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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1145794
審判番号 不服2004-13524  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-01 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 平成 7年特許願第 79177号「X線透視撮影台」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月22日出願公開、特開平 8-275940〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年4月4日の出願であって、平成16年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月1日に審判請求が行われるとともに、同年7月30日付けで手続補正が行われたものである。

2.平成16年7月30日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年7月30日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)平成16年7月30日付け手続補正(本件補正)
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成16年3月15日付け手続補正書)の
「【請求項1】 天板の裏側にX線受像装置を備え起倒動可能に構成された撮影台と、天井から移動可能に吊り下げられたX線管とを備え、前記天板の起倒動に対して前記X線管を移動させてX線透視撮影を行うX線透視撮影台であって、
前記撮影台は、前記天板を水平位にしたときに前記天板の長さの中央部よりも足側へ偏らせた位置に設けられた支持台によって支持され、前記支持台には、前記天板とX線受像装置とを上下方向へ昇降させる昇降機構と、この昇降機構と前記天板を支持する支持枠との間に設けられた天板起倒機構とが設けられていることを特徴とするX線透視撮影台。」を、補正後の
「【請求項1】天板の裏側にX線受像装置を備え起倒動可能に構成された撮影台と、天井から移動可能に吊り下げられたX線管とを備え、前記天板の起倒動にX線透視撮影台であって、
前記撮影台は、前記天板を水平位にしたときに前記天板の長さの中央部よりも足側に偏らせた位置に設けられた支持台によって支持され、前記支持台には、前記天板を逆傾斜位にしたときに前記天板を床面と接触しないように高くし、その他の傾斜角度では前記天板を低くするように、前記天板とX線受像装置とを上下方向へ昇降させる昇降機構と、この昇降機構と前記天板を支持する支持枠との間に設けられた天板起倒動機構とが設けられていることを特徴とするX線透視撮影台。」(下線部分は、補正箇所である。以下、補正後の請求項1に記載された発明を、「本願補正発明」という。)と補正するものである。
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項である「昇降機構」について「前記天板を逆傾斜位にしたときに前記天板を床面と接触しないように高くし、その他の傾斜角度では前記天板を低くするように、」との限定を付加するものであって、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について検討する。

(2)特許法第36条違反について
本願補正発明において「前記天板の起倒動にX線透視台であって、」と記載されているが、この記載は、X線透視台において、「天板の起倒動」と他の部材の動作との関係が不明で、どのような構成を表しているのか明らかでないから、特許請求の範囲に特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が全て記載されているとは認められず、したがって、平成6年改正前の特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない。

