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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 D07B
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 D07B
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 D07B
管理番号 1147226
審判番号 不服2003-16429  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-07-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-27 
確定日 2006-11-10 
事件の表示 特願2000-394057「PC鋼材の防錆加工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月19日出願公開、特開2002-201577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年12月26日の出願であって、平成13年2月14日付けで手続補正がされ、平成15年4月17日付けで拒絶理由通知がされたところ、その指定期間内である同年6月27日付けで手続補正がされたが、平成15年7月15日付けで拒絶査定がされ、そして、平成15年8月27日に審判請求がされ、同日付けで手続補正がされた。
その後、当審において平成18年4月27日付けで平成15年8月27日付けの手続補正を却下する補正の却下の決定がされるとともに、同日付けで拒絶理由通知がされ、その指定期間内である平成18年7月10日付けで手続補正がされたものである。

2.平成18年7月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成18年7月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1ないし4は、
「【請求項1】
PC鋼棒又はPC鋼撚線からなるPC鋼材の表面を合成樹脂防錆剤で被覆処理するPC鋼材の防錆加工方法において、
前記PC鋼材を予備加熱し、これを一次被覆用合成樹脂成型機に通し、該PC鋼材の表面に接着促進剤入りポリエチレン系熱可塑性樹脂からなる軟質熱可塑性樹脂による一次被覆を施し、次いで二次被覆用合成樹脂成型機に通し、前記一次被覆の表面に飽和ポリエステル系若しくはナイロン系の硬質熱可塑性樹脂を融着させて二次被覆することを特徴としてなるPC鋼材の防錆加工方法。
【請求項2】
PC鋼撚線からなるPC鋼材を予備加熱し、これを樹脂注入用の合成樹脂加圧成形機に通し、前記PC鋼撚線を構成している単素線間の隙間より内部空隙内に防錆充填剤を加圧充填した直後に、一次被覆用合成樹脂成形機に通し、該PC鋼材の表面に接着促進剤入りの軟質熱可塑性樹脂による一次被覆を施す請求項1に記載のPC鋼材の防錆加工方法。
【請求項3】
予備加熱は、10kHz?15kHz程度の中周波誘導加熱により、PC鋼材をその内部の単素線および表面まで、温度が200℃を超えないように加熱する請求項1若しくは2に記載のPC鋼材の防錆加工方法。
【請求項4】
予備加熱は、1kHz程度の低周波誘導加熱により、PC鋼材をその内部より表面まで、温度が200℃を超えないように加熱する請求項1に記載のPC鋼材の防錆加工方法。」と補正された。

(2)補正の目的の適否についての判断
本件補正は、平成18年4月27日付けで当審で通知した拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由」という。)の指定期間内にされたものである。当審拒絶理由は、平成15年4月17日付けの最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正である同年6月27日付けの補正により通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知、すなわち最後の拒絶理由通知であるから、本件補正は、特許法第17条の2第1項第2号に掲げる場合においてする補正である。そこで、本件補正において特許請求の範囲についてする補正が、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるか、以下で検討する。

本件補正は請求項1において、補正前の「ポリエチレン系熱可塑性樹脂等」を、「接着促進剤入りポリエチレン系熱可塑性樹脂」とする補正事項を含むものである。
補正前の「ポリエチレン系熱可塑性樹脂等」という記載は、ポリエチレン系熱可塑性樹脂に添加する何らかの添加剤や混入する他の成分が、発明を特定するために必要と認める事項(以下、「発明特定事項」という。)として、規定されていたものではない。したがって、「接着促進剤入りの」という事項を付加することは、補正前は発明特定事項ではなかった事項を新たに付加したものといえるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮、すなわち、いわゆる限定的減縮を目的とするものには該当しない。
そして、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは明らかであるから、特許法第17条の2第4項第1ないし4号に掲げる事項のいずれを目的とするものにも該当しない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.特許請求の範囲の記載について
平成18年7月10日付けの手続補正は、上記2.のとおり却下された。また、平成15年8月27日付けの手続補正は、平成18年4月27日付けで却下されているので、本願の特許請求の範囲の記載は、平成15年6月27日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1ないし4に記載された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
PC鋼棒又はPC鋼撚線からなるPC鋼材の表面を合成樹脂防錆剤で被覆処理するPC鋼材の防錆加工方法において、
前記PC鋼材を予備加熱し、これを一次被覆用合成樹脂成型機に通し、該PC鋼材の表面にポリエチレン系熱可塑性樹脂等の軟質熱可塑性樹脂による一次被覆を施し、次いで二次被覆用合成樹脂成型機に通し、前記一次被覆の表面に飽和ポリエステル系若しくはナイロン系等の硬質熱可塑性樹脂を融着させて二次被覆することを特徴としてなるPC鋼材の防錆加工方法。
【請求項2】
PC鋼撚線からなるPC鋼材を予備加熱し、これを樹脂注入用の合成樹脂加圧成形機に通し、前記PC鋼撚線を構成している単素線間の隙間より内部空隙内に防錆充填剤を加圧充填した直後に、一次被覆用合成樹脂成形機に通し、該PC鋼材の表面に軟質熱可塑性樹脂による一次被覆を施す請求項1に記載のPC鋼材の防錆加工方法。
【請求項3】
予備加熱は、10kHz?15kHz程度の中周波誘導加熱により、PC鋼材をその内部の単素線および表面まで、温度が200℃を超えないように加熱する請求項1若しくは2に記載のPC鋼材の防錆加工方法。
【請求項4】
予備加熱は、1kHz程度の低周波誘導加熱により、PC鋼材をその内部より表面まで、温度が200℃を超えないように加熱する請求項1に記載のPC鋼材の防錆加工方法。」


