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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1146211 |
審判番号 | 不服2004-617 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-08 |
確定日 | 2006-11-02 |
事件の表示 | 平成11年特許願第132866号「地図表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月24日出願公開、特開2000-321975〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成11年5月13日の出願であって、平成15年12月5日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成16年1月8日付けで本件審判請求がされるとともに、同月26日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成15年1月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正目的 本件補正が特許請求の範囲の減縮(特許法17条の2第4項2号該当)を目的とすることは明らかである。 そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。 2.補正発明の認定 補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づいて、表示手段に少なくとも建造物を3次元的に表示する地図表示装置において、 前記表示手段に表示された地図上に、前記全ての建造物の高さを一定の高さとなるよう低くして3次元的にまたは前記全ての建造物の高さを一律に0とすることによって平面形状にて前記複数の建造物を表示すると共に前記複数の建造物に関連する建造物名を示す文字を同時に表示する場合と、それらの文字を表示したままで前記建造物の高さを変更することなく前記建造物を表示する場合とを選択可能に構成したことを特徴とする地図表示装置。」 3.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-281889号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア〜シの記載が図示とともにある。 ア.「表示装置の画面上に、地図と当該地図を構成する地図構成物の関連情報とを表示する地図表示装置において、 地図構成物の三次元情報が記憶された地図情報記憶手段と、 前記地図情報記憶手段に記憶されている地図構成物の関連情報が記憶された関連情報記憶手段と、 前記地図情報記憶手段に記憶された情報を基に、三次元座標上に地図構成物が配置された三次元地図を作成する三次元地図作成手段と、 前記三次元地図作成手段で作成された三次元地図の投影図を作成する際の視点位置を設定する視点設定手段と、 前記三次元地図作成手段で作成された三次元地図を前記視点設定手段で設定された視点位置から眺めたときに得られる投影図を作成する投影図作成手段と、 前記投影図作成手段で作成された投影図に表示されている地図構成物に対応する関連情報を前記関連情報記憶手段から読み出す読出し手段と、 前記投影図作成手段で作成された投影図に表示されている地図構成物の前記投影図上における表示領域を検出する表示領域検出手段と、 前記表示領域検出手段によって検出された地図構成物の表示領域に基づいて、当該地図構成物に対応する関連情報の前記投影図上における表示領域を設定する表示領域設定手段と、 前記表示領域設定手段によって設定された関連情報の表示領域上に、当該関連情報を付記する付記手段と、 前記付記手段によって関連情報が付記された前記投影図を、前記画像装置の画面上に表示する表示手段と、 を有することを特徴とする地図表示装置。」(【請求項1】) イ.「近年、現在地周辺や目的地周辺の状況をより把握し易くするために、三次元地図(実際には、三次元地図の投影図)を画面上に表示するナビゲーション装置の実現が要望されている。」(段落【0004】) ウ.「三次元地図表示のナビゲーション装置を実現した場合、二次元地図を画面上に表示する場合に比べて、建物、道路、地形等の地図構成物の関連情報(名称、案内等の情報)の視認性が低下するという問題が生じることが予測される。すなわち、二次元地図表示では、画面上に表示された地図構成物に単純に重ねて対応する関連情報を表示していた。しかし、三次元地図表示では、視線を変化させて斜めから眺めた風景を表示することもあるので、地図構成物が他の地図構成物に陰影されたり、眺める方向によって形状が変化したりする。このため、関連情報を常に見やすい位置に表示することができない。」(段落【0005】) エ.「付記手段は、地図構成物の表示領域と当該地図構成物に対応する関連情報の表示領域とが離れている場合、両者を関連づけるために、引き出し線又は枠付きの引き出し線(漫画の吹き出しのようなもの)を投影図に付記することが好ましい。」(段落【0020】) オ.「表示手段は、表示装置の画面上に表示する関連情報又は地図構成物を外部からの指令に基づいて切り替えることが好ましい。」(段落【0023】) カ.「本実施形態では、原則として、文字情報は、当該文字情報に対応するオブジェクト表示領域(実際にオブジェクトが表示画面上に表示されている領域)内に表示される。図1に示す例では、オブジェクト22〜25について、「○○ビル」、「△△マンション」等の文字情報が対応するオブジェクト表示領域内に表示されている。」(段落【0047】) キ.「オブジェクト表示領域内に文字情報が表示できないと判断した場合、文字情報は、そのオブジェクト表示領域の近傍に表示される。図1に示す例では、オブジェクト26について、文字情報「××医院」が引き出し線を用いてオブジェクト26の表示領域近傍に表示されている。」