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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1145751
審判番号 不服2003-24921  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-25 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 平成10年特許願第 92981号「波長可変擬似位相整合素子」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月19日出願公開、特開平11-288011〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年4月6日の出願であって、平成15年11月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し同年12月25日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年1月26日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成16年1月26日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年1月26日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1を、下記のように補正することを含むものである。
「 【請求項1】
非線形光学媒質板の板内に周期波数方向に等周期的に分極が付与されかつ被変換光が入射する入射端面とこの入射端面と対向する側に変換光が出射する出射端面とを有する波長可変擬似位相整合素子において、
上記非線形光学媒質板の回転中心を上記被変換光の入射端面に達する以前の光路の延長線上に置くと共に、
上記非線形光学媒質板は、前記回転中心を中心として回転できるように回転機構を有しており、
上記入射端面での入射光軸、上記出射端面での出射光軸及び上記板内での板内光軸の三者が互いに共軸となる基準線を上記非線形光学媒質板内に規定し、
上記基準線が上記板内光軸と一致する場合を回転角零の位置とし、
上記分極の周期波数方向と上記基準線とが19.5°から54.7°の角度をなすようにし、
上記非線形光学媒質板の等周期的な分極の周期を、中央波長での位相整合に要する周期に上記角度の余弦を乗じた値とした
ことを特徴とする波長可変擬似位相整合素子。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、非線形光学媒質板について、「前記回転中心を中心として回転できるように回転機構を有しており」との限定、同じく、基準線について、「板内光軸と一致する場合を回転角零の位置とし」との限定、同じく、分極の周期波数方向と基準線とがなす角度について、「19.5°から54.7°の角度をなす」との限定、同じく、等周期的な分極について、「中央波長での位相整合に要する周期に上記角度の余弦を乗じた値とした」との限定をそれぞれ行うものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について検討する。

(2)先願明細書記載の発明
原査定の理由に引用された特願平9-295170号は、平成9年10月28日の出願であって、平成11年5月21日に出願公開がなされた(特開平11-133470号)。その願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポンプ光発振手段と周期的分極反転素子と光共振器とを有する光パラメトリック発振手段、および周期的分極反転素子へのポンプ光の入射角度を変えるための素子回転手段とを有し、且つ周期的分極反転素子として、その周期的分極反転層に垂直にポンプ光を入射した場合における光パラメトリック発振光の波長が縮退波長になる分極反転周期または赤外吸収端波長になる分極反転周期のいずれか短い方の分極反転周期を有するものを用いることを特徴とする光発振装置。
【請求項2】 周期的分極反転素子が、その回転によってもポンプ光の入射光軸のずれを生じない形状を有する請求項1記載の光発振装置。
【請求項3】 周期的分極反転素子が、そのポンプ光入射面および発振光出射面の両面が周期的分極反転素子をその回転中心の周りに回転したときの回転円の円弧と同じ円弧形状を呈する請求項1または2記載の光発振装置。」

(イ)「【0010】
【作用】本発明では、素子回転手段により回転する周期的分極反転素子にポンプ光が入射される。固有の分極反転周期が例えばΛの周期的分極反転素子が回転角θだけ回転した状態の時にポンプ光が入射されると、図2にて後記するように、その場合における入射角は光の屈折によりθ’となり、且つ実効的分極反転周期Λ’はΛ/cosθ’となって、入射角θ’に依存する。ところで、周期的分極反転素子から発振されるシグナル光とアイドラー光などの光パラメトリック発振光(以下、OPO)の各波長は、周期的分極反転素子の実効的分極反転周期Λ’の大きさによって変化するので、回転する周期的分極反転素子にポンプ光が入射されることにより入射角θ’が刻々変化し、それに伴って発振されるOPOの波長も連続的に変化する。さらに本発明においては、周期的分極反転素子として、その周期的分極反転層に垂直にポンプ光を入射した場合におけるOPOの波長が縮退波長になる分極反転周期または赤外吸収端波長になる分極反転周期のいずれか短い方の分極反転周期を有するものを用いるので、後記の実施例および比較例から明らかなように広い波長範囲の発振光が得られる。かかる高性能、高機能を有しながら、本発明の光発振装置は、一つのポンプ光発振手段、一つの光パラメトリック発振手段、および素子回転手段にて構成し得るので極めて構造が簡単であり、しかして安価に製造することができる。」

(ウ)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図例により詳細に説明する。図1は本発明の基本構造についての説明図であり、図2の(a)と(b)とは周期的分極反転素子の回転による実効的分極反転周期の変化についての説明図であり、図3〜図5はいずれもOPOの波長と周期的分極反転素子の分極反転周期との関係を示す概念的なグラフであり、図6〜図7はいずれも周期的分極反転素子例の断面図であり、図8は本発明実施例1の光発振装置から得られる光パラメトリック発振の結果を示すグラフであり、図9は本発明実施例2の光発振装置から得られる光パラメトリック発振の結果を示すグラフである。
【0012】図1において、Pはポンプ光発振手段、REは光共振器、Dは光共振器RE内に設置された周期的分極反転素子、Eは光共振器REと周期的分極反転素子Dとからなる光パラメトリック発振手段、Rは周期的分極反転素子Dをその回転中心Mの周りに回転させるための素子回転手段である。ポンプ光発振手段Pからは、波長λp のポンプ光が光パラメトリック発振手段Eに入射され、光パラメトリック発振手段Eからはシグナル光λs とアイドラー光λi が発振される。なお、その際の光パラメトリック発振手段Eからの発振光中には、上記の二光だけでなく不変換のポンプ光やその他の複合光などのノイズ光が常に含まれているが、本発明での以下説明においてはそれらノイズ光については言及しない。
【0013】図2において、(a)はポンプ光が周期的分極反転素子Dの周期的分極反転層D1に対して垂直に入射する状態、即ち周期的分極反転素子Dの回転角が0度の場合における入射状態を示し、(b)は素子回転手段R(図2では図示せず)により周期的分極反転素子Dが(a)の状態から回転角θだけ回転したときにおけるポンプ光の入射状態を示す。回転角θのとき、ポンプ光の周期的分極反転素子Dへの入射角はスネルの法則に従って屈折してθ’となる。(a)の状態においては、固有の分極反転周期Λを有する周期的分極反転素子Dの実効的分極反転周期Λ’はΛに等しいが、(b)の状態においてはその実効的分極反転周期Λ’はΛ/cosθ’となる。入射角θ’は、回転角θに依存するので、結果的に実効的分極反転周期Λ’は回転角θに依存することになる。したがって周期的分極反転素子Dを回転させて回転角θを変化させることにより、即ち入射角θ’を変化させることにより、実効的分極反転周期Λ’を変化させることができ、この結果、波長λp の一つのポンプ光から波長が連続的に変化するシグナル光とアイドラー光とを発振させることができる。」