4.当審の拒絶理由
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
拒絶理由1
平成15年6月27日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
拒絶理由2
本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


5.当審の判断
5-1.拒絶理由1について
平成15年6月27日付けでした手続補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるか検討する。

5-1-1.請求項1の補正について
請求項1の補正は、当初明細書の「接着促進剤入りの軟質熱可塑性樹脂による一次被覆」を、「ポリエチレン系熱可塑性樹脂等の軟質熱可塑性樹脂による一次被覆」とする補正事項を含むものである。
当初明細書には「一次被覆」について、特許請求の範囲請求項1、2及び段落【0010】、【0011】に
「接着促進剤入りの軟質熱可塑性樹脂による一次被覆」
段落【0020】、【0021】に
「溶融状態のポリエチレン系熱可塑性樹脂からなる一次被覆合成樹脂53を押し出し、成型ダイス52によって図4に示すようにPC鋼材1の外周面に所定厚さの合成樹脂一次被覆をなす。
尚、使用する合成樹脂材料には接着促進剤を添加したものを使用する。」
段落【0028】に
「一次被覆が接着促進剤入りの軟質熱可塑性樹脂であるため鋼材との接着性が高く」
段落【0029】に「該PC鋼材の表面に接着促進剤入りの軟質熱可塑性樹脂による一次被覆を施すことにより、より防錆に優れたPC鋼材となる。」
と記載されている。
このように、当初明細書では段落【0020】、【0021】も含めて、一次被覆は全て「接着促進剤入りの軟質熱可塑性樹脂」というものである。
そうすると、当初明細書には接着促進剤入りであることを要件としない、ポリエチレン系熱可塑性樹脂からなる一次被覆という上位概念化した事項は記載されておらず、且つ自明な事項であるとも認められないから、上記補正事項は当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものではない。

5-1-2.請求項2の補正について
請求項2の補正は、当初明細書の「接着促進剤入りの軟質熱可塑性樹脂による一次被覆」を、「軟質熱可塑性樹脂による一次被覆」とする補正事項を含むものである。
当初明細書の「一次被覆」についての記載は、上記5-1-1.にて検討したとおりであり、「一次被覆」とは一貫して接着促進剤入りのものといえる。したがって、当初明細書には接着促進剤入りであることを要件としない、軟質熱可塑性樹脂による一次被覆という上位概念化した事項は記載されておらず、且つ自明な事項であるとも認められないから、上記補正事項は当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものではない。

5-1-3.拒絶理由1についてのまとめ
上記5-1-1.及び5-1-2.で検討したように、平成15年6月27日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

5-2.拒絶理由2について
請求項1の「ポリエチレン系熱可塑性樹脂等の軟質熱可塑性樹脂」及び「飽和ポリエステル系若しくはナイロン系等の硬質熱可塑性樹脂」という記載は、ともに「等」という曖昧な表現を使用しており、そのために「ポリエチレン系熱可塑性樹脂等の」という事項で特定される「軟質熱可塑性樹脂」、及び「飽和ポリエステル系若しくはナイロン系等の」という事項で特定される「硬質熱可塑性樹脂」の概念が明確でないものとなっている。
したがって、本願は明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

5-3.審判請求人の主張について
審判請求人は、平成15年6月27日付けで提出された意見書の(2)の欄で、「今般明細書の補正により、本願の特許請求の範囲から「接着促進剤」なる要件を削除しましたので、拒絶理由は解消したものと考えます。」と主張するにとどまり、補正の根拠となる明細書の記載箇所は全く示しておらず、補正が当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものである理由を主張するものではない。
また、平成18年7月10日付けで提出された意見書は、同日付けの手続補正による明細書の補正を前提として、拒絶理由が解消するという内容であるから、上記拒絶理由1及び2に対して実質的な主張はなされていない。
したがって、これら審判請求人の主張をみても、本件出願は依然として上記の拒絶理由1及び2を解消していない。

5-4.まとめ
上記5-1.ないし5-3.で検討したように、当審拒絶理由の拒絶理由1及び2は妥当なものである。


6.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第17条の2第3項、及び同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないからから、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-29 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-20 
出願番号 特願2000-394057(P2000-394057)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (D07B)
P 1 8・ 571- Z (D07B)
P 1 8・ 55- Z (D07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 澤村 茂実
野村 康秀
発明の名称 PC鋼材の防錆加工方法  
代理人 田中 雅雄  

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