(段落【0048】) ク.「文字情報の表示領域の設定は、例えば陰面消去処理実行前(オブジェクト同士の重なりが考慮されていない状態)のスクリーン座標系上におけるオブジェクトのXY平面の占有領域に基づいても、設定することができる。しかしながら、この場合、図14(a)に示すように、オブジェクト142に付記する文字情報が、別のオブジェクト141に重なって、重なり合った部分が欠けたり、また別のオブジェクト141上に表示されたするという不具合が生じることがある。」(段落【0086】) ケ.「優先処理を実行しない図18(a)では、文字情報「○○ホテル」が、表示画面上において、対応するオブジェクトの手前に位置するオブジェクトの文字情報「××ビル」と互い重なり合って表示されている。もし、ユーザが何よりも自車近辺のホテル情報を知りたい時に、このような表示では問題がある。この場合、予めユーザが、「ホテル」という属性をもつ建物を優先して表示する旨の設定をしておき、この設定に従って優先処理を実行した図18(b)では、文字情報「××ビル」は消去されるので、上記問題は解消する。」(段落【0103】) コ.「優先処理をしない図19(a)では、誘導道路上にある文字情報「○○ビル」が文字情報「□□ビル」が付記されたオブジェクトと重なり合ってしまう。これに対して、誘導道路沿いのオブジェクトの文字情報を優先処理する図19(b)では、文字情報「□□ビル」が付記されたオブジェクトが消去されるため、文字情報「○○ビル」が見えるようになる。尚、図19に示す例のように、誘導道路を見やすくするため、誘導道路に重なって表示されるオブジェクトを透過表示する場合もある。」(段落【0104】) サ.「交通情報の表示を優先する図20(b)では、文字情報「××ビル」が消去されるため、渋滞開始地点の案内が見えるようになる。尚、図20に示す例のように、渋滞状況を見やすくするため、渋滞路に重なって表示されるオブジェクトを透過表示する場合もある。」(段落【0105】) シ.「図25は、優先表示により、省略した文字情報(重なり文字情報)があることをユーザに通知する例を示している。通知無しの図25(a)では、当然、文字情報「××ホテル」を表示するために、消去した文字情報があることはわからない。通知有りの図25(b)では、文字情報「××ホテル」の表示をボールドといった文字飾りを付けて表示し、画面上に表示されていない情報があることを通知する」(段落【0110】) 4.引用例記載の発明の認定 記載アの「地図構成物」とは「建物、道路、地形等」(記載ウ参照。)であり、「関連情報」には名称が含まれる(記載ウ,カ参照。)。 したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「表示装置の画面上に、地図と当該地図を構成する建物、道路、地形等の地図構成物の名称を含む関連情報とを表示する地図表示装置において、 地図構成物の三次元情報が記憶された地図情報記憶手段と、 前記地図情報記憶手段に記憶されている地図構成物の関連情報が記憶された関連情報記憶手段と、 前記地図情報記憶手段に記憶された情報を基に、三次元座標上に地図構成物が配置された三次元地図を作成する三次元地図作成手段と、 前記三次元地図作成手段で作成された三次元地図の投影図を作成する際の視点位置を設定する視点設定手段と、 前記三次元地図作成手段で作成された三次元地図を前記視点設定手段で設定された視点位置から眺めたときに得られる投影図を作成する投影図作成手段と、 前記投影図作成手段で作成された投影図に表示されている地図構成物に対応する関連情報を前記関連情報記憶手段から読み出す読出し手段と、 前記投影図作成手段で作成された投影図に表示されている地図構成物の前記投影図上における表示領域を検出する表示領域検出手段と、 前記表示領域検出手段によって検出された地図構成物の表示領域に基づいて、当該地図構成物に対応する関連情報の前記投影図上における表示領域を設定する表示領域設定手段と、 前記表示領域設定手段によって設定された関連情報の表示領域上に、当該関連情報を付記する付記手段と、 前記付記手段によって関連情報が付記された前記投影図を、前記画像装置の画面上に表示する表示手段と、 を有する地図表示装置。」(以下「引用発明」という。) 5.補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定 引用発明の「地図情報記憶手段」及び「地図を構成する建物」は、補正発明の「地図データ記憶手段」及び「建造物」にそれぞれ相当し、「表示手段に少なくとも建造物を3次元的に表示する地図表示装置」である点で、補正発明と引用発明は一致する。 引用発明の「関連情報」には建造物名が含まれ、それが文字情報であることは明らかであり(記載カ〜サ参照。)、引用発明は「複数の建造物に関連する建造物名を示す文字を同時に表示する」ものであり、その場合3次元的に表示された地図上に「それらの文字を表示したままで前記建造物の高さを変更することなく前記建造物を表示する」ものと認めることができる。 したがって、補正発明と引用発明とは、 「地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づいて、表示手段に少なくとも建造物を3次元的に表示する地図表示装置において、 前記表示手段に表示された地図上に、前記建造物の高さを変更することなく、前記複数の建造物に関連する建造物名を示す文字を同時に表示することができる地図表示装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉補正発明では「表示手段に表示された地図上に、前記建造物の高さを変更することなく、前記複数の建造物に関連する建造物名を示す文字を同時に表示する」場合と「表示手段に表示された地図上に、前記全ての建造物の高さを一定の高さとなるよう低くして3次元的にまたは前記全ての建造物の高さを一律に0とすることによって平面形状にて前記複数の建造物を表示すると共に前記複数の建造物に関連する建造物名を示す文字を同時に表示する場合」を選択可能に構成したのに対し、引用発明ではそのように構成していない点。 