(3)特許法第29条第2項違反について
本願補正発明は、上記(2)で述べたように記載不備があるが、この記載不備は、上記(1)の本件補正前の請求項1の記載を参酌すると、「前記天板の起倒動に対して前記X線管を移動させてX線透視撮影を行うX線透視撮影台であって、」と解することもできるので、このように解釈して、本願補正発明が進歩性を有するかどうか検討する。
(3-1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平5-146428号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、「X線透視撮影装置」の発明が記載されており、図面とともに次の記載がある。
ア.「図1はこの実施例に係るX線透視撮影台の全体側面図である。 床面上に設置された基台1に上下方向に変位可能に上下可動枠2が設けられている。上下可動枠2にはその上下方向に延びるラックギア3が付設されている。このラックギア3は基台1に設けられた正逆転可能な電動モータ(図示せず)で駆動回転されるピニオンギア4に噛合されており、電動モータによって上下可動枠2が基台1に対して上下方向に駆動変位されるようになっている。
上下可動枠2には、水平方向の軸芯P1周りに回動可能に本体回転用フレーム5が取り付けられている。本体回転用フレーム5には扇型のラックギア6が一体的に付設されている。このラックギア6は上下可動枠2に内装された正逆転可能な電動モータ7により駆動回転されるピニオンギア8に噛合されており、電動モータ7によって本体回転用フレーム5が上下可動枠2に対して回動されるようになっている。
本体回転用フレーム5には、回転軸芯P1に直交する水平方向に移動可能に本体フレーム9が取り付けられている。この本体フレーム9には、速写枠10, 天板11, X線管12と、光学系14およびX線テレビカメラ15を備えたイメージインテンシファイヤ13とが備えられており、これらの機器が、本体フレーム9と一体的に上下動あるいは回動する。
・・・・・
このI.I駆動支持アーム17の回転に連動してイメージインテンシファイヤ13も回転し、図示のような鉛直姿勢から水平の横倒れ姿勢に切り換えられるようになっている。横倒れ姿勢において、縦長形状であるイメージインテンシファイヤ13と床面との距離は大きくなり、その分、本体フレーム9の下降量が増し、図示しないストレッチャー上の被検者を天板11上に乗せ替えるのが容易になる。」(第3頁左欄第2〜42行)
イ.「イメージインテンシファイヤ13を横倒れ姿勢にして、本体フレーム9を下降させる構成の装置では、本体フレーム9の回動機構と上下動機構とが独立している。本体フレーム9の回動は検査時や歩行可能な被検者が天板11に乗るときなどに行われるが、回動の際、本体フレーム9の寝台部分(天板11の取り付け部分) やX線管12が検査室の床面や天井面に接触するおそれがあり、独立に動作する回動機構と上下動機構とを連動させてその接触を回避する必要がある。
例えば、〔イ〕図2の正面図に示すように、本体フレーム9を水平姿勢(この姿勢のときの回動角は0°)から立位姿勢(回動角は90°)に回動させる場合、そのままの位置では本体フレーム9の寝台部分21の一部が床面と接触するため、本体フレーム9を上昇させながら回動を行う。
〔ロ〕その逆の場合、すなわち、回動角が90°である立位姿勢から水平姿勢に戻す場合は、本体フレーム9を下降させながら回動を行う。上記のように上昇させた位置から回動だけを行うとX線管12が天井面と接触する可能性があり、これを回避するためである。
また、〔ハ〕図3の正面図に示すように、本体フレーム9を反時計回りに45°(-45°) 傾斜させた姿勢(逆傾斜姿勢という)から水平姿勢に回動させる場合、そのままの位置ではX線管12が天井面と接触する可能性があるため、本体フレーム9を下降させながら回動を行う。
〔ニ〕その逆の場合、すなわち、水平姿勢から逆傾斜姿勢に変更する場合は、本体フレーム9の寝台部分21の一部が床面と接触するのを避けるため、本体フレーム9を上昇させながら回動を行う。」(第3頁左欄第43行から右欄第25行)
また、図1〜3の記載から、撮影台は、天板11を水平姿勢にしたときに前記天板の長さの中央部の位置に設けられた支持手段によって支持されていることが、見て取れる。
そして、これらの記載から、引用刊行物には「天板11の裏側にイメージインテンシファイヤ13及びX線テレビカメラ15を備え起倒動可能に構成された撮影台と、本体フレーム9に取り付けられたX線管12とを備え、前記天板11の起倒動に対して前記X線管12を移動させてX線透視撮影を行うX線透視撮影台であって、前記撮影台は、前記天板11を水平姿勢にしたときに前記天板の長さの中央部の位置に設けられた支持手段によって支持され、前記支持手段には、前記天板11を逆傾斜姿勢にしたときに前記天板11を床面と接触しないように高くし、水平姿勢では前記天板11を低くするように、前記天板11とイメージインテンシファイヤ13及びX線テレビカメラ15とを上下方向へ昇降させる上下動機構と、この上下動機構と前記天板11を支持する本体フレーム9との間に設けられた回動機構とが設けられているX線透視撮影台。」(引用刊行物記載の発明)が記載されているものと認められる。

