の周波数範囲に着目して、周波数fxの取りうる範囲全体を複数の範囲に区切り、複数の基準素子の切り換えのための周波数fxの範囲を設定することは、上記引用刊行物に示唆されることを勘案すれば、当業者が容易に想到しうる程度のことと認められる。そして、本願補正発明は、周波数の弁別のための構成に格別の工夫をしたものとも言えないから、複数の基準素子の切り換えのための判別の構成として、引用発明の構成に代えて、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。
[相違点2]について
測定レンジ(例えば、温度レンジ)にオーバーラップを設けて、レンジ切替による不連続点の発生を防止することは従来周知(例えば、特開平2-23721号公報参照。)であり、このような周知の事項を勘案すれば、引用発明に周知事項を適用して相違点2に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。

そして、本願補正発明による効果も、引用刊行物の記載及び周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年9月24日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成13年7月26日付け、平成15年10月14日付け、及び平成16年4月19日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1乃至4に係る発明は、「2.(1)」の補正前の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものである。

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりのものである。

5.対比・判断
5-1.請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、発明の構成に欠くことができない事項である「測定範囲」についての上記限定を省いたものである。
そうすると、本願の請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3-2)」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-2.請求項2乃至4に係る発明
本願の請求項2に係る発明は、請求項1における物理量を、温度、湿度または圧力としたものであるが、物理量が温度であるものは、引用発明に記載されているから、請求項1に係る発明と同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項3及び4に係る発明は、請求項1及び2に係る発明のカテゴリーを単に変更して方法の発明としたものにすぎないから、請求項1及び2に係る発明と同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1乃至4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-21 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-05 
出願番号 特願平6-197850
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01K)
P 1 8・ 575- Z (G01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏櫻井 健太  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 山川 雅也
下中 義之
発明の名称 温度等の測定装置  
代理人 今井 彰  
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