6.相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断 引用例の記載ウには、三次元地図表示では地図構成物(建造物)が他の地図構成物(建造物)に陰影されるため、関連情報(建造物名)を常に見やすい位置に表示することが困難であることが指摘されており、そのため「引き出し線を用いてオブジェクト26の表示領域近傍に表示」(記載キ)したり、一部の建造物名を非表示(記載ケ)としたり、又は一部の建造物そのものを非表示若しくは透過表示(記載コ,サ)とする等の措置が講じられている。さらに、一部の建造物名を非表示とする場合には、その旨通知する措置も講じられている(記載シ)。 上記措置は、建造物名を表示するに当たり三次元地図表示を採用したことが原因であることは、引用例の記載ウにあるとおりであり、同記載には「二次元地図を画面上に表示する場合に比べて」とある以上、建造物を二次元表示する場合に建造物名を示す文字を同時に表示する技術は、引用例の出願当時に公知であると解すべきであり、当審では同技術が本願出願当時に周知であると認める。そして、同周知技術においては、三次元地図表示における種々の問題点がなく、引用例において講じられている措置の多くは講じる必要がない。もちろん、上記周知技術は二次元表示を前提とするものであるから、「現在地周辺や目的地周辺の状況をより把握し易くする」(記載イ)点では引用発明のような三次元地図表示には劣るかもしれないが、種々の措置を講ずる必要がない点では優っている。 このように、上記周知技術と引用発明とは、一方が他方に対して圧倒的に優位な関係にあるのではなく、互いに他の欠点を補完しあう関係にあるというべきである。そして、地図表示に当たり、複数の表示モードを用意しておき、任意の表示モードを選択可能とすることは周知であるから、上記周知技術による表示モードと引用発明の表示モードを選択可能とすることは当業者にとって想到容易というべきである。 そして、上記周知技術による表示モードは「表示手段に表示された地図上に、前記全ての建造物の高さを一定の高さとなるよう低くして3次元的にまたは前記全ての建造物の高さを一律に0とすることによって平面形状にて前記複数の建造物を表示すると共に前記複数の建造物に関連する建造物名を示す文字を同時に表示する」モードにほかならない(二次元表示は「全ての建造物の高さを一律に0とすることによって平面形状にて前記複数の建造物を表示」に該当する。なお、三次元表示を前提として二次元表示を行うために建造物の高さを0とする技術については、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-292833号公報の「建物を元の高さよりもこの長さだけ低く表示すれば、建物の陰に隠れてしまっていた道路を見ることが可能となるのである。」(18頁以降の平成9年2月18日付け手続補正書の段落【0049】)及び「建物の頂上から重複部分下端までの長さを建物の元の高さ情報から減算したが、それに限らず、建物に隠された部分が分かる程度に建物の高さ情報を変更したり、重複部分の大きさに関係なく建物の高さ情報を0にしても同様な効果が得られるのは当然である。」(同じく段落【0061】)と記載があることを参照。)から、結局のところ、相違点に係る補正発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易であり、同発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 [補正の却下の決定のむすび] 補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。したがって、本件補正は特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年7月14日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づいて、表示手段に少なくとも建造物を3次元的に表示する地図表示装置において、 前記表示手段に表示された地図上に、前記建造物の高さを低くして3次元的にまたは平面形状にて前記建造物を表示すると共に複数の建造物に関連する建造物名を示す文字を同時に表示する場合と、それらの文字を表示したままで前記建造物の高さを変更することなく前記建造物を表示する場合とを選択可能に構成したことを特徴とする地図表示装置。」 2.本願発明の進歩性の判断 第2[理由]で述べたとおり、本願発明を限定的に減縮した補正発明が引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明が引用発明と同一発明でないことは明らかであるから、本願発明も引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたというべきであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項1に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-30 |
結審通知日 | 2006-09-05 |
審決日 | 2006-09-19 |
出願番号 | 特願平11-132866 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09B)
P 1 8・ 575- Z (G09B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
藤井 靖子 島▲崎▼ 純一 |
発明の名称 | 地図表示装置 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 伊藤 高順 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |