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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1147016 |
審判番号 | 不服2004-17778 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-01-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-27 |
確定日 | 2006-11-06 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第176560号「平面アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月10日出願公開、特開平 9- 8518〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件は,平成7年6月20日の出願であって,平成16年7月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年8月27日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により,平成16年7月5日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲である 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ボトムカバーとこのボトムカバーの表面を覆うトップカバーとからなる樹脂製ケースの内部に,アンテナ素子及び付随した回路素子を搭載した回路基板を収容する平面アンテナにおいて,前記ボトムカバーは,パッキンを着座できる座部とトップカバーに向かって伸びて中心部の収容空間中に前記アンテナ素子及び回路基板を落とし込めるロック部材が一体成形された収容筒を備え,前記トップカバーは,前記ボトムカバーに向かって延長した前記ロック部材に係合できる係合部材が一体成形された突起を備え,前記パッキンは,前記ロック部材と前記係合部材と結合により,前記結合の位置の外周で前記ボトムカバーと前記トップカバーとの間に圧接されることを特徴とする平面アンテナ。」が, 「【特許請求の範囲】 【請求項1】ボトムカバーとこのボトムカバーの表面を覆うトップカバーとからなる樹脂製ケースの内部に,アンテナ素子及び付随した回路素子を搭載した回路基板を収容する平面アンテナにおいて,前記ボトムカバーは,パッキンを着座できる座部とトップカバーに向かって伸びて中心部の収容空間中に前記アンテナ素子及び回路基板を落とし込めるロック部材が一体成形された収容筒を備え,前記トップカバーは,前記ボトムカバーに向かって延長した前記ロック部材に係合できる係合部材が一体成形された突起を備え,前記パッキンは前記ロック部材と前記係合部材との結合により前記ボトムカバーと前記トップカバーとの間に圧接されるパッキン圧接部分を有し,前記パッキン圧接部分の内周側に前記ロック部材と前記係合部材との結合部分を有し,前記結合部分の内周側に前記ボトムカバーの前記収容空間が設けられていることを特徴とする平面アンテナ。」と補正された。 なお,下線部は,実質的な補正箇所である。 したがって,本件補正によれば,補正前の請求項1の「前記パッキンは,前記ロック部材と前記係合部材と結合により,前記結合の位置の外周で前記ボトムカバーと前記トップカバーとの間に圧接される」を,補正後の請求項1では,「前記パッキンは前記ロック部材と前記係合部材との結合により前記ボトムカバーと前記トップカバーとの間に圧接されるパッキン圧接部分を有し,前記パッキン圧接部分の内周側に前記ロック部材と前記係合部材との結合部分を有し,前記結合部分の内周側に前記ボトムカバーの前記収容空間が設けられている」と変更しているが,この変更は,「パッキン圧接部分」があることを明記するとともに,「パッキン圧接部分」「結合部分」「収容空間」に関した位置関係をより具体化したものであり,当該構成が付加されることによって,発明がさらに限定されたものということができる。そして,これらの構成は,本願の当初明細書に開示された事項であるから,本件補正は,特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正後発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された,本件出願前公知の刊行物である特開平6-140824号公報(以下,「引用文献」という。)には,以下の(ア)?(ウ)が記載されている。 (ア)「【0007】 【実施例】以下本発明を実施例によって詳述する。 アンテナ本体1としてはプリントアンテナなど平面状のアンテナとして形成したものを用いることができる。このプリントアンテナは例えば,両面銅張り積層板を用いて,一方の片面に銅箔パッチでアンテナ導体層11を設けると共に他方の片面に銅箔でアース導体層12を設けることによってマイクロストリップ形アンテナとして形成されるものであり,同軸ケーブル3が接続してある。 【0008】このアンテナ本体5を収容するケース2はそれぞれ樹脂成形品で作成される上ケース2aと下ケース2bで形成されるものである。