(エ)「【0020】周期的分極反転素子の外観形状は任意であって、その回転によってポンプ光の入射光軸にずれが生じる場合には、光共振器の位置、あるいはその他の個所を必要に応じて調整するなどして光軸のずれを補償すればよい。しかし周期的分極反転素子として、その回転によってもポンプ光の入射光軸にずれが生じないような外観形状のものは、上記した光軸のずれ補償が不必要となるので特に好ましい。かかる外観形状の例を図6および図7に示す。図6に示す例は円盤形であって、その回転中心Mの両側に同数の分極反転層D1が一定の固有分極反転周期Λにて並列した構造を有する。この周期的分極反転素子Dをその回転中心Mを中心に回転させ、且つ該回転中心Mに向かってポンプ光を入射するときは、該素子の回転角θが変化しても光軸にずれが生じることがない。
【0021】図7に示す例は、そのポンプ光入射面D2および発振光出射面D3の両面が周期的分極反転素子をその回転中心Mの周りに回転したときの回転円の円弧と同じ円弧形状を呈している。例えば、図6に示す円盤形の周期的分極反転素子Dをその回転中心Mから上下に等距離の位置で分極反転層D1に垂直に切断した如き疑似長方形を有する。したがってその両側面D2、D3の全体、またはその大部分は、一つの円の円弧形状となっている。図7において、今、両側面D2、D3のうちの点a-点b間と点a’-点b’間とが中心Mに対して対称円弧形状を有していると、回転中心Mに向かってポンプ光を入射し、且つポンプ光の入射個所が点a〜点b間または点a’〜点b’間の範囲内となるように周期的分極反転素子Dの回転角θを調節すると、図3の例と同様に入射光軸にずれが生じることなく、ポンプ光を入射することができる。
【0022】なお図2から容易に理解されることであるが、回転角θが0度から+90度または-90度に近付くにつれてポンプ光の周期的分極反転素子Dへの入射角が大きくなってポンプ光が通過し得る分極反転層D1の数が減少し、このためにシグナル光とアイドラー光とを発振させる機能が逓減する。したがって本発明においては、回転角θまたはポンプ光の周期的分極反転素子Dへの入射角θは、0〜±70度程度、特に0〜±40度程度の範囲とすることが好ましい。
【0023】素子回転手段としては、周期的分極反転素子を、就中その中の分極反転層の中心点の廻りに少なくとも前記した回転角度±θで回転させ得る限り、種々の構造あるいは機構のものであってよい。例えば、周期的分極反転素子を所定の位置に設置固定して回転させ得る縦形あるいは横形の回転デッキ、周期的分極反転素子のポンプ光非透過部分をアームにて挟持あるいはその他の方法で保持して回転させるアーム保持形回転機などが例示される。さらに素子回転手段は、一方方向にのみ回転するものであってもよく、少なくとも所望の回転角度間を往復回転するものであってもよい。」

(オ)「【0027】実施例2
長さ30mm、厚さ0.5mmの図6に示すような円盤状を有し、且つ周期的分極反転層に垂直に波長0.532μmのポンプ光を入射した場合におけるOPOの波長が縮退波長になるときの固有分極反転周期が6.8μmであるLiNbO3 結晶からなる周期的分極反転素子を用い、25℃において、その一方の円弧状側面からNd:YAGレーザー光の第二高調波である波長0.532μmのポンプ光を入射しつつ、周期的分極反転素子を0〜約57度回転させた。この回転により、実効的分極反転周期は6.8μmから12.3μmまで変化する。その結果を図9に示す。同図において、曲線1はポンプ光の入射角の変化に対するシグナル光の発振波長の変化を、曲線2はポンプ光の入射角の変化に対するアイドラー光の発振波長の変化を、また曲線3はポンプ光の入射角の変化に対する周期的分極反転素子における実効的分極反転周期の変化を、それぞれ示す。発振したシグナル光の最大波長は、5.1μmであり、発振したアイドラー光の最小波長は、0.594μmであって、両発振光は波長約1.1μmにおいて縮退している。しかして同図から明らかなように、周期的分極反転素子を上記の通りに回転させることにより、波長0.532μmのポンプ光から波長が0.594μmから5.1μmまで連続的に変化する光を発振させることができた。」

(3)対比
本願補正発明と先願明細書の主として実施例2に記載された発明(以下、「先願発明」という。)を対比する。

(a)先願明細書において、「【0013】図2において、(a)はポンプ光が周期的分極反転素子Dの周期的分極反転層D1に対して垂直に入射する状態、・・・ したがって周期的分極反転素子Dを回転させて回転角θを変化させることにより、即ち入射角θ’を変化させることにより、実効的分極反転周期Λ’を変化させることができ、この結果、波長λp の一つのポンプ光から波長が連続的に変化するシグナル光とアイドラー光とを発振させることができる。」(摘記(ウ))、「【0020】 ・・・ 図6に示す例は円盤形であって、その回転中心Mの両側に同数の分極反転層D1が一定の固有分極反転周期Λにて並列した構造を有する。・・・」(摘記(エ))と記載されており、先願発明は、本願補正発明の「非線形光学媒質板の板内に周期波数方向に等周期的に分極が付与されかつ被変換光が入射する入射端面とこの入射端面と対向する側に変換光が出射する出射端面とを有する」との技術的事項を有しているということができる。

(b)先願明細書の「【0020】 ・・・ 図6に示す例は ・・・ この周期的分極反転素子Dをその回転中心Mを中心に回転させ、且つ該回転中心Mに向かってポンプ光を入射するときは・・・」(摘記(エ))の記載より、先願発明は、本願補正発明の「上記非線形光学媒質板の回転中心を上記被変換光の入射端面に達する以前の光路の延長線上に置くと共に、上記非線形光学媒質板は、前記回転中心を中心として回転できるように回転機構を有しており」との技術的事項を有していることは明らかである。

(c)上記(a)、(b)の関係より、先願発明の「周期的分極反転素子」、「素子回転手段」が、それぞれ本願補正発明の「波長可変疑似位相整合素子」、「回転機構」に相当することも明らかである。

(d)先願明細書において、「【0010】【作用】本発明では、素子回転手段により回転する周期的分極反転素子にポンプ光が入射される。固有の分極反転周期が例えばΛの周期的分極反転素子が回転角θだけ回転した状態の時にポンプ光が入射されると、図2にて後記するように、その場合における入射角は光の屈折によりθ’となり、且つ実効的分極反転周期Λ’はΛ/cosθ’となって、入射角θ’に依存する。」(摘記(イ))と記載されており、また、上記記載中の「固有の分極反転周期Λ」、「実効的分極反転周期Λ’」は、それぞれ本願補正発明の「非線形光学媒質板の等周期的な分極の周期」、「中央波長での位相整合に要する周期」に相当するので、先願発明は、本願補正発明の「非線形光学媒質板の等周期的な分極の周期を、中央波長での位相整合に要する周期に上記角度の余弦を乗じた値とした」との技術的事項を有しているということができる。

したがって、両者は、
「非線形光学媒質板の板内に周期波数方向に等周期的に分極が付与されかつ被変換光が入射する入射端面とこの入射端面と対向する側に変換光が出射する出射端面とを有する波長可変擬似位相整合素子において、
上記非線形光学媒質板の回転中心を上記被変換光の入射端面に達する以前の光路の延長線上に置くと共に、
上記非線形光学媒質板は、前記回転中心を中心として回転できるように回転機構を有しており、
上記非線形光学媒質板の等周期的な分極の周期を、中央波長での位相整合に要する周期に上記角度の余弦を乗じた値とした波長可変擬似位相整合素子」
である点で一致し、次の点で一応相違する。

相違点:
本願補正発明が、「上記入射端面での入射光軸、上記出射端面での出射光軸及び上記板内での板内光軸の三者が互いに共軸となる基準線を上記非線形光学媒質板内に規定し、 上記基準線が上記板内光軸と一致する場合を回転角零の位置とし、上記分極の周期波数方向と上記基準線とが19.5°から54.7°の角度をなすように」しているのに対し、先願発明は、基準線、及び基準線と回転角、周期波数方向との関係について特に規定していない点。

(4)判断
上記相違点につき検討すると、先願明細書において、「【0020】 ・・・ 周期的分極反転素子として、その回転によってもポンプ光の入射光軸にずれが生じないような外観形状のものは、上記した光軸のずれ補償が不必要となるので特に好ましい。かかる外観形状の例を図6および図7に示す。図6に示す例は円盤形であって、 ・・・ この周期的分極反転素子Dをその回転中心Mを中心に回転させ、且つ該回転中心Mに向かってポンプ光を入射するときは、該素子の回転角θが変化しても光軸にずれが生じることがない。」(摘記(エ))と記載されており、先願発明では、入射光が回転中心Mに向かって入射する場合に光軸にずれが生じないので、いずれの回転角においても、入射端面での入射光軸、出射端面での出射光軸及び板内での板内光軸の三者が互いに共軸となり、それら全ての場合を基準線として規定することができる。また、上記いずれの回転角においても、基準線と板内光軸は常に一致するため、同様にそれら全ての場合を回転角零の位置とすることができる。
そして、先願明細書では「【0027】実施例2 ・・・ その一方の円弧状側面からNd:YAGレーザー光の第二高調波である波長0.532μmのポンプ光を入射しつつ、周期的分極反転素子を0〜約57度回転させた。」(摘記(オ))と記載されており、例えば、0〜約57度のほぼ中間にあたる28°回転させた際の、入射端面での入射光軸、出射端面での出射光軸及び板内での板内光軸の三者が互いに共軸となる線を上記基準線と規定し、かつ上記回転角零の位置とすることができ、その場合、「分極の周期波数方向」と「基準線」のなす角は28°となり、本願補正発明の19.5°から54.7°の角度内となる。
本件補正後の請求項1には、「基準線」、「回転角零」を規定するための条件、及び単にそれらを規定することが示されているのみであり、規定すること以上の具体的な態様が開示されているわけではないから、上記の如く、先願発明が、「基準線」、「回転角零」について、本願補正発明の条件を満たし、さらに「分極の周期波数方向」と「基準線」のなす角についても、本願補正発明の範囲を満足する以上、上記相違点は実質的な差異とはいえない。

したがって、本願補正発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願補正発明の発明者がその出願前の特許出願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また本願補正発明の出願の時において、その出願人が上記発明の出願人とも同一でもないので、本願補正発明は特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年1月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年10月27日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、請求項1〜6に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「【請求項1】
非線形光学媒質板の板内に周期波数方向に等周期的に分極が付与されかつ被変換光が入射する入射端面とこの入射端面と対向する側に変換光が出射する出射端面とを有する波長可変擬似位相整合素子において、
上記非線形光学媒質板の回転中心を上記被変換光の入射端面に達する以前の光路の延長線上に置くと共に、
上記入射端面での入射光軸、上記出射端面での出射光軸及び上記板内での板内光軸の三者が互いに共軸となる基準線を規定し、
上記分極の周期波数方向と上記基準線とが零でない角度をなすようにした、
ことを特徴とする波長可変擬似位相整合素子。」(以下、「本願発明」という。)

(2)先願明細書記載の発明
原査定の理由に引用された特願平9-295170号(特開平11-133470号)の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、上記2.(2)先願明細書記載の発明において摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、非線形光学媒質版について、「前記回転中心を中心として回転できるように回転機構を有しており」との限定、同じく、基準線について、「板内光軸と一致する場合を回転角零の位置とし」との限定、同じく、分極の周期波数方向と基準線の角度について、「19.5°から54.7°の角度をなす」との限定、同じく、等周期的な分極について、「中央波長での位相整合に要する周期に上記角度の余弦を乗じた値とした」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件の全てを含む本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、上記先願明細書記載の発明と同一であるから、本願発明も、同様の理由により、上記先願明細書記載の発明と同一である。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者がその出願前の特許出願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また本願発明の出願の時において、その出願人が上記発明の出願人とも同一でもないので、本願発明は特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-01 
結審通知日 2006-08-08 
審決日 2006-08-29 
出願番号 特願平10-92981
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 161- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 高盛  
特許庁審判長 瀧本 十良三
特許庁審判官 鈴木 俊光
井上 博之
発明の名称 波長可変擬似位相整合素子  
代理人 入戸野 巧  
代理人 根岸 裕一  
代理人 本山 泰  

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