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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1145746
審判番号 不服2003-21104  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 平成 9年特許願第237999号「プリンタ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月23日出願公開、特開平11- 78131〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成9年9月3日の出願であって、平成15年9月26日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年10月30日付けで本件審判請求がされるとともの、同年11月26日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年11月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項及び補正目的
本件補正は、補正前に独立形式で記載された請求項である請求項1,4,5の「前記画像ファイル毎にそれぞれのヘッダ部を解析し少なくとも縦横の画素数と圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータを抽出する手段」との記載を「前記画像ファイル毎に各前記画像ファイルを開いてからそれぞれのヘッダ部を解析し少なくとも前記画像ファイルのフォーマットと縦横の画素数と圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータとを抽出する手段」と補正する(以下「本件補正事項」という。)ものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。

2.独立特許要件欠如その1又は新規事項追加
画像ファイルを開くとの文言は、表示又は印刷が可能なようにビットイメージ画像を得るという意味で用いられることがある。ところが、本件補正後の請求項1,4,5には、本件補正事項に続けて「と、前記パラメータを用いて圧縮画像データをビットイメージ画像に展開する手段」とあるから、「画像ファイルを開いて」との文言を上記の意味に解することはできない。そのため、「それぞれのヘッダ部を解析し少なくとも前記画像ファイルのフォーマットと縦横の画素数と圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータとを抽出する」前提としての「画像ファイルを開いて」が何を意味するのか不明確である。
請求人が主張するように、本件補正事項は願書に最初に添付した明細書の段落【0075】の記載(同段落は出願後補正されていない。)に基づくものであるが、同段落には「特に拡張子の種類に限定するものではなく、各ファイルを開いてから内部のヘッダー情報などを元にファイルフォーマットを判定しても良い。」とあるだけで、この記載を参酌しても「画像ファイルを開いて」の意味は明確ではないし、発明の詳細な説明には本件補正事項について具体的な記載が一切ないから、請求項1,4,5(及び請求項1を引用する請求項2,3)に係る発明について、当業者が実施可能な程度に記載されていない。
もっとも、「画像ファイルを開いて」との文言は「ビットイメージ画像に展開する」と別の意味であること、及び「画像ファイルのフォーマットと縦横の画素数と圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータとを抽出する」に必要な作業であることは明らかであるから、「画像ファイルを開いて」との文言を、「画像ファイルのデータを読み取り解析する」との意味に解するものとして、さらに検討をすすめる。
本願明細書の段落【0075】には上記のとおり「内部のヘッダー情報などを元にファイルフォーマットを判定しても良い。」とあり、「ファイルフォーマット」が「ヘッダー情報」のみから判定できるとは記載されていない。そうすると、ファイルフォーマットによっては、ヘッダ部を解析しただけではファイルフォーマットを判定できないと解すべきであるから、ヘッダ部を解析し画像ファイルのフォーマットを抽出することについて、当業者が実施可能な程度に記載されていないことになる。
ヘッダー情報のみから判定できるファイルフォーマットに限定するとの趣旨であれば、上記の問題はないけれども、当初明細書に記載されていないから、新規事項追加となる。
以上述べたとおり、本件補正後の明細書は平成14年改正前特許法36条4項及び6項2号に規定する要件を満たしていなから、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項に規定に違反しているばかりか、本件補正事項の解釈次第によっては特許法17条の2第3項の規定にも違反している。

3.独立特許要件欠如その2
(1)補正発明の認定
本件補正後の請求項5に係る発明(以下「補正発明」という。)についてさらに検討する。補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項5】に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。ただし、本件補正事項については2.で述べた記載不備があるから、「画像ファイルを開いて」との文言は、「画像ファイルのデータを読み取り解析する」との意味に解した上で審理をすすめる。
「画像ファイルが格納されたメモリカードを接続するコネクタと、
前記コネクタを介して前記メモリカードを制御するカード制御手段と、
前記画像ファイルを読み出すファイル制御手段と、
前記ファイル制御手段が読み出した前記画像ファイルを所定の画像データの形式に変換する画像変換手段と、
画像変換された前記画像データに対して画像処理を行い印刷可能なデータ形式に変換する画像処理手段と、
印刷すべき一枚以上の画像を所定の手順で決定し、少なくとも前記ファイル制御手段に指示を出す印刷管理手段と、
を有するプリンタ装置であって、
前記画像変換手段は、前記メモリカードから読み出された前記画像ファイル毎に各前記画像ファイルを開いてからそれぞれのヘッダ部を解析し少なくとも前記画像ファイルのフォーマットと縦横の画素数と圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータとを抽出する手段と、前記パラメータを用いて圧縮画像データをビットイメージ画像に展開する手段と、展開されたビットイメージ画像を印画範囲に収めるのに適したサイズに拡大・縮小を行う変倍手段と、を備えたことを特徴とするプリンタ装置。」

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-8537号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜オの記載が図示とともにある。
ア.「画像データ及びプリントジョブの内容が蓄積されたメモリカードから前記画像データ及びプリントジョブの内容を読み取るカード読み取り手段と、制御手段と、印画手段とを少なくとも備えるプリンタシステムであって、制御手段は前記カード読み取り手段によりメモリカードから読み取ったプリントジョブに従って、前記メモリカードに蓄積されている画像データのプリントを行うことを特徴とするプリンタシステム。」(【請求項1】)
イ.「メモリカードには画像データと、当該カードに蓄積されている画像データに対するプリントジョブ、即ちどの画像データを、どのような順序でそれぞれ何枚ずつプリントするか等を定めた情報が書き込まれている。制御手段はカード読み取り手段からまずプリントジョブを読み込み、このプリントジョブで定められた順序にメモリカードから画像データを読み込み、プリントジョブで指定された枚数だけプリントを行う。ここで、メモリカードに蓄積される画像データは適宜の高能率符号化方式によりデータ圧縮されていることを可とするものである。・・・これによって、メモリカードに蓄積されている多くの画像の中から所望の画像を所望の順序で、所望の枚数だけ、連続して自動的にプリントを行うことができる。」(段落【0013】〜【0014】)
ウ.「カード操作装置25は、メモリカード29に蓄積されているデータを読み取ったり、メモリカード29にU/I22で作成したプリントジョブを書き込んだりするものである。なお、後述するようにこの実施例ではメモリカード29に蓄積される画像データは適宜の高能率符号化方式でデータ圧縮されているものとするので、カード操作装置25は圧縮されている画像データを伸長する手段を備えているものである。」(段落【0022】)
エ.「メモリカード29は、デジタルスチルカメラにセットされ、撮影された画像データ、またはカード操作装置25にセットされてフレームメモリ26に書き込まれている画像データが蓄積されてイメージメモリカードとして使用される」(段落【0027】)
オ.「メモリカード29から読み出され、伸長された画像の画素数は640画素(水平方向)×480画素(垂直方向)程度であり、この画像はモニタ24の中の予め定められた領域に表示されることになる。従ってモニタ24に表示される画像はモニタ24の画像表示領域の画素数に応じて拡大あるいは縮小されるものである。また、図7Aにおいて50はカーソルを示す。」(段落【0034】)

(3)引用例1記載の発明の認定
記載ア〜オを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「データ圧縮された画像データ及びプリントジョブの内容が蓄積されたメモリカードから前記画像データ及びプリントジョブの内容を読み取るカード読み取り手段と、制御手段と、印画手段とを少なくとも備えるプリンタシステムであって、
前記プリントジョブは、どの画像データを、どのような順序でそれぞれ何枚ずつプリントするか等を定めた情報であり、
前記制御手段は前記カード読み取り手段によりメモリカードから読み取ったプリントジョブに従って、前記メモリカードに蓄積されている画像データのプリントを行うプリンタシステム。」(以下「引用発明1」という。)

(4)補正発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用例1には「ファイル」との文言記載はないけれども、データ圧縮されて記憶された個々の画像データをファイルということができるから、引用発明1の「メモリカード」には「画像ファイルが格納され」ていると認めることができる。引用例1には「コネクタ」との文言記載もないけれども、「カード操作装置25にセットされ」(記載エ)るのである(「カード操作装置25」は【図1】等を参酌すれば、引用発明1の「カード読み取り手段」と異ならないものと認める。)から、引用発明1は補正発明の「メモリカードを接続するコネクタ」を有するものと認める。
本件補正後の明細書の「カード制御手段によりメモリーカードの各信号ラインを所定のシーケンスで駆動することによりアクセスされ、カード制御手段(審決注;「ファイル制御手段」の誤記と解する。)によりファイルとして読み出され」(段落【0021】)との記載によれば、「カード制御手段」はメモリカードにアクセスするための手段であり、そのような手段は当然引用発明1も有する。
補正発明の「ファイル制御手段」及び「前記ファイル制御手段が読み出した前記画像ファイルを所定の画像データの形式に変換する画像変換手段」も引用発明1の「カード読み取り手段」に備わっているものと認める。
さらに、引用発明1ではデータ圧縮された画像データを対象としており、印画手段にて印画するためにはビットイメージ画像に展開する必要があるから、「圧縮画像データをビットイメージ画像に展開する手段」も引用発明1に備わっているものと認める。
上記認定の引用発明1には「画像処理手段」に相当するものは含まれていないが、引用例1の記載エにあるとおり、「デジタルスチルカメラにセットされ、撮影された画像データ」が記憶され、カラー画像であれば通常R,G,B3原色のデータとして記憶されており、これを展開したビットイメージ画像もR,G,B3原色の画像であるところ、印刷に当たってはC,M,Y,Kの印刷可能なデータ形式に変換するのが普通であるから、引用発明1も「画像変換された前記画像データに対して画像処理を行い印刷可能なデータ形式に変換する画像処理手段」を有するものと認める。仮にそのように認定できないとしても、軽微な設計事項にすぎず、進歩性又は独立特許要件の判断に影響を及ぼすものではない。
引用発明1の「制御手段」は、プリントジョブ(どの画像データを、どのような順序でそれぞれ何枚ずつプリントするか等を定めた情報)に従ってプリントを行うように制御するものであるから、補正発明の「印刷すべき一枚以上の画像を所定の手順で決定し、少なくとも前記ファイル制御手段に指示を出す印刷管理手段」に相当する。
そして、引用発明1の「プリンタシステム」と補正発明の「プリンタ装置」は表現上の相違しかない。
したがって、補正発明と引用発明1とは、
「画像ファイルが格納されたメモリカードを接続するコネクタと、
前記コネクタを介して前記メモリカードを制御するカード制御手段と、
前記画像ファイルを読み出すファイル制御手段と、
前記ファイル制御手段が読み出した前記画像ファイルを所定の画像データの形式に変換する画像変換手段と、
画像変換された前記画像データに対して画像処理を行い印刷可能なデータ形式に変換する画像処理手段と、
印刷すべき一枚以上の画像を所定の手順で決定し、少なくとも前記ファイル制御手段に指示を出す印刷管理手段と、
を有するプリンタ装置であって、
前記画像変換手段は、圧縮画像データをビットイメージ画像に展開する手段を備えたプリンタ装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉補正発明の「画像変換手段」が「メモリカードから読み出された前記画像ファイル毎に各前記画像ファイルを開いてからそれぞれのヘッダ部を解析し少なくとも前記画像ファイルのフォーマットと縦横の画素数と圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータとを抽出する手段と、展開されたビットイメージ画像を印画範囲に収めるのに適したサイズに拡大・縮小を行う変倍手段」を備え、上記構成により抽出された「圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータ」を用いて圧縮画像データをビットイメージ画像に展開するのに対し、引用発明1がこれら構成を有するとはいえない点。