下ケース2bは図2に示すように上面の外周部に四角枠形状に側壁13を突設してその内周に上方へ開口する収納部14を設けることによって形成されるものであり,側壁13の一か所には内外に貫通する丸孔の引き出し口4が穿設してある。引き出し口4は内側の小径孔4aと,外側の大径孔4bと,その間の中径孔4cとで三段孔として形成してある。また側壁13の上端面にはパッキン収納溝15が全長に亘って上方へ開口させて凹設してあり,パッキン収納溝15にはリング状のパッキン16をはめ込んで取り付けるようにしてある。」(第2頁第2欄。なお,引用文献中には,「側壁3」と記載されているが,明らかに,側壁13の誤記であるから,「側壁13」と訂正記載した。) (イ)「【0010】アンテナユニットを組み立てるにあたっては,アンテナ本体1を下ケース2aの収納部14内に収容して・・・そしてドーム状に形成される上ケース2aを下ケース2bの上に被せて結合することによって,上ケース2aと下ケース2bで形成されるケース2内にアンテナ本体1を収容した図1(a)のようなアンテナユニットを組み立てることができるものである。」(第2頁第2欄?第3頁第3欄)。 (ウ)「【0011】 このアンテナユニットにあって,上ケース2aの下面に四角枠状に突設したリブ18を下ケース2bの側壁13の上端に取り付けたパッキン16に密着させることによって,上下のケース2a,2b間に収納部14を密封してアンテナ本体1を収納部14内に密閉してある。・・・」(第3頁第3欄)。 上記摘記事項(ア)中の「下ケース2bは図2に示すように上面の外周部に四角枠形状に側壁13を突設してその内周に上方へ開口する収納部14を設ける」との記載によれば,収納部14を形作る側壁13で囲われた収容筒が存在し,また,上記摘記事項(ウ)の「上ケース2aの下面に四角枠状に突設したリブ18を下ケース2bの側壁13の上端に取り付けたパッキン16に密着させる」との記載によれば,実質的にパッキン16の圧接部分があるから,引用文献には, 「下ケース2bとこの下ケース2bの表面を覆う上ケース2aとからなる樹脂製ケース2の内部に,アンテナ本体1を収容するアンテナユニットにおいて,前記下ケース2bは,パッキン16を着座できるパッキン収納溝15と上ケース2aに向かって伸びて中心部の収納部14中に前記アンテナ本体5を落とし込める収容筒を備え,前記上ケース2aは,リブ18を備え,前記パッキンは前記下ケース2bと前記上ケース2aとの間に圧接されるパッキン圧接部分を有しているアンテナユニット。」(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 (3)対比 そこで,補正後発明と引用発明とを比較する。 補正後発明は,再掲すると, 「ボトムカバーとこのボトムカバーの表面を覆うトップカバーとからなる樹脂製ケースの内部に,アンテナ素子及び付随した回路素子を搭載した回路基板を収容する平面アンテナにおいて,前記ボトムカバーは,パッキンを着座できる座部とトップカバーに向かって伸びて中心部の収容空間中に前記アンテナ素子及び回路基板を落とし込めるロック部材が一体成形された収容筒を備え,前記トップカバーは,前記ボトムカバーに向かって延長した前記ロック部材に係合できる係合部材が一体成形された突起を備え,前記パッキンは前記ロック部材と前記係合部材との結合により前記ボトムカバーと前記トップカバーとの間に圧接されるパッキン圧接部分を有し,前記パッキン圧接部分の内周側に前記ロック部材と前記係合部材との結合部分を有し,前記結合部分の内周側に前記ボトムカバーの前記収容空間が設けられていることを特徴とする平面アンテナ。」である。 引用発明中の「下ケース」と補正後発明中の「ボトムカバー」,引用発明中の「上ケース」と補正後発明中の「トップカバー」,及び,引用発明中の「アンテナ本体」と補正後発明中の「アンテナ素子」は,表現記載は異なるものの,実体的には同じものであり,また,引用発明中の「アンテナユニット」は全体として平面状であるから,補正後発明中の「平面アンテナ」に相当するものであり,引用発明中の「パッキン収納溝」はパッキン収納用の座部であり,引用発明中の「収納部」は収容空間を形作っており,引用発明中の「リブ」は突起であるから, 両者は, 「ボトムカバーとこのボトムカバーの表面を覆うトップカバーとからなる樹脂製ケースの内部に,アンテナ素子を収容する平面アンテナにおいて,前記ボトムカバーは,パッキンを着座できる座部とトップカバーに向かって伸びて中心部の収容空間中に前記アンテナ素子を落とし込める収容筒を備え,前記トップカバーは,突起を備え,前記パッキンは前記ボトムカバーと前記トップカバーとの間に圧接されるパッキン圧接部分を有している平面アンテナ。」の点で一致し,以下の点で相違する。 (相違点1) 補正後発明では,「アンテナ素子及び付随した回路素子を搭載した回路基板」を平面アンテナに収容しているが,引用発明では,「アンテナ素子」のみである。また,これに伴って,補正後発明では,この回路基板も収容空間中に落とし込んでいる。 (相違点2) 補正後発明では,収容筒には「ロック部材が一体成形され」ており,また,突起には「ボトムカバーに向かって延長した前記ロック部材に係合できる係合部材が一体成形され」ており,「前記ロック部材と前記係合部材との結合により」パッキンを圧接しているが,引用発明では,ボトムカバー(下ケース)とトップカバー(上ケース)の結合手段について具体化されていない。 (相違点3) 補正後発明では,「前記パッキン圧接部分の内周側に前記ロック部材と前記係合部材との結合部分を有し,前記結合部分の内周側に前記ボトムカバーの前記収容空間が設けられている」が,引用発明では,パッキン圧接部分の内周側に収容空間が設けられていることは自明であるものの,補正後発明中の「結合部分」についての構成が具体化していないから,当然のこと,「前記パッキン圧接部分の内周側に前記ロック部材と前記係合部材との結合部分を有し」という位置関係もない。 (4)判断 そこで,上記相違点について検討する。 ・(相違点1)について 原審の拒絶理由通知で引用した特開昭55-79504号公報の例えば第6図,或いは特開平6-152227号公報の要約,実願平4-75705号(実開平6-41219号)のCD-ROMの図1,2等から明らかなように,「アンテナ素子及び付随した回路素子を搭載した回路基板」をケース内に収容することは,周知技術にすぎないから,引用発明において,この周知技術を採用して,アンテナ素子と供に,アンテナ素子に付随した回路素子を搭載した回路基板を収容空間中に落とし込めても,その程度のことに格別な創意工夫を認めることはできない。 ・(相違点2)について ケースを密閉するために,トップカバー及びボトムカバーにロック部材及び係号部材を形成しておき,それらを結合することにより,トップカバーとボトムカバーを結合するとともに,前記ロック部材と前記係合部材との結合によりパッキンを圧接することは,例えば,実願平4-58753号(実開平6-17056号)のCD-ROMの図4,6,7,あるいは,実願平4-6939号(実開平5-60002号)のCD-ROMの図1,3に示されているように,周知技術にすぎず,しかも,引用発明中のトップカバー(ケース2a)とボトムカバー(下ケース2b)は,収容筒と突起(リブ18)を密着させることで,収容空間(収納部14)を形成しているから,この部分にロック部材及び係号部材を形成しておくのは,当然の設計的事項である。したがって,収容筒にロック部材を一体成形し,突起にボトムカバーに向かって延長したロック部材に係合できる係合部材を一体成形し,「前記ロック部材と前記係合部材との結合により」パッキンを圧接することは,周知技術の単なる転用の域を出ない。 ・(相違点3)について パッキン圧接部分の内周側に結合部分を設けることは,上記「・(相違点2)について」で周知例として挙げた,実願平4-58753号(実開平6-17056号)のCD-ROMの図4,6,7,あるいは,実願平4-6939号(実開平5-60002号)のCD-ROMの図1,3に示されているように,単なる設計的事項にすぎない。 そして,上記相違点1?3に係る変更によって格別な作用・効果を奏するに至ったともいえない。 (5)むすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)平成16年8月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成16年7月5日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,上記「2.(1)」の冒頭に記載したとおりの 「【請求項1】ボトムカバーとこのボトムカバーの表面を覆うトップカバーとからなる樹脂製ケースの内部に,アンテナ素子及び付随した回路素子を搭載した回路基板を収容する平面アンテナにおいて,前記ボトムカバーは,パッキンを着座できる座部とトップカバーに向かって伸びて中心部の収容空間中に前記アンテナ素子及び回路基板を落とし込めるロック部材が一体成形された収容筒を備え,前記トップカバーは,前記ボトムカバーに向かって延長した前記ロック部材に係合できる係合部材が一体成形された突起を備え,前記パッキンは,前記ロック部材と前記係合部材と結合により,前記結合の位置の外周で前記ボトムカバーと前記トップカバーとの間に圧接されることを特徴とする平面アンテナ。」である。 (2)引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物,及び,その記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は,前記「2.(1)」で検討したように,補正後発明中の「パッキン圧接部分」との構成を削除するとともに,「パッキン圧接部分」「結合部分」「収容空間」に関した具体的な位置関係を一部削除したもということができ,本願発明の構成要件にさらに限定要件である前記構成を付加したものに相当する補正後発明が,前記「2.(4)」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして,本願発明に関する作用・効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 4.むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-30 |
結審通知日 | 2006-09-05 |
審決日 | 2006-09-19 |
出願番号 | 特願平7-176560 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新川 圭二 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
浜野 友茂 小林 紀和 |
発明の名称 | 平面アンテナ |