(3-2)対比・判断
本願補正発明と上記引用刊行物記載の発明とを対比する。
引用刊行物記載の発明の「イメージインテンシファイヤ13及びX線テレビカメラ15」「支持手段」「上下動機構」「回動機構」「本体フレーム9」が、それぞれ本願補正発明の「X線受像装置」「支持台」「昇降機構」「天板起倒動機構」「支持枠」に相当することは明らかである。
また、引用刊行物記載の発明の「X線透視撮影台」が、本願補正発明の「X線透視撮影台」と対応することも明らかである。
したがって、両者は「天板の裏側にX線受像装置を備え起倒動可能に構成された撮影台と、移動可能に設けられたX線管とを備え、前記天板の起倒動に対して前記X線管を移動させてX線透視撮影を行うX線透視撮影台であって、
前記撮影台は、支持台によって支持され、前記支持台には、前記天板を逆傾斜位にしたときに前記天板を床面と接触しないように高くし、水平位では前記天板を低くするように、前記天板とX線受像装置とを上下方向へ昇降させる昇降機構と、この昇降機構と前記天板を支持する支持枠との間に設けられた天板起倒動機構とが設けられていることを特徴とするX線透視撮影台。」である点で一致し、次の点で相違すると認められる。
(相違点1)
X線管の支持について、本願補正発明では、天井から移動可能に吊り下げられているのに対し、引用刊行物記載の発明では、本体フレームに設けられている点。
(相違点2)
天板に対して支持台を設ける位置に関して、本願補正発明では、天板の長さの中央部よりも足側に偏らせた位置であるのに対し、引用刊行物記載の発明では、天板の長さの中央部である点。
(相違点3)
昇降機構の動作に関して、本願補正発明では、天板を逆傾斜位にしたときに天板を床面と接触しないように高くし、その他の傾斜角度では前記天板を低くするのに対して、引用刊行物には、天板を逆傾斜位にしたときに天板を床面と接触しないように高くし、水平位では天板を低くすることは記載されているが、逆傾斜位及び水平位以外の姿勢において、天板を低くするかどうか明らかでない点。
上記相違点について検討する。
相違点1について、
X線撮影装置において、X線管を天井から移動可能に吊り下げ、X線管を移動させて撮影を行うように構成することは、特開昭63-281629号公報や特開平2-159256号公報にみられるように周知の技術であって、この周知技術を、同様のX線撮影装置装置である引用刊行物記載の発明に用いることは当業者ならば適宜採用する事項と認められる。
相違点2について、
X線撮影装置において、天板の昇降機構及び天板の起倒動機構を備えた支持台で天板を支持する場合に、被検者へのアプローチなどを考慮して、天板の長さの中央部よりも足側に偏らせた位置に支持台を設けることは原査定の拒絶の理由で提示した特開平6-133965号公報や実願昭49-108820号(実開昭51-35970号)のマイクロフィルムにみられるように周知の技術であって、この周知技術を同様なX線撮影装置である引用刊行物記載のX線透視撮影台に用いて、天板の長さの中央部よりも足側に偏らせた位置に天板を支持する支持台を設けるようにすることは当業者ならば容易に想到し得たものと認められる。
相違点3について、
引用刊行物には、図3及びそれに関連する上記摘記事項(イ)の記載にみられるように、逆傾斜姿勢に変更する場合には、本体フレーム9の寝台部分21(本願発明の天板と対応)の一部が床面と接触するのを避けるために、本体フレーム9を上昇させることが記載されている。そして、X線撮影装置において、上記相違点2の判断で述べたように、天板の足側に偏らせた位置に支持台を設けるという周知技術を用いる場合には、支持台と天板の頭側の端部との距離が長くなるから、逆傾斜姿勢(逆傾斜位)の場合に最も天板が床面と接触しやすくなることが明らかである。してみると、水平位などの、逆傾斜位以外の傾斜角度では天板を低くするように天板を昇降させることは、当業者が普通に採用する事項である。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用刊行物記載の発明及び上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用刊行物記載の発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年7月30日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年3月15日付け手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された次のとおりのものである。
「天板の裏側にX線受像装置を備え起倒動可能に構成された撮影台と、天井から移動可能に吊り下げられたX線管とを備え、前記天板の起倒動に対して前記X線管を移動させてX線透視撮影を行うX線透視撮影台であって、
前記撮影台は、前記天板を水平位にしたときに前記天板の長さの中央部よりも足側へ偏らせた位置に設けられた支持台によって支持され、前記支持台には、前記天板とX線受像装置とを上下方向へ昇降させる昇降機構と、この昇降機構と前記天板を支持する支持枠との間に設けられた天板起倒機構とが設けられていることを特徴とするX線透視撮影台。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用刊行物、及びその記載事項は上記「2.(3-1)引用例」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「昇降機構」の限定事項である「前記天板を逆傾斜位にしたときに前記天板を床面と接触しないように高くし、その他の傾斜角度では前記天板を低くするように、」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3-2)対比・判断」に記載したとおり、引用刊行物記載の発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物記載の発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2〜4に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-10 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-05 
出願番号 特願平7-79177
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
菊井 広行
発明の名称 X線透視撮影台  

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