(5)相違点についての判断
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-181912号公報(以下「引用例2」という。)には、「プリント装置における拡大、縮小等のプリントサイズの変換において、変換後の画像をプリントするプリント媒体の寸法に合せたサイズ変換を行い、プリントされる画像のサイズと上記プリント媒体のサイズとの間に誤差を生じないようにする。」(【要約】の【課題】欄)、
「図2において、まず初めにプリントする画像の画像フォーマットの選択を端末の入力状態によって検知し(s100)、特に選択がないと判断した時は(s101)、デフォルトのフォーマットを設定する(s102)。次に、端末におけるファイル名の入力を検知し(s103)、先の選択されたフォーマットに従いファイルヘッダーを読み込み、画像情報を取得する(s104)。その情報としては画像サイズ、解像度が含まれるが、解像度情報が含まれていないと判断された時は(s105)、端末を介して解像度を取得する(s106)。」(段落【0017】)及び「上記ステップs104で読込んだ画像サイズ、つまり画素(以下、ピクセルともいう)の数で表わされる画像サイズ」(段落【0018】)との各記載がある。
引用例2記載の「画素(以下、ピクセルともいう)の数で表わされる画像サイズ」は、補正発明の「画素数」と異ならず、プリント媒体の寸法に合せたサイズ変換を行う以上は、縦横の画素数が必要なことは当然である。
ところで、印刷されたものの縦横サイズは、縦横の画素数をプリンタの解像度(縦横それぞれの)で除した値であるから、引用例2には、画像フォーマット(補正発明の「画像ファイルのフォーマット」に相当)が既知であることを前提として、ファイルヘッダー(同「ヘッダ部」に相当)を読み込むことにより、縦横の画素数を抽出し、それに基づいてプリント媒体の寸法に合せたサイズ変換を行う(同「ビットイメージ画像を印画範囲に収めるのに適したサイズに拡大・縮小を行う」に相当。)技術が記載されている。そして、引用発明1においても、プリント媒体の寸法に合せた印刷を行うことが有用なことは明らかであるから、引用例2記載の技術を引用発明1に適用することは当業者にとって想到容易である。
上記引用例2記載の技術と相違点に係る補正発明の構成とは、「画像ファイルのフォーマット」が既知であるか、画像ファイルを開いてからヘッダ部を解析し画像ファイルのフォーマットを抽出するかの相違、及び「圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータ」の抽出に関する相違しかない。まず、後者について検討するに、「圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータ」をヘッダ部に記憶しておき、これを解析することにより同パラメータを抽出することは周知である(例えば特開平6-38172号公報参照。)から、引用例2記載の技術を引用発明1に適用する際に、「圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータ」をヘッダ部を解析し抽出することは設計事項に属する。
また、真実、ヘッダ部を解析し画像ファイルのフォーマットを抽出するかどうかについては、2.で述べた疑義があるため、ここではヘッダ部を解析すれば当然フォーマットを抽出できるか、又は「ヘッダ部を解析し」が「ヘッダ部等を解析し」の誤記であるとして、以下検討をすすめる。
そもそも、引用例2記載の技術と補正発明の上記相違は本件補正により生じたものであり、画像ファイルを開いてからヘッダ部を解析し画像ファイルのフォーマットを抽出することについての具体的記載は、本件補正後の明細書には皆無であるから、本件補正後の明細書に記載不備がないとすれば、画像ファイルを開いてからヘッダ部を解析し画像ファイルのフォーマットを抽出するように変更する程度のことは当業者にとって雑作もなく、そのように変更した上で引用例2記載の技術を引用発明1に適用することも当業者にとって想到容易というべきである。
さらに、引用例2記載の技術は画像フォーマットが既知であることを前提とするものであるが、ヘッダ部を解析すればフォーマットを抽出できるのであれば、画像フォーマットを既知としなければならない理由はない。本願出願前に頒布された特開平8-241229号公報(以下「引用例3」という。)には、「非管理ファイルFx のヘッダデータをRAM20に読込む。そして、ステップ54でヘッダデータ形式が本装置で許容されるデータ形式と一致するか(Fx のデータを本装置で処理可能か)判定する。」(段落【0037】)との記載があり、ヘッダデータに基づいてデータ形式を判定することが記載されている。同記載中の「ヘッダデータ形式」と補正発明の「フォーマット」を同視することはできないせよ、ファイルを処理する上で必要なデータを抽出する点において補正発明と共通しており、引用例2記載の技術を引用発明1に適用する上で必要となる画像ファイルのフォーマットを、引用例3記載の技術に倣い、ファイルを開いてからヘッダ部を解析することによって抽出することには何らの困難性もない。
また、「ヘッダ部を解析し」が「ヘッダ部等を解析し」の誤記であるとすれば(誤記であることだけで、十分2.の理由が妥当であることになる。)、次のとおりである。引用例3に「非管理ファイルFx に付されたファイル名の拡張子をチェックする。そして、ステップ50に移り、Fx の拡張子が本装置(電子楽器内のファイル管理装置)で許容される拡張子と一致するか(Fx のデータを本装置で処理可能か)判定する。」(段落【0036】)と記載があるところ、拡張子はフォーマットに通ずるものであるから、ファイルを開いてからヘッダ部等(これには拡張子も含まれる。)を解析することによって画像ファイルのフォーマットを抽出することには何らの困難性もない。さらに、本願出願前に頒布された特開平9-128309号公報(以下「引用例4」という。)に「属性情報が、その属性情報の付加されているメッセージ情報を編集することが可能なアプリケーションを示すアプリケーション情報を含み、読み出し部104が、データベース部102に記憶されたメッセージ文書情報を読み出すに際し、メッセージ文書情報のアプリケーション情報を参照し、メッセージ文書情報の読み出しに応じてそのアプリケーションを自動的に起動するアプリケーション起動部を備えた構成とすることが望ましい。」(段落【0028】)と記載があり、ここに記載の「アプリケーション情報」は補正発明の「画像フォーマット」と同視できないけれども、アプリケーションを起動する前に抽出する情報である点では軌を一にするものであるから、引用例4に倣っても、ファイルを開いてからヘッダ部等(これには拡張子も含まれる。)を解析することによって画像ファイルのフォーマットを抽出することには何らの困難性もない。
以上のとおりであるから、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(6)補正発明の独立特許要件の判断
相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1,引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて、又はこれらに加えて引用例3,4記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項に規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上述べたとおり、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項に規定に違反しているばかりか、本件補正事項の解釈次第によっては特許法17条の2第3項の規定にも違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年5月9日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項5】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「画像ファイルが格納されたメモリカードを接続するコネクタと、
前記コネクタを介して前記メモリカードを制御するカード制御手段と、
前記画像ファイルを読み出すファイル制御手段と、
前記ファイル制御手段が読み出した前記画像ファイルを所定の画像データの形式に変換する画像変換手段と、
画像変換された前記画像データに対して画像処理を行い印刷可能なデータ形式に変換する画像処理手段と、
印刷すべき一枚以上の画像を所定の手順で決定し、少なくとも前記ファイル制御手段に指示を出す印刷管理手段と、
を有するプリンタ装置であって、
前記画像変換手段は、前記メモリカードから読み出された前記画像ファイル毎にそれぞれのヘッダ部を解析し少なくとも縦横の画素数と圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータを抽出する手段と、前記パラメータを用いて圧縮画像データをビットイメージ画像に展開する手段と、展開されたビットイメージ画像を印画範囲に収めるのに適したサイズに拡大・縮小を行う変倍手段と、を備えたことを特徴とするプリンタ装置。」

2.本願発明の進歩性の判断
本願発明と引用発明1とは、「第2[理由]3(4)」で述べた一致点において一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉補正発明の「メモリカードから読み出された前記画像ファイル毎に各前記画像ファイルを開いてからそれぞれのヘッダ部を解析し少なくとも前記画像ファイルのフォーマットと縦横の画素数と圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータとを抽出する手段と、展開されたビットイメージ画像を印画範囲に収めるのに適したサイズに拡大・縮小を行う変倍手段」を備え、上記構成により抽出された「圧縮画像を展開するのに必要な所定のパラメータ」を用いて圧縮画像データをビットイメージ画像に展開するのに対し、引用発明1がこれら構成を有するとはいえない点。

この相違点に係る本願発明の構成を採用することが容易であることは「第2[理由]3(5)」で述べたと同様であり(ただし、引用例2記載の技術と相違点に係る補正発明の構成としてあげた「画像ファイルのフォーマット」が既知であるか、画像ファイルを開いてからヘッダ部を解析し画像ファイルのフォーマットを抽出するかの相違に関する記述は不要である。)、相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1,引用例2記載記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-14 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-05 
出願番号 特願平9-237999
審決分類 P 1 8・ 561- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立澤 正樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 島▲崎▼ 純一
藤本 義仁
発明の名称 プリンタ装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  

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